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最後発からトップメーカーに躍進 【(株)奄美大島開運酒造(鹿児島県宇検村)】

黒糖焼酎造りで地域活性化に貢献

 

にっぽん元気カンパニー

(株)奄美大島開運酒造
【事業内容】 焼酎・もろみ酢飲料
の製造販売
【設立】 平成8(1996)年4月
【資本金】 3150万円
【従業員数】 50人

焼酎酒造所を継ぐ

 「父である会長の出身地、奄美大島の大島郡宇検村の地域おこし構想があったちょうどその頃、小規模な焼酎酒造所から経営を譲り受けることになりました。焼酎造りと地域おこし─全く偶然のことですが、不思議な縁を感じたものです」─奄美大島開運酒造の渡慶彦社長はこう述懐する。
 平成8年、奄美市で結婚式や宴会場を営むホテルを経営していた現会長が、納入業者でもあった市内の焼酎酒造所の依頼により、経営を引き継いだのが同社設立の端緒。当時、会長と渡社長は人口約2000人の小さな村である宇検村の地域おこしに何とか貢献したいとの思いを抱き続けていた。

黒糖から焼酎を

 宇検村で獲れるサトウキビを原料に黒糖を製造するのはいいとして、黒糖から焼酎を造るという発想はそれまで持っていなかった。「島」という立場から外貨を稼ぎたいという会長の長年の強い思いがあり、黒糖焼酎を手掛ける決断をした。だが問題はここからだった。何しろ「経営を引き継いだものの製造する人が誰もおらず、全くの素人集団。杜氏を探すことが最初の仕事だった」(渡社長)。
 奄美群島に黒糖焼酎メーカーは27社ほどあり、同社は最後発のメーカー。工場を奄美市から車で約1時間の宇検村に置く。奄美群島最高峰の湯湾岳の湧水を焼酎造りに使い、量は少ないものの地元産の黒糖も活用するなど、地域と協力し雇用創出などにも貢献する。

「音響熟成」を考案

主力商品「れんと」
「音響熟成」で製造する主力商品「れんと」

 鹿児島県の工業技術センターなどで技術指導を受けながら焼酎造りを学んだ。そして平成9年に主力商品「れんと」を開発した。これには「素人ならでは」(同)の斬新な工夫があった。当時、黒糖焼酎の主流だったアルコール分30度を25度とし、さらに「ボトルメーカーのやめた方がいい、との忠告を押し切り」(同)、極めて珍しいブルーボトルとした。社内に女性チームを作り、飲みやすさをコンセプトに、ボトルの色、形、商品名(「れんと」は音楽用語でゆったりの意)などすべて女性チームに任せて誕生したものだ。

音響熟成を行う貯蔵タンク
普通の機械振動ではなく、音楽から変換された微細な変化を含む振動で熟成を促す「音響熟成」

 工場の貯蔵場に足を一歩踏み入れると、クラシック音楽の名曲が心地よく流れてくる。これは「れんと」の特徴でもある「音響熟成」と呼ぶ製法で、各貯蔵タンクに特殊なスピーカーを密着させ、3カ月余りクラシック音楽の音響効果を与えて熟成させる。この女性にも飲みやすい「れんと」が大ヒットしたことに加え、平成15年ごろの全国的な焼酎ブームにも乗り、22年には黒糖焼酎メーカーの売り上げナンバーワン企業に躍り出た。何と最後発からトップ企業へ14年で大躍進したことになる。
 このほか黒糖焼酎「紅さんご」や地元の地域資源である「パッションフルーツ」を活用した食前酒「すっきりパッション」(平成20年12月に農商工連携事業計画に認定)など、地元の活性化を意識した商品を次々にラインアップしている。

 

中小機構の支援

渡社長
「販売開拓で苦労していた折、福岡県の大手問屋さんと出会い、特約店契約を結んで全国販売できたことも大きな助けに」と語る渡社長

 現在の成長をより確かなものにするためには「海外販路開拓と工場の人材育成が喫緊の課題」(同)だ。これに取り組むチャンスが間もなく訪れる。22年10月の大豪雨で奄美大島が大きな被害を受けた際、中小機構九州本部長が復興支援策の調査のため同島を訪れた。同社にも視察に訪れ、これを機に渡社長は専門家継続派遣事業(平成23年7月〜24年3月)での支援を同機構に依頼する。5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)活動を中心に現場改善を図り、工場の生産性・品質向上と人材育成を目指すのが目的で、同社にとっては初の本格的な現場改善活動だった。
 渡社長は「最初、4人のリーダーを育ててほしいと専門家の方に言うと、それでは会社は変わらない、全体を巻き込んでやらなければと言われた。それが本当に良かったし弊社の一つの転機になった」と、従業員一人ひとりの意識変革につながったことを強調する。
 海外販路開拓では24年度の海外展開F/S支援事業に採択され、昨年10月にシンガポール、香港を中小機構の専門家らと一緒に訪問した。「それまで漠然としていた市場調査・分析のしかたがわかったうえ、訪問先企業などとフェース・ツー・フェースで話ができるのでビジネスに非常に役立った」(同)という。具体的な成果が出る日も近そうだ。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成25年2月1日発行 第1089号