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省エネルギー関係Q&A

皆さまから寄せられたご質問の中から、代表的なものをQ&Aとしてご紹介します。なお、本Q&Aは省エネ法や省エネ対策のための参考情報です。最終的な判断は、専門家等に確認するなどして皆さまの責任で行ってください。
 

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参考ページ

省エネ相談窓口のご案内

      
Q1 燃料ガスの原油換算エネルギー使用量の求め方を教えてほしい。
Q2 LED照明の動向を教えてほしい。
Q3 エレベータの部分停止による省エネ効果は?
Q4 エアコンの頻繁なオン・オフは、どうして省エネにならないの?
Q5 節電と(電気の)省エネは違うの?
Q6 エネルギー消費原単位と省エネの関係は?
Q7 ボイラー性能の簡易的な管理方法について教えてほしい。
Q8 熱損失側からボイラー熱効率を求める方法を教えてください。
Q9 実運転でのボイラー熱効率を求める方法を教えてください。
Q10 蒸気の乾き度を求める方法を教えてください。
Q11 蒸気圧力を下げたときの省エネ効果の求め方は?
Q12 圧縮空気システムの省エネのポイントは?(その1:吐出圧力の低減)
Q13 圧縮空気システムの省エネのポイントは?(その2:吸込み湿度の低減)
Q14 圧縮空気システムの省エネのポイントは?(その3:異なる仕様圧への対応)
Q15 都市ガス使用時に省エネ法で求めた総熱量と東京都等の環境条例等で求めた総熱量に微妙に差異が生じる理由は?
Q16 省エネ法は改正されたの?(その1:電気需要平準化評価原単位について)
Q17 省エネ法は改正されたの?(その2:電気需要平準化時間帯と評価係数について)
Q18 涼風扇(装置)の省エネ効果は?
Q19 平成25年度の夏季節電実績と冬季節電方針は?
Q20 我が国は京都議定書を批准し第一約束期間(2008年〜2012年度)での暗室効果ガスの排出量を基準年比で6%削減することを約束したが、達成状況は?
Q21 国連気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)について教えてください。
Q22 改正省エネ法はいつから施行されるの?
Q23 空調機の性能表示のCOPとAPFの違いは?
Q24 低炭素社会と水素社会って?
Q25 省エネに取り組みたいと思っているが、勉強会資料や手引き資料はありますか?
Q26 資源エネルギー庁主催の改正省エネ法説明会に参加しました。
Q27 空調の除湿運転が省エネにならない理由は?
Q28 建物の高断熱化と室内湿度制御について。
Q29 一次、二次エネルギーと最終エネルギー消費の違いは?
Q30 2013年度冬季の電力需給結果と2014年度夏季の電力需給の見通しは?
Q31 直管LEDランプの規格について。
Q32 省エネに取り組みたいが、どのように進めればよいか?
Q33 実揚程の大きなポンプにインバータを取り付けても省エネ効果が少ないのはなぜ?
Q34 EB、ZEHって何?
Q35 実排出係数と調整後排出係数って何?
Q36 改正省エネ法の「電気の需要の平準化に資する措置」って何?(その1)
Q37 改正省エネ法の「電気の需要の平準化に資する措置」って何?(その2)
Q38 改正省エネ法の「電気の需要の平準化に資する措置」って何?(その3)
Q39 誘導灯と非常灯の違いは?
Q40 デカップリングって何?
Q41 冷媒って何?
Q42 超低温冷蔵(マグロの冷蔵に求められる温度)について。
Q43 空気圧縮機の排熱が暖房に利用できます。
Q44 LED照明でのブルーライトハザードって何?
Q45 省エネ法の原油換算係数と原油の発熱量や、昼間と夜間の発熱量に差異があるのはなぜ?
Q46 トップランナーモータが2015年度からスタートします。
Q47 油圧ユニットの省エネのポイントは?
Q48 PAL*(パルスター)って何?
Q49 蒸気輸送管からの放熱について。
Q50

蒸気圧低減に伴う蒸気配管からの放熱効果について。

Q51

フラッシュ蒸気って何?

Q52

冷凍・冷蔵(倉)庫の設定温度緩和はどの程度有効?

Q53

凝縮器(室外機)に対する省エネ対策は?

Q54

蒸発器(冷却器)周りの省エネ対策は?

Q55

冷凍・冷蔵(倉)庫扉に対する外気侵入防止策は?

Q56

LED照明へ更新を図ることによる省エネ効果は?

Q57 2015年度の夏季節電と節電・省エネキャンペーンについて
Q58 フロン排出抑制法と省エネの関係性は?
Q59

エネルギーミックスとは?

Q60

コージェネレーション設備導入による電源分散でどのような効果が見込める?

Q61 前号のエネファームについて教えてください。
Q62 水銀に関する水俣条約が高天井用照明に及ぼす影響は?<(1)セラミックメタルハライドランプ>
Q63 水銀に関する水俣条約が高天井用照明に及ぼす影響は?<(2)無電極ランプ>
Q64 水銀に関する水俣条約が高天井用照明に及ぼす影響は?<(3)高天井用LEDランプ>
Q65 エアコンの霜取り運転の目的と省エネ
Q66 省エネ視点でのクランクケースヒータの活用方法は?
Q67 今後の省エネルギー対策の方向性は?<「徹底した省エネルギー推進」に向けて(省エネルギー小委員会 取りまとめ)>
Q68 COP21で採択されたパリ協定について教えてください
Q69 建築物への省エネ対策の効果量算定方法は?<その1: 屋根への高反射塗料施工>
Q70 建築物への省エネ対策の効果量算定方法は?<その2: 断熱強化>
Q71 建築物への省エネ対策の効果量算定方法は?<その3: 窓の二重窓化>
Q72 湯面からの放熱量の算定方法と削減対策について教えてください
Q73 レシーバタンク増設による空気圧縮機の省エネ効果の試算方法は?
Q74 変圧器(トランス)の役割について教えてください
Q75 トップランナー変圧器について教えてください
Q76 変圧器の統合について教えてください
Q77 (受電)力率とは?
Q78 力率の改善方法について教えてください
Q79 契約電力と30分デマンド値の関係について教えてください
Q80 デマンド監視装置について教えてください
Q81 BEMS、FEMS、CEMSなどのエネルギー管理システムについて教えてください
Q82 「省エネ」の英訳は?
Q83 省エネ・創エネ・蓄エネの違いについて教えてください
Q84 省エネ法に基づく「事業者クラス分け評価制度」について教えてください
Q85 ピンチテクノロジーについて教えてください
Q86 熱複合線図の作成方法と最少必要加熱/冷却熱量について
Q87 熱プロファイル(SSSP)解析について
Q88 R曲線(R-Curve)解析について
Q89 省エネ法における判断基準について教えてください
Q90 省エネ法における管理標準とは?

(Q1)

燃料ガスの原油換算エネルギー使用量の求め方を教えてほしい。
(A1)

事務所、工場などでは電気やガスなど異なるエネルギーを使用しています。

この異なるエネルギーの大小を比べる物差しが原油換算エネルギー使用量であり、次式に示す通り、発熱量と原油換算係数を乗じることで原油換算エネルギー使用量〔kL〕を求めます。

原油換算エネルギー使用量〔kL〕=発熱量〔GJ〕×0.0258〔kL/GJ: 原油換算係数〕

ここで、発熱量は次式で求めます。

発熱量〔GJ〕=エネルギー使用量〔U〕×単位発熱量〔GJ/U〕

単位発熱量はエネルギーの種類ごとに、エネルギーの使用の合理化に関する法律施行規則の別表に定められています。例えば、昼間電力では9.97GJ/千kWh、A重油では39.1GJ/kLです。また、燃料ガスについては、石油ガスと可燃性天然ガスの単位発熱量が規定されていますが、規則4条で「前号に規定する燃料以外の燃料にあっては、発熱量を原油0.0258 kL/GJとして換算すること」とあり、発熱量を求める必要があります。

【参考】エネルギーの使用の合理化に関する法律施行規則(総務省法令データ提供システム)(新規ウィンドウに表示)

一般に、燃料ガスはメタン、エタン、プロパン、ブタンなどの混合物であることが多く、単位発熱量は組成により大きく異なります。このため、燃料の単位発熱量は燃料ガスの供給事業者に問い合わせることが必要です。なお、工場などで副生ガスを燃料として使用されている場合など燃料ガスの供給事業者がいない場合は、組成ごとの高位発熱量と割合から副生ガスの単位発熱量を求めることで、発熱量が求められます。

 

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(Q2)

LED照明の動向を教えてほしい。

(A2)

LED照明は、省エネ性能が高く(発光効率が高く)、長寿命(約4万時間)であることに特長があります(出典「LED照明産業を取り巻く現状」経済産業省作成)。

LED照明の省エネ性能

また、LED電球は白熱電球と電球形蛍光ランプとの購入費用と電気代を合算したコストの比較において、約820時間で白熱電球を、約6,000時間で電球形蛍光ランプを逆転します。LED電球の価格は2009年を基準として3分の1以下までに急激に低下しています(出典「LED照明産業を取り巻く現状」経済産業省作成)。

白熱電球・電球形蛍光ランプ・LED電球のコスト比較

以上を踏まえ、平成22年6月に「高効率次世代照明(LED照明、有機EL照明)を、2020年までにフローで100%、2030年までにストックで100%普及させる」目標が閣議決定され、普及が加速しています。

一方で、LED照明は、1990年代に青色発光ダイオードが開発されて以降に実用、市販化された照明であり、市場の一部には実態とかけ離れた性能を表示している商品もあるようです。その理由の一つとして、「測光」の難しさが挙げられています。このため、第三者認定機関(JNLA制度)の活用や規格化(JIS C8158 平成24年11月20日制定)などが進められています。

 LED電球への交換の場合は、口金サイズ、全光束(ルーメン(lm))、配光、光源色や演色性などから、選定すると良いでしょう。

詳しくは、日本照明工業会のウェブサイトを参照ください(新規ウィンドウ表示)。

なお、技術の進歩によりLED電球の消費電力の低下が予想されるため、従来の「ワット(W)」表示から「ルーメン(lm)」表示に統一されました(出典「誰にもわかるLED照明」日本照明工業会)。
 

 

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(Q3)

エレベータの部分停止による省エネ効果は?
(A3)

環境省の温室効果ガス排出抑制等指針のホームページ(新規ウィンドウ表示)では、対策メニューの一つとして「利用の少ない時間帯における昇降機の一部停止」が取り上げられているのに対し、東京都環境局の地球温暖化対策のホームページ(新規ウィンドウ表示)では、事業所向け『賢い節電』7か条の第6条として「エレベータの停止など効果が小さく負担が大きい取組は、原則的に実施しない」と記されています。
以下、エレベータの部分停止による省エネ効果を考えてみます。

エレベータ2基を有する同所6階建てビルでの実測調査(出典: 電力中央研究所報告 エレベータの運転台数変更による省エネルギー効果と利用者便益の変化に関する定量的研究)によると、運転基数を2基から1基に変更すると、電力削減量は0.7%にとどまり、利用者の待ち時間は53%も増加したそうです。エレベータの待ち時間が30秒を超えるとイライラが高じたり、ビル内の移動に時間がかかったりするため、多くのビルでは出退勤などのピーク時でもエレベータの待ち時間が平均30秒以下になるように設計されているようです。

また、エレベータ4基を備えた10階建てのビルで1基を止めた際のシミュレーション(出典: 電力中央研究所報告 エレベータの省エネ運用による省エネ効果と利用者便益の変化)によると、1時間あたり800人が平均待ち時間30秒以内にエレベータを利用できていたものが、1基を停止させただけで最大待ち時間は約140秒と4.5倍に達する結果となり、30秒以下となるには利用者が500人までに制限されるとの結果が得られたそうです。

また、一般社団法人日本サステナブル建築協会が平成23年5月に纏めた緊急提言(DECC に基づく業務用建築物の夏季節電方策に関わる緊急提言)によると、「大規模ビルでエレベータの稼働率を現状の半分にしても、ビル全体の節電効果としては1%程度」とあり、「大規模ビルで照度を50%に抑制できたとしたときの省エネ効果が9〜18%」に比べ、省エネ効果は極めて限定的だと言えます。

