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大型仮設テント市場をリード 【ADM(北海道伊達市)】

役立つ存在であり続ける

 

にっぽん元気カンパニー

ADM
【事業内容】 仮設上屋(テント)・付属品の製作・製造・加工及びレンタル・リースなど
【設立】 1988(昭和63)年10月5日
【資本金】 1000万円
【従業員数】 40人

ギネスが認定

杉並清掃工場
ADMの仮設テントで覆われた杉並清掃工場

 東京・井の頭線高井戸駅から徒歩5分の住宅地にある杉並清掃工場。2017年の竣工を目指して建て替え工事が進められているが、白い仮設テントで覆われていて、外から工事の様子を窺うことはできない。防塵・防音・防振の役割を担うこの巨大なテントは、北海道伊達市にある従業員約40人の中小企業、ADMが開発・製造した。
 商品名は「ハイパートラスビーム」。杉並清掃工場の場合、今年5月まで5カ月間の解体工事期間中、軒高が35メートル(新築工事期間に入った現在は26メートル)あり、間口幅80メートル、奥行119メートルを含めた体積で、仮設テントの世界最大を記録。ADMの仁村優治代表取締役は「ギネスの認定も受けました」とほほ笑む。
 ハイパートラスビームは、中小機構北海道本部の助言を受け、2006年に国の新連携事業認定を取得して開発した。ADMはそれまで、強度の高い特別な鋼管を鉄鋼メーカーに開発・供給してもらい、シートも滑雪性の高いポリ系素材を採用するなど、大型仮設テントの独自開発を進めてきており、同分野で突出した存在となっていた。
 道内の取引先2社と連携して取り組んだ新連携事業の成果により、さらなる大型化が可能になり、積雪地帯での作業効率向上や周辺住民への環境配慮が求められる工事現場の需要に柔軟に対応できる体制を構築。日本国内はもとより、サハリンの天然ガス液化プラント建設現場でも採用されるなど、大型仮設テント市場をリードしている。

スタートは酪農

 創業者である仁村氏の経歴はユニークだ。酪農家の後継者として社会人をスタートしたが、乳牛にこだわる父親と肉用牛に手を広げたい仁村氏とで意見が合わなくなり、実家を出て、独自に喫茶店を開業した。
 その後、いったん建設会社に勤めたあと、今度は寿司店を開業。「こんなに儲かる商売はない」と10年ほど続けて、多店舗展開を検討し始めたころに転機が訪れた。近隣の高速道路建設に携わっている大手建設会社の社員らが寿司店に来て、ある工法を話題にしているのを耳にしたのだ。北海道にはその工法を手掛ける業者がいないから、本州から連れてこなければいけないという。仁村氏は「北海道の人を馬鹿にしている」と腹を立て、「それなら、ぼくがやるから契約してくれ」と直談判。ひょうたんから駒で、鉄製のアーチ型水路を作る建設業に乗り出した。
 それがADMのスタートで、1988(昭和63)年10月に「有限会社ADM技建興業」として創業。仁村氏にとって43歳で3度目の起業だった。社名は当時、商圏と考えていた虻田町(現洞爺湖町)、伊達市、室蘭市の頭文字を取り、アクティブ・デベロップメント・ミリュー(積極的開発環境)の略とした。2年後の株式会社化に伴い、現社名に変更した。

冬でも工事を

 北海道は冬になると建設工事がストップし、建設業従事者は本州へ出稼ぎに行ってしまう。「工事現場に屋根をかければ、冬も作業ができるので、出稼ぎに行かなくても済む」という発想から、パネルを組み立てる方式の仮設テントを製造・供給するようになり、それが今でも主力製品になっている。
 「ゼネコン(総合建設会社)さんと付き合うためには計算ができないとだめ」と考え、それぞれの現場に必要な仮設テントの大きさや強度、工期、コストなどを精密に見積り、ゼネコンに提案することを徹底。今の地位を築くことができたという。

新規事業も

仁村社長
ギネス認定証を手にする仁村社長

 2013年には2度目の新連携事業認定を受け、「移乗支援機能付き車椅子」の開発に着手した。公共事業の減少が懸念される中で、新規事業の芽を育てようとするものだ。きっかけは、同社専務でもある仁村氏の奥さんが一時期、車椅子を使うようになったことにある。車椅子の乗り降りに人の手を借りるのを嫌がるのを見て、介助不要の車椅子を発案、特許も取った。利用者が移乗しやすいように、座席が左右に分割したり、腕を支えるアームが上下したりする仕組みだ。現在、8月の自社展示会での開発発表を目指して準備を進めている。
 「喫茶店にしても、寿司店にしても、経営はみんな同じ。お客さまのためにやっていれば、必ず成功すると思います」と語る仁村氏。今後も「お客さまへの感謝の気持ちを忘れずに、(ADMが)役に立つ存在であり続ける」ことを目標に据えている。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成27年7月1日発行 第1147号

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