
海外展開を実施している中小企業の経営者を取材し、海外展開に関する経営判断の背景や取組み事例を掲載しています。

中小企業向け会計ソフトで知られるソリマチ(東京都品川区/新潟県長岡市)はベトナムでソフトウェアのオフショア開発を行っている。2011年2月には、てこ入れのため、本社の桜井康雄取締役がベトナム現地の社長に就任した。桜井社長は「将来はソリマチベトナムが日本のソリマチを支える存在になりたい」と意欲を燃やす。
【業種】コンピュータソフト開発・販売
【進出形態】現地開発(ベトナム、韓国)

ソリマチの製品
中小企業向け会計ソフト「会計王シリーズ」や、農漁業関連の自社パッケージソフトを開発・販売しているソリマチは2005年、現地資本のソフト会社サンタオ社に資本参加する形で、初めてベトナムに進出した。翌2006年には、サンタオ社と合弁でサンタオソリマチを設立。この時点ではサンタオ社の出資比率は30%であったが、2007年、サンタオソリマチの株式の95%をソリマチが取得し、社名もソリマチベトナムに変更した。
「これからグローバル企業を目指すためには海外拠点が必要です。ベトナムを選んだ最大の理由は、反日感情がほとんどない親日的で成長著しい若い国というところが大きかった。2012年には100%出資の子会社にする予定です」
ソリマチの取締役として、当初からベトナムでの事業にかかわってきた桜井康雄社長が言う。
同社は1987年、ソリマチベトナムより先に韓国に合弁企業を設立しており、合弁企業への出資は対等に近いが、ソリマチ自身は韓国での事業に最近はほとんどタッチしていない。同社の海外拠点は今のところ、ソリマチベトナムだけと言ってもよいだろう。
ソリマチベトナムの事業は現在、ソフト開発が中心となっている。当初はベトナム国内でのソフト販売も考えたが、最終的には開発だけにした。ソリマチはヒット商品『会計王』などの業務ソフトが主力だが、ベトナムと日本は会計基準も異なり、社会主義国家で法律や会計基準が通達などで突然変わることも多く、東南アジアの他の国と同様、違法コピーのソフトも横行している。そうした事情からベトナム国内での販売は当面延期している。
「今のところ、ソリマチが自社製品として日本で販売するソフトの開発を行っています。ソリマチが企画設計したものをソリマチベトナムで詳細設計とプログラミングを行い、テストを実施したうえでソリマチに引き渡しています」
ソフト開発の場合、工場のような大型設備や広い敷地は必要ない。ソリマチベトナムは、ホーチミン市内にある4階建てビルの2フロアをオフィスにしている。インフラが未だに脆弱なベトナムで、最も重要なのは電源の確保だ。プログラミングなどの作業中に停電になれば、データがすべて消失しかねない。そのため発電機を備えた建物を選ぶことが肝心で、パソコンなどには無停電装置をつけることも必須だ。同社が入居するビルは発電機があり、すべてのパソコンは無停電装置と接続されている。もっともホーチミン市の場合、以前に比べると停電の回数は減った。桜井社長によれば、2〜3カ月に1回程度だという。
社員数は38名。日本人社員は桜井社長以外に1名だけ。

ソリマチベトナム社員と桜井康雄社長(左端)
「こちらに赴任する前も月に一度は様子を見に来ていましたが、事業規模はほとんど拡大していませんでした。日本の景気が低迷して仕事が増えなかったという側面もありますが、やはり日本人がトップとしてベトナムに赴任し、日本もベトナムに力を入れていく姿勢を見せないと業績は伸びないと判断し、私が着任することになったのです」
桜井社長は、ベトナム人について「真面目で優秀」と評価している。現地に常駐するようになっても、基本的にその評価は変わらない。だが、毎日接触していると、出張ベースでは見えなかった部分も見えてくるようになった。
「最初は習慣や考え方の違いに驚いてばかりでした」
そう言って桜井社長はまず、ベトナム人社員が挨拶をしないことをあげた。朝、出社した桜井社長が「おはよう」と声をかけても返事はないし、ベトナム人社員同士でも「おはよう」と言う挨拶の習慣はない。
また、朝の始業時間が過ぎても、社内で朝食を食べている社員がいることにも驚いた。ベトナム人は朝早くから活動するため朝食は外で食べることが多く、外食するか、弁当を買って会社で食べるのが一般的だ。社内で食べるにしても日本人なら始業時間前に済ませるのが普通だが、ベトナム人社員たちは始業時間になっても食事をやめない。