以上の報告から、エレベータの節電対策には電力量の削減効果と利用者の利便性のバランスを考えて判断する必要があるようです。「近くのフロアに移動する場合、極力エレベータを使わない」、「利用の少ない時間帯にだけエレベータを部分停止する」などは利便性を損なわず省エネ効果が見込まれる対策と言えます。いずれにしても、他の省エネ対策と同様、定量的な省エネ効果の裏付けの下に、優先順位をつけ実施することが必要と思われます。

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(Q4)

エアコンの頻繁なオン・オフは、どうして省エネにならないの?
(A4)

例えば、NHKの番組(あさイチ)では、「連続運転と間欠運転(30分ごとのON・OFF)をした場合とで実験してみると、間欠運転をした方が、連続運転をした時より40パーセントも余計に電力がかかっていた」との紹介がありました。また、東京都の「家庭向け賢い節電7か条 <夏>」の第4条では、「実際の室温で28℃を目安に、それを上回らないよう、エアコンや扇風機などを上手に使う。 <湿度の高い日は、室内温度を下げたほうが省エネに>」と記され、このための取組の6.として、「30分程度の外出であれば、エアコンを付けたままにして消さない」とより具体的な提案がなされています。

関西電力での実験(エアコンを28℃で120分運転した場合とエアコンを5分間停止した後28℃で115分間運転した場合の消費電力)での時間ごとの消費電力の推移は下のグラフ(出典:関西電力ウェブサイト)のとおりでした(新規ウィンドウ表示)。

エアコン運転時の消費電力グラフ

エアコンを停止したことで室温が上昇し(上記実験では5分間停止したことで室温が27.3℃から30.2℃まで上昇)、この上昇分を30分くらいかけて大パワーで元の状態に戻し、設定温度になると低速運転に切り替えていることがうかがえます。

エアコンの性能を表す指標としてCOP(成績係数)が用いられます。COPは消費電力1kWあたりの冷却・加熱能力を表した値であり数値が大きいほど性能が良いことを示しています。COPは下のグラフのとおり、冷房負荷が大きいほどCOPが低くなります(出典:電力中央研究所報告「研究報告」:R09017)。

冷房負荷とCOP推定との関係グラフ

以上から、

  1. エアコンを停止すると(冷房期には)室温が上昇し、エアコンの設定器(リモコン)との温度かい離が大きくなる
  2. 再稼働すると、エアコンは短時間で設定温度となるようにエアコンの自動制御に従い大パワーで動作する
  3. 大パワーのためCOPも相対的に低くなり、電力消費量(電力消費量は消費電力の時間推移図では面積として表されます)が大きくなる
  4. 一方、連続運転をした場合は温度かい離が少なく低負荷での長期安定運転が可能となり、COPも高く、結果として電力消費量も少なくてすむ

こととなります。

室温上昇には上限があるため、停止時間が長くなれば連続運転した時より電力消費量は少なくて済みます。

「何分くらいエアコンをOFFにしておけば節電になるか?」は、外気条件、住宅仕様やエアコンの制御方法(エアコンメーカのノウハウであり公開されていません)により変わるため、一律に論ずることは困難ですが、東京都の提案の通り、30分が目安となるでしょう。

複数台の空調設備により空調を行っている(個別空調方式と呼びます)オフィスビルや工場が多数あります。これらの複数の空調設備を順番にオン・オフをする制御方法もあります。この制御の目的は最大電力(kW)の抑制であり、電力使用量(kWh)の抑制には上記と同じ理由で多くの効果は期待できません。したがい、オフィスビルや工場においても、省エネルギー(電力使用量の削減)を目指すなら空調設定温度の緩和が最も効果的です。

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(Q5)

節電と(電気の)省エネは違うの?
(A5)

節電は夏季や冬季の特定時間帯(夏季の節電であれば特に13時から16時まで)の電力(kW)の削減を、電気の省エネは長期間(省エネ法では4月から翌年3月までの1年間が基準単位)の電力使用量(kWh=kW×使った時間)の削減を、それぞれ求めています。

東日本大震災による福島原発事故とその後の全国の原子力発電所の運転休止は電力需給バランスの破綻(電力供給力の不足)を招き、節電要請は東日本大震災直後の2011年夏季から始まりました。

下図は夏季平日の日負荷曲線のイメージを示しています(出典:経済産業省「夏季の節電メニュー」)。図から使用電力(kW)が時間帯で大きく変動し、最大電力を抑えることが電力供給力の不足解消に効果的であることが理解されます。

夏期平日の電気の使われ方(イメージ)

一方、省エネ法では「エネルギー原単位を年平均1%以上改善」することを求めているため、1年間で使用した電力使用量が基準となっています。つまり、継続的な節電が電気の省エネとなります。

電力供給量の鈍化や電力料金の高騰が予想される中、企業にとり省エネ(省電力)構造の構築は火急の課題と考えます。

オフィスでできる節電対策として、環境省がホームページ上で7つの提案(オフィスでできる節電アクションを行っています(新規ウィンドウ表示)。

検討の上、取り組まれることを希望します。

 

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(Q6)

エネルギー消費原単位と省エネの関係は?
(A6)

エネルギー消費原単位とは、 単位量の製品や額を生産するのに必要な電力・熱(燃料)などエネルギー消費量の総量のことで、エネルギー効率を表しています。

省エネ法では、事業者単位(企業単位)でエネルギーを一年間で原油換算1,500kLe以上使用している事業者は中長期的にみて年平均1%以上のエネルギー消費原単位の低減に努めることを求めています。
エネルギー消費原単位はその定義から、省エネルギーの進捗状況をみる指標として使用されています。例えば、我が国のエネルギー白書では製造業のエネルギー消費の動向がエネルギー消費原単位の年度推移図として毎年、掲載されています(出典 :資源エネルギー庁 エネルギー白書2013)。

製造業のエネルギー消費原単位の推移

【 図-1 】で読み取れるように、長期的にはエネルギー消費原単位は下降しており省エネルギーが進捗していることが理解できる一方で、1990年以降は上昇傾向もみられます。製造業は生産コスト低減の観点から省エネルギーに積極的に取り組まれている業種であり、上昇傾向は製造業の方々にとり違和感を覚えるのではないでしょうか?
このような結果となる理由の一つとして、設備の稼働率の低下が考えられます。設備は生産量に関わらず一定量のエネルギーを使用するため、稼働率が低い場合はエネルギー消費原単位が増加する傾向があります。
【 図-2 】は海外のビール工場での生産量とエネルギー消費原単位(スチーム利用量原単位)の関係を示しています(出典:平成23年度環境省委託事業 「南アフリカ・ビール飲料工場における省エネ活動を通じた原単位法に基づく新メカニズム実現可能性調査」報告書)。
 

生産量とエネルギー消費原単位の関係

【 図-2 】から、生産量とエネルギー消費原単位は密接な比例関係にあり、生産量が増えるほどエネルギー消費原単位が減少していることが分かります。
【 図-2 】の関係は同じ設備であれば一般的に成立する関係であり、省エネを目指す上では設備の稼働率を高く維持することが重要であることが理解できます。この点から言えば、不使用時には設備を停止する、複数系列がある場合は設備の統合を図るなどは効果的な方法です。
また、エネルギー消費原単位でエネルギー管理を行う場合は、エネルギー消費原単位算定の基準となった製品や生産額をも同時に記録し、図-2のような両者の関係として整理(見える化)することをお勧めします。このような図を月・週・日単位で作成、管理することで設備の不具合兆候の早期発見や、過年度データと比較することで省エネの進捗具合を定量的・客観的に把握することができます。
 

 

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(Q7)

ボイラー性能の簡易的な管理方法について教えてください。
(A7)

ボイラー熱効率はボイラー性能そのものであり、ボイラーが設計通りの熱効率を発揮しているかどうかを管理することは省エネを進める上で極めて重要です。そのため、省エネ法では、燃料の供給量、排ガス温度、排ガス中の残存酸素量等の計測及び記録に関する管理標準を設定し、定期的に計測し、その結果を記録することを求めています。
排ガス中の残存酸素量は酸素濃度計で測定しますが、ボイラーに取り付けられていない方が多く、大気汚染防止法による煤煙測定まで待たないと排ガス中の残存酸素量が分からないこともあるようです。多くのボイラーは燃料を使用しているため未燃分や排ガス中の煤がボイラーチューブの外表面に、また、給水中のスケール分がボイラーチューブの内表面に、それぞれ付着することで、伝熱性能が運転時間の経過とともに悪化する(ボイラー熱効率が低下する)傾向があります。このため、大気汚染防止法による年2回の測定や一般的な月1回のボイラー熱効率の算定では、悪化傾向を迅速に把握することができない恐れがあります。
熱効率の定義は入熱に対する出熱の割合であり、入熱は「(燃料消費量) × (燃料の発熱量)」で、また、出熱は、蒸気ボイラーでは、「(実蒸発量) × (蒸気の比エンタルピー − 給水の比エンタルピー)」で、表されます。実蒸発量は文字通り実際に発生した蒸気量であり、ボイラー供給水量ではありません。また、蒸気中には飽和水が含まれている(蒸気の乾き度が1.0でない)こともあり、出熱を正確に算出することはかなり困難です。
ボイラー性能の経時変化をタイムリーに捉える方法として、燃料使用量に対するボイラー給水量の比率(「蒸発倍率」と呼びます)を時間・日・月単位でグラフ化(見える化)する方法があります
下図は同業種の三工場の蒸発倍率の月次推移を示しています。蒸発倍率は調査期間(平成23年1月から平成24年6月)において変動しているものの、期間平均値は三工場ともほぼ同レベルであること、A工場の月ごとの蒸発倍率の変動はB工場に比べ極端に大きいことが分かります。したがって、蒸発倍率に減少傾向に現れた時に原因を究明し改善策を実行できれば、ボイラーを高性能で運用でき省エネを達成することができます。
 

蒸発倍率の月次推移

蒸気圧力などの発生条件やボイラー給水源を変更しない限り、同じボイラーであれば、ボイラー給水量と実蒸発量は一定の関係にあり、加熱に必要な比エンタルピー(蒸気の比エンタルピー − 給水の比エンタルピー)も変わらないと考えられます。つまり、蒸発倍率はボイラー熱効率の傾向と一致します。燃料消費量やボイラー供給水量は多くのボイラーで標準的に計測可能です。時間・日・月単位のボイラー管理方法として、採用されることをお奨めします。

 

 

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(Q8)

熱損失側からボイラー熱効率を求める方法を教えてください。

上記A7によると、ボイラー熱効率は、入熱に対する出熱の割合であり、出熱を正確に算出するのは難しいということですが、前述の方法以外にボイラー熱効率を求める方法はありませんか?

(A8)

あります。
まず熱損失を求め、次に入熱から熱損失を差し引くことで出熱を求める。そこから出熱と入熱の割合を求めることでボイラー熱効率を算出する熱損失法という方法です。実は、JIS(B8222 陸用ボイラ−熱勘定方式)で規定されているボイラー熱効率は熱損失法で求めていますし、熱損失法はボイラー以外の熱設備の熱効率算定にも適用可能な算定方法です。JISではボイラー熱効率を、連続燃焼時で、かつ、ブローをしない状態で試験・計測し、入熱は燃料の低位発熱量基準(注1)で表示することを規定しています。ボイラーのカタログに記載されている熱効率はこの方法で算定しています。
JISでの蒸気ボイラーの熱損失は、(1)排ガスが持去る熱量(2)ボイラー壁からの放散熱量の2項目となります。

(1)は、燃料の種類、ボイラーを出る排ガス温度と空気比(注2)から一義的に求められます。下図は、都市ガス(13A)とA重油燃料について、横軸に空気比、縦軸に排ガス損失率、パラメータとしてボイラーを出る排ガス温度選び、関係を表示しています。空気比を1.0近くとすることで、また、排ガス出口温度を低くすることで、排ガス損失率を低く抑える(ボイラー熱効率を向上させる)ことができます。省エネ法で排ガス温度、排ガス中の残存酸素量等の計測及び記録に関する管理標準を設定しているのは、このためです。

空気比と排ガス熱損失率

次に、(2)ですが、放散熱量は炉壁表面温度を低くすることで小さくすることができます。このため、省エネ法では基準炉壁外表面温度を定めるとともに、セラミックファーバーなど断熱性能の優れた材料で施工することを求めています。
13Aを燃料とする最新の小型貫流ボイラーでは定格熱効率として98%が達成されています。このような高効率が達成できている理由は、ボイラー出口にエコノマイザー(節炭器)を設置し、しかも、潜熱回収(注3)まで行っているためです。

