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埋もれた地域産品を活用 【Ante(石川県加賀市)】

意外性と話題づくりでヒット

 

にっぽん元気カンパニー

Ante
【事業内容】 地域の農産物や伝統的技法で作られた原料を使った清涼飲料水や加工食品の開発・製造販売など
【設立】 2009(平成21)年5月
【資本金】 300万円
【従業員数】 10人(役員、パート含む)

プロが驚く

 「揚げ浜式」と呼ばれる奥能登の伝統的技術で作られた海水塩を使用する「しおゼリー」、石川県白山市に伝わる“幻の唐辛子”「剣崎なんば」を練り込んだチョコレート「ちょこっとなんば」…。
 Ante(アンテ)が地元の農産物などを活用して次々と世に送り出す加工食品類は、商品そのものが独創的であるのに加え、ネーミングがユニークでパッケージや宣伝媒体などのデザインもモダンでお洒落だ。
 大手広告代理店のプロなどは、これらの商品が創業間もない小さな会社の手によるものと知って驚くという。しかも、「しおゼリー」はモンドセレクション金賞、「ちょこっとなんば」は同銀賞を受賞し、いずれも石川県の「石川ブランド製品」認定を受けるなど折り紙つきだ。
 商品開発の先頭に立つのは、創業者の中巳出理(なかみで・り)代表取締役だ。現代彫刻家としてニューヨークに公費留学したこともある元アーティストだけに、「既成概念にとらわれることなく、意外性のある商品」を次々と発案。パッケージなどはアーティスト時代に培った人脈を生かし、プロのデザイナーやカメラマンなどに手弁当に近い形で手伝ってもらうのだという。

サイダーが人気

中巳出社長
「奥能登をクリエーターらが集う“しおビレッジ”にしたい」と夢を語る中巳出社長

 2008年のリーマンショックを機にそれまでの事業を手仕舞い、「まちおこしや地域活性化に貢献していこう」と考えた中巳出社長が最初に開発した商品が「金沢湯涌サイダー 柚子小町(現・柚子乙女)」。集中豪雨による浅野川の氾濫で被災した湯涌温泉(金沢市)の復興に役立とうと、同温泉ゆかりの画家・竹久夢二の美人画をラベルにあしらい、地元のゆず街道にちなんで開発した地サイダーだ。
 最初は地元の人たちに白眼視されたものの、金沢駅前などで若い女性らに大正ロマン風の着物を着せて販促キャンペーンを打つなど話題づくりに注力。テレビや新聞に取り上げられて1カ月半で2万本を売るヒットとなり、「商品作りとプロモーションをきちんとやれば、ものは売れる」(中巳出社長)と確信した。
 続いて、国の重要無形民俗文化財である揚げ浜式製塩法の振興にひと役買おうと、「奥能登地サイダー しおサイダー」を商品化。やはり当初は地元に冷たい目で見られたが、モンドセレクション金賞や「いしかわのお土産コンクール」石川県知事賞など数々の受賞に輝いた。2種類のサイダーとも、それぞれの地元に売り上げの一部を寄付し続けている。
 同社が原材料に採用するのは地元でも知る人の少ない地域産品ばかりだ。「有名な地域産品を使うのではなく、地域に眠っているものを掘り起こすのが当社のスタンス」という。海水塩を使った商品はすでに5種類を数える。

農商工連携も

 2013年2月には、中小機構北陸本部などのサポートを受け、剣崎なんば生産組合との連携による各種商品の製造販売事業で国の農商工連携事業認定を取得。「ちょこっとなんば」に続いて、剣崎なんばを皮に練り込んだギョーザ「白山レッド餃子」も商品化した。
 「(アーティストとして)体制に反逆してきた人」なので、認定申請に伴う公的機関との付き合いには戸惑いやトラブルもあったようだが、いざ事業認定を受けてみると、展示商談会などの情報提供や販路開拓に関する助言など「援護射撃がすごい」と驚いたという。何よりも、「生産者からの信用度が格段に高まった」と振り返る。

カフェも開設

しお・CAFE
奥能登の珠洲市にオープンした「しお・CAFE」

 今年8月1日には、揚げ浜式製塩法の本場である石川県珠洲市にアンテナショップを兼ねたカフェ「しお・CAFE」をオープンした。日本海を臨む景勝地ながら観光客も足を延ばさない過疎地なので周囲に猛反対されたが、「珠洲に拠点を持たないと、“塩”で商売する者としての市民権を得られない」と押し切った。空き家となっていた民家を買い取り、内装設計を金沢工業大学の学生らに委託するなど話題づくりが奏功。客席数24の店に2カ月で約2800人が押し寄せた。
 昨年、元銀行マンが専務として経営に参画、「後継者に」とも頼む右腕ができた。バイリンガルで法律に詳しい女性も入社し、海外展開も視野に入れる。来年3月の北陸新幹線開業に向け、2〜3種類の新商品も開発中だ。
 「常に進化し続けないと」。中巳出社長が繰り出す次の一手が楽しみだ。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成26年11月15日発行 第1132号