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和紙の服で勝負に出る 【丸安ニット(名古屋市西区)】

品質認知され商品も徐々に浸透

 

にっぽん元気カンパニー

丸安ニット
【設立】 1933(昭和8)年7月
【資本金】 1,000万円
【従業員数】 13人

消費者向け展開へ

リバーシブルジャガード機
192本の糸で丸編みができる、自慢のリバーシブルジャガード機

 紡績会社を経て家業の3代目を継いだ丸安ニット代表取締役社長の伊藤安則氏は、誰とでも気さくに話す明るい性格。アイデアマンであり、目標を定め突進するタイプ。だが、繊維産業は海外勢に押され衰退傾向。危機感を募らせていた。
 「取引先の元気がなくなっていく。このままではじり貧になるのを待つだけ。雇用を守るためにも独自性を出し、新たな仲間をつくり消費者向けなど新分野に進出するべきと判断した」という。
 あいち産業振興機構から小規模企業者等設備導入資金を受け、生地に立体的な絵柄を織り込める最新のリバーシブルジャガード機を導入。ジャガード柄生地を“maffon(マフォン)”のブランドで販売。カーシート用生地の生産も始めた。
 そんな時、和紙で丈夫な糸が作れる、と岐阜の製紙会社から連絡が入る。すぐに飛びついた。

認知度向上に3年

 伊藤社長と和紙との関わりは、前職の紡績会社時代から。開発・営業を担当した2005年ごろ、和紙で生地を作るプロジェクトを手掛けた。しかし、細く強い糸が作れず断念。その後も製紙会社は研究を続け、吸湿性に優れた和紙の特徴を持ち、耐久性に優れ洗濯もでき、抗菌作用による脱臭効果もある和紙糸を開発した。
 そこで和紙糸と木綿糸を組み合わせたメンズ向けソックスを作ったのだが、「素朴過ぎたのか全く売れない。デパート前で露天商として商品説明をしながら細々と展開した。一人の客に20分以上も話をすることもあり、労力は半端じゃなかった」と当時を振り返る。
 それでも、履き心地の良さ丈夫さが口コミで広がり、リピーターが増える。商品アイテムを拡充、インナーソックスとして女性向けに見本を配るなど工夫することで認知度は徐々に向上。ここまでくるのに3年の歳月を費やしている。

和紙でデニムも

伊藤社長
独自のものづくりを志向する伊藤社長

 商品開発へのアイデアは豊富。耐久性の強さを強調するため柔道着を作った。また、ジーンズメーカーに依頼し、横糸に和紙糸を使ったデニムでジーンズを試作。それを自身で身に付け確認して商品化するという。
 来年の夏に向け取り組むのが和紙の浴衣。名古屋の有松絞り浴衣と美濃和紙のコラボ商品を作り販売する。「浴衣なら和紙の良さを五感で味わってもらえる」と準備中の自信作だ。
 メンズ向けは「わしだがや」の商標で、伊藤社長自らがイメージキャラクターになり前面に立つ。和紙糸の製品全体は「Siffon」(紙フォン)ブランドで展開する。
 デパート前の路上だった露天は、デパート内の常設売り場に移り、名古屋市内の繁華街にある老舗大手デパートへも販路を拡大した。伊藤社長は多忙な社長業の合間を縫い月に3〜4日は店頭に立ち、顧客の評価に耳を傾ける。厳しい意見が参考になる。

販路開拓が鍵

 中小機構とは、催事出展中にプロジェクトマネージャーと出会い支援を受けることにつながった。中小機構の販路支援の「NIPPON MONO ICHI」を通して各種展示会に出展。バイヤーなどからアドバイスを受ける「虎ノ門サポート会議」にも数回エントリーした。「自分では気が付かない貴重な指導を受けられた成果は大きい」と話す。
 「危機感があった雇用は、逆に増やせる状態にもなってきた。若手が入りたいと思う会社にしなければいけない。当面の軸足は量産品に置きながら和紙製品を着実に拡大させていく。海外にも販路を広げていきたい」と今後の展開を語る。前を向き走り続ける経営者の口からは、“愚痴と文句”が一切出てこなかった。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成27年10月1日発行 第1153号