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合弁での教訓活かし、独資で大連に生産工場を開設

旭計器株式会社
サーモスタット 旭計器が中国・大連に進出したのは1995年。合弁とせず独資とした。
背景にはタイでの合弁事業の“苦い経験”がある。その経験を活かした結果、大連工場(大連旭計器有限公司)は順調に業績を伸ばしている。

価格設定で合弁の難しさを痛感
タイで始まった海外展開

多賀新吾常務・サーモスタット事業部長
多賀新吾常務・サーモスタット事業部長

 旭計器は1989年、タイに合弁会社、旭計器タイランド(A.I.T)を設立している。合弁のパートナーはタイの家電メーカー。出資比率はタイ側51%、旭計器49%。A.I.Tは原則として製造のみを担当し、販売は旭計器が主管することとした。

 旭計器の事業は、デジタルパネルメーターや変換器などの電子計測機器とサーモスタットの製造・販売が二本柱。当時は、サーモスタット価格競争が激化していたことに加え、主要な取引先である家電メーカー各社が相次いで生産拠点を東南アジアにシフトしており、そうした状況に対応するため、サーモスタットの生産工場をタイに設立したのである。

 タイの合弁工場は月に約100万個のサーモスタットを生産し、事業は順調に発展、利益も計上していたが、これは立ち上げ時の赤字補填を行うため、旭計器の買い上げ価格を高めに設定していたことが主因。だが、日本の家電メーカーからの値下げ要求はさらに厳しさを増し、旭計器は逆ざや販売の可能性も出始めた。そのため同社はパートナーに買い上げ価格の引き下げを提案したが、パートナーはこれに難色を示した。パートナーは市況価格を認識せず「旭計器は、値下げするといいながら実は従来通りの価格で販売し、その差額を搾取してしまうのではないか」と疑っていたようである。

「価格は据え置き、その分の利益を配当で分配しようとタイ側は申し入れてきましたが、これでは、価格政策を立てることができません。文化の違いもあったのでしょうが、合弁の難しさを痛感させられる結果になりました」同社で海外事業も統括する多賀新吾常務・サーモスタット事業部長が振り返る。

値下げ要求拡大で大連進出を決定
今度は独資を前提に計画

 同社が製造するサーモスタットは数センチ位のものが多く、ほとんどがユーザーの求める仕様でつくるオーダーメード品かつ小ロット品であるため、自動化しにくい面がある。したがって国内でのコスト削減には限界があり、顧客からの値下げ要求に対しては、どうしても賃金の安い海外での生産を拡大する必要があった。そのため同社は1990年代に入ると、中国での生産を検討するようになっていた。ただしタイでの経験を踏まえ、中国に進出するとしたら独資で、と決めていたのだった。

 進出先としては当初、深センを考えていた。だが同社の親会社の電機メーカーが大連に工場を持ち、グループ企業の数社も当地に出ていたことから最終的には大連を選択した。大連なら役所とのパイプもできていて、比較的短期間に営業許可を取ることができると考えられたのだ。各種の手続きや情報などについても、親会社からさまざまなアドバイスや支援を受けることができ、スムーズかつスピーディーな設立が実現した。
「なじみのある土地ですし、急いでいたのでそれほど綿密な調査はしませんでした」

 という多賀常務だが、この当時、外資企業に対する優遇税制が1995年末に廃止される予定になっていた。結果的には期限が延長されたのだが、同社としてはなんとか優遇措置を受けるべく、急ぐ必要があったというわけだ。

自前で工場建屋を建設
食堂つきの寮も完備

1995年末に設立された大連旭計器
1995年末に設立された大連旭計器

 初期投資を抑えるため、工場は借りる予定だった。けれども大連では、1階が空いている適当な貸し工場がなかった。サーモスタットの製造にはプレス機を使うので、2階では無理なのである。そのため大連の工場団地に5000平方メートルの土地を入手し、独自に工場を建設することにした。こうして1995年12月、資本金2億2000万円で大連旭計器有限公司を設立登記。同月末に営業許可が降りたので工場建設に着工した。

