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4月 末端まで血が通わない?!

 先日、6月初旬に開催される「現地管理者セミナー」(主催/中小企業事業団)の事前調整のため山東省青島市に行って参りました。知り合いの中国人に「出張で青島に行くんだ」と話したところ「阿!那是個美麗的地方!」と羨ましがられ、仕事とはいえ、何やら期待に胸を膨らませて出発しました。が、案に相反して青島は、他の大都市の例にもれず都市再開発の真っ只中。ビルの建設現場や工事中の道路とともに街全体が土埃に包まれていました。しかし、青く輝く海と変化に富んだ海岸線間近にまで迫る緑深い山並み、そして港湾都市特有の海に向って落ちていく様な幾つもの坂で構成される旧市街地の家々のきまち色の屋根が映し出す青い空などを見ているうちに、なるほど、ここは美しい街だ、と条件も何もなくひとりごちたのでした。第一次大戦前まではドイツ租界があったところ。市内のインフラも殆どその当時整備されたものだということです。そんな目で見ると、何か中国離れした、南ヨーロッパあたりの海辺のリゾートという感じすらして来ます。現在、青島市は街の主要機能を旧市街地からやや東の方に移動しようとしています。土埃の主原因と見なされるメインストリートの工事も今年の秋いっぱいには終わる見通しとのことで、再開発がすべて完了した暁には、また一段と美しい街へと生まれ変わることでしょう。


 さて、この青島での事前調整の一環として現地日系企業経営者の方々の話をお伺いする機会があり、そこで思いがけず耳にしたのが「不動産税」の話でした。


 青島市は96年8月、市の対外開放の促進と三資企業の発展を図ることを目的に、同年4月1日に遡って、新たに青島市経済技術開発区、リゾート地区、保税区、ハイテク団地等に進出した企業の不動産に対し、竣工月から5年間、その他の地域でも3年間免税とする優遇措置を採る旨決定しました(1996年8月29日 青地税三[1996]30号)。ところが、今年3月、青島市地方税務局は突如として同優遇措置を取り消し98年1月に遡って徴税するとの通告を各企業にして来たのです。不動産税額は建屋原価の70%に1.2を乗じて算出されます。この1〜3年内に青島に進出した外資系企業にとっては正に寝耳に水の事態です。青島市日本人会の会員企業は現在140社あまり。会員企業以外にも多数の企業が進出しています。日本人会は、青島市長あて講義文を送り抵抗の意思を明らかにして来ました。


 それが効を奏したのでしょうか、私達は今回の事前調整で、青島市対外経済貿易委員会及び日本人会の方々を交えて会食をする機会に恵まれましたが、その席上、対外経済貿易委員会の幹部から「この度の徴税措置は皆様方からの抗議文の趣旨を汲み、市長からの働きかけで解消することになりました。」との発言があり、その場に居合わせた日本人一同は、期せず愁眉を開いたものでした。現地進出企業にとってはこの上ない喜びです。まともに徴税されれば経営計画も何も有ったものではありません。設立1〜3年ではまだ赤字を覚悟で操業しているところさえあるのです。私達は、あたかも幸運の使者になったかの様な晴れがましい気分で青島を後にしたのでした。


 ところが、数日して、日本人会から連絡があり、実は私達が青島を去った正にその日に、とある日系企業を地方税務局の役人が訪れ、通告に従い一週間以内に不動産税を納める様、念押しをされたと言うのです。そして、現在に至ってもなお青島市の「不動産税問題」は決着しておりません。


 この青島市地方税務局の一連の措置は、もともとはお隣の遼寧省地方税務局が「外資企業が工場等を新築した場合免税政策が適用になるか」との指示を中央に仰いだところ、国家税務総局側が1957年の国務院の判断等を基に適用出来ない旨回答したことに端を発しているらしいのですが、肝心の遼寧省ではその後、徴税等の目立った動きは無いとのことです。市の再開発等に相当の出費が見込まれる青島市だけが、同回答を奇貨として今回の措置に及んだということころが真相なのでしょうか。


 いずれにしても、中国では法律や制度等の運用について、中央政府の威令、指導力が下々にまで行き渡っていないという現状が様々の形で弊害をもたらしています。「乱収費」と言われる不当な分担金や罰金等の徴収もその一端です。地方政府の独断や解釈の誤り、時として人材自体の不足等も指摘されるところです。この結果、進出した多くの外資系企業は惑乱を余儀なくされます。この度の青島市の例もその象徴的な事件と言えます。全国統一的に周知された法制度であり、それらが公平に運用されるのであれば理解も得られ、国内企業も外資系企業も足並みを揃えて中国のために資する存在になり得る筈なのですが。これも「人治国家」たる所以なのでしょうか。「個」の主張がいとも容易に「公」の主張の様な顔でまかり通る。そんな世界が中国には有るようです。


 しかし、だからと言って、この様な取り敢えず取れるところから取ってやれという様な短絡的かつ独善的な手法がいつまでも世界に受け入れられるでしょうか。むしろ、発展の種子たる進出間もない外資系企業等の経営支援を十分な時間をかけて行い、併せて地方経済のボトムアップを図り、それが確固として根づいた後に内外とも合意が得られる形で新たな施策を講じていくことの方こそより重要なのではないでしょうか。中国は広大な市場と、安く豊富な労働力を擁し、経済もやや速度が鈍化したとはいえ、これまで数多くの外資を取り込みつつ右肩上がりの成長を続けて来た訳です。今後は更に国際的な枠組みの中で通用する公正さがより強く求められます。またそのためには中央政府と地方政府、あるいは地方政府同志の施策実施上の連携強化が不可欠です。血の通わない場当たり的な対応がやがては自らの首を絞めることにもなりかねません。


 なお、「現地管理者セミナー」は地元青島市日本人会、青島市対外経済貿易委員会等の協力により、6月9日(水)から3日間、海天大酒店に於いて青島市及びその周辺に進出している日系企業の日本人管理者、及び中国人管理者の皆さんをお招きして開催される予定です。

黄島の砂浜

黄島の砂浜

小魚山公園から見た青島市街

小魚山公園から見た青島市街