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ナノ蛍光体で新市場開拓 【NSマテリアルズ(福岡県筑紫野市)】

画像を高色域化、省電力も実現

 

にっぽん元気カンパニー

NSマテリアルズ
【設立】 2006(平成18)年5月
【資本金】 約3億1,800万円
【従業員数】 約30人

3原色を制御

金海代表取締役
「まずはディスプレー分野に集中する」と話す金海代表取締役

 テレビ、スマートフォンなどのディスプレーは絶え間ない高画質化や低消費電力化の技術開発が進む。この分野で独自技術により、ディスプレー用途だけでなく、LED(発光ダイオード)照明などの新市場開拓に挑むのが、産業技術総合研究所発のベンチャー企業、NSマテリアルズだ。
 同社は昨年末、産総研と共同開発したマイクロ空間技術による「高輝度LED光源用高機能ナノ蛍光体」の量産化と実用化を発表した。マイクロ空間技術とは「微小空間で原料となる溶液の化学反応を超精密に制御し、ナノ(1ナノは10億分の1メートル)サイズの粒子を目的の大きさで生成する」(金海榮一代表取締役)ことだ。
 この技術を使って化合物半導体を合成した「量子ドット蛍光体」は、粒子径が数ナノ〜数十ナノメートルと、従来の蛍光体に比べ1000分の1程度となる。蛍光体は粒径により蛍光色が違うため、光の3原色をコントロールでき、「液晶ディスプレーのLEDバックライトに用いれば画像の高色域化に対応し、低消費電力化も可能だ」(同)。
 高色域化は、実験放送が始まっているテレビの4K放送だけでなく、次世代の8Kにも必要。省電力化については、再現色を制御できるため「これまで熱として捨てていた色をつくらない」(同)ことで実現する。例えばスマホに使用した場合、最大でディスプレーの60%、スマホ全体で30%の消費電力をカットできるという。

生産量100倍

 金海氏によると、画像の高色域化には3色レーザーを使う方法もあるが、これだとバックライトユニットをゼロから設計し直す必要があるという。
 これに対し量子ドット蛍光体は、従来の液晶パネルの構造を変えずに済み、製造装置の変更も不要なためコストメリットも大きい。こうした優位性から、スマホ、パネルメーカーだけでなく、バックライトやフィルムメーカーなど「国内外の数十社と商談を進めている。蛍光体の生産量も現在の月産数十キログラムから、来年には数トンと、100倍に増やす」(同)。
 産総研の技術をベースに2006年に設立した同社は当初、各種ナノ材料を受託開発していたが、LED市場の成長に伴い、LED光を改善するために量子ドット蛍光体が有力と考え、量産ツールの開発に乗り出した。この技術が2010年にサポイン(戦略的基盤技術高度化事業)に採択され、国の補助も受けて量産に成功した。

照明分野にも

材料検査工程
NSマテリアルズの材料検査工程

 量子ドット蛍光体はディスプレー向けだけでなく、色再現性を高めるLED照明向けも狙っている。従来の照明は青、黄、赤色LEDで自然光に近い白色や電球色を演色していたが、「量子ドットだと、蛍光灯や電球と同じ波長の光を作り出せる」(同)。例えばスーパーの売り場では、魚や肉、野菜などの商品の色が映えるよう、売り場によってハロゲンランプとフィルターで調色しており、LED化できていない。量子ドットによってLED化できるほか、肌の色が映える化粧品や美容室などの需要も見込める。照明分野も「遠くない将来に商品化できる」(同)。
 量子ドットの可能性はこれだけではない。もともと光の波長変換材の機能を持つため、太陽光発電にも応用可能だ。現在の太陽電池は発電に寄与しない紫外光の波長を利用できていないが、それを発電に使える波長に変換すれば「発電効率を大きく向上できる」(同)。太陽光発電の大量導入が進む中で、「新規設備だけでなく、既存の電池に、例えばフィルム状の量子ドット蛍光体を張り付けるレトロフィットも可能」という。

組織体制も整備

 これら画期的な技術基盤を持つ同社は、中小機構が運営するインキュベーション施設「クリエイション・コア福岡」に入居し、専門家から税務や労務などの助言を受け、成長企業としての組織体制を整えてきた。
 金海氏は、ディスプレー向け材料だけでも、「数百億円の市場になる」と予測。その次は照明や太陽電池、さらには「新しい特性を持った金属複合材料も視野に入れている」と、将来の青写真を描く。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成27年4月15日発行 第1142号