ソリマチベトナムの開発スタッフたち
遅刻も多かった。遅刻してきた社員に注意をすると、「道が渋滞していたから」など、必ず言い訳をする。そもそも彼らは謝罪をしない。遅刻しても、仕事でミスをしても、「すみません」と謝ることがない。
「『わかりません』と言うこともほとんどありませんね。明らかにわかっていないのに、絶対に『わかりません』とは言わない。外資系のIT企業に就職できるベトナム人は高い教育を受けている人が多く、国のなかでもエリートの部類に入るのでプライドが高いのでしょう」
基本的には真面目な民族なので、注意すればそれなりに改善しようと努力はする。同社は同業他社に比べて社員の転職率も低く、まじめで地道な社員が多いというのが桜井社長の印象だ。実際、赴任した当初に比べて遅刻はだいぶ減ったという。だが、ほかにも仕事にかかわることで困る部分も多い。たとえば、日本人のビジネス感覚のように長期的な予定や展望を考えることに慣れていないため、業務スケジュールひとつ立てるのにも時間がかかることがある。また、同僚が大声で話していたり、仕事に関係のないサイトを見ていても、誰も注意しない。
「他人を注意したり、評価するといった習慣がないので、彼らが管理職になっても人事評価ができるようになるまでに時間がかかるという問題があります」
さらに今、一番大きな問題は日本語能力のレベルだ。ソフト開発に携わるベトナム人社員の多くは、辞書を片手に日本語の仕様書を読むことはできる。だが、日本語には曖昧な表現が多い。日本人なら“行間を読む”が、ベトナム人には難しい。そのため日本語のニュアンスがわかるベトナム人を通訳として雇用しているが、それではどうにも生産性が上がらない。これらの事情から、桜井社長は日本語教育に最大の努力を払っている。
「いずれは日本に派遣して、日本語や日本の仕事の進め方を実地で教育したいと考えています。今はとにかくベトナム人社員が何を考えているのかを知りたいので、できる限り彼らとコミュニケーションをとるようにしています。最近はベトナム人社員とマンツーマンでランチを一緒に食べるようにしています。彼らは昼寝する時間がなくなるので迷惑そうな顔をしていますがね」
そう言って桜井社長は苦笑する。
日本とベトナムでは文化も習慣も異なる。ベトナムでは毎年、旧正月(テト)前に“13カ月目の給与”を支払う習慣があり、これが実質的にボーナスの役割を果たしていることや、外資の持ち出しに規制が多いといった社会主義国的な一面もある。そうしたことを了解したうえで、桜井社長は「ベトナムは良い国」だとにこやかに語る。
「いきなり日本的な管理を押し付けても理解できないでしょうから、2012年は1年かけて基盤を整備するつもりです。人事評価制度をつくることも検討しています。個々の能力は決して低くないので、日本的な仕事の進め方を理解させて意識を変えていけば、もっと業績を伸ばすことは可能だと思います。将来はソリマチの仕事だけではなく、ベトナムの現地企業向けのソフト開発などもやりたいですね。日本国内の市場がこれ以上、大きくなる可能性は少ないでしょう。でも、ベトナムの経済や産業はこれからが成長期。ソリマチも、いずれはベトナムに拠点があってよかったと思うようになるでしょう」
10年、20年先を見据え、じっくり、確実にソリマチベトナムを育てていく。それがソリマチの基本的な考え方である。
◆“ベトナム時間”を受け入れる
ベトナムでは法的な申請なども時間通りに進まない。「1週間」と言われたら2〜3週間はかかる。時刻通りの日本的な仕事の進め方は難しいと考えた方がよい。余裕を持って待つことが肝要。
◆いちいち腹を立てない(寛容になる)
仕事のミスをしても謝らない人が多いが、そういう文化だから怒っても仕方がない。指摘を繰り返すのみ。
◆アジアでは日本が異端だと考える
日本的常識は通用しない場合が多々ある、日本的常識は一度捨てた方がよい。
| 代表取締役社長 | : | 反町秀樹 |
|---|---|---|
| 所在地 | : | <東京本社>東京都品川区東五反田3−18−6ソリマチ第8ビル <新潟本社>新潟県長岡市表町1−4−24ソリマチ第3ビル |
| 設立 | : | 1972年 |
| 資本金 | : | 4950万円 |
| 従業員数 | : | 128名 |
| 事業内容 | : | 業務・農業・漁業用の自社ブランドパッケージソフトの企画・開発・販売・サービス提供。各種コンピュータシステムの開発受託、データ入力受託、受託計算 |
| 電話番号 | : | <東京本社>03−5475−5301 <新潟本社>0258−33−4435 |
| ホームページ | : | http://www.sorimachi.co.jp/ |
(2012年2月 掲載)
各コンテンツの内容につきましては、すべて掲載時点のものです。
各種規制の変更等により、数値や内容が現在のものと相違する場合がございますのでご注意ください。
個別具体的な質問については、国際化支援アドバイス支援(無料)をご利用ください。
中小企業の方々の海外事業展開(海外投資・国際取引)に関する課題に対し、海外経験が豊富な国別・分野別の専門家(経営支援専門員・国際化支援アドバイザー)が個別アドバイスを中小機構本部・近畿本部では毎日、各地域本部では定期的に行っています。