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8月 上海バンド付近のこと

 "上海"と言えば先ず思い浮かぶのが黄浦江沿い外灘(バンド)に偉容を誇る石造のヨーロッパ風建築群ではないでしょうか。これら前時代の遺物(オールド上海)と対岸の金茂大厦、東方明珠塔などに代表される近代高層建築群に挟まれた遊歩道一帯はこの上海でも際だって特殊な空間を構成しています。ご存知のとおり石造建築群の多くは今世紀初頭、中国史上混沌の時代に外国人によって租界建築として造営されたもの、そして一方、対岸の高層建築群は現代中国の底力、改革・開放の正にシンボルとして位置付けられるもの。いわば中国近現代史における相剋の構図ともいえるのです。しかし、それらを仰ぎ見る者にとって両者は互いに譲らず、存分の主張をしつつも互いを活かし合っています。水際に近いこの遊歩道に立ったとき、両者の間に渦巻く巨大な気の流れの様なものを感じるのは私だけでしょうか。北端の「黄浦公園」から南端の「十六舗」までだらだらと歩けば小一時間ほどもかかります。平日でも、この辺りは地方からの見物客や外国人観光客等で大変な賑わいをみせています。

上海海関―旧江海税関ビル

バンド沿いの石造建築物群(上海海関―旧江海税関ビル)

 イギリスの豪華客船「タイタニック号」の最後を描いた映画が話題を呼んだのはまだ記憶に新しいところです。レオナルド・デュカプリオ扮する貧乏画学生と気に染まぬ婚約者と共に海を渡る上流社会の麗しい女性との間に時ならずして芽生えた激しくも悲しい恋愛と沈み行く船上で展開される人間の愛憎劇に多くの観衆が魅了され胸を打たれました。ここ上海でも勿論、昨年ロードショウ封切り前には既に大変な話題になり、街中いたるところでポスター、Tシャツ等いわゆる「タイタニック」グッズが売られていました。面白かったのは、ほぼ封切りと同時にビデオテープやDVD(小型レーザーディスク)が市場に出回ったことです。日本では先ずあり得ないことなのですが、殆どすべてが違法に製造されたものなのです。製造方法は、試写会場にビデオカメラを持ち込んで、これで始めから終わりまでいとも簡単にものに出来るとのこと。私が見たものは、勿論内容はノーカット、中国語の字幕付きのものでしたが、途中何度か左右に横切る人影らしいものが画面をさえぎり、おまけに画面とはまったくそぐわない場面で観衆のものと思われる笑い声まで聞こえて来ました。

 話が横道にそれてしまいました。こちら上海ではその「タイタニック号」流行の熱が未だ醒めやらぬ観があります。というのも、この春先から黄浦江バンドの対岸に白亜の豪華客船がお目見えし、今や上海の新名所になっているのです。その名も「タイタニック号」ならぬ「オリアナ号」。正真正銘イギリス産の豪華客船です。総トン数41,920トン、80,000馬力、全長245.06メートル、全副30.48メートル、高さ16層51.21メートルの堂々たる船体です。1959年竣工。1960年12月、何とあの「タイタニック号」と同じ英国サウザンプトン港から進水就航しています。就役中の26年間650万キロを無事航海し、世界108都市を結び、40万人を超える紳士、淑女を運んで来ました。現役を退いてからは日本に売却され九州別府湾でいわゆる船の博物館として第二の人生(?)を送っていました。上海には今年の春節以降お目見えし、船の博物館機能はそのままに、デッキ上はビアガーデン、内部はレストラン、結婚式場、ディスコ、ミニ映画館等々大人も子供も楽しめる展開となっています。夕暮れとともに白い船体はオレンジ色と紫色にライトアップされデッキから上空に向けて3本のサーチライトが遊弋する光景は、同じようにライトアップされた対岸のバンドや浦東の高層ビル群と一帯となって新しい上海の夜に彩りを添えています。

オリアナ号(写真)の前で記念撮影

オリアナ号(写真)の前で記念撮影

 実は先週アシスタントと一緒に見学に行って参りました。あいにく平日の昼間でしたので来ていたのは老人の団体と子供ばかり。入場料60元は地元向け料金としてはちょっと高いと感じました。船内の博物館展示は日本当時のものがほぼそのまま残っている様子でした(ただしメンテナンスが不十分)。レストランは営業中でしたが心なしか閑散としていました。聞けば本格営業は夕方6時以降とのこと。ただ、ひとつ気になったことは、これは私のアシスタントが指摘したことなのですが、どうせなら黄浦江のバンド側に設置すべきだったのではないかということです。何故ならばこの船が"停泊している"浦東側に来るためには車で橋を渡るか隧道をくぐるかしなければならず、歩いて来ることは出来ないのです。しかもそれらの通行料が15元かかるというのは地元の一般客にとっては大きなネックだということです(艀(はしけ)なら8角という手もありますが…)。ま、いずれ採算を見込んでのことなのでしょう。

 それにしても夕暮れ時に美しいバンドの景色を眺めながら愛する人とタイタニック気分にひたってみるのも良いかも知れません。因みにこの「オリアナ号」船体は黄浦江上に浮いた形になっていますが、舷側部分が2ヶ所岸壁に固定されていますので沈没の心配はありませんし航海に出るにはやや時間がかかりそうです。

浦東陸家嘴の高層建築物群

浦東陸家嘴の高層建築物群