ところで、ボイラーの実際の運用にあたっては、(3)缶体中へのスケール分の堆積防止のためのブロー操作(4)低負荷時のバーナの消火に起因するパージ損失などの熱損失が発生します。したがって、実際の運用・管理にあたっては、(1)と(2)加え(3)と(4)の熱損失をも考慮する必要があります。
(1)から(4)までの熱損失を考慮したボイラー熱効率については次Q&Aにて回答いたします。

注1: 低位発熱量は燃料中の水素から生成する水および本来含まれている水分の蒸発熱を高位発熱量から差し引いたものです。高位発熱量は燃焼後の生成物を燃焼前の温度に戻し生成した水蒸気がすべて凝縮した場合の発熱量で、高位発熱量は熱量計で測定されます。
注2: 理論空気量(燃料を理論的に完全燃焼させるのに必要な空気量で燃料組成から計算で求めることができます)に対する実際空気量の割合を空気比と呼びます。空気比と排ガス中の残存酸素濃度 (ドライ%)の関係は、概略、【(空気比)=21/{21−(残存酸素濃度%)}】で表わすことができます。
注3: 従来は排ガス損失となっていた潜熱(水蒸気として大気に放出されていた熱)を回収することで熱効率を高める技術。潜熱回収により排ガスの一部は凝縮し金属を激しく腐食させます。このため、潜熱回収を行うには耐腐食性に優れた材料の採用等が必要となります。また、ボイラーの熱効率は低位発熱量基準で表示しているため、潜熱回収を行うと、見かけ上100%を超える数値となることがあります。
 

 

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(Q9)

実運転でのボイラー熱効率を求める方法を教えてください。

(A9)

A8で回答した通り、ボイラーの実運転でのボイラー熱効率は、A8での熱損失(1)と(2)に加え、(3)缶体中へのスケール分の堆積防止のためのブロー操作や(4)低負荷時のバーナの消火に起因するパージ損失などの熱損失を考慮する必要があります。

(3)には、運転中に実施する連続ブロー操作と停止時に行う間欠(缶底)ブロー操作とがあります。
連続ブロー操作は中容量以上または連続で運転しているボイラーで、間欠ブロー操作は小型貫流ボイラーや炉筒煙管ボイラーなど小容量のボイラーで実施されています。いずれも、ブローに伴う熱損失は、【(ブロー水量) × (ブロー水の比エンタルピー − 給水の比エンタルピー)】で表されます。ブロー水量は計測されていることが多く、また、ブロー水の比エンタルピーはブロー水からの熱回収を行っていない場合は飽和水の比エンタルピーとみなすことができます。

通常、ボイラー給水量に対するブロー水量の比率(ブローダウン比)は5〜10%程度であることから、ブローダウン比を7.5%と想定すると、ボイラー給水量1kgに対し0.925kgは蒸気に0.075kgはブロー水として排出されることとなります。また、JIS B8222の測定条件である蒸気圧力0.49MPaのときの飽和蒸気の比エンタルピーは2747.2kJ/kg、飽和水の比エンタルピーは636.9kJ/kg、ボイラー給水温度15℃の比エンタルピーは62.8kJ/kgです。したがって、ボイラー給水量1kgに対するブローダウンによる損失は43.1kJ[=0.075×(636.9−62.8)]で、ボイラー熱効率が90%のときの燃焼量に対するブローダウンによる損失の割合は1.6%[=43.1÷{0.925×(2747.2−62.8)÷0.9}×100]と求められます。

次に(4)です。中・小型のボイラーではバーナの点火と消火を繰り返すことで蒸気量を制御しています。安全対策面から点火と消火を繰り返す度に炉内をパージ(送気)して未燃ガスを掃気しています。その結果、パージ時には常温の空気がボイラー内を通過し熱を奪うために熱損失が発生します。パージ損失は点火回数に比例するため、連続燃焼が行えるように蒸気の使用方法を見直し、ボイラーの運転時間をできるだけ短くし集中して蒸気を使用するような対策は有効な対策です。一方、もっとも良く使用される50%前後の負荷範囲(注1)で連続燃焼制御を採用したり、消火する代わりにパイロット燃焼を行うなどの対策がボイラーメーカで立案、実施されています。
点火と消火を繰り返す時、消火時には(1)がゼロになるのに対し、(2)は缶体に蓄熱があるため継続したままです。
以上から、排ガス損失法により実運転でのボイラー熱効率を求めるには、下表のとおり、点火時と消火時に分けて考える必要があります。
 

  点火時 消火時 点消火合計 備考
燃焼時間率 (1) X 1-X 1  
入熱:Qf X×Qf 0 X×Qf Qf:燃焼量
排ガス損失:Lg X×Qf×Lg 0 X×Qf×Lg Lg:入熱に対する比率
放熱損失:Lr X×Qf×Lr (1-X)×Qf×Lr Qf×Lr Lr:入熱に対する比率
ブロー損失:Lb (2) X×Qf×Lb 0 X×Qf×Lb Lb:入熱に対する比率
パージ損失:Lp (3) 0 (1-X)×Qf×Lp (1-X)×Qf×Lp Lp:入熱に対する比率

補足説明

1、燃焼時間率は点火率と呼ばれることもあります。

2、ブロー操作はボイラー運転に対応し実施されるため、点火時に記載しています。

3、パージ操作は着火回数に比例し燃焼時間率とは本来関係しませんが、「燃焼時間率が大きいときは燃焼が 継続し着火回数は少なくなる」との関係が成り立つとの仮定の下に表示しています(注2)。

上表から、点消火を考慮したボイラーの熱効率は下記の通り表されます。
 ボイラー効率 =(入熱−出熱)÷入熱×100
   ={X×Qf―X×Qf×Lg―Qf×Lr―X×Qf×Lb―(1-X)×Qf×Lp}
÷(X×Qf)×100
=[1−{(Lg+Lb)+Lr÷X+Lp× (1-X)÷X}] ×100
上記式の関係をグラフで表すと下図の通りとなります。

(下図のLri、Lroは上表のLr、Lpに、下図の「排ガス熱損失」は上表のLgに置き換えられます。また上表のLbは下表では考慮外です。)

ボイラの間欠運転による運用効率低下の例

注1:下図の青線はボイラー負荷と熱効率の測定結果の一例です(出典: IHI 技報 Vol.52 No.4 41-45  )。100%の定格負荷から45%程度までは見かけ上の伝熱面積が増えることによりボイラー熱効率は増加し、その後は缶体の放熱損失が増加することにより急激にボイラー熱効率が低下します。この傾向はすべてのボイラーに当てはまります。したがって、50%前後の負荷範囲で運用することは省エネに適っていますし、あまりに低負荷でボイラーを運用することはエネルギーの浪費に直結します。なお、右図の赤線はボイラー給水温度により変化(給水温度が高いと潜熱回収ができなくなる)します。
注2:「燃焼時間率が大きいときは燃焼が継続し、着火回数は少なくなる」との仮定が成立しないケースが数多くあり、パージ損失Lpとブロー損失Lbを考慮せずに[ボイラー効率={1−(Lg+Lr÷X)}×100]として、省エネ効果を算出することの方がむしろ一般的です。また、[ボイラー効率={1−(Lg+Lr÷X)}×100]として省エネ効果を算出する方が削減量が小さく評価されます。
 

ボイラ効率

 

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(Q10)

蒸気の乾き度を求める方法を教えてください。

(A10)

 蒸気は水が気化して気体(蒸気)となったものですから、ベタベタ状態(湿り蒸気)からカラカラの状態(乾き蒸気)まで種々存在できます。一方、蒸気を熱交換器等により間接的に利用する場合、熱的に利用されるのは蒸発潜熱(注1)ですので、カラカラの状態の方がより優れていることになります。この蒸気の程度を表すのが乾き度であり、全蒸気中の乾き蒸気の重量割合として定義されます。ボイラーでは乾き度の高い蒸気を供給すべく、気水分離器が設置されています。
蒸気の乾き度は右図のような絞り乾き度計(絞り熱量計とも呼ばれます。 出典:ボイラー便覧)により測定します。蒸気を断面積の急に狭くなった所(ノズル)を通過させることで、等エンタルピー変化が生じ、2の場所では乾き蒸気となります。通過後の温度と圧力を計測することで蒸気表から過熱蒸気(注2)の比エンタルピーi2を、また、同様に蒸気表から最初の圧力P1での飽和蒸気の比エンタルピーi”と飽和水の比エンタルピーi’を求めることで、最初の蒸気中の乾き度xが下式で求められます。
x= (i2―i’)÷(i” ―i’)

絞り熱量計

以下は、JIS B 8222で規定された方法ではありませんが、日常の管理手段として簡易的に蒸気の乾き度とブローダウン比が同時に求められる方法を紹介します。「ボイラー給水中に存在するNaイオンが蒸気中(注3)にはほとんど溶解しない」ことに着目しています。このため、Naイオンメーターを使用します。ハンディータイプのNaイオンメーターが市販されています。 Naイオンの測定箇所は、(1)ボイラー給水、(2)缶水(ブロー水)と(3)蒸気の三か所です。今、(1)〜(3)でのNaイオン濃度をN1, N2, N3、ボイラー給水量をW1、蒸気の乾き度をx、ブローダウン比をyで表したときのNaイオンに着目した物質収支は下表のとおりです。 

  ボイラー給水 ブロー水 蒸気 備考
Naイオン濃度 N1 N2 N3 測定
Naイオン量 A B C A=B+C

補足説明:
(式A) W1×N1
(式B) W1×N2×y
(式C) W1×N3×(1−y)=W1×N2×(1−y)×(1−x)
したがって、
(式C)の関係から、乾き度x=1−N3÷N2
(式A〜C)の関係から、ブローダウン比y=(N1―N3)÷(N2―N3)
と求められます。
例えば、ボイラー給水中のNaイオン濃度が30ppm、ブローダウン比が7.5%(0.075)、蒸気の乾き度が0.98のときの、
ブロー水のNaイオン濃度は321ppm[=30÷{0.075+(1―0.075)×(1−0.98)}]
蒸気のNaイオン濃度は6.4ppm[=321×(1−0.98)]
です。

注1:物質が液相から気相に変化するときに必要とされる熱エネルギーの総量を蒸発潜熱と呼びます。蒸発潜熱は圧力が低い蒸気ほど大きく、圧力が高くなるにつれて小さくなっていきます。ついには臨界圧力である22.06MPaで蒸発潜熱は0になります。

注2:飽和蒸気を圧力は変えずにさらに加熱した飽和温度より高温の蒸気を過熱蒸気と呼びます。発電等に用いられる大型のボイラーでは蒸発器を出た飽和蒸気を過熱器に通し、さらに加熱することで過熱蒸気を製造しています。

注3:乾き蒸気には液体の水は存在しないためNaイオン濃度はゼロとなりますが、乾き度1未満では液体の水が同伴されているためNaイオンが測定されます。

 

 

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(Q11)

蒸気圧力を下げたときの省エネ効果の求め方は?
(A11)

A10でご説明した通り、蒸気を熱交換器等により間接的に利用する場合、熱的に利用されるのは蒸発潜熱です。蒸発潜熱は圧力が低い蒸気ほど大きく、圧力が高くなるにつれて小さくなっていき、ついには臨界圧力(22.06MPa)で蒸発潜熱は0になります。一例として、絶対圧(注1)が0.2、0.4、0.6と0.8MPaのときの飽和温度、飽和水、蒸発潜熱と飽和蒸気の比エンタルピーを下表に示します(注2)。

絶対圧
Mpa
飽和温度
比エンタルピー kJ/kg
飽和水 蒸発潜熱 飽和蒸気
0.20 120 505 2,202 2,707
0.40 144 605 2,134 2,739
0.60 159 671 2,086 2,757
0.80 170 721 2,048 2,769
1.00 180 763 2,015 2,778

