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最新工場も3月末に一部操業開始(阿武隈環境・宮城県山元町)

復興へのシナリオ 被災中小事業者の挑戦と震災復興支援アドバイザー
阿武隈環境
【事業内容】 食品廃棄物のリサイクル処理
 

一度は全て流出した工場跡地に

建設中の食品廃棄物リサイクル処理工場
1日100トンの処理能力を持つ新工場の完成も近い
 「いちどは諦めかけた事業の再興が、いま現実のものとして着実に進んでいるのは、アドバイザーさんの的確な助言や支援のおかげだと心からそう思っています」
 東日本大震災の津波で約6000平方メートルの敷地内の工場、機械設備すべてが跡形もなく流出してしまった阿武隈環境の阿部清・代表取締役(58歳)は、新工場の建設が着々と進行する現状を前にこう振り返る。
 現在、流出した工場の跡地に1日100トンの処理能力を持つ最新の食品廃棄物リサイクル処理工場を建設中で、今年3月末には一部操業開始のところまでこぎつけた。その資金調達に、中小機構東北本部の震災復興支援アドバイザーによる「献身的な支援無くして実現はほぼ不可能だった」という。

地域唯一のリサイクル処理事業者としての使命

 県東南端の太平洋沿岸地区に位置する山元町で、昭和50年にし尿処理受託業を創業、その後食品工場から大量に排出される廃棄物処理を手掛け、熟練度の高い発酵処理技術を用いた有機性廃棄物リサイクルによる有機肥料の生産という資源循環型のビジネスを構築、平成19年には廃棄物リサイクル事業者として環境省から大臣官房表彰を受けるなど、堅実に事業を拡大してきた。
 コツコツと繋いできたその事業を津波が工場もろとも奪い去った。震災当日、車で移動中だった阿部社長が土台だけが残る現場を目の当たりにしたのは3日後。「愕然とした。再起はもう無理」と率直に思った。右腕と頼りにしていた従業員も津波で亡くし、事業再興の意欲は萎えるばかりだった。絶望の淵にあった阿部社長に声を掛けたのが、取引先である大手食品メーカーからの「廃棄物の処理で困っている。一日も早く再開してほしい」の一言。地域で唯一のリサイクル処理事業者としての使命を感じた。取締役の弘子夫人の励ましもあり、会社再建を決意する。

なかなかすすまない資金調達

 だが、事業再開には処理施設を整備しないことには話にならない。いかに建設資金を調達するか、阿部社長は金融機関に相談するものの、どこからも色よい返事はこなかった。無借金経営で、それまで金融機関との取引がほとんどなかったことも要因した。取引先から勧められて、国の震災地域を対象とした第5次「中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業」の認定を申請するも、あえなく不採択に。途方に暮れる阿部社長に、金融機関から中小機構を紹介された。昨年8月のことである。「藁をもつかむ思いで、すぐに東北本部に電話した」。震災復興支援アドバイザーの存在をここで初めて知ることになる。相談を受けた中小機構の藤原勉アドバイザーは、「工場を再開したい。何とか資金繰りの道筋を」と訴える阿部社長の熱意を感じながらも、売上高の10倍近い6億円を超える資金調達計画自体にムリがあることを冷静に受け止めていた。

現状課題の見える化と経営革新計画の策定

阿部清社長と夫人の弘子取締役
「産廃のリサイクル処理で地域農家のニーズにも貢献したい」と語る阿部清社長と夫人の弘子取締役
 リサイクル処理施設の建設には、相応の資金が必要なことは十分理解していた藤原アドバイザーが提案したのは、「建設コストを圧縮した上で、事業計画の再構築を練り上げる」であった。産業廃棄物の収集・加工・リサイクルの業務の流れ、事業の強み・弱み、市場動向など外部環境と知的資産を含めた経営ビジョンの作成と実現への取り組みなど、阿部社長と徹底して議論した。
 これら現状、課題を「見える化」させ、木くず、もみ殻を入れて発酵させる従来の処理方式を、木くずなどが不要な高い処理能力を有する新方式の処理施設への変更を盛り込んだ経営革新計画を策定、改めて金融機関との交渉に臨んだ。結果、「今までの実績に加え、万全な事業計画の作成がポイント」(阿部社長)となり、ついに地元有力金融機関の承諾を取り付ける。同時に第6次グループ補助事業もアドバイザーの支援で申請、県の認定を受け「当初計画を一気に実施できる」見通しになった。新工場建設にあわせ、地域企業からは廃棄物処理の要請が舞い込み、中には大手企業の社長名で発注書が寄せられるケースも。工場完成当初は1日16トン、半年後に同32トン、1年後には同70〜80トンの廃棄物処理を実働させる計画だ。
 「ニーズは確実にある。会社を軌道に乗せ、有機肥料を地域の農業に提供できるよう貢献したい」と語る阿部社長、事業承継の意思を固めた21歳と18歳の二人の息子が共に経営に参画する“夢”の実現も、もうすぐそこまで来ている。

 

「見える化」へ的確なアドバイスを

震災復興支援アドバイザー 藤原 勉 氏

 金融機関を経て、昨年4月から中小機構東北本部に経営支援および震災復興支援アドバイザーとして就任し、これまで十数社に対し補助金申請などを含めアドバイスしてきました。その際に心がけているのは、相手企業の経営実態をきちんと把握することです。時間をかけて調べ、何が問題なのか課題として整理し、数値として「見える化」する。それに基づき、企業にアドバイスするようにしています。金融機関の出身ということもあるのでしょうが、財務分析をしっかりやり、企業に事業計画の提案を行うのがアドバイスのやり方です。
 阿武隈環境さんの場合は、設備が何もないところから資金調達をしなければならず、困難を極めました。それでもキーワードは事業の強み、弱みを含めた「見える化」です。社長自ら金融機関と交渉できる資料の作成を支援するとともに、事業規模に合わせたアドバイスを適時に行うことだと思っています。
 廃棄物のリサイクル処理は、市場環境としては追い風です。その意味では、最新の設備で事業を再開することになる阿武隈環境さんの今後には、大いに期待を寄せています。相談に来られた中小企業を、成長軌道に乗せてあげることが私の使命だと肝に銘じているところです。
中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成25年2月15日発行 第1090号

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