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10月 仕事が出来なくなる…かもしれない!!?

「渉外社会調査活動管理暫行弁法」。今、中国を舞台に活動する内外の企業の間では、本年8月15日から施行されたこの暫定規則が物議を醸しています。この規則、要するに外資系企業等による中国国内での商業調査活動を禁止するというものなのです。中国国家統計局が所管する「渉外社会調査資格」を有する調査機関以外の機関は直接調査活動を行ってはいけないという内容になっています。


 これは、例えば、私たち上海事務所でもごく通常の業務としてたびたび行って来た日系現地法人等を対象とした様々のアンケート調査や投資志向企業が行うF/S(企業化可能性調査)までもが今までのように自由に実施することが出来なくなってしまう。予め当局管理下の調査機関に委託し、調査内容についてもその妥当性の是非についていちいち判定を受けてからでなければ実施できない。そのような大変窮屈な事態の始まりを宣言したものなのです。


 実際、同暫定規則では、個人及び「渉外社会調査資格」を有しない機構の渉外社会調査活動を禁じており、外資系企業等が調査活動を行う場合には、予め中国国家統計局の資格認定を受けた調査機関に委託して行う他、集計、分析内容についても公表前に予め国家機密保持部門の審査、許可を受けて中国国家の安全と社会利益に危害を及ぼさないとのお墨付きを貰わねばならないことになっています。調査活動を行うにも予め省クラス以上の人民政府の統計局の審査、批准を受けなければ始められない。調査資格を偽ったり、許可無く調査結果を国外に持ち出し、あるいは公表すると刑事責任を追求される場合すら想定しています。


 しかし、それにしてもこの暫定規則の施行は余りにも唐突でした。建国50周年を祝う国慶節を前にしたどさくさの中での出来事で、この規則の持つ意味の重大性もお祭り騒ぎのなかで薄れがちだった様ですが…。この「渉外社会調査活動管理暫行弁法」施行のきっかけとなったある出来事として、次の様な話を聞くことが出来ました。


 その話というのは、台湾の某有力食料品メーカーが、中国国内でかなりの広範囲にわたり中国一般家庭の「食」の志向やライフスタイルに係るアンケート調査を実施したらしいのですが、アンケート調査の内容に一部不適切と判断される内容が有り、それが当局の逆鱗に触れた。これによる逮捕者も出たとのことで、これがどうも発端となったことの真相らしいというのです。国慶節前という時節柄、また李登輝総統による二国論が海峡を挟んだ中台関係を険悪にしていた昨今の情勢下、中国側も相当敏感になっていたことは確かです。しかし、むしろ中国側としては、相手方が何処の企業であれ、何らの規制もなく中国国内で調査活動が行われている。そしてその結果が時として国家に不利益を及ぼす事態が発生し得る。このような状態の放置に危惧感を抱いたものだと思われます。本件措置には国家統計局ばかりでなく国家安全局がかなりのボリュームで関与しているとも言われています。渉外社会調査活動に係る資格認定は2000年1月1日から行われます。それに先立って本年11月15日以降には、更なる取り締まりの強化も見込まれます。 


 いずれにしても、今回施行された暫定規則により、JETROや、現地展開をしている外資系企業の今後の事業活動に大きな影響を及ぼすであろう事、更に、対中国投資志向の更なる鈍化という中国側にとっても負の影響を免れない事態となることは確かだと言えます。


 国家の機密保持の重要性も理解出来なくはありませんが、WTO加盟問題にも見られるように今の中国にとっては逆に市場や情報の透明さ、公開性こそがより強く求められているのではないでしょうか。だとすれば、中国政府による今回の一連の措置はそうした動きへの逆行としか思われません。

日本貿易振興会(JETRO)上海センター

日本貿易振興会(JETRO)上海センター