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復興プロジェクトで“花”咲かせる(浜風商店街・福島県いわき市)

復興へのシナリオ 被災中小事業者の挑戦と震災復興支援アドバイザー
浜風商店街
(仮設施設整備事業により建設)
 

仮設整備の先陣を切って着工した商店街

浜風商店街
視察・見学者など多くの人が訪れる「浜風商店街」
 「浜風商店街」はいま“活気”に溢れている。全国から毎日のようにバスを連ねて視察団体が訪れ、「復興に協力したい」「何かお手伝いできることはないか」と入居する商店主に励ましの声を掛け、買い物をしていく姿が後を絶たない。
 中小機構が東日本大震災の被災地で建設を進める「仮設施設整備事業」のトップを切って福島県いわき市に昨年6月着工した話題性もあり、マスコミなどの注目を集め、9月3日のオープン時からこの状態が続いている。北海道から沖縄までまさに全国の人々が訪問、すでに今年11月過ぎまで視察・見学の予約で埋まる盛況ぶりに、久之浜町商工会の経営指導員、根本信一さんも驚きの表情を隠せない。

商店を望む住民の思いが市・町・商工会を動かした

 東日本大震災による津波は、いわき市久之浜地区をのみ込み、およそ800メートルの間に点在していた40の商店は流出、同時に発生した火災と相まって壊滅的な被害をもたらした。久之浜町で「シューズショップさいとう」を2代目として受け継いだ斉藤洋子さんは、その光景を目の当たりにし、「もう商売は終わったと率直に思った」と当時を振り返る。「命が助かっただけでも有難い」「久之浜地区での店舗再開は叶わぬ夢」との思いは久之浜町商工会も共通の認識で、根本さんが「いわき市に他地区での空き店舗の照会を要請した」のも当然の成り行きだった。
 ところが、被災した住民が徐々に久之浜地区に戻りはじめ、震災後ひと月経ったころには「商店がないのは不便。ここで暮らしていくためにも商店をつくってほしい」との要望が強まることになる。この声が市、町、商工会を動かし、5月上旬には行政、学校職員、PTAの了解を一気に取り付けて、久之浜第一小学校の校庭の一角に仮設店舗・事務所を建設する運びとなった。「浜風商店街」と名付けたこの仮設店舗・事務所は12区画の規模で、津波被害が激しかった食料品、電気製品、生活用品などの小売りや理容業、飲食業、建築設計業など9業種の店舗が入居、久之浜町商工会もここを活動拠点にしている。

商品にストーリー性を持たせる

 オープン当初から訪れる多くの視察・見学者に対し、記念となるオリジナル商品を販売したいという機運が高まり、久之浜町商工会が商品開発のアドバイスを中小機構東北本部に要請、震災復興支援アドバイザー(AD)として派遣されたのが柳沼芳裕ADだ。
 柳沼ADがまず指摘したのが「浜風商店街には売るものがない」こと。放射線の風評被害がなかなか消えない久之浜地区では、海産物の販売も思うに任せず、商店街としての特徴ある商品を訪れる人たちに提供することができない状況の中で、柳沼ADは特色のある商品開発を進める方法を商店主に提言した。キーワードは「商品にストーリー性を持たせる」。そこで誕生したのが「浜風商店街“復興の花を咲かせよう”プロジェクト」である。

花の種がつなぐ素敵な取り組み

根本信一さんと斉藤洋子さん
花の種パッケージを手にする久之浜町商工会の根本信一指導員(右)と商店主の斉藤洋子さん
 鉢付きの花の種を手づくりの布製バッグにパッケージした商品を開発、1個1250円で販売した。なでしこ、ポピーなど5種類の花の種があり、咲かせた花を今後毎年行う3月11日の鎮魂のイベントに持ち寄ってもらうという趣向だ。
 「復興に協力したいという人たちの願いを生かすことや、再びこの商店街に来ていただく」(柳沼AD)のが同プロジェクトの狙いである。
 斉藤さんはこのアイデアに共感、布製バッグを提案するなどプロジェクトの推進役になる。「私たちが最初に考えた商品はストラップやお饅頭など。咲かせた花を持ち寄るなんて発想は全くなかった。素晴らしいアドバイスでした」と述懐する。今年7月に発売、「わずか10日ほどで320個が売れた」(根本さん)と手ごたえも十分に感じている。
 柳沼ADは「あれだけの被害を受けたのに、久之浜地区の人たちはとにかく明るくて元気。町を復興させようという意気込みがその分強いのだと思う」と語る。浜風商店街の、久之浜地区の復興の追い風としての役割に期待もいっそう高まっている

 

「50の教訓」のCDを作成

震災復興支援アドバイザー 柳沼芳裕

震災復興支援アドバイザー 柳沼 芳裕 氏

 平成12年から中小機構東北本部の経営アドバイザーとして携わり、窓口相談や専門家派遣などの支援業務を行ってきました。昨年4月、中小機構の「中小企業震災復興・原子力災害対策経営支援センター福島」が福島市に設置されたのを契機に、現在は同センターを拠点として宮城、岩手、福島県を中心に被災中小企業の経営支援活動をしています。
 「浜風商店街」に関しては、久之浜町商工会の経営指導員から相談を持ちかけられたのがきっかけ。この仮設商店街は、震災後わずか6カ月で開業しただけに、復興のシンボルとして全国の注目を集め、オープン当初から買い物客や視察に訪れる人たちであふれかえった。ただ、せっかく来てくれたお客様に特に売るものがない。記念のプレートやストラップなどが考えられていましたが、伝わるものがないのです。訪れた人たちはモノが欲しいわけではなく、応援したい気持ちをモノに込めたいわけです。そこで単にモノではなく、「復興に参加している」というストーリー性のある商品を提供したらどうか、というのが私のアドバイスでした。そして生まれたのが「“復興の花を咲かせよう”プロジェクト」です。着実に浸透しているようで嬉しいですね。
 復興支援でいえば、原発事故による直接または風評被害を受けている福島県はやはり特別です。相談を受けても答えが出せない。それでも粘り強く経営支援を継続していくために、コンサルタント仲間が集まり「東北のちからこぶ」を創設し、「東日本大震災からの50の教訓」というCDを作成しました。ネットからもダウンロードできます。
 ともかく、極めて厳しい経営環境の中で頑張っている中小企業者のお役にたてるよう、今後も精一杯応援していくつもりです。
中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成24年10月15日発行 第1082号

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