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第4回 ここなら商店街(福島県楢葉町)

復興へさらなる前進 福島県

─町民帰還願い地元に貢献─

不安の中でスタート

ブイチェーン楢葉店の根本さん

ブイチェーン楢葉店の根本さん

 「お昼と夕方の来店客は思っていた以上。商品配達もしており、忙しい状態が続いています」
 こう話すのは、中小機構が整備した福島県楢葉町の仮設商業店舗「ここなら商店街」で、食品中心のスーパーチェーン「ブイチェーン楢葉店」を運営するネモトの根本茂樹代表取締役だ。商店街にはこのスーパーのほか、麺類中心の食堂「おらほ亭」、定食の「武ちゃん食堂」という3店舗が入居する。
 福島第一原子力発電所の事故によって、ほぼ全町が警戒区域に指定され、全町民避難となった楢葉町。現在でも3400世帯以上、7400人以上(今年1月末現在)の町民が避難生活を続け、主な役場機能もいわき市に移転している。一方で、平成24年に警戒区域から避難指示解除準備区域となったことで、昼間の出入りが可能となった。昨年6月には元の町役場に「帰町準備室」が置かれて一部業務を再開。4月からは準備宿泊が始まるなど復興に向けた取り組みが進んでいる。
 「ここなら商店街」は、一時帰宅した住民に必要な施設として楢葉町が計画したもので、昨年7月末にオープンした。しかし、その時点では町民は全く戻っておらず、不安の中でのスタートとなった。
 根本さんは震災前、楢葉町で2つの駅前でスーパーを運営していたが、震災後はいわき市の仮設住宅内と楢葉町内のJヴィレッジ内の2つの仮店舗に縮小。そんなときに町から仮設商店街への出店を勧められた。「スーパーは出店する場合、500メートル圏内に何人住んでいるかで判断しますが、目の前の国道6号線を通る人がどれだけ入店してくれるか不安はありました」と打ち明けるが、「古里の復興に黙っていられなくて、応援してくれる人もいたので出店を決めました」という。
 実際に営業を始めると、作業現場から最も近くの店舗という立地もあって、除染や原発の廃炉作業に携わる人が大勢、来店している。 ネモトの従業員は震災前の45人から23人に減ったが、楢葉店には「地元で働きたいという人が多いので、できるだけ働く場所を提供したい。この人員で何とか頑張りたい」と意気込む。

「私たちにはこの仕事しかない」

武ちゃん食堂の佐藤さん夫妻(左)、おらほ亭の横田さん

武ちゃん食堂の佐藤さん夫妻(左)、おらほ亭の横田さん

  「地元に戻って商売をしたい」という気持ちは、武ちゃん食堂の佐藤茂樹さん、美由紀さん夫妻、おらほ亭の横田峰男さんも同じだ。
 佐藤さん夫妻は震災前、町内の竜田駅前で先代から数えて約40年間営業していた。一日でも早く食堂を再開しようと、避難先のいわき市で店舗を探してもいたが、やはり古里・楢葉でとの思いが固まったときに、仮設店舗への誘いがあったという。住民もいない、原発関連の作業員もいつまでいるかという不安もあったが、「これまで店を続けられたのは地元の人のおかげ。その地元の人に恩返しをしたい。楢葉のために頑張っている作業員のお役にも立ちたい」(美由紀さん)と思い、出店を決めた。
 来店客は作業員がほとんどだが、「避難先から3、4時間かけて食べにきてくれる地元の人もいます。私たちにはこの仕事しかないと思っています」(同)。
 一方、食料品販売店を経営していた横田さんは、いわき市に避難。同市内で事業再開した時に、仮設店舗への入居の誘いを受ける。「作業員の方が早く食べられて、残りの昼休み時間をゆっくりできるよう、そばやうどんを提供したい」と考えて出店。「採算は悲観的に考えていたが、想定していた2・5倍の来客数」という。現在では定食もメニューに加えており、「半分以上はリピーターです」と順調な様子。

古里への思いが支え

  楢葉町では昨年から今年にかけて、竜田駅までJR常磐線が運行再開、中学校の新校舎完成など、町民帰還に向けて復興への槌音が確実に響いている。ただ、この3店に共通する悩みはある。「仮設」のため、いずれは移転せざるを得ないことと、今後、町民がどの程度戻るかが分からないことだ。復興庁が昨年11月に公表した福島県の避難住民に対する将来の帰還意向調査によれば、楢葉町の場合、「すぐに戻る」と「条件が整えば戻る」が合わせて45・7%に対し、「今はまだ判断できない」と「戻らない」が53・4%と、半分を超えた。
 加えて、現在の主な顧客となっている原発関連の作業員が今後、どう変動するかも予測しづらく、「いつまでお客さんでいてくれるか」(佐藤美由紀さん)という不安も拭えない。
 それでも「住民が戻れば、(生活用品を販売する)インフラは必要」(根本さん)、「うちの看板を見てホッとするという地元の人もいて、勇気づけられます。地元の人の心の支えになれればと考えてやっていきます」(佐藤美由紀さん)、「楢葉がどんな風に変わっていくかを知りたい。これまでの経験を生かし、今後も何らかの形で楢葉と関わっていきます」(横田さん)と、町の再生を願う気持ちは共通する。
 町民の帰還を願い、古里を思う気持ちが、楢葉町の着実な復興を支えていくに違いない。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成27年4月15日発行 第1142号

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