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顧客満足が先で収益は後 【信光社(横浜市栄区)】

酸化物単結晶 世界屈指の育成技術を保有

 

にっぽん元気カンパニー

信光社
【設立】 1947(昭和22)年5月
【資本金】 9,000万円
【従業員数】 179人

倒産危機を経験

  「かつて事実上の倒産を味わった。その時、乗り越えることができたのは社員のパワーがあったから。これが会社の活力だ。社員が力をつけられるのなら何でもする。社員の提案は喜んで受け入れ、前向きな失敗は明日への糧にする」と信光社代表取締役社長の米澤勝之氏は言い切る。
 サファイア、ルチル(金紅石)の酸化物単結晶の育成で世界屈指の技術をもつ同社は、1990年代初頭にルチル結晶を使った光ファイバー用の通信部品、光アイソレーターを開発した。光を一方向しか通さない画期的な製品だ。その後のITバブルに乗り、世界各国から注文が殺到。工場設備、人員を増やし需要に対応したが、バブル終焉で過剰在庫、過剰設備、借入金を抱え倒産の危機に陥った。2002年の苦い経験である。
 これを教訓に「身の丈以上のことはしない。小さくても必要な企業になる。そのためには技術開発主体に社員一人ひとりを信じ大切にし、潜在力を引き出す」という基本方針が定まったという。

独自技術を保有

サファイア結晶の育成装置
サファイア結晶の育成装置(ベルヌーイ法)

 同社は人工宝石メーカーとして創業、機械式腕時計やレコード針などで使われる人工サファイアを製造してきた。現在の主力は、LED用のサファイア基板と腕時計の文字板を保護する風防であるサファイアクリスタルの製造だ。ベルヌーイ法と呼ぶ製造法を用い、炉の上部から原料となる酸化アルミニウム粉末を落とし、超高温バーナーで炙ることで液状化させ、それを堆積させて直径3センチの円柱形サファイア結晶を育成する。
 その後、強度を増すための加工を経て切断、研磨することでサファイアクリスタルができあがる。サファイアの特徴は高い硬度と耐熱性など。簡単には傷がつかない。同社が60年以上にわたり培った技術ノウハウは世界トップクラス。スイス製の高級腕時計市場でも存在感を示している。
 さらに独自の育成技術であるTSMG法を開発し、高品質で大口径のサファイア結晶の育成も行う。
 一方、ルチル結晶の生産に関しては「育成しているのは世界で当社だけ。光アイソレーターの技術をセンサーに応用し災害対策用など社会に役立つ技術として普及を図っている」と説明する。

少量発注にも全力

米澤社長
「すべてはお客様のために」を強調する米澤社長

 米澤社長の経営哲学は「お客様の課題を解決することで技術が向上し、需要が創出される。お客様の喜ぶ顔を見ようと努力することが先で収益は後からくるものだ」と語る。
 社長をはじめ全社員の胸には、社員提案で始まった“にこにこマーク”のバッジが付けられ、顧客の笑顔が自分たちの喜びであることをアピールしている。
 また、世界中の研究所などから実験用の単結晶の注文が入る。多品種少量生産だけに収益面だけを考えていれば、成り立ちにくいビジネスのはずだ。他社では対応できないと断られた仕様や少量でも全力で取り組む。ここに小さくても必要な会社になる、との方針が表れている。

人材の根を太く

 会社を“拡大”させることではなく“拡充”するのが目標。そのためには人材育成が欠かせない。これまでの各種研修に加え、今年度から中小企業大学校東京校が開設する品質管理、生産現場の問題解決などの研修に社員13人を派遣する。外部研修を積極化し、人材の層を厚くすることで「会社としての根を太くする」方針という。
 社員のチャレンジ精神を大切にし、提案する場を作り出すことを心がける。それは特別なことではなく、日々の業務から湧き上る社内にするのが社長の仕事。「決まったら私はじっと待つ。7年は我慢する。その間は励まし続けていく」のが米澤社長の流儀。
 今後の目標は「事業的にはお客様のスマイルを発掘し続けること」で、個人的には社員の家族から「いい会社ですね」と言われることを最終目標にしていると強調する。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成27年9月1日発行 第1151号