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廃棄紙を新素材に変身させる 【環境経営総合研究所(東京都渋谷区)】

儲かるエコベンチャーに成長

 

にっぽん元気カンパニー

環境経営総合研究所
【事業内容】 紙パウダーと合成樹脂を混練した混成成形ペレットの製造販売、紙パウダーと工業用デンプンおよび合成樹脂を混練・発泡させた断熱材・緩衝材の製造販売など
【設立】 平成10(1998)年4月
【資本金】 4億7000万円
【従業員数】 180人

軽さと強さ備える

 無用の廃棄紙から有用な複合素材を創り出す─。環境経営総合研究所のビジネスモデルは至極、シンプルだ。平成10年創業の同社は、14年目の前期(24年8月期)に、売上高が100億円を突破した。今8月期は30%増の135億円を見込んでいる。世界最大の化学会社、米国ダウケミカルとの協業も始まった。元損保会社のサラリーマンが起した環境ベンチャーは一体どこまで成長するのか。
 同社の主力製品は廃棄紙と合成樹脂を混練した複合素材で“新素材”ともいえるもの。合成樹脂に紙を混ぜることで経済性、機能性、環境影響評価(LCA:ライフ・サイクル・アセスメント)といった各面で合成樹脂単体よりも優れた素材が出来上がる。マジックのような材料開発に成功して、その技術を製品の量産化にまで発展させた。
 同社製品は緩衝材や断熱材として広く活用され、各種トレーや自動車の内装部材、ファンなどのケーシングをはじめ新たな用途開発も急ピッチで進んでいる。「軽さ」と「強さ」を兼ね備える特性は、最先端のハイテク素材として航空機などに採用されている炭素繊維と相通じるようにも思える。

高い参入障壁築く

工場の製造現場
特許、ノウハウがぎっしり詰まっている工場の製造現場

 同社では、千葉、茨城、札幌の3工場による量産体制を整備。「生産量に比例したコストダウンが図れる」(松下敬通社長)ことから、他社がこれから同分野に進出するのは容易ではない。高い参入障壁を築き上げ、オンリーワンのポジションを確立している。
 これまで合成樹脂と無機フィラー(充填剤)の組み合わせは多数存在するが、紙を混ぜ合わせるのは、水と油を一体化するような難しさから、世界でも例がなかった。それを同社は、紙をすりつぶし、30マイクロメートル(1マイクロは100万分の1)から50マイクロメートルほどの微細な紙パウダーにするという独自技術を開発して世界初を実現させた。

米国に新工場建設

 前例のない技術をどのようにして生み出したのか。
 松下社長はある日、そば屋に行った時、石臼でそばを挽く光景をふと目にした。石臼のような装置で紙をすりつぶせば、求めている微細な紙パウダーを作れるはずだ。そう直感した松下社長は粉砕機メーカーと掛け合い、石臼形の新装置の開発に乗り出す。直感は正しく、開発した装置により目指す紙パウダーが出来上がった。
 世界初の技術、製品は世界中の企業から注目されることになる。世界最大の化学会社、米国ダウケミカルもそのうちの一社。環境経営研究所とダウケミカルの提携交渉の結果、環境経営はダウケミカル子会社などとの合弁会社を米国ミシガン州に設立し、同地に新工場を建設した。
 工場は今年初めに完成した。ミシガン工場を拠点に、日本の10倍以上の規模となる米国市場を掘り起こす。

 

時流と市場を掴む

 「当社がここまでやって来られたのは、時代の流れとマーケットを確実に掴んだことによる」。松下社長は成長発展の背景をそう説明する。社名に採用している「環境経営」が21世紀の企業経営における重要課題として浮上し、LCAが事業活動のキーワードの一つとなった。リサイクルやリユースヘの関心が急速に高まった。そうした流れと廃棄紙再利用のビジネスモデルがぴったりマッチしたというわけだ。 廃棄紙のなかでも産業廃棄古紙といわれる、製紙会社の紙ロールの裁断や色づけの過程で生じる大量のロスを「極めて安い価格」(松下社長)で入手できるのが事業のミソとなる。無用の長物を引き取り、有用な新素材に変身させる。この魔法のような技術、ビジネスモデルによって、利益を出すのは難しいといわれる環境関連分野で、希有な「儲かるエコベンチャー」に育ち上がった。

知財で収益上げる

松下社長
紙パウダー入りの“新素材”を手に「米国に続いてブラジルやカナダにも進出する」と世界戦略を語る松下社長

 同社は大手損保会社に勤めていた松下社長が損保時代の仕事のからみから創業した。「周りは100%反対した」(松下社長)なかで会社を起し、工場建設など大胆な設備投資を続けてきた。公的制度を最大限活用して資金を得て、また、中小機構の専門家派遣をはじめとする技術支援も上手に取り入れて成長軌道に乗った。大手のメーカー、商社、物流業者とのパートナーシップも同社の発展を後押しした。
 現在、米国に続いてブラジルに工場を設けるプロジェクトが進行している。カナダも射程に入っている。法学部出身で「特許は詳しい」と自負する松下社長は、すでに世界各国で多くの特許を取得済み。将来は工場を独立・分社化し、知財で収益を上げるプランも描いている。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成25年5月15日発行 第1096号