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第3回 シリコン・バレーとシリコン・アレー 〜 米国のハイテク集積エリア 〜

 シリコン・バレーとシリコン・アレー。

 この似かよったタイトルは、べつに間違いではありません。

 シリコン・バレーはよく知られていますが、シリコン・アレーにはまだなじみがうすいのではないでしょうか。

 今回は全米に広がるハイテク集積エリアのご紹介です。


 アメリカ経済は1991年を底として復活をとげ、以来長期にわたり拡大してきたところですが、その背景として情報・通信分野などにおけるハイテク企業群、特に最近ではインターネット関連のベンチャー企業などの活力がその牽引車になっているといわれています。


 米国では、こうしたハイテク企業が多く集まる産業集積地が各地に形成されており、多くのベンチャー企業がこれらのエリアでスタートアップを図り、足場を築いて成長・発展をとげています。

 ざっと主なものをあげてみますと、次のとおりです。


○シリコン・バレー〈サンフランシスコ・サンノゼ〉
コンピュータや半導体関連企業が集積、米国ハイテク産業のメッカ。

○ネットプレックス〈ワシントン首都圏〉
連邦政府機関が集まる地の利を生かして情報産業が集積。

○ルート128〈ボストン周辺〉
MITなどの大学・豊富なベンチャーキャピタルをバックにコンピュータ関連産業が集積。

○デジタル・コースト〈ロサンゼルス〉
エンターテインメント産業、航空・防衛産業などが集積。

○シリコン・フォレスト〈オレゴン州ポートランド・ワシントン州シアトル〉
マイクロソフト・ボーイングなどが立地、コンピュータ関連産業が集積。

○シリコン・マウンテン〈コロラド州デンバー〉
バイオ関連やコンピュータ関連のベンチャー企業が集積。

○シリコン・ヒルズ(テキサス州オースチン)
テキサス大学との連携で新興のシリコン・バレーとして注目。

○シリコン・アレー〈ニューヨーク〉
メディア・広告・出版などコンテンツ指向型企業が集積して、インターネット産業を刺激。

全米のハイテク集積エリア

全米のハイテク集積エリア

 これらのうち、その先鞭として最も知られているのは、カリフォルニアのシリコン・バレー。

 主要なコンピュータメーカー・ソフトメーカー・インターネット関連企業・ハイテク関連研究所などが集まっていて、世界最大のハイテクセンターの地位を保っているほか、アメリカの情報・通信産業のメッカとなっています。

 一方、タイトルにもあるシリコン・アレーはニューヨークに立地する比較的新しいハイテクエリアです。


 なお、シリコン・アレーをはじめ、シリコン○○と呼ばれるエリアが多いのは、いうまでもなくシリコン・バレーをもじって名づけられたものです。(シリコンは、コンピュータの半導体チップの主要な材料。バレーは谷の意味)
 ちなみに、○○の部分はそれぞれ、フォレスト=森、マウンテン=山、ヒルズ=丘、アレー=小径、の意味。)


「シリコン・バレー」は、アメリカ西海岸のサンフランシスコと、そこから南へ約45マイル(車で約1時間)のところにあるサンノゼ市との間、サンフランシスコ湾となだらかな丘陵とにはさまれた、広く細長い地域をさして、そう呼ばれています。(とても広いのでバレー(Valley=谷)というイメージはなく、むしろ湾岸に広がる平野部という印象です。)

シリコン・バレー所在地

シリコン・バレー所在地

 昔は、あたり一面がプルーンなどの果樹園で、The Valley of Heart's Delight(心を楽しませてくれる谷)と呼ばれていた一帯は、今や二本の幹線道路の沿道の広い地域に、ヒューレット・パッカード、インテル、アップルコンピュータ、サン・マイクロシステムズ、オラクル…といった世界を代表するコンピュータ関連企業や多くのハイテク中小企業が点在しています。

