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光ディスク生産を一括請負 【アシスト(東京都大田区)】

「トライ」合言葉に新規事業にも着々と布石

 

にっぽん元気カンパニー

アシスト
【事業内容】 光ディスクの量産、
製造装置販売など
【創業】 平成元(1989)年5月
【資本金】 3000万円
【従業員数】 22人(役員含む)

1本の電話から

 「一度、話を聞いていただけませんか」。25年前に工業用研磨材販売で創業したアシスト。DVDをはじめとする光ディスクの一括運営管理会社として、業界で押しも押されもせぬ存在となったのは、加藤光淑代表取締役(55歳)が大手AV(音響・映像)メーカーにかけた1本の電話がきっかけだ。
 相手は後に「DVDの育ての親」と呼ばれるようになる斯界では著名な技術者。代表電話から回してもらった事業部の電話にたまたま出たのであり、何のつてもなく電話をした加藤氏には、そうとは知る由もなかった。
 当時、「有限会社日栄」と名乗っていた同社が売り込もうとしていたのは、大手工業研磨材メーカーが開発したばかりのラップフィルムを応用した超精密研磨材だ。商談を進めるうちに、加藤氏がにらんだ通り、音楽などのコンテンツ書き込み済みCDをプレス(量産)する際に必要なスタンパー(金型原盤)の研磨に最適であることがわかってきた。しかも、従来法に比べて生産効率を格段に高められる。
 加藤氏は相手の要請に応じ、研磨材だけでなく研磨機も新潟県の機械メーカーと共同で開発して納入。他のAVメーカーにも一気に採用され、光ディスクのプレス工程で使う標準的な技術として定着した。

台湾の工場受注

光ディスクの制作を行っているスタジオ
オーサリングなど光ディスクの制作を行っているスタジオ

 大手AVメーカーによるDVDの量産が始まり、光ディスク製造装置の販売が同社の主力事業となってきた1998年4月に株式会社に改組し、現社名に変更。相前後して、台湾の大手光ディスクメーカーからDVDの量産プラントを受注した。DVD参入を目指す台湾メーカーに請われて、米国法人のトップに就任していたくだんの著名技術者を紹介したところ、ライバルとなる工場の建設に手を貸すわけにはいかないからと、「アシストに頼むといい」と助言してくれたのだ。
 工期1年半で、受注総額約20億円。当時のアシストにとっては社運を賭けた大仕事だったが、顧客から高い評価を得て、第2工場の受注にもつなげた。
 その後、映画会社などコンテンツメーカーに、台湾工場の活用を勧めると、為替や言葉の問題、輸出入通関手続きなど煩雑な作業をアシストが一手に引き受けてくれるなら、という話になり、商社機能を整備。さらに、スタジオ機能も充実させて、撮影素材などを光ディスクに記載するためのオーサリング(データ加工)からプレス、品質検査、パッケージング、納品までをワンストップで行うようになった。
 「中小企業は決断力が早いので、大手よりも早くスタートできる」(加藤氏)。ブルーレイディスクのオーサリング事業には国内で2番目に参入している。

大田区に学ぶ

 加藤氏は高校卒業後、東京都大田区の研磨材問屋に就職。かねての目標通り30歳で独立し、同じ大田区で商売を始めた。特別な技術があったわけではなく、「人脈がすべて。色んな人と知り合って、新しい事業をプロデュースするのが仕事」と自任する。その手法は「この地で学んだ」のだという。
 中小製造業が集積する大田区では、旋盤業、研磨業、切削加工業などが順に仕事を回して一つの製品を仕上げている。アシストはそれをワールドワイドで展開しているわけだ。
 新規事業にも意欲的。国のSBIR(中小企業技術革新制度)事業の認定を受けて、2011年に新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)の補助金を獲得し、特許を持つ糸状アンテナを無線ICタグに応用した医療機器を大阪市立大学と共同研究開発中だ。SBIR認定の申請に際しては、中小機構の専門家派遣事業を活用した。
 このICタグ技術は、洋服の在庫・販売管理用途に実用化が先行。導入したアパレルメーカーのベトナム進出に伴い、同社も昨年、ベトナムに事務所を開いている。
 「どんな仕事にもリスクはあるが、かじってみないと味はわからない。とりあえずトライする」というのが加藤氏の信条。最近は、歯科医療用の歯型加工にCAD/CAM(コンピューターによる設計・製造)を用いる事業にも参入した。

参考ページ:技術開発を支援する!SBIR(新規ウィンドウ表示)

専門家派遣使う

加藤代表取締役
「光ディスクと出合わなかったら、今の当社はなかったかも…」と振り返るアシストの加藤代表取締役

 「毎年10%程度ずつ成長し、着実に利益を出すことで、社員が幸せになれる会社にする」のが目標。そのために、今年5月まで、2回目となる中小機構の専門家派遣事業を活用。月2回の訪問指導を受けながら経営基盤強化のためのコストの見直しに取り組んできたという。 加藤氏は昨年4月、日台経済文化交流会の初代会長に就任。日本と台湾の中堅・中小企業の架け橋を担う立場としても奔走する毎日だ。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成26年6月1日発行 第1121号

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