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第13回 米国の中小企業と中小企業支援施策(その1)

 米国における中小企業は、企業総数の99.9%と圧倒的な大多数で(日本も99.7%と同様)、新規に創出される雇用の大半を担っているなど、アメリカ経済の貴重な担い手であり経済発展の強力な牽引役でもあります。そしてそこには中小企業の活動をより活発なものとする、米国らしい下地と環境があります。


 そんな米国中小企業の概況(その1)と、それを支える各種の支援施策(その2)について概略をまとめてみました。

1.中小企業の呼称

 日本では「中小企業」というと、いわゆる「大企業」に当たらない「中規模企業」および「小規模企業」の両方を意識してそう呼ばれ、これを英語に直す場合には、「Small and Medium(-sized) Enterprise」(SME)とするのが通例ですが、米国では、単純に「Small Business」 と呼ぶのが一般的です。(SMEと呼ぶことは一部の国際会議などを除きまれ。)また、ときに「Independent Business」が使われる場合もあり、単に規模が小さいという面だけではなく、自分の力で事業を興し上げるイメージを感じとることができます。

2.中小企業の定義

 米国における「Small Business」には、いろいろな定義のしかたがありますが、中小企業に対する各種の支援策を連邦政府レベルで実施している米国中小企業庁(Small Business Administration: SBA)による、政府の全般的な施策方針やマクロ的な統計においては、一般的に「従業員が500人未満の企業」を中小企業と定義することが多いようです。


 ただ、同じSBAが提供している各種の支援プログラムでは、上記の定義に関わらず、例えば、「小売業の場合:年間収入が500万ドル〜2,000万ドル以下(細分業種により異なる)」であること、「卸売業の場合:従業員数が100人以下(同)」であること、などといった定め方をしています。また、有力民間調査機関がサーベイを行う際には、例えば「従業員の数が50人以下である企業」、と定義する場合があるなど、ケースによってさまざまです。


(参考)日本における中小企業の定義は、中小企業基本法で次のとおりとなっています。


製造業・建設業など:資本金3億円以下又は従業員数300人以下の会社又は個人
卸売業:資本金1億円以下又は従業員100人以下の会社又は個人
小売業:資本金5,000万円又は従業員50人以下の会社又は個人
サービス業:資本金5,000万円又は従業員100人以下の会社又は個

3.中小企業の数及び占める地位

 SBAの Office of Advocacy(施策広報局)の統計によれば、米国の中小企業の数は、2001年現在、

 

○従業員を雇用する企業(employer firm): 5.8百万
○自己雇用者(self-employed people):16.6百万
○合計:22.4百万
(事業所数では25.6百万)

と推定されています。


 日本の中小企業は、6.1百万事業所(中小企業庁資料)なので、これは約4倍にあたることになります。


 また、米国における中小企業は…
○従業員を雇用する企業の99%以上を占め
○民間セクター労働者の51%を雇用し、
○ハイテク従事者の38%を受け持ち、
○実質雇用増加分の75%を担い、
○民間セクターにおける生産高の51%を生み出し、
○輸出業者の96%を占め、
○連邦政府調達契約の33%を供給し、
○53%が自宅を基盤とする事業者、である

など経済全体の中で大変大きな役割を占めています。
(SBA Office of Advocacyのウェブサイトより)

4.中小企業者のプロフィール

 商務省国勢統計局、財務省内国歳入庁などの統計データをもとに、SBAが取りまとめている関連資料から、米国中小企業のすがたの一面を、可能な限り日本との比較をしながら、掲げてみました。(一部は上記データに基づく推計)


(1)事業形態別企業数

事業形態別企業数のグラフ(米国)個人71.4%、パートナーシップ7.3%、法人21.4%(日本)個人52.7%、法人47.3%

※パートナーシップとは、2人以上の個人が共同経営者となって、事業の経営責任を分け合う形態。

(2)業種別企業数

業種別企業数のグラフ(米国)建設業16.3%、製造業5.0%、運輸・通信・公共事業3.4%、卸売業5.3%、小売業(飲食含む)14.7%、金融・保険・不動産業7.4%、サービス業47.6%、分類不能0.1%、鉱業0.1%(日本)建設業9.9%、製造業11.1%、運輸・通信・電気・ガス業2.7%、卸売業7.2%、小売業(飲食含む)35.9%、金融・保険・不動産業6.3%、サービス業26.8%、鉱業0.1%

