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第4回 SOHO(ソーホー)とSOHO(ソーホー)

 前回に引き続き今回のタイトルも、べつに間違っているわけではありません。


 今、日本でSOHO(ソーホー)といえば、Small Office Home Office (スモールオフィス・ホームオフィス)、―つまり、自宅や小規模な事務所で仕事をする独立自営型のワークスタイル― を指すのが普通でしょう。SOHOは、IT(情報技術)が加速度的に発達する中で、コンピュータやインターネット・通信技術を駆使して、家庭にいながら在宅ビジネスを行う新しいタイプの中小企業として大きく注目されています。


 でも、ここアメリカ、殊にニューヨークではSOHOの印象はまったく異なります。
 実際、何人かのアメリカ人に「SOHOという言葉を知っていますか?」とたずねると、「Yes, of course. It comes from New York」とかいって、必ずニューヨーク・マンハッタンのダウンタウンにあるファッショナブルな街「ソーホー(SOHO)」(South of Houstonの略:グリニッジビレッジの南あたりを東西に走る「Houston Street(ハウストン・ストリート)」の南の意味)地区を連想します。

 ちなみに、インターネットの検索エンジンを使って"soho"と入力し、関連のサイトを検索すると、日本の検索エンジン(Yahoo ! JAPANなど)では300件弱のサイトがヒットし、アメリカの検索エンジン(Yahoo!など)でサーチすると2,000件強ものサイトにヒットします。日本のサイトにおいては、ほとんどが「スモールオフィス・ホームオフィス」に関するものですが、アメリカのサイトにおいてはやはりニューヨークの「ソーホー」地区に関するものが圧倒的に多いようです。(「スモールオフィス・ホームオフィス」ももちろんありますが…)

 (これ以外にヒットするものとしては、ロンドンのナイトクラブなんかが多い繁華街とか、科学技術の分野で太陽観測衛星(Solar and Heliospheric Observatories)などがあります。

現在、自宅で作業中

現在、自宅で作業中

 さて、アメリカ人がまっさきにイメージする、ニューヨークの「ソーホー」。
それは、縦に細長いマンハッタンの南、ダウンタウンの一角で、ジャズクラブが多く集まりナイトライフが楽しめるグリニッジ・ビレッジ、アメリカの中にあって一種独特の活気に満ちたチャイナタウンやリトルイタリーなどに近接しています。

 もともとは工場や倉庫が立ち並ぶ産業地区だったようですが、60年代以降、企業が出て行って取り残された古い建物の部屋を、家賃が安いことに目をつけたアーティストの卵たちが間借りしてアトリエを構えるようになり、画家・芸術家の街として発展してきました。


 現在は、数多くのギャラリー(画廊)のほかロフトを改造したちょっと気取ったレストラン、バー、カフェ、ブティック、アンティーク・ショップなどが点在し、若い女性たちに好まれるおしゃれなエリアとなっています。

 それぞれの店舗はどこも間口が比較的狭い印象ですが、ひとたび中に入ってみると、広い奥行きと高い天井の中に個性的で洗練された空間が広がっています。

マンハッタン

マンハッタン

 そしてそれらのビルの上階では、階下の華やかさとはまた対照的に、自由な時間と雰囲気の中でビジネスに取り組む多くの起業家や自宅開業者(まさにSOHO)の雑然としたオフィスがあちこちに点在しており、ダボダボのジーンズにジャンパー姿の若者たちなどが昼夜なく出入りしているのを見かけます。ちょうど「シリコン・アレー地区」(前回レポートで紹介。ソーホーはシリコン・アレーの範囲に含まれます。)においてその発展を支えたといわれる、デザイナー・編集者・プロデューサーといったコンテンツクリエーターたちの一部もこのエリアで足場を築きビジネスを展開しています。

 (現に、さきの日本におけるSOHOの呼称は、ニューヨークのこのソーホー地区に若い芸術家や事業家たちが仲間といっしょに小さなオフィスを構え、パソコンやインターネットを利用してビジネスをはじめたことをイメージして、そう呼ばれるようになったともいわれています。)


