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永続的発展の礎築くチャンスに(コバテック・福島県本宮市)

復興へのシナリオ 被災中小事業者の挑戦と震災復興支援アドバイザー
コバテック
【事業内容】 プラスチック製品一貫生産 等
 

放射能による風評被害が経営を直撃

 福島県中通りの中心都市・郡山市に隣接した本宮市に本拠地を構える「コバテック」は、塗装・印刷を得意とするプラスチック加工一貫メーカー。小林清三社長(65歳)が、昭和45年に「小林工芸」として創業した。主な納入先は、カルソニックカンセイ、山形カシオ、タカギセイコーなどの電機・電子、自動車部品メーカーと幅広い。
 3.11東日本大震災では、本社工場の壁が落下やガラス破損、工場内空調ダクトが脱落するなどの被害があったが比較的軽微で、翌週の月曜日は、通常通りラインを動かすことができた。しかし、震災による影響は、大きかった。まず震災直後には、材料、燃料確保が難しく生産に影響が出た。さらに震災による急激な需要落ち込みと東京電力福島第1原子力発電所事故による放射能の影響や“風評被害”での取引停止が経営を直撃、「売り上げが大幅に減収」となった。「リーマンショック以降、不利な状況にあったが、震災の影響で、さらに輪をかけて企業環境が悪化した」と小林社長は、当時を振り返る。

メーンバンクに経営改善計画の策定を求められて

コバテック本社工場
コバテック本社工場
 コバテック本社工場は、小高い丘の上に建ち、眼下に安達太良山麓が広がる自然の中に立地し、社員の殆んどが地元出身という家族的な企業。創業者である小林社長はじめ社員全員が安住の地と考えていた同地も福島第1原発から直線で約50キロメートルの距離にあり、放射能・風評被害の影響は予想以上に深刻だった。
 しかし震災から1年後、円高と震災のダブルパンチを受けて経営が苦境に見舞われる中、タイの洪水による特需が殺到、売り上げが急増したのである。もちろん一時的な好況であることに変わりなく、メーンバンクの福島銀行からは、経営改善計画策定を求められた。「自社で策定できないのであれば…」と紹介されたのが、中小機構の震災復興支援アドバイザー(AD)。今年3月のことであった。

6ヶ月間のアドバイザー派遣で、売上は大幅にアップ

シートダイヤルの印刷工程
シートダイヤルの印刷工程
 中小機構東北本部から派遣された藤川完治ADは、小林社長、同社スタッフからヒアリングを行い、震災復興支援は、「経営管理および全社的な生産効率を向上させ経営体力強化」を目標に決めた。
 具体的には、「震災後顕在化した生産性の課題の検討と実行に必要な月次行動計画の作成」「計数管理による事業計画策定および実行」支援と「業務改善推進(現場活性化)」支援では、5S活動(整理、整頓、清潔、清掃、しつけ)を中心とした計画を実行、6カ間支援された。この結果、今9月期は、売上高15億円と前期の13億6000万円から大幅に伸び、利益も3期ぶりに黒字を計上する見込みとなった。この業績急回復は、タイの洪水による被害で、国内の需要が急増したことに加えて、スマートフォンの新機種の受注獲得や特需もあり売り上げは急増した。藤川ADは、「追い風に乗って、我々が提案してきたことを実施し、成果をあげた」と評価している。

受けたアドバイスを今後も活かし

検査工程
検査工程(工具顕微鏡での測定および検査)
 もちろん“特需”はあくまで特需。「すでにタイの水害による特需は終わり、携帯電話の新機種注文もやがては終わる。震災の影響は、復興対策もあり何とか乗り切ることができた。しかし、円高による影響は今後も続く」と小林社長は強調する。
 「今回の支援の話は、銀行の紹介もあり、企業環境が悪化する状況にあったこともあり、この乗り切りと永続的な企業の発展の基礎を築くチャンスでもあり、中小機構に支援をお願いした」と語る。もっとも、「2年前に、私営のコンサルのアドバイスを6カ月受けたが、結果としてあまり身につかなかった」という経験もあるだけに、経営改善の必要性は、創業者である社長自身が誰よりも感じていた。
 だからこそ、「今回の機会で指導を受けたことを活かし切って、同業他社に負けない企業体質を築き、企業発展とお世話になっている従業員はじめ、関係者に報いたい」との決意を固めている。

 

PDCAシステムを基本に

震災復興支援アドバイザー 藤川完治

震災復興支援アドバイザー 藤川 完治 氏

 自動車部品メーカーのケーヒンを定年退職後、中小機構経営支援アドバイザーとなる。ケーヒンでは、品質畑が中心で40年のうち20年海外関係の仕事に携わった。とくに台湾と中国の現地法人は現地駐在と総経理や董事長として10年間勤務し、経営全般、工場全般の管理を担当、“品質管理のプロ”の経験が、「中小企業の経営支援」に生かされている。
 中小機構東北の経営支援アドバイザーに就任して4年。これまで東北各地の中小企業の経営支援を担当してきた。その際の基本となるのは、「PDCAシステム」。plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)を繰り返して実施、改善する管理手法で、「中小企業の経営改善には、効果を発揮した」と評価している。
 今回、震災復興支援ADとしてコバテックを担当した。同社は、震災で本社工場の一部を損壊したがその被害は軽微だったが、それ以上に深刻だったのが、震災後の受注減少と風評被害による売り上げ減少だった。支援は、今年3月から10回にわたり8月まで実施してきた。小林社長をはじめ同社スタッフと問題、課題の抽出からはじまり、5Sの活動、生産性向上、中期(来季)事業計画の作成など討議を繰り返し実行してきた。企業基盤の基礎部分の構築や意識向上の成果は残すことができた。今後も継続して中小機構を活用し、更に強固な企業体質にして欲しいと思います。
中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成24年10月1日発行 第1081号

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