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5月 「中国進出日系企業経営実態調査」の概要

 日本列島がゴールデンウイークの行楽日和に沸き返っていたのと同じ頃、こちら中国でもこの時期としては未曾有の大型連休に突入しました。
 例年この時期は、国際労働節(メーデー)の5月1日だけが紀念日として休日指定されていました。しかし今年から、5月1日から3日までの3日間を国際労働節と改め、さらに直前の29(土)、30(日)の2日間を平日とし、その分を5月4日(木)、5日(金)に振り替えることで7日間にわたる大型連休を作り出したというわけです。現地日系企業の中には従前どおり土日も休みとし、計9日間の連休としたところも有るとのことです。
 中国では、このところ、従来一週間であった春節休暇を9日間の大型連休にしたり、国慶節も今年から3日間の連休とするなど、効率よく連休を設けることにより人民の消費意欲の活性化を促す動きが見られます。実際、国民の消費動向はその国の景気の良し悪しを左右します。ここ数年、翳りが出始めた中国経済にとって成長を維持するための苦肉の策と見ることも出来ますが、まあ、手っ取り早い方法なのでしょう。そのお陰といいますか、連休効果は絶大で、上海市のメインストリート淮海路は地方からの旅行客で大賑わいとなりました。地元紙によれば、同ストリート沿いに立ち並ぶ各百貨店では入店した客の30〜80%が地方からの旅行客で占められており、同期間中の売上は前年同期比54.89%の増となったとのことです(文匯報5月9日)。


 閑話休題。かねて準備を進めてきた「2000年 中国進出日系企業経営実態調査」のまとめがほぼ完了しましたので、一足先にその概要をお知らせします。
 この調査は、現在中国に進出している日系企業に対してアンケート調査を実施し、その経営実態を調査・分析することにより(1)現在中国進出を計画している中小企業に対する事業化検討のための資料としての活用(2)中国事業再構築を検討中の既進出企業への情報提供等を主たる目的として、当上海中小企業デスクが実施したもので、前回は1997年3月に最初の調査を実施しております。今回の調査対象は「中国進出企業一覧」(三菱総合研究所編、蒼蒼社1999年版)「中国外商投資企業名録98〜99年版」(中国華僑出版社)等により抽出した中国全省市に展開する日系企業9,800社で、集計の結果、有効回答数はうち674社(6.9%)となりました。

杭州の日系企業

杭州の日系企業

(外国企業による投資をめぐる環境)

 前回の調査時点は、増値税問題等にも象徴された様に、どちらかといえば外資に対する締め付けが強かった時期だったといえます。これは景気低迷による税収落ち込みと景気対策としての財政出動のため政府の資金需要が高まったことなどが比較的業績好調であった外資への課税強化に繋がったということで、さらに、不動産等において外資の過剰投資が見られたこと。外資企業進出の進展により中国企業経営が圧迫され、外資規制強化を求める声が強まったことなどによると考えられます。
 これに対し今回は、むしろ外国の進んだ技術の導入という観点に加え、景気後退局面で外国投資を総需要構成項目として期待する考え方や輸出低迷のなかで外貨獲得手段として重視する観点が加わり、さらに政府部内でも外資の導入促進がとなえられ、また、WTO加盟をにらんで加盟を先取りする形での市場開放も行われ、輸出増値税還付率の引き上げに象徴される輸出振興策や投資環境の整備が進められるなど、前回調査時と比較して外国投資の政策面から見た活動環境が改善された、斯様な状況下での調査となりました。

(労働集約型から資産(設備)集約型へ)

 1992年のいわゆる桔小平の「南巡講話」以降、積極的な外資導入政策が採られ、外資優遇政策の採用、法整備等が急ピッチで進められ外国投資が急増しました。この時期の特徴は、改革開放路線開始間もない時期とは異なり単に生産拠点を移し委託加工を行うものから多様化が進展したことです。華僑資本は不動産開発や大型インフラ建設に傾注して行きました。一方、日本企業は、中国を消費市場として捉える内販型のものへと重点を移して行きました。これは改革開放後十数年を経て上海、北京、広東等、沿海地域を中心に所得水準が上昇し購買力が高まったこと等によります。また、従来の労働集約的産業中心から設備集約的産業の進出が増えてきましたが、これも所得水準の上昇により生じた労働コストの高まりが主要因です。

