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麹専門店103年の看板守る(島津麹店・宮城県石巻市)

復興へのシナリオ 被災中小事業者の挑戦と震災復興支援アドバイザー
島津麹店
【事業内容】 麹関連商品の製造販売
 

アドバイザーとの出会い

 「石巻圏域(石巻市、東松島市、女川町)唯一最後の麹専門店創業103年の看板を降ろすのは残念すぎる」というのが、佐藤憲光代表(62歳)の復興の決意だった。
 3・11東日本大震災の大津波で店舗住居・工場・倉庫が大規模半壊の被害を受けた。このため、一度は事業再建をあきらめた後継者にかわって、同店の娘婿にあたる佐藤代表が「何とか再建する方法はないか」と再建の道を探っていた矢先、紹介されたのが中小機構の震災復興支援アドバイザー制度。早速申し込み、中小機構東北本部を通じて派遣されたのが西村哲雄・震災復興支援アドバイザー(AD)で、6月19日初面談した。

休業となってしまった麹専門店を守るため

佐藤憲光代表と佐藤光弘氏の親子
石巻圏唯一最後となった麹製造販売所の看板を守ろうと立ち上がった「島津麹店」の佐藤憲光代表(左)と佐藤光弘氏の親子
 佐藤代表は、石巻市の隣町・女川町で不動産の登記測量事務所を開業していたが、自宅・事務所が津波で流された被災者。妻の実家で、義母(3代目)と孫(4代目)が継いでいた島津麹店の繁忙期(秋から春)には、麹の仕込みを手伝うのが毎年の恒例となっていた。しかし、義兄が若くして亡くなったことに加え、9年前の火災と今回の震災で2度の危機に見舞われことで4代目後継者が復興を断念した後、1年の休業を経て、今年4月から店舗を改修、残された設備で細々と麹づくりを独りで再開した。そうした父親の姿も見て、地元の高校、大学を卒業して自動ドア会社に就職、福島支店(郡山市)に勤務していた息子さんの佐藤光弘氏(27歳)が、今年3月末に会社を辞め、事業再興に参加した。母親の実家・麹店復興を父親と2人で取り組むことになった。佐藤代表にとっては、願ってもない助っ人の登場だったが、息子さんにとって、「麹店の復興は、ふるさと石巻の復興」そのものであったようだ。だから、「今は麹づくりの見習い中です」と言葉少なに語るが、復興にかける決意は誰よりも固い。

伝統を守り、「麹ブーム」も追い風に

伊達の華糀
島津麹店の代表的商品である「伊達の華糀」
 東日本大震災では最大の被害を出した石巻だが「麹」との関係は深い。江戸時代に、伊達政宗公の命で、北上川改修と新田開発・治水工事が行われ北上川河口は、米穀集積基地の役割を果たし、米の食文化が育った。島津麹店は、近隣の農家から委託を受けて生糀づくりと麹と大豆を合わせた“仕込み味噌”を始めたのが創業という。
 この伝統を守り、宮城県産のササニシキの米麹菌、宮城県内産ミヤギシロメ大豆を原料に、塩は徳島県鳴門の粗塩(天然海水塩)を使用するなど100%国産原料を使用した伝統の麹づくりを守り、生糀、甘酒、潮こうじ、赤・白味噌など6品目の製造を再開した。
 このうち甘酒「伊達の華糀」(商品名)は、麹から作り出される自然の甘さが特徴で、販路拡大とスイーツなど新商品開発が期待されている。折から「麹ブーム」が追い風となり、全国展開も夢ではない。

復興支援に頼らない新たなビジネスを創る

 しかし、西村ADは、「何よりも生産設備を確立、安定した生産体制のもとで市場をにらんだ事業計画を着実に進めることが重要」と強調している。復興支援事業を通じて、海外からの引き合いも寄せられているが、「慎重な対応」を求めている。佐藤代表も、「復旧しながら着実な復興をめざしたい」と復興事業計画に基づいた事業を着実に実施する方針だ。
 「麹づくりは、熟練した職人の技が求められる難しい仕事」でもある。宮城県内産の米と大豆を原料にした県内産オリジナル麹・麹製品を守るためには、新たな生産体制および販売体制の構築が欠かせない。そうした中、地元企業とのコラボによる新商品開発の話も各方面から寄せられている。
 麹ブームで、大手食品メーカーが麹市場に進出、麹商戦は加熱しているが、半面、その市場規模は、急拡大している。江戸時代からの米文化のある石巻で生まれ、県内産原料にこだわった麹と麹製品として「石巻ブランド」あるいは「宮城ブランド」として息の長い商品づくりをめざした商品化がカギを握ることになるのに加えて、「復興支援に頼らない、新たなビジネスを創ることが重要である」と佐藤代表は断言する。
 生産設備が整備され、本格的な製造ラインが完成して、フル生産体制ができるのは来年春になるという。「100年を超える麹専門店の看板を守る挑戦」も本番を迎えることになる。

 

“復興特需”に頼らない商品づくり

震災復興支援アドバイザー 西村哲雄

震災復興支援アドバイザー 西村哲雄 氏

 生まれは東京。17年前に東北支店長として赴任以来、杜の都・仙台が気に入り定年退職後も、IT(情報技術)コンサルタント会社を4年前に立ち上げ仙台に住み続けている。同時に中小機構東北本部の経営支援アドバイザーとして「窓口相談」業務を月2回こなしている。IT専門家ということでCIO育成支援アドバイザーも兼務している。
 震災復興支援アドバイザーは、昨年5月の発足と同時に就任した。被災企業からの相談を受けたほか、岩手、宮城、福島の被災3県で延べ22件の復興事業計画策定支援を手がけた。島津麹店の支援はその1社である。震災で一度は、復興を断念したが、娘婿の佐藤憲光氏が「何とか再興したい」と事業再興を模索し、知人を頼りに中小機構に支援を申し出た。大津波で被災した店舗と工場(生産設備)の復旧には資金が必要で、そのため事業計画策定が欠かせないことから事業計画策定から着手した。
 事業計画策定で最も重要視したのは、持論である経営の3M(人=マン、物=マテリアル、金=マネー)とC(カスタマー=顧客)をプラスした「3M+C」であった。行動計画では、販売計画がポイントで、「震災特需」に頼らない商品づくりが課題となる。
 このため、地元の食品企業とのコラボレーションによる新商品開発など「石巻ブランド」による長期視点に立った商品・市場戦略を提案している。今後、本格的な事業展開に合わせて専門家派遣などの経営支援を継続する予定です。
中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成24年12月1日発行 第1085号

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