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3月 来る者去る者

 4月12日(月)、石川県金沢港に停泊していたカンボジア船籍の貨物船の中から今年最大の114人の中国人密航者が発見されました。一行は、今月1日に中国福建省泉州を出航した男性75人、女性39人で、同港を経由し大阪港に向かう予定だったとのこと。一行のうち何名かは命に別条は無いものの酸欠状態で意識のはっきりしない者も有ったとのことですが、結局全員入管難民法違反(不法入国)の疑いで逮捕されました(更にその後の調べにより船内で1名、県内海岸付近で仲間と思しき1名を拘束した他、既に上陸したと思われる数名を目撃したとの情報も有ります)。中国にはこうした人達を斡旋、手引きする集団も有ると聞きますが、高い金を払い命がけで海を渡ってきた挙げ句に逮捕、強制送還ではまったく割の合わない話ではあります。


 先般、経済審議会(首相の諮問機関)は、21世紀初頭を目標とした次期経済十カ年計画「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」のたたき台となる何項目かの政策課題を公表しましたが、その中にひとつ興味深いものがありました。それは小子化に伴う労働力不足を補うために海外からの移民労働者を受け入れるというものです。労働省の推計では97年末の外国人労働者数は不法就労者を含めて66万人。日本の労働人口のほぼ1%に相当する(日本経済新聞99.4.14)とのことです。もし仮にこの受け入れが将来実現すれば現在不法就労と見做される外国人労働者のうち何パーセントかは適法な手続を経ることにより移民労働者として認められ、減少するわが国労働力増強のための強力な助っ人として珍重されるべき存在へと変貌することになります。勿論、この考えには消極論も多く、政府部内での十分な調整を要するものであることは言うまでもありません。それにしても法令等がどのように整備されるのか。移民とはいわゆる帰化と同義に捉えて可いのか。それとも本人が就労可能な間だけ一時的にその労働力を利用するという趣旨なのか。労働力を受け入れる業界の選別やら年齢や性別による制限は有るのか。転職の自由は?同伴した家族に職業選別の自由は有るのか、退職後はどうなるのか?保険は、年金は、等々想像を逞しくしてしまいます。いずれにしても「日本経済の富裕さが多くの人を引き付ける結果として、移民をある程度受け入れるのは責務」との容認論(日本経済新聞同日付)もあり、実現すれば万里の波濤を超え、不法と危険を冒してやって来た金沢港の密航者等先人(?)達の苦難も少しは報われるかもしれません。


 さて、以下は密航とは関係ありません。逆に有能な人材が流出する中国側の切実な吐息が聞こえて来るような記事が有りましたので御紹介します。


「国外留学生の半数以上は帰国せず…若手の人材は不足気味」
 雑誌「瞭望」の1999年第二期刊に掲載された記事によれば、1998年、中国より国外へ留学した学生数は過去2年間連続2万人を超えたことに加え、最高人数となり、初めて2万3千人を突破した。但し、出国留学生数と帰国留学生数との比率は4.7: 1であり、人材流動に関しては依然として「出超」の状態が続き、科学技術研究院や大学は後継者不足に陥っている。


 この記事のテーマは、「国外出国留学熱が再び上昇」であるが、留学生の派遣を拡大することは、中国改革開放政策の重要なスローガンである。1992年、中央政府は「留学を支持し、帰国を奨励して、往来は自由とする」という国外留学に関する方針を発表し、国内外に広く歓迎された。教育部が先日発表したデータによれば、1978年から1997年の期間、中国から海外に出国した留学生の累計総数は29.3万人である。その内訳は、国家派遣留学生数約9.2万人、会社や機関が公費派遣した留学生数約9.2万人、自費留学生数約15.4万人である。既に9.6万人が帰国しているが、中国人留学生の現状はその3分の2がまだ海外で引き続き勉学に励んでいるかあるいは就職しているかである。


 統計データによれば、この20年間において、国家派遣留学生の帰国率は83%であり、会社や機関が公費派遣した留学生の帰国率は57%である。しかしながら国外留学生の半数以上を占める私費留学生の帰国率はたったの4%である。3分の2の留学生が帰国していない現状では、国内の20代から40代の優秀な人材の不足が日毎に明らかになって来ている。1997年、教育部所属の大学・学院(単科大学)の博士課程指導教員の88%が56歳以上であった。北京大学の400名強の博士課程指導教員の平均年齢は62歳を超えている。北京の大学・学院(単科大学)に在職中の29名の中国科学技術院会員の平均年齢は70歳を超えている。


 中国科学技術院の鄒承魯会員は、新たに精鋭の人材を再編、組織するという前提で、合格した優秀な人材には毎年年収4万元から5万元を保証し、良い設備と必要な経費を認めるのであれば、国外の優秀な中国人留学生を祖国に呼び戻すことが出来るとしている。要は帰国した優秀な人材が安心して仕事が出来る環境を整えることである。(「新聞報」1月22日付、翻訳日文は「華鍾通信」より抜粋)


 海外からの移民に労働力を期待しなければならなくなってしまったわが国の現状もさることながら、優秀な頭脳の国外流出もまた一国にとっては軽視すべからざる問題です。人材は正に人財でもあるということです。


日本国総領事館

日本国総領事館