(わが国企業の中国への進出動機)

 わが国企業の中国への進出動機は、(1)海外生産・販売拠点の多様化、(2)低コスト労働力の利用、(3)中国国内市場の新規開拓・確保といったところが多く、今回の調査でそれぞれの項目が選択された比率は56.1%、52.4%、50.1%でした。このうち低コスト労働力利用を目的とした進出はそれまでの中心的な地位を失い、他方、中国国内市場の新規開拓・確保を目的とした進出が主流となりつつあります。前回の調査ではアパレルを除く繊維製品製造業の比率は17.4%、アパレル製造業は13.6%でしたが、今回の調査ではそれぞれ8.5%、4.3%とかなり減少していることがわかります。これに代わる形で、化学工業、電気機器、輸送機器を合わせた比率が21.6%から26.4%と上昇しており、うち電気機器だけで15.7%を占めています。従来から輸出を目的とした電気機器製造企業の進出が多くありましたが、中国国内市場での販売を狙った進出が増えてきており、また大型投資も多く、電気機器製造企業の存在がよりクローズアップされています。また、これにつれて、労働集約型の投資の中心は沿海地域から内陸部地域や東南アジア諸国へと移っています。今後、沿海地域はさらなる労働コスト上昇にともない労働集約型投資は引き続き低迷することが予想されますが、内陸部に関しては政府の「中西部大開発」路線も追い風となり投資が増加して行く可能性があります。なお、一部アパレルでは、東南アジア諸国等に比べ華東地区の地理的有利さを見直す動きも見られます。繊維はより労働コストの安いところへといった単純な図式ではなく、日本への納期の迅速さが求められる場合等においては沿海地域が投資地として優位を発揮することとなります。

整備が進む高速道路網

整備が進む高速道路網(手前が事務所がある上海虹橋開発区、道路は虹橋空港、外環状線方面に向かう)

(生産性について)

 生産性について、自社の日本国内工場との比較では過半数(50.3%)の企業が中国現地法人の方が生産性が低いとしています。しかし、前回調査の60.3%と比べるとその比率はかなり下がってきていることがわかります。一方、自社の日本工場に比べ現地法人の方が生産性が高いとした企業の比率は前回調査の11.8%から14.7%へと高まっています。日本の工場以上に生産効率のよい設備を導入し操業している企業が増えつつあるということも言えそうですが、労働者の質向上によるところも大きいと考えられます

(加工貿易から内販型、国内調達型へ)

 中国ブームの時期の外資の進出形態変化の特徴として、労働集約型から設備集約型へシフトしたことのほか、加工貿易型から内販型へ重点が移って行ったことが挙げられます。この傾向は現在も継続しており、今後とも所得水準の向上が確実でさらなる購買力上昇が期待されること、人件費の向上は加工貿易企業の進出を中国沿海地域から東南アジア地域等へシフトさせるであろうこと、WTO加盟後の国内市場の開放がさらに進むことにより内販型の投資が増えて行くであろうことが予想されます。
 日本企業の中国国内調達志向も高まってきているようで、主要商品の国内調達割合について50%以上とした企業の比率は前回調査時の40.6%から48.7%へと増加しています。また今回調査で1年前に比べ国内調達の比率が増えてきていると答えた企業が53.0%を占めました(変わらないと答えた企業は33.4%、減ってきていると答えた企業は2.2%)。この理由としてはまず国内製品の品質向上を挙げることが出来ます。中国国内調達の問題点として品質が劣る、不安定と回答した企業の比率は48.7%といまだ高いものの前回調査時の61.6%から比べれば大きく低下しています。「外から入れて外へ出す」スタイルから「調達も販売も中で行う」スタイルへ変化してきていると言えます。

