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第6回 日本の高品質をアメリカで供給

テネシーの日系自動車部品会社

 アメリカにおける日本車に対する信頼には、現在も相変わらず破格のものがあります。アメリカ車の場合、新車でも3年経ったらあちこちの故障と付き合っていかななければいけないとよくいわれるに対し、めったに故障しない日本車の品質の高さは、そのまま中古車の価格などに如実にあらわれています。


 さて、アメリカ大陸の中東部を南北に流れるミシシッピー川の東に位置するテネシー州に日本から進出している、「MATSUO INDUSTRIES USA,INC.」という会社を訪問する機会を得ました。

 同社は、愛知県大府市に本社を構え、精密線ばねや薄板ばねなどの自動車や家電などの部品を製造している、「株式会社松尾製作所」が出資して米国に設立した現地法人で、社屋のほか4万5千スクエアー・フィート(約4千m2)の工場で250種類以上のばね製品などを製造しています。
 従業員は約100名(うち日本からは5人)、主な取引先は20社ほどで、トヨタ・日産などの日本車だけに限らず、GM・フォードをはじめとした米国のほとんどのメーカーの自動車に供給されています。
 テネシー州は米国の南東部に位置し、アメリカ国内の各方面へのアクセスが比較的容易であるなど地理的に有利で、日本からも自動車関連(日産・ブリジストンなど)や家電(東芝・松下・シャープなど)といった製造業を中心に130以上の企業が進出(製造工場は約90)しており、むしろ日本企業の進出によって州経済が活性化され、良好な関係が構築されている州の一つでもあります。

工場内風景(昼休み時)

工場内風景(昼休み時)

 テネシー州は米国の南東部に位置し、アメリカ国内の各方面へのアクセスが比較的容易であるなど地理的に有利で、日本からも自動車関連(日産・ブリジストンなど)や家電(東芝・松下・シャープなど)といった製造業を中心に130以上の企業が進出(製造工場は約90)しており、むしろ日本企業の進出によって州経済が活性化され、良好な関係が構築されている州の一つでもあります。


 州都ナッシュビルから約200マイル強(車で約4時間)ほど東に位置するジェファーソン・シティで、現栗生(くりゅう)社長と、アメリカ式のビジネス導入のために招へいした日本人スタッフの二人が、独自に弁護士などを活用し、失敗を重ねながらも、市が管理するインダストリアル・パーク内の土地を取得して工場を立ち上げたのが、7年前の1994年のことでした。
 以降、地元の従業員に高度で精密な技術を伝授しながら製造体制を整え、徐々に受注を広げて、現在では売上高14百万ドルと、アメリカ国内向けに継続的な部品供給を行っています。
 現在、工場内の製造部門・品質管理部門はアメリカ人スタッフがマネージャーとして指揮しており(設備導入・技術指導・工程設定などは日本人)、立ち上げの当初から極力日本流のやり方を排し、アメリカ流のマネジメントを導入することに努めてきたといいます。

テネシー州所在地

テネシー州所在地

 本社からも、現地のマネジメントは基本的には現地に任されていたため、アメリカ式の経営を徐々に取り込むことができましたが、そうはいってもいろいろな面で試行錯誤が繰り返されたほか、やはり日本とはビジネス慣行が異なるため、重要な決定事項になると日本(本社)との意思疎通が難しい局面もあります。


 また、経営上の問題点として、現地従業員の人事・労務問題や教育問題などに関しては、もはやそう大きな問題はないものの、最近の重要な関心事は、日本人従業員の確保問題 −本社からの交代要員の確保が困難など− であるとのことです。
 8年前にアメリカに一部生産拠点を移すことを社内で検討・決定した当時、従業員たちに広がった混乱と動揺は多大なものであったわけですが、現在においても本社の従業員にとって、数年間アメリカ工場に赴任して働くことにはまだかなりの抵抗があるのが現実です。
 また実際にこちらに赴任している従業員 −ことに技術管理者などは高度な技術を現地で保持するために日本から派遣することがどうしても不可欠です− にしても、全く異なる生活環境・言語の習得・現地従業員とのコミュニケーションなどに戸惑いながら任務を果たしている一面もあります。


 米国景気の減速で、自動車販売の一時の落込みや企業の収益悪化など、ここのところの自動車産業を取り巻く環境には厳しいものがあります。同社もコストダウンや生産調整の影響を蒙りはじめながらも、なんとか概ね横バイの業績を保っているところですが、なお比較的堅調といわれている自動車や耐久財の消費が支えるかたちで景気回復が軌道に乗り、さらなる受注増につながることが期待されます。

工場で技術的な説明をしてくれたマシンコーディネーターの中井さん

工場で技術的な説明をしてくれたマシンコーディネーターの中井さん

 アメリカに展開した取引先との関係上、アメリカに一部拠点を移さざるを得なかった同社ですが、社内の大きな混乱を克服しながら一丸となってアメリカ進出を果たし、現在では地元ジェファーソン・シティの雇用の一部を担い、地元経済に大きく貢献しています。 自動車の小型部品という、製品の質がすべてを左右する製造分野において、同社のような中小企業の精巧な技術と品質に裏打ちされた日本発の製品がアメリカのマーケットで信頼を持って受け入れられ、車というアメリカ社会における重要な部品を支えていることに誇らしいものさえ感じます。

MATSUO INDUSTRIES USA,INC.の社屋と工場(後方)

MATSUO INDUSTRIES USA,INC.の社屋と工場(後方)