 このとき同社は工場で働くワーカーのために食堂を備えた寮も建設。ワーカーは全寮制にした。
「タイでは経済的なこともあってきちんと食事をとらないため、就業中に倒れる従業員がいました。そうしたことを防止するため、寮の食堂で1日3食を食べられるようにしました」(多賀常務)

 大連旭計器の操業開始は97年2月。従業員113名でスタートした。
その後徐々に生産主体をタイから大連に移し、タイのA.I.Tはパートナーとの合意の下、2000年に生産を中止した。(正式な解散は2001年)

2003年には第2工場も稼働
販売拠点も次々と強化

多賀常務(右)と王副総経理(左)。従業員は帽子の色で階級を区別している。
多賀常務(右)と王副総経理(左)。従業員は帽子の色で階級を区別している。

 大連工場では製品の販売先があらかじめ確保できていた。技術指導は日本から社員を派遣して実施した。タイ工場とは違い、今度は独資なので製造も販売もすべて同社の考えたとおりに行うことができた。その結果、業績は順調に伸び、操業開始から3年目の2000年には黒字を計上し、2003年には累損を一掃した。

 その間、1999年と2000年に増資を行い、新たに5000平方メートルの土地を入手して将来の拡張に備えた。2003年9月には会社のすぐそばの賃貸工場1000・を借り、第2工場として稼働させた。現在の資本金は3億4700万円で、2003年の売上高は約8億2000万円。従業員も大きく増加し、現在では約500人に達している。操業開始時に比べると約4倍である。

「従業員の定着率はとてもいいですね。ワーカーはやめる人間がほとんどなく、管理部門のスタッフも設立時からいる人間ばかりです。現在、常駐している日本人は総経理、製造部長、営業部長の3人。副総経理兼管理部長を現地人の女性に任せていますが、とても優秀ですし、その他のスタッフも確実に育ってきています」

 大連で製造している製品の販売先は、中国国内が30%、台湾、香港などの東南アジアが40%、欧米15%、日本15%。中国や東南アジアの販売先には日系企業も多い。東南アジア向けの販売拠点として同社は96年にシンガポール駐在員事務所を開設。98年にはこれを現地法人の旭計器シンガポールに格上げした。中国国内での販売は、大連旭計器上海分公司が担当している。また、2004年9月には、中国華南地区の販売を強化するために、新たな現地法人、旭計器(香港)有限公司を開設した。

3チーム2交替制導入でフル操業
量産機種を移管、さらなる現地化へ

日本語教室は活況
日本語教室は活況

 また大連工場では生産効率向上とコスト削減を図るため、昨年から12時間勤務の2交替制を取っている。従業員を3チームに分け、各チームは日勤3日、1日休み、夜勤3日、2日休みというシフトで勤務する。こうすることで、ラインを止めることなく24時間フル操業の体制を取りやすくなったという。

「一番の悩みはQC活動などを導入してもなかなか身につかないことです。スタッフにはマネジメント教育をし、優秀な人間はワーカーからも登用していく方針を示しています。日本語を勉強したいという従業員向けには日本語教室も開いていますが、まだもう少し時間がかかりそうです。核となる人材を育てるため毎年定期的に中国の大卒を採用し、日本で日本語の勉強をさせましたし、ワーカーも毎年7〜8人を福島工場に派遣し1年間の実習を受けさせるようにしています」

 もう一つの問題は中国企業からの資金回収が難しいこと。現金の先払い取引にするなどの対策も講じているが、今年はやむを得ず支払いが半年以上遅れる企業数社との取引を停止した。

 大連工場でのサーモスタット生産量は月産200〜300万個。国内の生産拠点である福島工場の3倍以上の規模になる。
「お客さんのコスト引き下げの要望もあり、福島工場で製造している量産機種のものは、できるだけ大連に移管しています」

 すでに大連工場はISO9001も取得し、簡単な製品については設計も行っている。萩原春嬉社長は今後、高精度な製品についてもできる限り現地化を図っていく方針だ。

データ
代表取締役 萩原春嬉
資本金 5000万円
従業員 180名
事業内容 デジタルパネルメーター、高精度制御システム、サーモスタットなどの開発・製造・販売
本社 東京都大田区矢口2-33-6
電話 03-3759-6171
(2004年12月 掲載)
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