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9月 次に求められるのは地球環境への配慮

 このところ世界的に原油価格が騰勢を強めています。これまでも、国際石油価格は1993年以来長期にわたって強い上昇基調にありました。国際エネルギー機関(IEA)の報告では、現在、世界の1日あたりの原油消費量は7,700万バレルであるのに対して産出量は7,500万バレルしかなく、需給差は200万バレルに及んでいる(9月21日上海証券報)といいます。


 江沢民首席が中東諸国を歴訪し、産油国との関係強化を図ったのは今年4月のこと。中国では90年代以降、従来一次エネルギーとしてその7割以上を依存してきた石炭に代わって石油に依存する比率が増加してきました。その消費量は本年上半期だけで平均日量420万バレル前後に達し、わが国と並んで米国に次ぐ石油消費国となりました(9月1日日経)。こうした中国のエネルギー源転換の動きが実質的に国際石油価格の上昇基調にさらに拍車をかける形となりました。このような動きの主たる要因としては、改革開放後、高度経済成長に伴って農業用機械の軽油やトラック陸上輸送の活発化によるガソリン消費の増が考えられますが、それ以上に大きな理由として石炭使用の結果放出される硫黄酸化物(二酸化硫黄)による大気汚染等、深刻化する環境問題への配慮、これに対する政府レベルでの取り組みによるところが大きいとも言われています。


 中国1999年版環境報告によれば、森林や湖沼等自然環境への被害、さらには人体にも悪影響を及ぼすとされる酸性雨の原因物質である二酸化硫黄の排出量は98年に比べて11.2%減少したものの、年間排出総量(390万トン)はわが国の20倍以上、主要都市の4割以上で酸性雨が降っている(6月6日日経)とのことです。政府は石炭火力発電所への脱硫装置の設置の他、自動車排ガス規制等に力を入れています。


 中国のこのような環境問題への配慮は、上海市のような大都市で生活する筆者のごく身近なところでも日常的に意識することが出来ます。ここで関連したトピックスをいくつかご紹介しましょう ─。


 ここのところ上海では、市内を走るタクシーが、従来のガソリン使用のものから液化天然ガス(LPG)使用のものへと急速に切り替えられています。現在、市内で営業しているタクシーの総数は約4万台、LPGタクシーはその約4割に当たる1万5,000台に達しているといいます。もちろん、LPGへの転換は無公害エネルギーの推進と大気汚染防止のためですが、石油価格上昇傾向のなか、経営コスト削減のための有効な手段でもあります(9月19日解放日報)。


 更にもうひとつ。一般に"中国"といえば、まるでスローモーション画像でも見ているような、朝靄の中に見え隠れしながら太極拳に興じる群衆をイメージする方も多いのでは…。その一方で、濁流の如く路上を揉み合いながら先を争って疾駆する朝晩通勤時間帯の自転車の流れもまた中国ならでは光景といえます。ご存知のとおり、中国では自転車は比較的安価で手軽に入手できる移動手段。しかも無公害。よって、国内生産も大変盛んに行われています。上海税関が明らかにしたところでは、本年1〜8月期の中国産自転車の輸出は、624万台、金額にして2億2,000万米ドルに達したとのこと。前年同期比でそれぞれ88.9%、67.4%の伸び。主要な市場は日本と米国で全体の82.4%を占めています(9月21日文匯報)。筆者は赴任早々(今から2年程前)、十分な経済感覚も無いままに、何と900元(約12,000円)もする"高級"自転車(台湾製)を買ってしまいましたが、現在、通常国内産なら300元(約4,000円)前後で相当良い品が入手可能です。


 自転車といえば、今、中国で密かなブームを呼んでいるのが電動自転車。これも環境にやさしい。日本国内でもY社やH社が先行組で頑張っておられますが、需要もさることながら価格的にはまだ高嶺の花なのでしょうか。中国でも、廉価のもので4,000元(約50,000円)前後と決してお安い買い物ではありませんが、上海市内の最大手メーカーでは本年第3四半期以降生産、販売量が飛躍的に伸びており、9月には初めて3,000台を突破。本年5、6月期と比較して4倍の売れ行きとなりました。因みに、今年1年間の生産台数は中国全体では20万台に登るとのことです(9月25日解放日報)。中国の華南、特に広東省辺りではモータリゼーションが非常に進んでいて、解り易く言えば、北京、上海などで見られるあの通勤自転車の群れがすべてオートバイに代わったと考えて頂ければ想像に難くないと思います。1台のオートバイに家族全員が鈴なり状態(3〜4人乗り)で車と競い合って疾駆している光景などはなんとも珍妙な反面、微笑ましくもありますが、電動自転車ではパワー不足、格好もつかないかも知れませんね。


 中国の環境問題は冒頭でも触れたとおり、相当に根深く、またかなりの費用と時間、そして熱意を費やしなければ解決は困難だと思われます。しかし、こうした一般市民の生活、消費者レベルまで製品やサービスを通して地球環境に対する意識啓発の素地が作られているのは大変頼もしいことだと思いますし、偏西風の風下にある隣国としても大いに歓迎すべきことだと思います。