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第2回 岩手県(高田自動車学校、岩手県栽培漁業協会)

復興へさらなる前進 岩手県

高田自動車学校(岩手県陸前高田市)

高田自動車学校の田村滿代表取締役社長

500人の雇用創出へ
 「まだ1合目を少し超えた程度でしょうね」
 岩手県中小企業家同友会代表理事で、陸前高田市など岩手県内3カ所で自動車教習所を経営する高田自動車学校の田村滿代表取締役社長(写真左)に復興の進捗度合いを尋ねると、こんな答えが返ってきた。
 陸前高田市には仮設住宅入居者がまだ4428人いる。岩手県全体では2万8511人(今年1月末時点)だ。まず、この人たちの生活を安定させることが先決と考えるからだ。「中小機構が中小企業のために仮設施設を建ててきたのも、それを核にして住民の生活を取り戻してもらうのが目的ですからね」。
 3・11で、陸前高田市の教習所は天井落下などの被害を受けたが、高台にあるため津波は逃れた。全国の中小企業家同友会から救援物資が送られてきたのをきっかけに、震災直後から近隣の避難所への物資補給基地として機能。警察や自衛隊が宿泊する拠点ともなった。「みんなを安心させたい」と、40日後には営業を再開。ボランティア組織の支援を受けて重機免許を取得する生徒も受け入れ、雇用創出にもひと役買った。
 田村社長は一方で、震災から半年後に、岩手県中小企業家同友会気仙支部の仲間らと起業家育成と仕事づくりを目的とする「なつかしい未来創造株式会社」を設立。社長として奔走しており、昨年10月には陸前高田市に宿泊・滞在施設「箱根山テラス」をオープンした。現在、38人の起業家を育成中で、「この地に500人の雇用を生み出す」ことを目標としている。

中小企業仲間とまちづくり
 隣接する大船渡市では最近、大船渡駅周辺地区のまちづくり計画が始動している。田村社長らのグループは、その一角を利用して障がい者雇用にも取り組んでいくことを検討しているのだという。
 ただ、肝心の教習所のほうは受講生徒数が震災前の水準を下回ったままだ。地元からの顧客は徐々に増えてきているが、メーンの宿泊型の顧客が低迷している。宿泊型の顧客は従来、教習所内の合宿所のほかに近隣の旅館など外部の施設も利用していたが、それらが復旧できていないためだという。
 そんな田村社長にとって、とくに、多くの被災企業が従業員の解雇を余儀なくされ、それが今、人手不足となって跳ね返っていることが残念でたまらない様子。「2000万円の無担保・無保証・無利子融資があれば、たいていの企業は解雇しなくて済んだはずだ。中小企業がなくなったら大企業も困る。次の災害に備えて、大企業が1億円ずつ出し合い、基金を作ってはどうか」と提案する。

岩手県栽培漁業協会(岩手県大船渡市)

岩手県栽培漁業協会の坂本晋専務理事

事業計画書を策定
 岩手県内の漁業組合と沿岸自治体が加入する岩手県栽培漁業協会はアワビ、ウニ、ヒラメなどの種苗(稚魚、稚貝)を生産してきたが、東日本大震災で大船渡市、大槌町、洋野町の3カ所にあった事業所がすべて壊滅し、飼育していた種苗も流失してしまった。だが、栽培施設の所有者である県がいち早く再建を決定したことから、一昨年の3月に洋野町の種市事業所、同9月に大船渡市の本所の施設が復旧。この2カ所で運営していくことにし、本格的に種苗生産を再開している。
 平成26年度はアワビ150万個、ウニ320万個、アユ3000キログラムなどを生産。漁業協同組合を通じて無事、放流された。 「種苗生産は卵を産ませるところから始めるので、いったん途切れると再開するのが大変なんです」。坂本晋専務理事(写真右)は安堵の表情を見せる。3・11の時は、県の職員として釜石市の合同庁舎にいたという。
 種苗生産は再開したものの、平成26年度までは県の委託事業という形で補助金が出ている。しかし、新年度となる今年は補助金が終了する予定で、自助努力での運営を強いられる。
 そこで、同協会は中小機構の震災復興支援アドバイザー制度を活用、昨年7月まで数回にわたる助言を受けながら20年後までの数値計画を盛り込んだ「事業計画書」を作成した。

アドバイザー制度で経営力強化
 この際、従来採用していた社団法人財務会計様式を変動損益計算方式の管理会計に組み替えたという。売上高と費用の関係をより明確に把握できるようにするためだ。
 また、同計画を実現するための行動計画や運転資金を調達する際に金融機関に説明するための借入金調達・返済シミュレーション資料も作成した。
 種苗生産では重油を大量に消費する。海水をボイラーで温めてから水槽に供給するためで、とくにアワビは冬から春の海水温が低下する時期に加温飼育する必要がある。この重油代金がコストを押し上げる要因となっている。そこで、アドバイザーの助言を受けて、省エネルギーセンターの省エネ診断も受けた。
 坂本専務はアドバイザー制度について、「事業の強みと弱みが明確になり、省エネのポイントも分かったので、本当にありがたかった」と強調。「岩手の漁業を支えるために頑張ります」と、原油価格下落という追い風もあり、新年度からの運営に自信を見せる。
 ただし、やはり人手不足が悩みだそうで、「募集をかけても、なかなか応募する人がいない」と漏らした。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成27年3月15日発行 第1140号

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