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永久磁石活用し新メンテナンス装置 【櫻井技研工業(株)(愛知県春日井市)】

風力発電、昇降機など大幅コスト削減

 

にっぽん元気カンパニー

櫻井技研工業(株)
【事業内容】 モノレール、昇降機、風力発電メンテナンス装置、インクライン設備などの製造およびリース工事
【設立】 昭和58(1983)年8月
【資本金】 1000万円
【従業員数】 15人

脱サラで仕事探し

 「会社がここまで来たのもサラリーマン時代の人間関係があったからこそ。製造機械はじめ何も持たなかった私を鉄鋼関連の下請けメーカーさんが支えてくれた」―櫻井技研工業の櫻井靖久社長は振り返る。
 大手特殊鋼メーカーで生産技術や営業に携わっていた櫻井社長は、先の当てもなく会社を辞した。昭和48年の第一次石油ショックの少し前の頃で、いわゆる脱サラ。それから景気の波の少なそうな電力会社を中心に仕事探しに奔走したが決まらず2、3年が過ぎた。
 ある時、電力会社の鉄塔を作る会社に飛び込みで訪れ、やっとのことで通されたのが設計担当課長の机の前。しかし同課長は黙って設計図に見入っているだけ。同社長は立ったまま設計図を見下ろして「それは角ネジですね」と言ったとたん、「分かるのか、みたいな顔をして口を開いてくれた」(櫻井社長)。

「電力」ルート開拓

模擬メンテナンス装置
橋に見立てて点検作業台車が動く模擬メンテナンス装置を工場敷地内に設置、訪問客に実演している

 その設計図は鉄塔の4本柱の基礎となる穴を掘る際、土砂崩れを防止するためのジャッキに使うネジだった。同社長はネジの形、材質などを即座に提案、試作品製造を請け負うことに。この時味方になってくれたのがサラリーマン時代の下請け鉄鋼メーカー。「10数社が快く頼みを聞いてくれた」(同)。この鉄塔を作る会社との出会いがその後、電力会社系列の別の会社にも仕事が広がるなど、電力会社へのルートが開くことになる。
 昭和58年の会社設立以来、同社は電力会社およびその関係会社との共同開発、独自開発による製品を続々と世に送り出す。鉄塔工事関連では資材運搬モノレールを開発、これを特許権保護のため売り切りではなくリースで販売する。
 また昇降機のほかスキー場のリフトを思わせる「人貨索道」、単体重量30トンの荷物を傾斜角40度ぐらいの斜面を上げ下げする「インクライン」も開発。風力発電タワーメンテナンス装置では、平成18年に新エネルギー大賞・経済産業大臣賞を受賞、鉄橋・橋下のメンテナンス装置も製品陣容に加わる。

中小機構を知る

 同社に転機が訪れたのは東日本大震災・福島第一原発事故による。これを契機に各電力会社が設備投資を控えたため、その影響が同社にも押し寄せた。
 その時、弱気になり始めた同社長を再び元気にさせたのが中小機構中部本部との出会いだ。愛知県による年1回の企業診断の席に同機構も同席、国内に再生可能エネルギー推進の声が高まる中、「異業種連携で新ビジネスに取り組むべき」との同機構の助言で「ハッと原点に返った(同)」。
 実は同社長は、メンテナンス装置に強力な永久磁石を活用する新たなアイデアを温めており、この助言に大きな刺激を受けた。それまでの風力発電タワー用メンテナンス装置は、風車タワーの外周に金属帯を巻き付けてラックレールを固定、各レールに取り付けられた昇降機に乗った作業員が上に向けて順次金属帯を巻き付けながらレールを継ぎ足していく。

磁石活用で大反響

櫻井社長
「風力発電のようなメンテナンスに永久磁石を使えないだろうか、とずっと考えてきました。今はお客様の反応の大きさにびっくりしています」と櫻井社長

 これを金属帯ではなく「もっとコストを下げるために永久磁石を活用できないか」(同)と考えた。永久磁石を下駄のように張り付けてラックレールを継ぎ増ししながら上に行き、逆に作業が終われば磁石を外しながら下りる。
 永久磁石は引っ張り試験で530キログラム、せん断で340キログラムという、とてつもない強度が公的な工業試験所で証明されているという。しかしいったん、鉄板に付着すれば剥がすのが極めて困難という課題を抱える。
 同社長は苦心の末、一般には発想すらなかった永久磁石の安全で簡単な取り外し方法を考え出した(特許取得済み)。この結果作業人数、工数、日程などが大幅に削減され、各方面から大きな反響を呼んでいる。風力発電、鉄橋・橋下、ダム関連などのメンテナンス、昇降機、建築足場など用途は多岐にわたる。同社は6月に新連携事業の正式な認定を受け、中小機構の支援を得ながら販路開拓、新ビジネス展開に社を挙げて取り組んでいる。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成24年7月15日発行 第1076号