 1990年前後に多くの企業が立地したこの一帯には、現在約1万2千社のIT企業、約20万人のIT雇用者が集まっています。


 リスクを恐れず、失敗を恥と思わない米国ならではのカルチャーや、豊富なベンチャーキャピタルやエンジェル投資家などによる資金支援、さらにはスタンフォード大学やカリフォルニア大学バークレー校といった大学の一流の人材との連携などを背景に、チャレンジ精神旺盛な企業家を生み出す多くの土壌がここにはあります。


 ヒューレット・パッカードやインテル、アップルコンピュータといった数々の成功物語を目指して多くのベンチャー企業がスタートアップし、新しいビジネスチャンスが次々と生まれています。

スタンフォード大学のキャンパス

スタンフォード大学のキャンパス。後ろの一帯はシリコンバレーの一部

 さて、ニューヨークのハイテクエリア、文字どおりシリコン・バレーをもじって名づけられた「シリコン・アレー」(アレーは小径の意味)は、現在ではマンハッタン41丁目以南のダウンタウンエリアの集積を指してそう呼ばれています。

 ビレッジあたりから南端の金融街の方向にいたる比較的ゴミゴミした地域の古いビルに新興の企業が集まってきたことからこう呼ばれるようになったようです。


 コンピュータ関連の技術指向型の企業が多いシリコン・バレーと異なり、シリコン・アレーはコンテンツ指向型のベンチャー企業が多いという点が特徴です。


 これは、ニューヨークでメディア・広告・出版・アート・ファッションなどの産業に携わっていたデザイナー・編集者・プロデューサーといったクリエイティブな人たちが、ネットビジネスに入り込んでいったことによるものです。


 最近の調査によると、このエリアに立地するニューメディア関連の会社は1,675社(うち株式公開(IPO)を果たした企業は54社)で、シリコン・アレーが形成され始めた1994年以降の設立による企業が9割弱を占めているなど、多くのベンチャー企業がここ数年の短期間のうちに集積し、発展してきたといえます。

 その急成長の背景には、上記の優れた人材の存在に加え、あらゆる業種の企業本社がクライアントとして多数存在していること、ウォール街を中心とした金融機関やエンジェル投資家の旺盛な投資意欲が背後でベンチャー企業のスタートアップを支えている、といったニューヨークならではの利点があげられます。


 また、ニューヨーク市が行ったオフィス賃料の減額や固定資産税減免などの行政サイドの支援や、同エリアのNPO組織や業界団体が提供する各種のプログラム(投資家とベンチャー企業との交流など)が側面から効率的に機能している、という点も見逃せません。


 一方、シリコン・バレーにしてもシリコン・アレーにしても、ここへ来ていろいろな問題を抱えているのも事実です。

 シリコン・バレーでは近年、オフィス賃貸料が著しく高騰しており、同じく上昇している人件費などに対応しきれない企業が、州都であるサクラメントやワシントン州などといった新たな土地へ移転する動きがはじまっていますし、シリコン・アレーでも、賃料が5、6年前に比べて3〜4倍程度にも高騰し、立地の困難さを避けてコネチカット州やニュージャージー州に移転する動きもみられます。


 また最近指摘されるようになった景気の減速傾向の中、一時のハイテク神話が崩れ、十分な収益性が維持できず倒産に追い込まれるドットコム企業も増えているなど、個々の企業の経営内容は必ずしも良いとばかりはいえません。


 ただいずれにしても、全米に広がるこれらのハイテクエリアにおいて、新大陸入植時から受け継いだ独立性・創造性に基づく高い企業家精神(アントレプレナーシップ)やチャレンジ精神に富んだ数多くの起業家たちが、今後ともベンチャー企業をスタートアップし、投資家たちの支援を得ながら成長・発展し、引き続き米国経済の活力を支えていくであろうことは疑いありません。

23丁目交差点付近

シリコンアレー発祥の地といわれる5番街・ブロードウエーが交わる23丁目交差点付近。正面にDouble Click社(インターネット広告)の「Welcomes you to SILICON ALLEY」のサインが見える