(3)従業員規模別企業数

従業員規模別企業数のグラフ(米国)0人74.6%、1〜4人以下15.2%、5〜9人以下4.5%、10〜19人2.7%、20〜99人2.6%、100〜49人0.4%、500人以上0.1%(日本)0人33.3%、1〜4人38.2%、5〜9人13.4%、10〜19人8.1%、20〜99人6.3%」%、100〜299人0.6%、300人以上0.1%

(4)所有者の性別割合

所有者の性別割合のグラフ(米国)女性39.2%、男性60.8%

(5)所有者の人種別割合

所有者の人種別割合のグラフ(米国)ヒスパニック5.9%、黒人4.0%、アジア・太平洋・ネイティブ5.4%、白人84.7%

(6)開業・廃業の状況

開業・廃業の状況のグラフ(米国)開業率平均14.3%、廃業率平均12.0%(日本)昭和50〜53年開業率5.9%、平成8〜11年開業率3.5%、昭和50〜53年廃業率3.8%、平成8〜11年廃業率5.6%

(7)抱えている問題

抱えている問題(米国)全米独立企業連盟(NFIB)調査のグラフ

5.活発な中小企業活動を支えている背景

 日本に比べ著しく高い開業率(上記(6))Eグラフ参照)などからうかがえるように、米国中小企業はいわば経済発展のエンジンとしての役割を果たしているといえますが、中小企業が有している旺盛な活力は、米国ならではの社会の風土やシステムに支えられている点を見逃すことはできません。一般的には次のような点が指摘できます。


<社会風土>
○高い起業家精神
 開拓時代のフロンティア精神を受け継ぎ、独立性と創造性を重んじるアメリカ人には高い起業家精神(アントレプレナーシップ)が宿っており、新しく自分で事業を始めようとする気運に富んでいる。また、組織の中で実績を上げることよりも、誰もやらなかったことを手がけ、それを育てることに意義を見出す風潮にある。一流大学出や元企業エリートにも起業家が多いのも特徴的。


○リスクや失敗を許容する社会
 力を尽くした上での失敗は、決して人生の終わりや恥などではなく、次の挑戦へのステップと考える風土がある。また、企業においても、果敢にリスクをとった人としてこれを積極的に評価する傾向がある。
 失敗者にもセカンドチャンス・サードチャンスが与えられるので、「失敗を恐れず成功するまで何度でもやり直す」風潮が根付いている。

 

<社会制度>
○倒産制度
 経営状況が苦しくなり倒産に陥った場合も、法律(連邦破産法・各州法など)によって債務の返済責任が相当程度免除されるなど、過去の失敗に早々と見切りをつけ、次なる事業に再挑戦しやすいシステムになっている。 倒産したら半永久的に債務から逃れられないということがないので、再度のフレッシュスタートをきることができる。

○企業のスタートアップが容易
 新規に会社を設立する場合には、数十ドル(数千円)の登録料を払って簡単な書類を作成すれば、誰でも直ちに設立することができるなど、簡単に企業の創業者になることができる。個人事業主(ホームベースドビジネスなど)として開業することはむろん、事業上の責任を限定した会社形態(パートナーシップほか)など、事業にあったスタイルを選んで容易にビジネスをはじめられる。

○豊富な資金アクセス
 米国では資本市場が多様で、事業の立上げから拡大の各ステージにおいて、ビジネスプラン次第では「エンジェル投資家」や「ベンチャーキャピタル」などからの魅力的な資金調達が期待できる。また、銀行からのオーソドックスな融資に加え、アメリカでは利用が進んでいるクレジットカードを活用して当座の運営資金を調達することが可能で(何枚ものカード与信枠を組み合わせて借入れ)、比較的小規模な資金を必要とする起業間もない中小企業にとって、非常に魅力的な選択肢となっている。


 ここ2−3年アメリカ経済そのものは、急激な減速を経験し、ドットコム企業をはじめとした企業の倒産やリストラによる解雇が多数に上るなど、厳しい状況に直面しています。上記のベンチャーキャピタル投資なども残念ながら最近では低水準にとどまっているのが実態です。しかしながら、このような時代にこそ、中小企業のエネルギッシュな活力が求められているわけで、上記のような柔軟な社会システムに裏打ちされた米国の中小企業は、その利を生かして再び経済全体を刺激する大きな原動力となることでしょう。


 またその意味では、連邦政府や州政府などによる中小企業支援施策もまた重要な役割を担っています。その具体的な内容については、次回レポートします。