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「土鍋」で海外市場を開拓 【銀峯(ぎんぽう)陶器(三重県四日市市)】

高級品投入で国内販路も拡大

 

にっぽん元気カンパニー

銀峯陶器
【事業内容】 製陶業
【設立】 1932(昭和7)年
【資本金】 1000万円
【従業員数】 30人

商品力で勝負

 「創業時の初代から商品力で勝負してきた。販路を広げるためブランド力を強化し、もっと消費者に品質を訴えたい」。こう話すのは、銀峯陶器3代目の熊本哲弥代表取締役だ。
 四日市市は萬古(ばんこ)焼の特産地で、とくに土鍋では全国シェア約8割を占める。昭和30年ごろ、同県の研究機関が原料にペタライト(葉長石)を混ぜると耐熱性に優れた陶器ができることを突き止め、土鍋用原料として地元を中心に広まった。
 銀峯陶器もこれを使用した土鍋を製造、昭和40〜50年代は全国に普及し、「つくればつくるだけ売れた」(熊本代表取締役)時代だった。最盛期には市内で土鍋専門業者が10軒程度あったが、普及期が過ぎ、バブル崩壊などを経て、「現在では1年中つくっているのは3、4軒程度に減った」(同)。
 同社の競争力の源泉は商品力だ。ペタライトはアフリカ南部のジンバブエから最上ランクのものを輸入、配合率も高めて高耐熱性を誇る。製造工程も、約60メートルの焼成トンネル窯、成型、釉薬(ゆうやく)かけ、素焼きなどをシステム化。平成12年には品質管理の国際規格「ISO9001」の認証を取得し「品質確保とコスト低下を図っている」(熊本貴子常務取締役)。独自のデザインもあって、土鍋の最大手となった

調理方法多様化

土鍋の品質管理工程
土鍋の品質管理工程

 土鍋は鍋物、おでんなど冬季の使用が多い季節商品の側面もある。その点、同社は取引を8社の問屋に限定し、問屋が年初に1年分を発注。それを12等分して製造するため、年産能力100万個の工場は「1年を通じて安定生産できる態勢」(哲弥氏)だ。
 かつては専門店や百貨店などが販路だったが、スーパーやホームセンターなどの量販ルートが出てきたことで、「類似品やコピー品、安い中国製などが出回り、価格競争となった」こともあった。だが、廉価品は「割れたり、汁が漏れたりする」などのクレームが出て、「結局は当社製品に戻ってくることの繰り返し」(同)と、今では安定した需要を確保している。

ブランド化

 同社は昭和40年代以降、「墨貫入」「花三島」「京三島」などのロングセラー商品を販売しているが、ここにきて土鍋市場に変化が出てきた。鍋物だけでなく、耐熱性を生かし、ご飯炊きや煮物、蒸し物などに使うユーザーが増えている。
 これに対応し「土鍋を一年中使ってほしい」(同)との思いから、新製品を相次いで投入した。フラッグシップモデル「花三島」は直火だけでなく、オーブンや電子レンジでも使用可能だが、鍋底部に金属プレートを装着して固定する特許技術の「IH(電磁誘導加熱)対応」を追加。近く「花三島(Ginpo三島)」の調理レシピ本が大手出版社から刊行されるなど、知名度も向上している。
 平成23年以降は「菊花」「BLISSIO」という新ブランドを開発した。「菊花」は特殊な釉薬を使い、吸水性を抑え、沸騰が早く冷めにくい特徴がある。鍋の厚さを2倍にし、沸騰したら火を切って余熱でご飯が炊ける専用タイプも商品化した。
 一方、BLISSIOは新開発の釉薬や精度を高めた製法により気密性を高め、余熱調理や無水調理も可能だ。スーパーが出始める前までは販路の一つだった百貨店や、近年増えているセレクトショップ、通信販売を意識した高級品だ。

輸出2割に

熊本代表取締役
「百貨店と海外という新しいルートを広げたい」と話す熊本代表取締役

 同社は昨年10月、国の地域資源活用事業計画の認定を受けた。同計画のテーマは、BLISSIOのブランディングと海外販路開拓の2つ。
 BLISSIOは「ブランド化を図る」(貴子氏)ため、中小機構の専門家らから助言を受け、シェフによるレシピを紹介するなどのコーナーを設けた専用サイトを近く開設するほか、百貨店向けに効果的な商品陳列手法を提案することも検討。海外開拓では、今年度は香港の展示会に参加する。
 「国内は百貨店という新しいチャンネルを増やし、花三島などは海外市場を開拓し、輸出を2割程度に伸ばしたい。そのためには『Ginpo』ブランドも広める」と哲弥氏。実際、海外からの引き合いも増えているといい、「これまでとは風景が変わってきた」と、新しい戦略に手ごたえを感じている。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成26年10月1日発行 第1129号