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両面スムース編と繊維加工技術で業界トップを目指す 【(株)エヌエスブレーン(富山県射水市)】

制菌加工で医療・介護・食品分野へ進出

 

にっぽん元気カンパニー

(株)エヌエスブレーン
【事業内容】 ニットウェア製造・販売、ナノテクノロジー、マイクロカプセル付着事業
【設立】 昭和54(1979)年12月
【資本金】 3450万円
【従業員数】 31人

常に最良の会社に

渋谷社長
社是を背に「常に我々にしかできないことを目指しています」と語る渋谷社長

 「最大の会社たらんとするにあらずして、常に最良の会社たらんとするにあり」を社是として、売り上げや規模に固執せず、常に内容を重視した最良の企業でありたいと、渋谷清澄社長は強調する。
 エヌエスブレーンはデザイン性の高い子供用ニットウェアの製造・販売会社として、昭和54年に創業。北陸産地を取り巻く環境は激変し、中国をはじめとする東アジア各国への生産基地の急速な海外移転など、厳しい構造変化が起こる中でも「私達にしかできないものを目指して新しい技術の開発を行っていく限り、生き残っていきます」(渋谷社長)との言葉どおり、現在まで次々と新しい技術を開発して会社を成長させてきた。
 エヌエスブレーンの社名の由来は「ノースポール(北極点)とサウスポール(南極点)、世界をまたにかけるブレーン(頭脳集団)ということ」(同)だという。「社員一人一人の頭脳を結集し、世界で我々にしかできないこと、世界中のどの企業にも負けないものづくりを目指す」(同)。

両面編機の開発

 社名の由来の通り、片面編みに比べてソフトで軽く、保湿性にも優れ、かつて日本だけの技術であった『両面編み』に着目。しかし量産化や低価格化などの波に押されて片面編みに市場を奪われ、既に稼動させる編機が消失していた。この生産技術を量産化させるために、平成10年から改造機の開発をはじめる。3年掛かりで成功にこぎつけ、現在73台を保有している。
 業界初の14ゲージ横両面編機の量産化により、両面編みニットの国内生産量が年間50万枚から60万枚と言われる中、平成22年実績でメンズ、スクールのベスト、セーター、カーディガンなどで40万枚の生産数を誇る。

繊維加工分野へ

マイクロカプセル附着加工機
中小機構、富山県工業技術センター、生活工学研究所の支援を得て開発した「マイクロカプセル附着加工機」

 ニットウェアの製造だけでなく、繊維加工でも画期的な技術を開発する。平成7年3月、中小企業事業団(現在の中小機構)や富山県工業技術センター、生活工学研究所の支援を受けてマイクロカプセル附着加工技術を業界に先駆けて完成させた。この技術は3ミクロンのマイクロカプセルを1平方メートルあたりに約1,000万個付着させ、カプセル内溶剤の成分によって、静電防止、保湿、吸水速乾、マイナスイオン、アトピー及び抗菌防臭、紫外線カット、ノネナール加齢臭、蓄熱保温、涼感加工などさまざまな加工ができる。さらに附着後の製品風合いに変化がなく安全無害で無臭といった特徴を備えており、特許化事業として繊維加工分野へ進出した。
 この技術は各方面から高い評価を得て、平成8年には富山県の「企業グランプリ富山」でグランプリを受賞する。

地域資源に認定

 両面スムース編みニットとマイクロカプセル付着加工で国内市場を席捲する同社の技術は、更なる進化を遂げる。
 同社の定番商品のニットウェアであるセーターやベストは、サラリーマンや学生に愛用されているだけに、日常生活で水に濡れたり汚れたりすることが多い。渋谷社長はこの対策としてナノ加工に目をつける。
 ナノ加工の処理には通常180度の高熱処理を行う。天然素材はこれに耐えられるが、同社が扱うアクリルと毛のアクリル混ニットは130〜140度の低温処理が要求される難しい素材だ。これに必要な低温熱処理機を、香川大学や米国デュポン社の協力も得て平成17年に開発。世界で始めてアクリル混ニットのナノ防汚、撥水、撥油加工に成功した。
 「廉価で日常着として需要の高いアクリル製品へのナノ加工だからこそ、従来品に無い競争優位性がある」(同)ことから、平成20年3月には中小機構などの支援により国の地域資源活用事業計画の認定を受けた。
 このナノ加工技術で、同社が極めて高い市場占有率を有する両面編みニット製品の付加価値を更に高め、ニット製品にナノ加工を施し、ゴルフウェアやスポーツウェアをはじめ、今後も需要の拡大が見込まれる。

医療・介護分野へ

 平成24年2月には細菌の増殖を抑える制菌加工で、国内唯一の性能評価機関である繊維評価技術協議会の『制菌加工SEKマーク』の認証を取得した。「制菌加工した生地や糸はすでにあるが、わが社のマイクロカプセル付着加工機は完成品に付着させることができるため、国内で始めて最終商品にSEKマークを付けられるようになった」(同)。
 SEKマークには一般家庭や食品業務用の『一般用途』と、医療機関、介護施設で使用される『特定用途』があり、この両方を取得した。病院では白衣などに制菌加工が施されているが、看護士や介護士が羽織るカーディガンなどのニット製品は市販品で対策がなされていない。これらの市場向けに一般用途のSEKマークを付けて、来年秋・冬をめどに量販店や百貨店などに売り出す。「時間も費用も掛けて取得したSEK認証なので大事に育てたい」(同)という。

震災復興にも意欲

 産学官との連携を上手に生かし、独自技術の開発に挑んできた渋谷社長は、「東日本大震災による東京電力福島第1原発事故で放射能汚染塵芥が大量に発生している。プルシアンブルーの放射能吸着除去剤をマイクロカプセル化することにより吸収・除去ができる繊維加工技術を開発中であり、これで苦しんでいる方々の役に立ちたい」と次なる目標に意欲を見せた。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成24年9月1日発行 第1079号