今、現状のボイラーの絶対圧をP1、蒸気量をW1、飽和蒸気の比エンタルピーをH1、蒸発潜熱をL1、ボイラー給水の比エンタルピーをH0としたときの必要加熱量QD1はQD1=W1×(H1―H0)で表されます。また、圧力見直し(低圧化)後のボイラーの絶対圧をP2、蒸気量をW2、飽和蒸気の比エンタルピーをH2、蒸発潜熱をL2、ボイラー給水の比エンタルピーをH0としたときの必要加熱量QD2はQD2=W2×(H2―H0)で表されます。
現状と見直し後での熱効率は、実用上、同じ熱効率と考えても良いため、熱効率をηとすると、それぞれの必要燃焼量QF1とQF2は、QF1=QD1÷η、QF2=QD2÷ηで表されます。
一方、(間接加熱の場合)加熱に有効な熱量は蒸発潜熱であり、加熱量は変わらないためW1×L1=W2×L2の関係が成り立ちます。
QF1とQF2は燃焼量であり燃料消費量そのもののため、(QF1―QF2)÷QF1が省エネルギー効果を表しています。
以上を纏めると、
 省エネルギー効果=1―{(H2―H0)÷(H1―H0)}×(L1÷L2) ・・・ (1)
となります。
例えば、現状の絶対圧が0.80MPaで見直し後の絶対圧が0.40MPaで、ボイラー給水の比エンタルピーを209kJ/kg(ドレン回収などにより50℃で供給)としたときの省エネルギー効果は(1)式に上記表の比エンタルピーを代入し、
 省エネルギー効果=1―{(2739―209)÷(2769―209)}×(2048÷2134)=0.052
と求められ、5.2%もの省エネ効果が期待できることが分かります。

注1:真空を基準に表した圧力のこと。「絶対圧」に対し、「ゲージ圧」という表し方もあります。通常使われている蒸気ボイラーの圧力は、圧力計で表示されるため、ゲージ圧力で表示されています。絶対圧とゲージ圧の関係は、【絶対圧=ゲージ圧+大気圧】となります。また、絶対圧とゲージ圧を区別するため、圧力単位(例えばMPa)の後に、絶対圧であればA(例えばMPaA)、ゲージ圧であればG(例えばMPaG)を付けて表すこともあります。

注2: 蒸気の持つ熱量等の情報を示したものに「蒸気表」があります。 蒸気表は、圧力を基準にしたものと温度を基準にしたものがあり、それも絶対圧で表示されています。

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(Q12)

圧縮空気システムの省エネのポイントは?(その1:と出圧力の低減)
(A12)

圧縮空気の用途は動力、搬送、塗装からブローまで様々です。そのため、エアーコンプレッサーは工場だけでなくビルや病院などでも使用されています。エアーコンプレッサーの消費電力は工場の全消費電力量の10〜30%を占めるため、エアーコンプレッサーの省エネをテーマとした多くの取り組みがなされ、成果を上げています。
今回は、エアーコンプレッサーの吐出圧力低減による省エネ効果についてご説明します。
エアーコンプレッサーの理論断熱動力は下式で表され、吐出圧力が高いほど大きな動力を必要とします。

数式

ここで、
Lad: 理論断熱動力 [kW]
m: 圧縮段数
k: 比熱比(空気の場合は1.4)
Ps: 第1段の吸込空気圧力 [MPa-abs]
Pd: 吐出圧力 [MPa-abs]
Qs: 吸い込み状態に換算した吐出流量(注1) [m3/min]
圧縮空気は、エアーコンプレッサーで製造された後、空気配管を通り、圧縮空気を使う空気機械に供給され消費されます。例えば、圧縮空気をエアーシリンダーなどで動力として使用する場合の使用圧は0.4MPa前後であり、この使用圧に配管での圧力損失を加えた圧力が、エアーコンプレッサーで必要な吐出圧力となります。
(1)式の関係をグラフ化すると下図(出典:省エネルギーセンター)の通りとなります。

式のグラフ化

吐出圧力を0.8MPa-absから0.1MPa下げられたときは、理論上、約8%の動力低減が図れることが分かります。
一般工場での圧縮空気の漏れは20%程度あると言われています。漏れ空気量は圧力に比例するため吐出圧力が0.8MPa-absから0.1MPa下げられたときは漏れ空気量を12.5%(=0.1÷0.8×100)減らせ、2.5%(=12.5×0.2)の省エネとなります。したがって、エアーコンプレッサー吐出圧力を0.1MPa低減することによる省エネ効果として、10%(≒8+2.5)程度を期待できそうです。
以下に、既存の圧縮空気システムでエアーコンプレッサーの吐出圧を下げるための対策案を示します。

・圧縮空気を使う空気機械の設定圧を下げる ・・・ アクチュエータは一般的に0.2〜1.0MPaで動作するように製作されているため下げられる可能性があります。また、操業時の圧力変動を抑えることができれば設定圧を下げることができます。

・吸気フィルターの清掃または交換 ・・・ 吸気フィルターが詰まると吸込み圧力が低下し結果として圧縮比(Pd/Ps)が大きくなります。

・給油式スクリュー圧縮機の油回収エレメントの交換

・ラインオイルフィルターのエレメント交換

・ユーザーラインごとに遮断弁を設置 ・・・ 空気漏れの回避。なお、遮断弁はボール弁やバタフライ弁をご使用ください(玉形弁は不適)。ある程度の改造ができるなら、下記の対策を追加実施することをお奨めします。

・配管サイズの適正化 ・・・ 配管の圧力損失は配管口径の5乗に反比例します。したがい、適正な配管口径が必要です。ドライヤを含めた配管での全圧力損失を0.05MPaを目標に、0.1 MPa程度に抑えてください。

・配管中のバルブ選定 ・・・ 圧縮空気配管でのバルブは全開と全閉操作だけを行い、流量調整は行いません。この点から玉形弁があればボール弁やバタフライ弁に更新することを提案します。なお、ボール弁は接続径と内部径が同じフルボアタイプを選定願います。

注1:JIS-B0142(圧・空気圧システム及び機器−用語)では、温度20℃、絶対圧力760mmHg、湿度65%での湿り空気の状態を「吸込状態空気量」と規定し、エアーコンプレッサーの吐出空気量はこの条件での数値を表示しています。基準状態(温度0℃、絶対圧力760mmHg、湿度0%での乾燥空気)との関係は【基準状態空気量=0.92×吸込状態空気量】となります。

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(Q13)

圧縮空気システムの省エネのポイントは?(その2:吸込み湿度の低減)
(A13)

A12でご説明の通り、エアーコンプレッサーの理論断熱動力はA12の(1)式で表されます。ここで、気体の圧力、体積、温度、重量の間にはボイル・シャルルの式【Ps・Qs=G・R・Ts : Gは重量流量、Rはガス定数、Tsは吸込み温度(絶対温度)】が成立することから、理論断熱動力は重量流量と吸込み温度(絶対温度) に比例することが分かります。つまり、吸込み温度(絶対温度)を下げるほど理論断熱動力を下げられることとなります(下図、出典:省エネルギーセンター)。

吸込み湿度と論断熱動力

ところで、ボイル・シャルルの法則【(圧力)×(体積)÷(絶対温度)=一定】から、圧縮操作により絶対温度も上がることが分かります。断熱圧縮したときの圧縮空気の吐出温度は下記の式で表されます。

数式

単段式の一般汎用エアーコンプレッサーで20℃の大気を吸って0.7MPaGまで昇圧した場合には、圧縮比(Pd/Ps)は7.9となり、(1)式で256℃となりますが、実際には冷却があり170〜190℃程度の温度になっています。高温であり、殆どのエアーコンプレッサーにはアフタークーラーが内蔵されています。アフタークーラーは圧縮直後の高温の圧縮空気を冷却する装置で空冷方式と水冷方式とがあります。空冷方式ではこの排気が放出されています。したがって、エアーコンプレッサーを設置するコンプレッサー室は風通しの良い北側に配置し、室内温度を下げるため換気扇で換気、空冷式の排熱は排気ダクトから屋外排気、水冷式の場合は冷却水温度を低く、そして、吸気は屋外空気からが省エネのポイントとなります。
アフタークーラーによる冷却の結果として、結露により水滴(ドレン)が発生します。例えば、温度20℃、大気圧、湿度65%の湿り空気を毎分5立法メートルで10時間稼働し(稼働率は90%)、0.7MPa(G)まで圧縮し30℃でアフタークーラーを出るときのドレン量を求めると次の通りとなります。
大気中の温度と飽和水蒸気量の関係は下表のとおりです。 

温度 ℃ 0 5 10 15 20 25 30 35 40
飽和水蒸気量
(g/立法メートル)
4.85 6.79 9.39 12.8 17.2 23 30.3 39.6 51.1

吸込状態1m3中の水分量は11.2g(=17.2×0.65)。
圧力下での水分含有量は【(同じ温度での大気圧下の水分含有量)÷(圧縮比)】で求められます。30℃での大気圧下の水分含有量は30.3g/m3で、圧縮比が7.91[=(0.7+0.1013)÷0.1013]であることから、アフタークーラーを出る圧縮空気中に含まれる1m3中の水分量は3.8g(=30.3÷7.91)と求められます。
以上から、一日に発生するドレン量は19,980g[=5m3/min×60min/h×10h/日×0.90×(11.2−3.8)g/m3]となり、毎日、約20Lものドレン水を処理する必要があります。
また、表からご理解いただける通り、温度が高いほど飽和水蒸気量も多くなります。このため、気温と湿度の高い夏場はエアーコンプレッサーにとり最も過酷な時期であり、よりこまめな維持管理を必要とします。
 

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(Q14)

圧縮空気システムの省エネのポイントは?(その3:異なる使用圧への対応)

(A14)

A12でご説明のエアーコンプレッサーの吐出圧を下げることでの省エネを進めていくと、吐出圧の低下に耐えられない機器が出現します。その機器の使用量が全使用量に比べ少ない場合は、その機器に対してだけ増圧する方法があります。増圧は増圧弁またはブースター(昇圧機)で行います。増圧弁は、パスカルの原理により、受圧面積比を変えることで高い出口側圧力に変換するものです。入口側空気の圧力により増圧をおこなっているため、圧縮比2では出口空気量と同量の入口側空気を廃棄することに注意が必要です。したがい、省エネ的には、ブースター(昇圧機)の採用をお奨めします。ブースターとしては、入口圧力の変動に柔軟に対応できるレシプロ式が一般的に使用されています。例えば、37kWのエアーコンプレッサー(吐出空気量6.5m3/min)を0.5MPaの吐出圧力で年間5,000 時間稼動し、その内325L/minは0.7MPaまで部分昇圧することが必要な場合の増圧弁とブースターの年間消費電力量を求めると次の通りとなります。

・2倍増圧弁での2倍増圧時(1.0MPa=0.5×2)の廃棄する圧縮空気量は325L/minです。しかし、0.7MPaまでしか昇圧しないため、廃棄する圧縮空気量は、ボイル・シャルルの法則から、191L/min[=325L/min×(1.0/0.7)÷{(1.0/0.7)+1.0}]と求められます。

・191L/minの圧縮空気を製造するために必要な年間電力量は、エアーコンプレッサーのモータ効率を90%とすると、6,040kWh/年(=0.191 m3/min÷6.5 m3/min×37kW÷0.9×5,000h/年)。

・一方、ブースターを使用した場合、325L/minの圧縮空気を、0.5MPaから0.7MPまで昇圧するための消費電力は約0.67kWですので、必要な年間電力量は3,350kWh/年(=0.67kW×5,000h/年)。

・したがって、ブースターを使用した方が年間で2,690kWh/年(=6,040―3,350)だけ省エネとなります。

・電力単価を18 円/ kWhとすると、年間削減額は48千円(=2,690kWh/年×18 円/ kWh)となりブースターを購入しても5年程度で回収できる可能性があることが分かります。

次に、水切り、エアーブロー(切粉飛ばし)、曝気用途など他のユーザーに比べ使用量は多いものの低い使用圧の用途の場合、その用途に対し減圧弁を設置し、減圧した圧縮空気を供給する方法があります。減圧弁では増圧弁のような駆動用圧縮空気を必要としませんが、減圧する分エネルギーをロスしています。したがい、先進の対策としてはエアーコンプレッサーに代えブロワーを導入することが行われています。ブロワーの吐出圧は約10kPa以上0.1MPa(G)であり、1MPa(G)以上あるエアーコンプレッサーとは異なるものの、ノズルの見直し等によりブロワーに代替できれば消費電力を1/3程度に下げることができます。

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(Q15)

都市ガスに使用時に省エネ法で求めた総熱量と東京と等の環境条例で求めた総熱量に微妙な差異が生じる理由は?

