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自転車で企業イメージ向上 【アンデックス(広島県尾道市)】

「ミニベロ」を経営の柱に

 

にっぽん元気カンパニー

アンデックス
【設立】 1971年9月
【資本金】 1億円
【従業員数】 約80人

二つ返事で承認

田邊社長(左)と高橋氏
本社前にある自転車ショップ&工房の入り口に立つ田邊社長(左)と高橋氏

  「創業以来、私は常に新しいビジネスを模索してきた。毎年、年頭の辞でも社員に対し、新しい事業のタネを探せと言っている」─。自動車補修用塗装設備でトップシェアを持つアンデックスの田邊耕造代表取締役社長はこう胸を張る。
 同社の直近の新規事業が、ミニベロ(ベロは仏語で自転車の意)と呼ばれるホイール径が小さいスポーツ自転車だ。競技用などのロードバイクが早さを追求するのに対し、ミニベロは少ない力で素早く加速し、長距離走行には向かないが、街中での走行に合う。
 自転車事業には2010年に参入を決めたが、その経緯が同社の体質を物語る。工業デザイナーで自転車好きの社員、高橋要一氏(現スポーツサイクル事業部チーフ・プロデューサー)がスポーツ自転車事業を提案したところ、田邊社長は二つ返事で承認した。自転車づくりの経験もノウハウも販路もない、しかも国内のミニベロ市場はほとんどが外国製という状態なのに、だ。

1年半で製品化

 社長の承認を得た高橋氏は、すぐに他のメーカーや一般のサイクリスト、実業団の監督ら外部の人たちの意見を聞いて設計を固めていく。地元の尾道市には愛媛県今治市とを結ぶ全長70キロメートルのサイクリングロードを備えた本州四国連絡橋「しまなみ海道」があり、尾道市は細い路地が多いなどの要素も考えてミニベロという結論を出した。製造面では、フレームは世界一の自転車製造地である台湾に委託、日本で最終調整するという態勢を整え、参入決定から1年半後の2011年9月に第1号機の販売にこぎつけた。
 現在は3代目の設計で8機種をそろえる。価格は5万9800〜32万円。地元メーカーが誕生したことで尾道市も同社には協力的で、市がレンタサイクル用に保有する自転車800台のうち、130台がアンデックス製という。

売り上げ2倍

ミニベロの試作車
スマホ充電機能を備えたミニベロの試作車

 一方、販売面では2013年に国の新連携事業計画に認定された効果が大きかった。自転車に乗りながらスマートフォンを充電できる機能を付加する計画だ。サイクリストの間ではスマホを使って写真撮影だけでなく、ナビ利用やSNSへの投稿などで電池を使うため、走りながら充電したいというニーズが多いという。すでにシステム開発を終え、試作車で実証実験している。
 加えて「実際に当社のミニベロに乗れば走りの違いが分かる」(高橋氏)と考え、同計画の補助金を利用して試乗車30台を製作。全国の販売店に置いてもらった。ミニベロの試乗車はなかったため、この効果で同社製品を扱う販売店が「60から110店に増えた。試乗車を置いている店舗の売り上げがいい」(同)という。世界的な自転車ロードレース「ツール・ド・フランス」の元チャンピオンもアンデックス製品を購入したなどのPR効果もあり「売り上げは2倍になった」と喜ぶ。

強固なグループに

 自転車への参入は、思ってもみなかった効果をもたらした。一般消費者向け製品がないため「知名度が低く、人材採用などでも苦労した」(同)が、市のイベント手伝いなどを行ううちに、「社名が売れるようになった。自転車はエコ、健康、ものづくりなどの要素も持ち、企業イメージが大きく向上した」という。この点について田邊社長は「まだ赤字だが、それを補って余りある」と評価する。
 これまで同社の新規事業の数は「10や20は思いつく」(田邊社長)という。失敗した経験もあるが、現在は携帯電話販売、ファーストフードのフランチャイズ運営でそれぞれを子会社を持つほか、田邊社長は地元の神社仏閣向け授与品を製造する社団法人を設立、代表理事を務めている。
 次々と新規事業に挑めるのも、本業の塗装設備事業が安定しているからだ。現在では自動車向けだけでなく、航空機や新幹線の塗装にも採用されている。
 田邊社長は多角化について「本業だけでは環境変化があれば命運は尽きる。複数の柱を持っておけばそれに耐えられる。異なる業種でも強固なグループを形成し、永遠の安定を目指す」と強調する。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成28年3月1日発行 第1163号