(国内市場での競争激化)

 内販企業は国内販売を強化してきていますが、家電、食品、消費材等の分野で外資同士のみならず製品の品質向上を進める中国企業との間でも競争が激化しています。
 一貫して黒字基調の企業の比率は30.1%から20.8%に低下、一貫して赤字基調の企業の比率は21.4%から28.9%に拡大しました。また赤字から黒字に転換した企業の比率は34.9%から38.0%へと微増しています。これは、最近の進出の主流である内販型企業が短期的収支を軽視しても中長期的な利益を求めてマーケットシェア獲得に努める傾向によるところが大きいと考えられます。赤字から黒字転換する企業が微増したことの背景としては、94年、95年の進出ピーク時から4〜5年経過した製造企業が生産の立ちあがりとともに徐々に単年度黒字化するところが出始めている傾向を現しています。
 既述のように内販型企業が厳しい競争にさらされていることも収益を悪化させている一因と考えられます。業績がF/S作成時の計画水準を下回っているとした企業が42.1%と計画水準を上回るとした企業(20.2%)、計画水準どおり(28.6%)とした企業を大きく上回ったのも各企業の予想を上回る競争が行われていることの現れであると考えられます。
 また、景気が低迷していることも内販型企業等の収益を圧迫しています。消費等総需要が不足していることから販売が伸びない。中国企業の業績の悪化から回収困難な売掛金の増加を招きます。中国国内販売で困っている点として、売掛金の回収が困難であるとした企業の比率は48.7%と高く、前回調査の23.2%を大きく上回っていることが注目されます。売掛金が年々増加傾向であるとした企業は30.6%で、年々減少しているとした企業はわずかに7.9%でした。

緑化が進む上海市内

緑化が進む上海市内(新しい公園が作られている)

(中国投資の成否)

 80%の企業が操業後に設備投資を行ったと回答しています。これは各企業が積極的に事業展開をしていることを示しています。中国投資について成功であるとした企業は32.3%、どちらかといえば成功であるとした企業は38.7%で両者を併せれば71.0%に達します。一方失敗したと回答した企業はわずかに1.6%、どちらかといえば失敗と回答した企業でも5.2%に過ぎません。

(合弁から独資へ)

 中国への進出企業はその他の国への進出の場合と比べ比較的合弁が多く今回の調査でも合弁企業が53.6%と過半数を占めました。進出先を現在の場所に決定した理由として、合弁相手が現在地にいたからとした企業の比率が42.1%と高く、物流の利便性(35.3%)周辺の市場性(33.8%)などの項目を上回りましたが、これは中国への企業進出に際してはまず合弁相手が決まり、場所等その他の事項は後から決まることが多いことを示しています。特に内陸部進出企業はほとんどが合弁先の所在地であるとの理由で進出先を選ぶ傾向が強いようです。合弁比率を前回調査と今回調査とで比較すると64.8%から53.6%とかなり低下しています。一方、独資企業は25.7%から38.8%と増加しています。中国投資ブームに乗って進出した合弁企業から合弁パートナーが意思決定の際ことごとく同意しない。約束を守らない、事前の期待どおりに機能しないなどのトラブルが多数聞かれるようになり、こうしたトラブルを極力避けるため進出は可能な限り独資でという考え方が主流となっているようです。WTO加盟後は各分野において出資比率の規制が緩和されて行くので独資企業の比率、合弁の場合の日本側出資比率は今後とも上昇して行くものと考えられます。

 ところで、余談ですが、かくいう私もこの連休を利用して、かねて心に思い描いていた西蔵(チベット)自治区実地踏査(実は観光です)を実現し、中国のGDP向上に貢献してまいりました。コバルトブルーの空。地肌が剥き出しの山々。そこで暮らす人々。まったく人手が加わっていない大自然のふところの深さに圧倒され続けの一週間でした。


 皆さんは心に残るゴールデンウイークをお過ごしになれましたか?