(A15)

省エネ法でも東京都等の環境条例でも、一定規模以上の事業者は年度ごとに報告書の提出が義務づけられ、指定された様式に使用した燃料ごとに年間使用量を入力することで総熱量(GJ)が自動計算されます。省エネ法で求めた総熱量と東京都等の環境条例で求めた総熱量に差異が生じているのは下記の理由からと考えられます。総熱量(GJ)は、単位発熱量とガス使用量を掛けることで求めます。先ず、単位発熱量ですが、東京ガスでは、「都市ガスの熱量を『摂氏0度および圧力101.325キロパスカルの状態のもとにおいて乾燥したガス1立方メートルの総熱量』と定義」し、表示しています。ここで、「0℃、101.325kPaの状態」とは標準状態と呼ばれNm3で表示します。そして、単位発熱量の単位として、東京都等の環境条例では (GJ/ Nm3)と表示されています。次に、都市ガスの計量単位はm3であり、容積流量と呼ばれるものです。気体は温度が高くなると容積が増え、圧力が高くなれば容積は減ります。したがい、使用状態での温度、圧力がガスメータの設定条件と異なる場合は補正をする必要があります。検針票に記載されたガス使用量は標準状態での容積流量ではなく、都市ガスメータの種類(低圧用と中圧用の2種類があります)ごとに決められた温度・圧力での容積流量(m3)を表示しています。具体的には、低圧用が15℃、103.325kPaで、中圧用が15℃、102.306kPaでの容積流量を表示しています。以上から、総熱量を求める際には検針票に記載されたガス使用量(m3)とそのままでは掛け合わせることができず、ガス使用量(m3)を標準状態でのガス使用量(Nm3)に換算することが必要となります。このため、東京都等の環境条例では都市ガスが低圧用か中圧用かを記入する欄があり、検針票に記載されたガス使用量(m3)を標準状態でのガス使用量(Nm3)に係数を掛けて自動換算しています。その係数は低圧用で0.9667 Nm3/ m3、中圧用で0.9571 Nm3/ m3です。省エネ法では、該当箇所の換算係数は(GJ/千 m3)であり検針票に記載されたガス使用量(m3)をそのまま使用できそうですが、換算係数の数値は東京都等の環境条例の数値と同じです。つまり、係数分だけの誤差が生じることとなります。言い換えると、省エネ法と東京都等の環境条例との総熱量を一致させるには、省エネ法でのガス使用量として検針票に記載されたガス使用量(m3)に係数(低圧用で0.9667 Nm3/ m3、中圧用で0.9571 Nm3/ m3)を掛けた数値を記入する必要があります。

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(Q16)

省エネ法は改正されたの?(その1:電気需要平準化評価原単位について)
(A16)

2013年5月24日に省エネルギー法の改正案が可決、成立しました。改正省エネ法の要点のうち、特に「電力ピーク対策としての需要家側における対策」が事業者の方々に影響を及ぼすと考えられます。省エネ法では、「事業者全体としてエネルギー消費原単位を中長期的にみて年平均原単位1%低減することを努力目標」として定めています。そして、これまでのエネルギー消費原単位は下式で求めていました。

数式

2013年8月27日に第1回目が開催された総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 工場等判断基準ワーキンググループの配布資料によると、「電気需要平準化評価原単位」が提案されています(下図、出典:工場等判断基準ワーキンググループの配布資料(新規ウィンドウに表示))。

エネルギー原単位についての図表

「電気需要平準化評価原単位」は「エネルギー使用量」を「電気需要平準化時間帯の買電量を除いたエネルギー使用量」と「(電気需要平準化時間帯の買電量)×(評価係数α)」の合計とする案です。ここで、「電気需要平準化時間帯」はピーク時間帯のことであり、例えば、夏季・冬季の平日(月曜〜金曜)の昼間(午前8時〜午後10時)などが検討されているようですし、評価係数は1よりも大きな数値であり具体的な数値の審議が行われています。いずれにしても、ピーク時間帯に事業者が蓄電池や自家発電設備等を活用し系統電力の使用を抑制する対策を実施しない限り、確実に調整後のエネルギー使用量は増加し、省エネ法での努力目標の達成が困難となります。改正省エネ法は2014年4月からの施行が見込まれており、事業者は新しいルールに基づいた報告が求められます。従来の省エネ法では、事業者は「時間帯」や「エネルギー種別」をあまり考慮することなく、費用対効果の高い対策や業務への影響が少ない対策を優先的に選択、実施してきたと思いわれます。しかし、改正省エネ法では、「電気需要平準化時間帯」に実施する「節電」の価値がこれまで以上に高まり、蓄電池や自家発電設備等を導入・活用する事業者が増えるでしょうし、事業者は省エネ対策の優先順位の考え方を変えていく必要もあるでしょう。

 

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(Q17)

省エネ法は改正されたの?(その2:電気需要平準化時間帯と評価係数について)
(A17)

今回は改正省エネ法のキーとなる「電気需要平準化評価原単位」に密接に関わる「電気需要平準化時間帯」と「評価係数」の経済産業省案と総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 工場等判断基準ワーキンググループでの意見についてご紹介します。なお、資料の出典は、全て、第1回工場等判断基準ワーキンググループでの配布資料(新規ウィンドウに表示)です。
1. 電気需要平準化時間帯について
3案((1)夏期の平日13〜16時、(2)夏期の平日9〜20時、冬期の平日8〜21時、(3)夏期・冬期の平日8〜22時)が提示され、その理由と3案の比較が行われています。そして、電気需要平準化時間帯として(2)の時間帯を提案しています。
(2)の時間帯を提案する理由と比較の要旨は次の通りです

夏期の平日9〜20時、冬期の平日8〜21時は、1日の中でも需要が比較的高くなる時間帯となっています。(下図)。
 

2012年度夏期最大需要日の電力使用率の推移

2012年度冬期最大需要日の電力使用率の推移

電気需要平準化時間帯は、事業者が電気の需要をシフトさせたとしても、他の時間帯における電気の需要を過度に高めてしまうことがないように設定される必要があると考えられますが、(1)の時間帯では事業者がその前後の時間帯に電気の需要をシフトさせると、前後の時間帯の需要を過度に高めてしまうことが懸念されます。

(3)の時間帯では、一部の電力会社において、電力使用率が全時間の平均を下回り、電気需要平準化を求める必要性が相対的に乏しいと考えられる時間帯を含んでしまいます。

以上の経済産業省案に対し、委員及びオブザーバーから以下の意見が出ています。

・(2)案だと、現在の昼夜間別の時間帯と2〜3時間しか変わらない電気使用量を報告させることになる。事業者負担の観点から(3)案としてはどうか。

・小売業はピークが高くなる土日にピーク対策をやってきた。電気需要平準化時間帯の対象から土日が除かれるとこれまでと管理の仕方が変わってくる。曜日を平日に限定しなければいけないのか。

・大口需要家は30分値をデジタルデータで把握できていると思っていたので、把握できない事業者の割合が大きいのが意外。家庭なら分かるが、何故こんなに遅れているのか。この点はスマートメーター制度検討会など、別の場で議論するべき。

2. 評価係数について

評価係数は、電気需要平準化時間帯における買電量を見かけ上大きく扱うことで、省エネ法上、前年度からの買電量の削減分を大きく評価するもので、「1.3程度とすることが適切ではないか」と提案されています。提案に至った理由として下記が説明されています。

電気需要平準化対策に用いられる機器として、コージェネレーションシステム及びモノジェネレーション、ガスヒートポンプ、吸収式冷温水機、蓄電池及び蓄熱式空調を挙げ、従来の省エネ法上エネルギーのロスは発生しないか? また、エネルギーの使用の合理化となるか? の視点で検討を行っています。結果として、

・コージェネレーションシステム及び蓄熱式空調については、基本的にはエネルギーの使用の合理化となり、従来の省エネ法上エネルギーのロスは発生しない。

・ガスヒートポンプ及び吸収式冷温水機については、エネルギーの使用の合理化となるか否かについては一概に言えないものの、総じてエネルギーの使用の合理化を阻害するものではないと考えられる。

・一方、モノジェネレーションや蓄電池については、事業者単位で見た場合には、エネルギーの使用の合理化となるとは言い難いことから、これらの機器のエネルギーのロス分を相殺する程度には評価係数を大きくする必要があると考えられる(下図: 最も大きな評価係数を必要とするのはNAS電池の1.32程度以上)。

評価係数αの設定に当たっての考え方

以上の経済産業省案に対し、委員及びオブザーバーから以下の意見が出ています。

・評価係数の具体的な数値については、ある程度時間が経った時点で見直していくことも考えられるが、見直しのタイミングに関する方針はあるのか。

・電気需要平準化時間帯の買電量に評価係数を乗じるという評価方法では、電気需要平準化時間帯の電気使用量は低減するが、事業者の最大電力は必ずしも下がらないのではないかという懸念がある。事業者に毎年の最大電力と負荷率を報告させ、その低減を目標とすれば、このような懸念を回避できると考えられるが、そのような措置は難しいのか。

・過去のピーク対策についても勘案していただきたい。

電気需要平準化対策の候補として挙げられた設備の多くは空調関連設備であり、効果を得るには関係者の協力が不可欠な設備です。加えて、運転上の習熟を要求する設備でもあり、これまで以上の運用・管理両面での対応が強く求められています。

 

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(Q18)

涼風扇(装置)の省エネ効果は?
(A18)

夏季に打ち水をすることで、水が気化し、周囲の熱を奪うことで気温が下がります。この「水の気化放熱効果」を利用し、室内や工場内で使用するための涼風
扇(装置)が市販されています。
涼風扇(装置)は、空気と水が接触・熱交換するための冷却エレメント、空気を送り込むための送風機、水を送り込むためのポンプで構成されています。冷房設備のコンプレッサが不要なため電力使用量は少なくて済みますが、冷房設備とは異なり、空気出口温度を空気入口での湿球(露点)温度以下にはできません(注記)。
注記:空気の出口温度は冷却エレメント等により変化します。乾球温度と湿球温度の温度差に対する実際の出口空気温度と入口での湿球温度の差を冷却効率と呼び、冷却エレメントにより変わりますが、0.9程度が期待できます。
一方、水が気化することで出口空気の湿度は上昇します。湿度が高くなるにしたがい汗の蒸発が阻害されるため、「蒸し暑い」と感じる人が増えてきます。そこで、水の気化による温度低下と湿度の上昇の関係を「不快指数」を指標として考察します。不快指数は蒸し暑さを定量的に表した指数であり、乾球温度(気温)をt (℃)、湿度をh (%)として、下式で表されます。


不快指数 = 0.81×t+0.01h×(0.99t-14.3)+46.3・・・ (1)
 

日本人の場合、不快指数が77になると不快に感じる人が出始め、85になると93%の人が暑さによる不快を感じると言われています。


2013年の8月の1か月間で、
1)最高気温が一番高かった日(11日)
2)平均湿度が一番高かった日(23日)
3)最高気温が一番低かった日(25日)
4)平均湿度が一番低かった日(28日)
について、1時間ごとの乾球温度(気温)、湿球(露点)温度、湿度をもとに、東京での不快指数を求めると下図の通りとなります。ここで、
・不快指数-1は、乾球温度(気温)と湿度から、(1)式により求めた不快指数であり、冷房装置や涼風扇(装置)がないときの状態です。
・不快指数-2は、涼風扇(装置)を使用した結果、理想状態(湿度100%で空気入口での湿球温度が空気出口温度)となるときの状態です。

下図からご理解いただけるように
・涼風扇(装置)は不快指数を下げる効果がある。
・特に、気温が高く湿度が低い日時での低減効果が大きい。⇒8月11日と28日
・逆に、気温が低く湿度が高い日時での低減効果が小さい。⇒8月23日と25日
・具体的には、8月11日で不快指数-1と不快指数-2で77の不快指数を超えた総時間は24時間と9時間、8月23日では22時間と16時間、8月25日では5時間と0時間、8月28日では12時間と0時間と、5〜15時間も77を超える時間が減少している。

一方で、外気温と湿度は時々刻々変化していることから、温湿度計を設置し、温湿度を見ながら、気温が高く湿度が低い時間帯に涼風扇(装置)と空調機を併用することで、また、湿度の高い時間帯は空調機を使用することで、省エネが達成できます。
 

気温、湿度と深い指数の時間推移(8月11日)

気温、湿度と不快指数の時間推移(8月23日)

気温、湿度と不快指数の時間推移(8月25日)

気温、湿度と不快指数の時間推移(8月28日)

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(Q19)

平成25年度の夏季節電実績と冬季節電方針は?


