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第2回 上海で成功した内販型日系中小企業

 中国の市場では、江崎グリコ、サントリー、花王など大手メーカーの商品が目に付くが、内販型中小企業の実態は把握しにくいのが現状である。近年、上海で急激な成長を遂げる内販型日系中小企業の事業展開を追う。

――上海に進出する日系中小企業

 中国対外貿易経済合作部によれば、上海進出日系企業数は累計で約3,000である。そのうち、中小企業の数は明確でないが、近年、日系中小企業の対中進出が増えている。 「中小企業総合事業団が実施する「中小企業国際化支援アドバイス」の相談実績を見ても、2001年度の相談案件1,103件のうち実に620件が中国案件であり、2000年度(258件)の2.4倍となっている。当センターへの日本からの来訪者の多くは中小企業者で、進出ラッシュがうかがえる。
 中国に進出した日系企業の全体像は、同事業団が今年3月に報告した「海外展開中小企業実態調査」および中小企業金融公庫発表の「第2回中国進出中小企業の実態調査」(2001年11月)から明らかである。中国進出のおよそ6割の中小企業が単年度黒字化を果たしているほか、進出企業の過半数は日本への全量輸出の「持ち帰り型」で、内販型の企業はそれほど多くない。


 同公庫の販売先に関する調査では、「日本本社向け」と回答する企業が52%、「現地日系企業向け」が18%、「中国の地場企業向け」が12%となっている。中国市場向けでは、大手セットメーカーに部品などを供給する企業が多く、中国人消費者を対象とした販売に従事する中小企業はいまだに少ない。

――上海で活躍する内販型日系中小企業

 こうした中、まだ数は少ないが上海を中心とした市場で積極的に内販事業を手掛ける日系中小企業の姿も見受けられる。
 まず、繊維製品製造卸小売業での内野(本社:東京)。93年に上海内野毛巾有限公司を設立した。現地従業員は1,300人で、タオルおよび関連商品を製造し、上海太平洋百貨などのデパートを中心に高級品として販売を行う。品質が良いとの消費者評価を受け業績を伸ばしている。
 メガネフレームを製造する野尻眼鏡工業(福井県鯖江市)は、89年に上海に進出以来、3法人を設立した。メタルフレームを中心にフレームを製造販売し、近年はチタン素材の高級フレームを売り込んでいる。
 コンピュータソフトウェアの開発企業ティアンドティー(神奈川県横浜市)は、94年に華東師範大学・上海対外経済技術合作公司と合弁で、上海担思計算機系統有限公司を設立。上海でも屈指の優秀な大学の学生を活用して物流や生産管理関連のプログラム開発を行っている。
 婦人下着製造販売のダッチェス(神奈川県厚木市)は、92年5月に合弁会社の上海達吉斯高級内衣有限公司を設立。女性用の高級ブラジャー、ファンデーション、ランジェリーなど高級内衣の製造販売を行う。
 1923年(大正12年)創業のしにせ菓子メーカーの日清製菓(現社名はワールドフーズ:神奈川県横浜市)は、84年から中国に進出。菓子部門の国内生産を打ち切り、93年12月、上海に合弁会社(上海佳通日清食品有限公司)を設立。世界菓子博覧会「モンドセレクション」で金賞を受賞したビスケット(バターココナツ)を主力に、練乳、チョコレート類、キャラメルなどを製造販売してきた。上海現地法人はビスケットや半生ケーキなどの製造販売を行い生産量のおよそ7割を中国国内市場に出荷し、現在でも売れ行きは好調だ。
 さらに、ACアダプターや電源トランス製造・販売の上海美芝欧加電器有限公司(エムジーエイコーポレーション:大阪府富田林市)、広告代理・コマーシャル用映像の企画・制作を行う林氏創制公司(リンエンタープライズ:東京都目黒区)、システムコンサルティング、販売・受注管理データベースなど各種ソフトの開発、ホームページの制作の埃慕計算機技術(上海)有限公司(エムネット:大阪市北区)などがある。このほか、飲食店、コンサルティングなどサービスの分野では個人事業を含めた小規模企業も活躍している。

――内販に成功した秘けつ

 これらの企業はどのようにして上海で顧客を獲得したのだろうか。
 共通点は、第1に、上海での消費構造の変化に対応し、高所得者層またその下位層をターゲットとした商品を提供していることである。中国の多くの一般消費者は、「安かろう悪かろう」の商品で生活しているのが現実である。しかし、上海では、一人当たりGDPが4,500ドルを超え、消費の高度化と富裕層の高級品への購買欲求の高まりがみられる。価格は少し高めだが高級感のある日用品が好評を得ている。彼ら顧客に満足度の高い商品を提供し、商品・サービスの差別化を時代にうまく合致させている点がポイントだ。
 第2に、上海での内販に向けた周到な準備である。前述の企業の多くは、明確なビジョンの下、90年代初めに操業開始、早くから将来の中国市場をにらみ上海に拠点を構えてきた。当初は日本向けの生産に従事していたが、上海を対象とした商品・サービスの選択と経営資源の集中を図り、進出当初からマーケティング戦略を練ってきた。
 第3に、経営面で現地化と人材育成を積極的に進めていること。多くの企業は信頼できる中国人管理者を抱え、経営の多くを既に中国人スタッフに任せている。地場企業相手の販売やその与信管理などは日本人に到底できないからである。経営資源の乏しい中小企業の内販には、信頼できる中国人・企業と連携し経営資源を有効に活用することも大切である。
 しかし、失敗して撤退する中小企業が多いのも事実である。中小企業が独特の商習慣を持つ中国で成功を収めるのは並大抵ではない。中国に進出しさえすれば何とかなるといった甘い考えでは失敗するが、周到な準備と中国の経営資源を上手に活用すれば、ビッグチャンスが訪れることも確かであろう。