中小機構について >  情報提供活動 >  中小企業施策普及紙「中小企業振興」 >  にっぽん元気カンパニー >  十勝産小麦100%のパン作りに挑戦 【(株)満寿屋商店(北海道帯広市)】

十勝産小麦100%のパン作りに挑戦 【(株)満寿屋商店(北海道帯広市)】

年内全店で達成、小麦のブランド化も

 

にっぽん元気カンパニー

(株)満寿屋商店
【事業内容】 パン製造・販売
【設立】 昭和25(1950)年1月
【資本金】 1000万円
【従業員数】 180人

地元産にこだわる

 「十勝産小麦だけで作るパンを売り出したところ、お客さんの動きが変わり出した。それぐらい、十勝地方は地元産にこだわっているお客さんが多いのです」
 今から7年ほど前、十勝産小麦100%のパンを販売し始めた当時を、満寿屋商店社長の杉山雅則氏は振り返る。
 今年で創業63年になる満寿屋商店は当初から、地元食材を使ったパン作りをしてきた。しかし肝心の小麦は外国産だった。十勝地方は小麦生産量が日本一で国内全体の4分の1を誇る大産地。にもかかわらず生産される小麦はほとんどが麺用で、本州などに出荷されてしまう。しかもパン用の小麦生産は1%にも満たない。「小麦の大産地なのに住んでいる人が食べているパンは外国産小麦のパン。米だったらあり得ない世界」(杉山社長)だ。
 同社が地元で生産したものを地元で消費する地産地消の取り組みを始めたのは20年ほど前。杉山社長の父に当たる2代目社長の強い意思だったが、一朝一夕には思いはかなわなかった。その父が平成4(1992)年に他界、そのあとを母親が引き継いだ。

パンとの初の接点

杉山社長
「小麦は十勝の主要農産物。目標として地元十勝の発展を一番に考えているので、パン作りを通じて地元産小麦を全国に広めていきたい」と話す杉山社長

 杉山社長は大学に入るまで「家業を継いでパン作りをやるという意識は全くなかった」(同)。鹿児島県にある大学に入学し、専攻は機械の技術系という畑違いの分野。そんな中、意識を変えたのは大学3年の時、アルバイトを通じた「食」関係の職場での実体験だった。パン屋のバイトも行い「パンは面白いものだ」と初めてパンとの接点がここで生まれた。
 家業を継ぐ決心をした同社長は自らの意思でまず米国に渡り、カンザス州にあるパン学校やニューヨークのパン屋などで1年半ほど修行、帰国後は大手製粉メーカーに就職した。退社後は催事などを通じ、東京はじめ全国各地で自社のパンの販売・普及にも当たった。

「麦音」をオープン

麦音のパン
十勝産小麦や食材だけで作る手作りのパン。昼近くになると地元のお客でにぎわい、店内のカフェスペースも満杯に(「麦音」で)

 平成16(2004)年に自社に専務として戻り、その3年後社長に就任した。当時は不況が続き売り上げも低迷、「かなり危機を感じた」(同)という。同社長は「わかりやすいものが必要と思い、大型店“麦音”をオープンした」(同)。5年近い年月をかけ平成21(2009)年5月に開店した同店は、十勝平野の中心部にある敷地面積8000平方メートルの広大な土地に店舗、オープンキッチン、庭・小麦畑、カフェスペースを設置する。何より「麦音」のパンはすべて十勝産小麦100%。このほかパンを焼く石窯は地元の木材ペレットを燃料にするなど地元産に徹底してこだわる。同店は同社の地産地消に取り組む姿勢を象徴する施設だ。
 平成17(2005)年にこのパンを売り出したころからお客が増え、売り上げも伸び始めた。パン作りに地元産小麦を使うには困難が伴う。日本で作られているパンの99%は外国産小麦を使っており、この小麦の品質をベースに産業が成り立つ。十勝産小麦で作るということは製法から機械、技術、材料まですべて見直さなければならない。同社はこれを乗り越え、「十勝産小麦で作ったパンはここに来たら食べられると情報を発信した」(同)。
 現在、十勝管内にある全6店で80%に上る十勝産小麦使用を年内に100%に持っていく計画も進む。

中小機構の支援も

 食育活動にも熱心に取り組む。軽トラックに移動式石窯を積み込んで幼稚園、小中学校などを回って子どもと一緒に地元の食材でピザを作る活動を行っている。昨年は計85回、5800人の参加者があり、平成17年からの延べ参加人数は1万人を超える。
 一方、平成21年には中小機構北海道本部の支援で、十勝産素材を使用したパーベイク(半焼成)パン開発で農商工連携事業の認定を受けた。
 新製品は完成し今後、景気動向を見ながら販売を検討する計画だ。このほか同本部が昨年度実施した「マーケティングマネジメント講習会」に同社長はじめ社員が参加し、マーケティング戦略やブランド力向上戦略などを学び経営に生かしている。
 今後のビジョンでは2030年に十勝が「パン王国」になることを究極の目標に据える。
 その前段として2015年までに現在ある6店舗の中から「日本一の売り上げの店を出したい」(同)という。まず十勝管内で基盤を固めるのを優先させるという戦略だ。
 「日本一の店を実現できれば、十勝産小麦のブランド価値は一段と高まり地元の発展にも貢献できる」(同)と強調する。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成24年5月15日発行 第1072号