(A19)

総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の下に電力需給検証小委員会が設置され、10月1日から、平成25年度夏季の電力需給実績及び冬季の電力需給見通しの検証が行われています。以下の説明は、同小委員会の第3回(10月23日開催)までの資料と11月1日付の政府のポータルサイトに記載されたH25年度冬季の電力需給対策(決定版)に基づいています。

先ず、平成25年度の夏季電力需給実績です。
平成25年度夏季は全国各地で記録的な猛暑に見舞われたものの、電力の安定供給に必要な予備率(3%以上)は確保されました(表1:出典は電力需給検証小委員会報告書(案))。そして、節電による効果は全国で▲5.9%(95.0億kWh)であり、2012 年度夏季▲5.7%(91.0億kWh)と同程度でした(注記1)。 

注記1:7月分から8月分まで(土日祝日含む)の2ヶ月の販売電力量を対象に2010年度を基準とした節電電力量を算出し、比較。
 

2013年度夏季の各電力会社管内における需要状況(最大需要日)

ただし、東日本大震災後、原子力発電所が稼働停止し、火力発電所の稼働率が増加しています(図13:出典は電力需給検証小委員会報告書(案))。その中で、運転開始から40年以上が経過した老朽火力発電所を含め火力発電所の計画外停止の件数が増加傾向にあることです。最大需要と大規模な電源トラブルとが重なるリスクを念頭に置いた対策の必要性が指摘されています。

電気事業者の電源構成推移

次は、平成25年度冬季の電力需給見通しです。そのポイントは、


・厳寒となるリスクを織り込んだ上で、国民各層の節電の取組が継続されれば、いずれの電力管内も、電力の安定供給に最低限必要な予備率3%以上を確保できる見通しであること。
・但し、火力発電所の計画外停止が増加しており、大規模な電源脱落により電力需給がひっ迫する可能性もあり、引き続き、電力需給は予断を許さない状況であること。
・特に北海道電力管内では、他電力からの電力融通に制約があること、発電所1機のトラブル停止が予備率に与える影響が大きいこと、厳寒であり、万一の電力需給のひっ迫が、北海道民の生命、安全を脅かす可能性があること等を踏まえた特別の需給対策を講ずる必要があること。
そのため、以下のような需給ひっ迫を回避するための需給両面での対策を政府において早急に検討し、決定することを求めています。
・国民の節電の取組が継続されるよう、節電要請を行うこと等を検討すること。
・ディマンドリスポンス(注記2)注取組の拡大を目指すこと。 

注記2:従来の電力供給システムが需要に合わせて供給側を変動させることで電力の需給バランスを一致させていたのに対し、ディマンドリスポンス方式は需要家が需要量を変動させて電力の需給バランスを一致させます。時間帯別に電気料金設定を行う、ピーク時に使用を控えた需要家に対し対価を支払うなどの方法があります。 

・北海道電力管内については、数値目標付の節電要請を含む、多重的な需要対策を講じ、電力需給に万全を期すこと。
・電力会社において発電所の保守・点検を確実に行うことに加え、電力の広域融通を行う体制を確保すること。
・また、自家発事業者からの買電等、供給力を確保するための対策を適切に図ること。
・政府と電力会社は、燃料費のコスト増(注記3)を抑えるために最大限の取組を行う必要があること。 

注記3:東日本大震災前の2010年度の燃料費は約3.6 兆円でした。2011年度は2.3 兆円増となり、2012年度では3.1 兆円増となりました。平成25年度試算では、3.6兆円増7(人口で単純に割り戻すと、国民一人当たり3 万円強の負担増。販売電力量(9,000 億kWh)で単純に割り戻すと、4 円/kWh の負担増)となる見込みです。

以上の電力需給検証小委員会での検証を踏まえ、11月1日付で政府は平成25年度冬季の電力需給対策を、下記の通り、決定、公表しました(節電go.jp(新規ウィンドウに表示))。


(1)全国(沖縄電力管内を除く)については、「数値目標を伴わない」一般的な節電が要請されています。具体的には、
 

・2013年12月2日(月曜)から2014年3月31日(月曜)までの平日(ただし、12月30日(月曜)及び31日(火曜)並びに1月2日(木曜)及び3日(金曜)を除く。)の9時から21時 まで(北海道電力及び九州電力管内については8時か21時まで)の時間帯で、
・2013年度冬季は、2010年度最大電力比として、北海道電力管内▲4.1%、東北電力管内▲1.9%、東京電力管内▲7.5%、中部電力管内▲2.3%、関西電力管内▲3.8%、北陸電力管内▲3.0%、中国電力管内▲1.4%四国電力管内▲4.2%、九州電力管内▲4.1%の継続的な節電要請
・高齢者や乳幼児等の弱者に対して、配慮を行うこと

を求めています。
 

(2)加えて、北海道電力管内については冬季の北海道の特殊性から、「数値目標付きの節電」の要請等の多重的な対策を行い、電力需給のひっ迫を回避することが要請されています。具体的には、


・大口需要家、小口需要家、家庭のそれぞれに対し、2010年度比(注記4)で▲6%以上の使用最大電力(kW)の抑制を要請


注記4:基準電力は2010年度冬季(2010年12月1日(水曜)から2011年3月31日(木曜)まで)における使用最大電力の値(kW) 

・2013年12月9日(月曜)から2014年3月7日(金曜)までの平日(ただし、12月30日(月曜)及び31日(火曜)並びに1月2日(木曜)及び3日(金曜)を除く。)の16時から21時までの時間帯とし、また、冬季の北海道は夜間も電力需要が高い水準にあるため前記時間帯以外も可能な範囲での節電を要請


を求めています。

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(Q20)

我が国は京都議定書を批准し第一約束期間(2008年〜2012年度)での温室効果ガスの排出量を基準年比で6%削減することを約束したが、達成状況は?


(A20)

ご理解の通りです。我が国は、京都議定書を2002年5月31日に国会で承認し、同年6月4日に国際連合に受諾書を寄託しました。
京都議定書の国会承認に前後し、地球温暖化対策推進法の制定、地球温暖化対策に関する基本方針の閣議決定などが行われ、日本国内の対策の基礎的な枠組みが構築され、種々の対策を実施してまいりました。 
11月19日に、環境省より速報値としての2012年度の温室効果ガスの排出量が発表されました。速報によると、「京都議定書第一約束期間の5カ年平均で基準年比8.2%減となり、目標を達成する見込み」だそうです。これについて石原環境大臣は、「国民の皆さんの省エネに対する努力のたまものではないかと思う。これを1つのステップにして今後、温暖化対策に努力していくうえで喜ばしい数字だ」と述べました。
環境省からの速報値を紹介すると下記のとおりです(出典: 環境省 報道発表資料(新規ウィンドウに表示))。
先ずは全体概要です。
 

我が国の温室効果ガス排出量と京都議定書の達成状況

・第一約束期間での実際の排出量(5ヶ年平均)は12億79百万トン。 実際の排出量は基準年度の排出量の12億61百万トンに比べ1.4%増加しています。
・実際の総排出量から差し引ける量(5ヶ年平均)として、
(1)森林吸収量(48百万トン) (注1)
(2)京都メカニズムクレジット(74百万トン) (注2)
があり、合計で1億22百万トン。
・ 以上をまとめると、排出量は11億57百万トン(=12億79百万トン―48百万トン―74百万トン)となり、基準年度に比べ1億4百万トンの削減(比率として8.2%)となります。
(注1):京都議定書目標達成計画に掲げる基準年総排出量比約3.8%(4,767 万トン/年)
(注2):政府取得分と民間(電力事業連合会)取得分の合計値

次に、第一約束期間におけるガス別・部門別の実際の排出量実績を下表に示します。
 

第一約束期間におけるガス別・部門別排出量実績

・非エネルギー起源の排出量と代替フロン等の排出量は全てのガスについて大幅な削減が達成できています。
・エネルギー起源の排出量では産業部門が削減できています。一方、その他の部門はいずれも増加し、特に業務その他部門と家庭部門での増加の割合が高い結果となっています。


業務その他部門とは商業、サービス、事業所(オフィス)等が該当し、増加の要因としては事務所や小売等の延床面積の増加等に伴い1990 年度に比べエネルギー消費が大きく増加したことが挙げられます。また、家庭部門での増加の要因としては、世帯数の増加等に伴い1990 年度に比べエネルギー消費が大きく増加したことが挙げられます。また、各部門共通の増加要因として、震災を契機とした火力発電の増加による電力排出原単位の悪化等により排出量が増加したことが挙げられます。

地球温暖化対策を今後も継続、推進することで世界各国が合意しています。
11月11日から23日まで、ポーランドの首都ワルシャワにて気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)が開催されました。そして、20日の閣僚級会合において、石原環境大臣が演説を行い、2020年の温室効果ガス排出削減量を2005年比で−3.8%とする新たな目標を各国に示しました。既に世界最高水準にある日本のエネルギー効率下での削減を求められること、原発を考慮せずに設定しているため電力排出原単位の悪化を覚悟する必要がある等、簡単に達成できる目標ではないと感じられます。この点において、一層の省エネが求められることは確かなことでしょう。
 

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(Q21)

国連気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)について教えてください。


(A21)

11月11日から23日までポーランドのワルシャワで、国連気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)等が開催され、我が国からは石原環境大臣を始めとして各省の関係者が出席しました。
COPは大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極の目標として1992年に採択された「国連気候変動枠組条約」に基づき、1995年から毎年開催されている年次会議で今回は第19回目です。
COP17で先進国か途上国を問わず2020年以降どのように気候変動対策に取り組んでいくかを2015年末までに決めることに合意しました(ダーバン合意)。この合意に基づき、COP19では下記の4点で成果が得られました(出典: 全国地球温暖化防止活動推進センターホームページ(新規ウィンドウに表示))。


(1) 2020年以降の各国の排出削減目標の提出について
2020年以降の各国の削減目標について、国内での準備を開始・強化して、COP21に十分先立って(可能ならば、2015年第1四半期までに)示すこと、そして、この目標等の案を示す際に提供する情報をCOP20で決めることに合意。
(2) 「気候変動の悪影響に伴う損失・被害(ロス&ダメージ)に関するワルシャワ国際メカニズム」の設置
同メカニズムの運営組織、機能の概要、COP22での同メカニズムの見直し等に合意。
(3) カンクン合意における資金動員目標達成のためのプロセスに関する合意
途上国における排出削減と気候変動影響への適応の支援のための資金動員について、より具体的な道筋に合意。
(4) 「途上国における森林減少・森林劣化からの排出削減、森林の炭素蓄積の保全、森林の持続可能な管理、森林の炭素蓄積の強化活動(REDD+)に関するワルシャワ枠組み」への合意。
途上国が自国の森林を保全するための活動に対し経済的な利益を国際社会が提供することへの合意。

11月20日の閣僚級会合で、石原環境大臣は下記要旨の演説を行いました。
・ 京都議定書第一約束期間の削減実績は8.2%が見込まれ、6%削減目標を達成すること。
・ 2020年の削減目標を米中と同じ2005年比3.8%減とすることを説明(併せて、この目標は、エネルギー政策が定まらない中、稼働原発をゼロと仮定した「暫定的」なものであるとの説明がなされています)。 
・ さらなる技術革新、日本の低炭素技術の世界への応用と途上国に対する支援として2013年から2015年までの3年間に1兆6千億円(約160億ドル)の資金拠出を表明。

COP19のキーワードの1つが「ギャップ」という言葉だったようです。すなわち、先進国及び途上国が掲げている2020年の温室効果ガスの排出削減目標/削減行動をすべて足し合わせても、地球全体の気温上昇を2℃までに抑えるのに必要な排出削減量に比べると、とても大きな隔たり(「ギャップ」)があるということを意味します(注1)。
 

注1: 2020年の各国の排出削減目標/排出削減行動が完全に実施された場合であっても、2020年の排出ギャップは年間8-12ギガトン(CO2換算)と見積もられています。2020年における排出削減の技術ポテンシャルは、約17±3 ギガトン(CO2換算)であり現行対策ケースの排出レベルと2℃目標とのギャップを埋めるには十分ですが、対策をとるための時間がなくなりつつあります。 
 

この「ギャップ」の視点から、「米中と同じ2005年比3.8%減」の削減目標は「1990年比では約3%の増加」を意味し、「深く失望した。日本政府に対して決定を見直すよう求める」(英国エネルギー・気候変動省のホームページ)などの批判を招いたようです。
一方、2020年の各国の目標引き上げにつながるプロセスとして、各国は再エネと省エネに限らず「高い削減の可能性がある分野」について、政策の検討と導入促進に合意しました。この点からも、省エネの比重は今後ますます高まるものと思われますし、とりわけ、「温室効果ガスの排出削減を世界的視野で行う」視点での省エネ技術の海外展開がクローズアップされることと思われます。
 

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(Q22)

改正省エネ法はいつから施行されるの?