 さてもう一つのSOHO、スモールオフィス・ホームオフィスの方は、ビジネスのスタイルを指す呼び名で、もともとは情報技術(IT)業界が急成長ユーザー層に名づけたニックネームだとされています。その定義は必ずしも明確に定まっているわけではありませんが、おおむね『パソコンやインターネットなどを駆使し、フルタイムまたはパートタイムで在宅ビジネスに従事している事業または事業者』といったイメージでしょうか。

SOHOの街並み(Prince Street)

SOHOの街並み(Prince Street)

 ただ、ここアメリカでは、このSOHOという呼び名は必ずしも一般的ではなく、(最近ではときどき見かけますが)、そのような事業は通常、「Home-Based Business」(自宅を拠点とする事業者)と呼ばれています。アメリカには2000年現在、1650万〜1850万の、Home-Based Businessesがあるといわれており(Home-Based Businessを支援している民間団体の推計)、これは米国中小企業の半数を大きく上回るたいへんな数です。


 米国におけるHome-Based Businessの中で多い業種は、ビジネスコンサルティングやコンピュータサービス・金融コンサルティング・マーケティング・広告などで、全般に専門的なスキルやノウハウを武器とし、事業規模が小さくても大きな成長力を秘めているものが多いといえます。また、従来は出産・育児で仕事を離れなくてはならなかった女性たちが、コンピュータやインターネットを使って、自宅にいながら仕事をすることが比較的容易になったことから、健康・育児・教育・ファッションなど女性ならではの分野においても、多くの新しいビジネスチャンスが生み出されています。


 一般に経営資源に乏しいSOHOビジネスも、インターネットを使えば自宅にいながら誰とでも取引ができる可能性があるわけで、これからはIT(情報技術)をいかにうまく活用するか、が重要なカギとなってきます。もともとIT革命の中でSOHOのビジネスチャンスは飛躍的に拡大してきた面がありますが、現在においては、インターネットによる仕事の受注・販売・資材購入など、さらに一歩進んだビジネス活用が可能となっています。


 例えば、サプライヤーとバイヤーの電子商取引を仲介するインターネットサイとして、鉄鋼やプラスティックなどの伝統的な製造業部品などを扱う「電子マーケットプレース」(「Fast Parts」(電子部品関係)や「e-Steel」(鉄鋼関係)などが代表的)や、主としてサービス業の特定のスキル(コンサルティング・ビジネスプランニング・翻訳など)情報などを扱う「ノレッジマーケットプレース」(「e Lance」、「Guru」、「Free Agent」などが有名)といった、原則として誰でも参加できる数多くのサイトが次々と登場しており、技術やサービスを持つSOHO事業者とプロジェクトを発注する者(その逆も)の橋渡しを行うサポートサービスやビジネスがたいへん充実しています。世界中のどこからでもウエブベースでのビジネスが可能であり、不足がちな営業力を補完してくれるこれらのインターネットツールは今後もSOHO事業者の事業活動の中心的役割を果たしていくものとみられます。

暮らしの中に生かすIT

暮らしの中に生かすIT

 日本においても、新規の開業事業所数が廃業事業所数を下回る状況が数年来続く中、新しいビジネス形態であるこれらのSOHO事業者が数多く輩出され、発展することが期待されていますし、最近では例えば、街ぐるみでのSOHOオフィスづくりや協同組合によるSOHO事業者のための共同受注、事業者のダイレクトリ(台帳)づくりや受発注を仲介するマッチングシステムづくりなど、小規模であるがゆえに単独では経営力に乏しいSOHO事業者を支援しようというさまざまな動きがあると聞きます。


 SOHO事業は、「家庭生活や育児との両立が可能」、「自分のペースで柔軟に事業を進められる」、「ハイテクを駆使して小回りのきく経営が持ち前」など、自立した働き方、あるいは新しいライフスタイルとしてのいい面ばかりが注目されがちですが、一方では、資金調達力や営業力の不足などといった事業上の困難が伴いがちであることはもちろん、病気やケガをしたときの代わりがきかない・補償がない、などといった問題を抱えているのもまた事実です。今後SOHOを支援する社会システムや各種のサポートが充実し、また、インターネットをはじめとしたITのめざましい進化をうまく活用することによって、SOHOビジネスがますます魅力的で多彩なものになり、発展していくことが期待されます。

自分なりのペースで仕事を

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