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第1回 宮城県(寒梅酒造、大阪印刷インキ製造東北工場)

復興へさらなる前進

寒梅酒造(宮城県大崎市)

寒梅酒造の岩崎氏

中小機構支援先ブースで「女性もターゲットにしたい」と話す寒梅酒造の岩崎氏

震災前を超える
 「震災前の年間醸造量は250石(1石は1・8リットル瓶入り換算で100本)だったが、現在は400石まで増えてきた」
 2月8日、仙台市内のホテルで開かれた「新しい東北」官民連携推進協議会会員交流会の中小機構支援先出展ブースでこう話すのは、合名会社「寒梅酒造」代表社員の岩崎隆聡氏だ。
 同社は大正7(1918)年、大崎市の地主が地域のコメを厳選して清酒の醸造を始めた歴史を持つ。戦争により醸造は中断したが、昭和31年に再開。40年代からは「宮城県で当社だけ」(岩崎氏)という酒米の自社栽培にこだわり、「宮寒梅」をはじめとした銘酒を製造、愛好家に親しまれていた。
 4年前の3月11日、大崎市を震度6強の揺れが襲った。同市は内陸部のため津波こそなかったものの、酒蔵や冷蔵庫なども壊れ、「4万本あった製品のうち、無事だったのは6000本」(同)という状態。それでも岩崎氏はひるまなかった。3月中には再建を決意。その年の年末には新しい酒造設備が整った。

「絆」で復活、新事業にも挑戦
 岩崎氏がすぐに復興を決意したのは、2つの要因からだ。一つは、インターネットの動画サイトなどで被災や復旧状況などを掲載したところ、在庫への注文が相次ぎ、「10月ごろには商品がゼロとなる」など、改めて消費者との絆の強さを感じた。もう一つは、県の酒造組合が県下の酒蔵単位で国のグループ補助金(中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業)を申請し、認定されたことだ。同補助金は中小企業の場合、復旧費用の4分の3の支援が受けられる。
 寒梅酒造は、新しい酒蔵に冷房設備も付け加えた。日本酒の仕込みは温度が上がるとできないため従来は冬季に仕込んでいたが、冷房設備により「真夏を除いて仕込めるようになった」。
 岩崎氏は“新酒”にも取り組み始めた。リキュールだ。国のものづくり補助金を受け、昨年7月には第1弾として、ゆず酒「陽のしずく」を発売した。日本一の産地・高知県から有機栽培のゆずを調達した。「知名度も上がってきており、リピーターも増えている」という。
 「宮城県にはレベルの高い酒蔵が多い」という岩崎氏は、「大手以上のお酒をつくらないと売れない」と品質へのこだわりを貫く。現在は中小機構の震災復興アドバイザーから販売店管理や管理会計導入などで助言を受けている。「補助金やアドバイスは大変ありがたかった。日本酒の市場は依然として厳しいが、これからは海外販売も考え、将来的には年間2000石にしたい」と意気込む。

大阪印刷インキ製造 東北工場(仙台市宮城野区)

新技術で勝負
 同じブースには、仙台市宮城野区蒲生地区に東北工場を持つ大阪印刷インキ製造(大阪市平野区)などで構成する「仙台港蒲生地区色彩関連業復興支援グループ」も出展した。蒲生地区は海岸から約700メートルに位置し、主にグラビアインキを生産していた大阪印刷インキ東北工場も6メートル程度の津波で生産設備などが流された。幸い、13人の従業員は2階に避難し無事だったが、「壊滅的な打撃を受けた」(大石壽顧問)。
 同社は大阪府と三重県にも工場を持つため、「役員会で東北工場を廃止するという議論もあった」(同)という。だが地元の雇用を守るため、復興を支援するため、そして「会社の絆」として再建することを決めた。
 蒲生地区の6社がグループ補助金の認可を受け、大阪印刷インキは平成24年10月に製造を再開した。これを機に再建を加速しようと、新製品の量産工場とすることを決めた。新製品とは、「日本で初めて開発した」(加藤康伸取締役)というホログラム顔料のインキ化だ。ホログラムは光が波であるという性質を利用して、光の回析と干渉で3次元の色調を出す技術で、その技術は紙幣にも使われている。同社のインキは顔料から開発したため、従来の複数の層を重ねたホログラム箔では困難だった3次元曲面やグラデーションなどの表現が印刷で可能となった。

大阪印刷インキの大石顧問(左)と加藤取締役

アプローチライトと並ぶ大阪印刷インキの大石顧問(左)と加藤取締役

グループ補助金活用 東北の底力見せる
 このインキについては、中小機構近畿本部の販路開拓支援を受けて需要先を開拓中だ。いま期待をかけているのが、蒲生地区6社が得意技術を持ち寄って開発した「復興の灯り」「ソーラーLEDアプローチライト」。いずれも太陽電池と高輝度LEDなどを利用。ホログラム技術で独特の光を放つ。復興の灯りはモニュメント用、アプローチライトは公園や庭園など向けだ。出版不況などでインキ市場も現状は苦しいが、「ホログラム技術により、化粧品や内装などの新しい需要も開拓したい」(大石顧問)と将来を見つめる。
 官民連携協議会の会員交流会に出席した竹下亘復興大臣は参加者に対し、「東北の底力、日本の底力を全国、世界に発信してほしい」と挨拶した。経営を揺るがすような打撃を受けながら、震災直後に復興を決めた両社に底力を見た思いがした。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成27年3月1日発行 第1139号

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