(A22)

Q&A16と17でご説明の通り、平成25年5月24日に省エネルギー法の改正案が成立し、12月27日に「改正省エネ法」を施行するための省令及び告示が公布されました。
改正の背景について、主管官庁である経済産業省は、「業務(オフィス等)・家庭といった民生部門における省エネルギー対策を推進するため、また電力の需給の早期安定化の観点から、(1)トップランナー制度の建築材料等への拡大、(2)電力ピーク対策を措置」するためと述べています(出典:経済産業省ニュースリリース(新規ウィンドウに表示))。
具体的には、下記のとおりです。

1、省エネ法施行規則の一部改正について
(1)事業者が取り組んだ電力ピーク対策を報告できるよう定期報告書の様式を変更した。
(2)電気事業者が需要家の求めに応じて、開示する情報を一定時間毎の電気使用量とし、開示方法をインターネットや書面などとすることを定めた。


2、断熱材判断基準等の指定について
建築材料のトップランナー制度の対象に新たに指定した「断熱材」について、目標年度、目標基準値等を定めた。
 

3、工場等判断基準等の改正について
前年度からの節電分を大きく評価することができるエネルギー消費原単位を新たに追加した。


4、工場等指針及び荷主指針について
工場・事業場及び荷主における電力ピーク対策の適切かつ有効な実施を図るため、事業者が取り組むべき措置に関する指針を定めた。

Q&A17でご説明した電気需要平準化時間帯は、7月1日から9月30日までの8時から22時まで、及び12月1日から3月31日までの8時から22時までとすることとなりました。また、評価係数が導入されたことにより、従来の省エネ対策に加え、自家発電の活用等により電力需要ピーク時の系統電力の使用を低減する取組を行った場合は、これをプラスに評価できる体系になりました。


改正省エネ法の施行期日は、
(1)建築材料等のトップランナー制度に係る措置については平成25年12月28日
(2)電力ピーク対策に係る措置については、平成26年4月1日
と定められています。したがって、平成26年7月末までに提出する平成25年度の定期報告書は従前どおりの様式であり、平成26年度の報告書から新方式の報告書となります。
 

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(Q23)

空調機の性能表示のCOPとAPFの違いは?


(A23)

業務用エアコンは2006年10月からCOP表示に加えAPF表示をしています。
業務用エアコンは商店、事務所、工場などで使うことを想定して作られている製品で、能力は4.0kW以上です。そして、APF表示の対象となる業務用エアコンは、定格冷房能力が28kW以下の「空冷式冷房専用形」および「空冷式冷房・暖房兼用(ヒートポンプ)形」の製品です。
COP(Coefficient of Performance)は、定められた温度条件での消費電力1kW当たりの冷房・暖房能力(kW)を表したものです。この数値が大きいほどエネルギー消費効率が良く、省エネ性の高い機器と言えます。
一方、APF(Annual Performance Factor)は一年を通して、ある一定の条件のもとにエアコンを使用した時の消費電力量1kWh当たりの冷房・暖房能力(kWh)を表示したものです(下図参照: 出典は日本冷凍空調工業会のホームページ)。

COPとAPFについて

APFを算定する際の建物用途として、「戸建て木造住宅」、「戸建て店舗」、ビル内の「事務所」を想定し、それぞれの建物に応じた、熱貫流負荷、日射負荷、換気、内部発熱負荷などを考慮して、冷房負荷と暖房負荷を定めるようになっています(出典: 「エアコンディショナーのエネルギー消費効率及びその測定方法(案)」 経済産業省)。

  住宅 店舗 事務所
建物の概要 戸建て木造住宅の
1階・南向き
戸建て店舗の
1階・東向き
各層階ビルの
中間階・東向き
冷暖房負荷 1.25×0.82 1.11 0.55
冷房負荷が0
となる外気温度
23℃ 21℃ 17℃
暖房負荷が0
となる外気温度
17℃ 15℃ 11℃

 また、冷暖負荷の使用期間については、東京をモデルとし、下表の条件のもとで、外気温度ごとの発生時間を採録しています(出典: 「エアコンディショナーのエネルギー消費効率及びその測定方法(案)」 経済産業省)。

  住宅 店舗 事務所
冷房機関 6月2日〜9月21日 5月23日〜10月10日 4月16日〜11月8日
暖房機関 10月28日〜4月14日 11月21日〜4月11日 12月14日〜3月23日
1週間の運転日数 7日 7日 7日
1日の運転時刻 6時〜24時 8時〜21時 8時〜20時

 以上のご説明からご理解いただける通り、COPがある一定の温度条件で運転した場合の1点の性能(能力)ポイントであるのに対し、APFは年間を通じた総合負荷と総消費電力量を算出している分、実際に近い効率が算出可能であると言えますが、下記のような課題もあります。
APFでの実機を用いた能力(COP)試験は、定格冷房・暖房能力、低温暖房能力、中間冷房・暖房能力の5点で、冷房時の室内側乾球温度は27℃で湿球温度は19℃に、また、暖房時の室内側乾球温度は20℃で湿球温度は最高15℃に固定し行います。そして、冷房定格と中間での能力試験時の室外側温度は35℃、室内側乾球温度は27℃、室内側湿球温度は19℃に固定されています。一方、暖房定格と中間での能力試験時の室外側温度が7℃で室外側湿球温度が6℃、また、暖房低温能力試験時の室外側温度が2℃で室外側湿球温度が1℃に固定されています。そして、外気温度の違いによる能力(COP)の算出は5点のデータを使い計算で求めることとなっていて、定格能力以下では常に定格能力より高い能力(COP)が得られる結果となることです。つまり、殆どすべての我が国の空調機が採用するインバータ空調機では低負荷時の能力が、また、非インバータ空調機では定格以外の能力が過大に評価されている恐れがあることです(出典: IEEJ 2009年3月掲載 日本冷凍空調工業会作成)。
APFでの実機を用いた能力(COP)試験は、エアコン圧縮機の回転数を固定し、室内温度は試験装置が制御しています。実際のエアコン運転では、エアコン自体が圧縮機の回転数制御と温度(流量)制御を行っています。このため、特に低負荷でのエアコンの能力が予測できていない恐れがあります。

インバータ空調機の能力

すでにご説明の通り、「戸建て木造住宅」、「戸建て店舗」、ビル内の「事務所」で想定する冷暖負荷の使用期間が異なります。その結果として、「戸建て木造住宅」では暖房期間総負荷が大きく、ビル内の「事務所」では冷房期間総負荷が大きくなります。加えて、「戸建て木造住宅」用空調機(ルームエアコン)では暖房中間期の性能が、また、ビル内の「事務所」用空調機(業務用エアコン)では冷房中間期の性能がAPF性能の表示に強く影響を与えます。したがい、中間負荷以下の負荷での負荷量は無視できず、低負荷での精度のある能力推定が重要となっています。

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(Q24)

低炭素社会と水素社会って?


(A24)

我が国は、第4次環境基本計画(平成24年4月27日閣議決定)において、長期的な目標として2050 年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指すこととしています。この80%削減という目標は、エネルギー需要・供給のあらゆる部門で限りなくCO2(二酸化炭素)の排出をなくすことを目指して初めて到達可能な目標と言えます。すなわち、低炭素社会とはCO2の排出が少ない社会のことであり、地球温暖化の緩和を目的としています。
低炭素社会を実現するための具体的な方法として、
・省エネルギーの推進
・熱機関の燃料を化石燃料から再生可能エネルギーに転換
・植林など緑化の推進
などが考えられます。この中、化石燃料を燃料とする熱機関は火力発電所や自動車のエンジンなどあらゆる場所で使用されています。したがい、そのCO2排出量は多く、天然ガスなど炭素分の少ない燃料への転換(燃料の低炭素化)や燃焼の結果として排出されたCO2を回収・貯留(CCS)することが進められています。
水素は利用段階ではCO2を排出しないため、燃料として水素を使用する社会(水素社会)は低炭素社会となります。加えて、電気と比べ水素は貯蔵性に優れており、ガソリン、軽油や灯油などの液体燃料ほどではないものの電池よりもエネルギー密度が高く(下図: 出典はトヨタ自動車 「水素・燃料電池自動車(FCV)の取り組み」)、エネルギーを高効率で最適に利用でき、災害時もエネルギーを利用できるといった付加価値が生まれることが期待されます。

エネルギー密度の比較

水素社会には上記の利点がある一方で、その実現には次のような制約と課題があります。
・水素は、電気と同様、何らかの化合物からエネルギーを使って製造する必要がある。水素を化石燃料(炭化水素)から取り出せば化石燃料単体で使うよりも総合効率は低くなり、CO2も発生する。したがい、製鉄所等で副生物として製造される場合を除き、安価に得ることができない。
・余剰の太陽光や風力のような再生エネルギーを使って水を電気分解し水素を製造、貯留、再利用する方法では変換工程(再生可能エネルギーより電気より水素より電気)が多い分ロスも多い(2006年3月の「屋久島水素ステーションプロジェクト活動報告」によると総合効率は22%であり、再生エネルギーにより得られた電力の78%が失われた)。
・現時点では水素燃料電池車など機器の開発も経済性(コスト)も水素ステーションなどのインフラ整備も今後の課題として残されている。
以上、水素社会の実現は低炭素社会の実現に直結しますが、水素社会でなくとも低炭素社会は実現可能ですし、その主要なカギの一つが省エネルギーの推進ということになります。
 

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(Q25)

省エネに取り組みたいと思っているが、勉強会資料や手引き資料はあるか?


(A25)

電気、ガス、油などエネルギーは有価であり、エネルギー使用量を削減することは経費節減のみならず業務改善に直結します。このため、多くの企業や機関が積極的に取り組み、そのための勉強会資料や手引き資料がウェブ上で公開されています。以下、回答者の私見ですが、役立つと思われるウェブサイトの一例をご紹介します。

 

1. 勉強会資料として役立つウェブサイト

関東経済産業局ウェブサイト【経営改善テクニック集】(新規ウィンドウに表示)

経営の視点から省エネが解説されています。

省エネルギーセンターの【オフィスビルの省エネルギー】(新規ウィンドウに表示)

オフィスビル以外にも、ホテル、商業施設、病院の事例が紹介されています。 

四国電力の【省エネ(節電)事例集】(新規ウィンドウに表示)
産業用、事務所・ビルや商業施設について取りまとめられています。そのままでもプレゼンテーション資料として利用できます。

東邦ガスの【GASMO-NAVI】(新規ウィンドウに表示)

業種別、ガス機器別に取りまとめられています。GASMO-NAVI会員に登録すると、詳細な事例紹介など会員限定のコンテンツがご覧いただけます。

 

2.省エネ取組時のガイドブックとして役立つウェブサイト

東京都環境局の【地球温暖化対策報告書作成ハンドブック メニュー編】(新規ウィンドウに表示)

エネルギー管理体制の構築を始めとして、ほぼすべてが網羅されています。取捨選択し取りまとめることで自社向けのマニュアルが作成できます。

省エネルギーセンターの【省エネチューニングマニュアル】(新規ウィンドウに表示)

費用のかからない/経費程度で済む運用改善について、項目ごとに具体的な手順を解説しています。自社保有設備の運用状況の確認にも役立ちます。
 

3.省エネ参考事例の収集に役立つウェブサイト

○各経済産業局の【省エネ事例集】
北海道経産局(新規ウィンドウに表示)
関東経産局(新規ウィンドウに表示)
近畿経産局(新規ウィンドウに表示)
四国経産局(新規ウィンドウに表示)

省エネルギーセンターの【省エネ診断事例と省エネ大賞受賞事例】(新規ウィンドウに表示)

なお、「省エネ大賞 (省エネ事例部門) 全応募事例集」は有料です。
 

同様なウェブサイトは他にもありますので、キーワード検索を駆使しピッタリくるウェブサイトと資料をお選び下さい。なお、ご紹介したウェブサイトは公的機関や公益企業のものであり、出典を明示すれば利用可能と思われますが、念のため、使用先に使用許可を求められるようお願い申し上げます。

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(Q26)

資源エネルギー庁主催の改正省エネ法説明会に参加しました。


(A26)

