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「滞在型で観光客復活を」 旅館 黒潮【宮城県気仙沼市】

本格復興への決意

旅館 黒潮(宮城県気仙沼市)

 「若年層、外国人などの観光客をどう増やすか。新しい発想で取り組んでいる」
 こう語るのは、気仙沼大島で「旅館 黒潮」を営む黒潮代表取締役の堺健氏だ。
 気仙沼湾に浮かぶ気仙沼大島は「緑の真珠」とも呼ばれ、島内の亀山(標高235メートル)の展望台からながめる三陸リアス式海岸の絶景だけでなく、鳴き砂や海水浴場、釣り場などの観光資源に恵まれ、「ピーク時には年間約40万人の観光客が訪れていたが、現在は2、3割しか回復していない」(堺氏)。
 本格復興に向けて堺氏らが「30年前の発想をやめよう」と、食を含めて新しい観光客呼び戻し策を実行中だ。
 東日本大震災後に米軍の大島での災害救援活動「トモダチ作戦」の部隊が大きくマスコミに取り上げられた。島の観光資源や暮らしが注目され、翌年には外国人観光客も増えたという。堺氏らは外国人に訴求しようと、米高校生からの評価が高い長崎県・五島列島の「小値賀島」を視察するなど大島の魅力発信を検討。加えて、若い女性の観光客が減っているため、「大島の環境や暮らしに共感してもらえるような“おもてなし”が必要」と訴える。
 観光資源見直しは食にも及ぶ。もともと海の幸が豊富で、宿泊客などには新鮮な魚介類を提供していたが、昨年には堺氏が自ら代表幹事となって「気仙沼フードビジネス協議会」を設立。優れた地域資源の食を発信しようと、まず「純米酒漬黄金サンマ干し」を商品化。東京の宮城県のアンテナショップ『池袋ふるさとプラザ』で売り出したところ、「安定して売れるようになった」と手ごたえをつかんでいる。

滞在・交流型観光の振興を目指していく

黒潮の堺氏

改装中のウッドデッキに立つ黒潮の堺氏

 黒潮や「漁師の宿 石田屋」など島内の7軒の旅館は、国のグループ補助金(中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業)を受けて新築または改装中。補助金申請にあたっては、中小機構の担当者から「最初から最後までお世話になった」と述懐する。黒潮も7月中旬には改装を終える予定で、海が見えるウッドデッキをつくったり、冬季には薪ストーブを備えるなど新しいサービスを打ち出す。
 宮城県は平成30年の完成を目指して、気仙沼本土と大島をつなぐ「大島架橋」を計画しており、島へのアクセスは大幅に改善される。堺氏は、新築や改装を機に、「グループで観光の共通プランをつくるほか、首都圏での観光PR、物販も計画。新たに大島中学校とウオーキングンマップを作成する。世代、性別を超え、他地区の人達と連携し、将来的には歴史や文学、環境などを交えて、観光客に共感してもらえるような滞在・交流型観光の振興を目指す」と将来を見据えている。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成26年7月15日発行 第1124号