現在、主要都市で開催中の「改正省エネ法説明会」に参加しました。説明会では改正省エネ法に加え、省エネ関連の補助金についても説明がなされました(注記)。
注記:改正省エネ法に関わる説明資料と関連資料は、資源エネルギー庁のホームページ(新規ウィンドウに表示)の「省エネ法の概要と必要な手続」に掲載されています。是非、資料をダウンロードの上、下記説明と突き合わせ、ご確認願います。
改正省エネ法に関わる説明の要旨は下記のとおりです。

1、具体的な改正点とポイント
・従来の法律名は「エネルギーの使用の合理化に関する法律」.であり、「燃料資源の有効な利用」を目的としていました。東日本大震災を契機として電気需要の平準化の重要性が認識されたことから法律名を「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」.と「等」を加え、「電気の需要の平準化に関する所要の措置」を目的に加えました。
・また、エネルギー消費量が特に大きく増加している業務・家庭部門において住宅・建築物や設備機器の省エネ性能の向上といった対策を強化する必要があり、トップランナー制度の建築材料等への拡大等に関する措置を追加しました(具体的には、断熱材を指定)。
・その他の改正事項として、1.エネルギーマネジメントシステムの国際規格であるI SO50001の活用の検討等について「工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」に規定、2.オンライン申請手続きの簡素化、3.エネルギー消費機器等のトップランナー制度の対象として「三相誘導電動機 」 と「電球形LEDランプ 」を指定しました。
・「電気の需要の平準化」とは、「国全体」の夏期・冬期の昼間の電気需要を低減することです。このため、例えば、昼間よりも夜間の電気使用量が多い個々の主体に対し夜間から昼間への電気の使用のシフトを求めるものではありません。

2、電気需要平準化時間帯の設定
・電気需要平準化時間帯として、全国一律で、7〜9月(夏期)及び12〜3月(冬期)の8〜22時に設定されました(土日祝日を含む)。

3、事業者が取り組むべき措置に関する指針
・「電気の需要の平準化に資する措置」として、コージェネレーション導入事例が紹介されました。
・荷主はどの時間帯に荷が輸送されるかを管理できる立場にないため、荷主には「電気需要平準化評価原単位」が適用されません。

4、電気需要平準化評価原単位
・従来の「エネルギー消費原単位」に加え、「電気需要平準化評価原単位」が策定されました。
・事業者は工場等全体として又は工場等ごとにエネルギー消費原単位又は電気需要平準化評価原単位を中長期的にみて年平均1パーセント以上低減させることを求められます(どちらかの指標で年1%の改善)。そして、いずれかが目標未達の場合は理由を記述する必要があります。

5、定期報告における改正点
・平成26年度提出(平成25年度実績)の報告分については従来の様式での報告となり、新様式は平成27年度提出(平成26年度実績)の報告分から適用を受けます。
・特定規模電気事業者(新電力)の普及を踏まえ、特定規模電気事業者(新電力)からの買電量も、昼間・電気需要平準化時間帯・夜間の買電量に分けて報告する必要があります。
・電力会社から提供される検針票を用いて報告を行う場合で、検針日が月末最終日でないために検針期間と電気需要平準化時間帯の期間にズレが生じてしまう場合は、(夏)7月15日以降の直近の検針日に測定された電気使用量を含む以降3ヶ月分、(冬)12月15日以降の直近の検針日に測定された電気使用量を含む以降4ヶ月分、以上の電気使用量を電気需要平準化時間帯の買電量として報告して下さい(下図参照)。
・テナントビルのオーナー及びテナントについても、平成27年度提出の定期報告より電気需要平準化時間帯の電気使用量の報告を求めます。現在、テナント専用部の電気需要平準化時間帯の電気使用量を推計できる簡易なツールを開発中であり、平成26年4月に資源エネルギー庁のホームページに掲載予定とのことです。

検針票を用いて報告を行う場合の例

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(Q27)

空調の除湿運転が省エネにならない理由は?


(A27)

Q&A18でご説明の通り、気温が高いときに人が感じる「むし暑さ」の指標として不快指数があり、乾球温度(気温)をt(℃)、湿度をh(%)として、下式で表されます。


不快指数 = 0.81×t+0.01h×(0.99t-14.3)+46.3 ・・・ (1)
 

下図は(1)式で求めた不快指数と気温、湿度の関係を図化したものです。国が推奨する夏季28℃で不快と感じないためには湿度を60%以下とする必要がありますが、盛夏には80%を超える湿度の日も珍しくなく、温度を基準に空調機を運転すると不快さを感じる人が増えることが分かります。このため除湿運転が行われています。

温度と湿度が不快指数に与える影響

従来の除湿運転は、1.室内の空気を露点以下に冷却、2.結露した水を排出、3.乾いた空気を少し暖めて室内に戻す、ことで行われていました。

つまり、「必要以上に冷やし、その後に暖める」ことを行うために、通常の冷房運転以上にエネルギーを使っていることになります。2007年製ルームエアコンでの試算によると、冷房運転時のCOPが5.1であるのに対して除湿運転時のCOPは1.7まで低下し、除湿運転時には通常冷房運転時の1/3まで性能が低下(消費電力が3倍に増加)します。また、下図の通り、消費電力の測定例でも除湿運転の消費電力の増加は明らかです(出典:「ビルおよび住宅における除湿・加湿空調制御の問題点と最新の技術動向」北原博幸)。

冷房運転と除湿運転での消費電力

なお、上記でご説明した室内空気を露点以下に冷却し除湿する冷却減湿方式以外に、固体吸着剤や塩化リチウム水溶液などによって水蒸気を吸収するデシカント除湿方式や、Q&A13でご説明した空気を圧縮し全圧を高めることで飽和湿度を減少させる圧縮減湿方式もあります。特に、固体吸着剤を用いたデシカント除湿方式では除湿だけではなく冬季の加湿にも対応し、除湿COPとして5.0を達成した省エネ製品も市販されています。

空調機が設置される建築物は省エネ推進に伴い「高断熱かつ高気密」な建築物が増える傾向にあり、従来以上に湿度対策が重視されるようになってきています。次回は、建物の高断熱化と室内湿度についてご説明する予定です。

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(Q28)

建物の高断熱化と室内湿度制御について。


(A28)

湿度が低すぎる(空気が乾燥する)と喉の粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなり、50%以上の湿度を保つことでインフルエンザウイルスの生存率が急激に低下すると言われています。逆に、湿度が高すぎるとカビやダニ、結露などの原因となるため、ASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)では40%〜60%の間に湿度を調節することを推奨しています(下表)。

相対湿度と微生物等との相関関係

この推奨に従うには、東京では、夏季に除湿、冬季に加湿(注記)が必要なことが分かります(出典:気象庁 1981年から2010年の30年間の月別平均湿度)。

注記:暖房することで室内温度は外気より高くなる分、室内湿度は外気の湿度より低下します。

東京の月別平均湿度

ところが、「最近のビル用マルチエアコンで冷房するとオフィスの湿度が高くなる」などの声が聞かれるようになってきました。この原因の一つとして、空調機の高効率化と建物の高気密・高断熱化が挙げられます。すなわち、ビル用マルチエアコンなどヒートポンプ空調機の理論効率(逆カルノーサイクル効率)は下式で表されるため、蒸発温度を高めたり、凝縮温度と蒸発温度の差(温度リフト)を小さくしたりすることは効率向上に寄与します。

逆カルノーサイクル効率

このため、高効率空調機では伝熱面積や吹出風量を大きくしたりインバータにより回転数を最適化したりすることで、温度リフトを小さくして性能向上を図っています。高気密・高断熱オフィスでは外気負荷が少ない分、空調機は低負荷となり温度リフトが小さくなるため、空調機は効率の良い運転となります。反面、蒸発温度は高くなることで除湿量が減り、室内は高湿度となる訳です。

以上から、空調機の高効率化と建物の高気密・高断熱化に伴い、除加湿制御と温度制御を分けて処理する湿度・温度個別空調システムが省エネ面からも注目を集めています。吸湿材を用いるデシカント方式は有効な湿度制御方式の一方式と言えます。デシカント除湿方式では、Q&A27でご説明の通り、除湿COPとして5.0を、また、デシカント加湿方式では、水・蒸気配管で不要で加湿COPとして4.6を達成した省エネ製品も市販されています。

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(Q29)

一次、二次エネルギーと最終エネルギー消費の違いは?


(A29)

2013年度版エネルギー白書では、以下のような説明がなされています。
 

エネルギーは、生産されてから実際に私たちエネルギー消費者に使用されるまでの間に、様々な段階、経路を経ています。大まかにみると、原油、石炭、天然ガス等の各種エネルギーが供給され、電気や石油製品等に形をかえる発電・転換部門(発電所、石油精製工場等)を経て、私たちに最終的に消費されるという流れになっています。この際、発電・転換部門で生じるロスまでを含めた我が国が必要とする全てのエネルギーの量という意味で「一次エネルギー供給」の概念が用いられ、最終的に消費者に使用されるエネルギー量という意味で「最終エネルギー消費」の概念が用いられています。国内に供給されたエネルギーが最終消費者に供給されるまでには、発電ロス、輸送中のロス並びに発電・転換部門での自家消費が発生し、最終消費者に供給されるエネルギー量は、その分だけ減少することになります。量的には、日本の国内一次エネルギー供給を100とすれば、最終エネルギー消費は69 程度(2011年度の総合エネルギー統計による)でした。 
 

以上から、

・「一次エネルギー」とは、加工されない状態で供給されるエネルギーで、石油、石炭、原子力、天然ガス、水力、地熱、太陽熱など。

・「二次エネルギー」とは、一次エネルギーを転換・加工して得られる電力、都市ガスなど。

・「最終エネルギー消費」とは、産業活動や交通機関、家庭など、需要家レベルで消費されるエネルギーの総量(電力会社の発電所、石油精製工場、ガス製造所などエネルギー転換部門でのエネルギー消費は含まれない)。

を指します。
 

原油、石炭、天然ガスなど化石エネルギーを燃焼させて発電する場合、一次エネルギー供給量も発電量も計測できます。ところが、水力、地熱、風力、太陽光エネルギーなど非化石エネルギーによる発電では、時々刻々と水量や風速が変動するため、発電に投入されたエネルギー量(一次エネルギー供給量)を計測したり計算で求めたりすることは不可能です。

そこで、我が国の「総合エネルギー統計」では、非化石エネルギーは便宜的に火力発電の平均変換効率を用い、一次エネルギー供給を逆算し推計する方法が採用されています。この方法はアメリカ、ドイツ、イギリスなどでも採用されています。一方、カナダ、フランス、ノルウェーなど電源構成上、水力、原子力が大半を賄っており、火力発電が殆ど行われていない国々では、[一次エネルギー供給]=[最終エネルギー消費]として一次エネルギー量を求めています。

つまり、電源構成事情により一次エネルギーの定義は国ごとに異なります。このため、IEA(国際エネルギー機関)では、こうした各国の事情を踏まえ、横断的な比較の基準を提供するため、1991年以降、IEA加盟国全体のエネルギー構成から独自の判断に基づいて統一的に一次エネルギー換算を行い、結果を公表しています。一例として、水力の変換効率は100%、地熱の変換効率は10%、原子力の変換効率は33%として発生電力量から一次エネルギー量を求めています。

下図は、IEAが2011年のデータを基に、一次エネルギー消費総量と一人あたりの一次エネルギー消費量の多い上位10か国について取りまとめた結果です。我が国は、一次エネルギー消費総量では世界で5番目ですが、一人あたりの一次エネルギー消費量では33番目(3.61toe/人)に位置しています。

一次エネルギー消費総量上位10か国

一人あたりの一次エネルギー消費量上位10か国

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(Q30)

2013年度冬季の電力需給結果と2014年度夏季の電力需給の見通しは?


(A30)

2013年4月30日付で経済産業省から電力需給検証小委員会の報告書(新規ウィンドウに表示)が公表されました。本報告書に基づき、2013年度冬季の電力需給結果と2014年度夏季の電力需給の見通しをご紹介します。

まず、2013年度冬季の電力需給結果について概説します。

・最大需要日の需要(実績)の合計は15,246万kWであり、事前の想定である15,421万kWを175万kW下回りました。2013年度冬季が記録的な寒波に見舞われたにも拘わらず事前想定を下回ったのは、節電効果によるものです(+36万kWの気温低下による暖房需要の増加 − 64万kWの経済停滞による減少 − 147万kWの節電による減少 = −175万kW)。
 

・電力供給の視点からは、原子力発電所が稼働停止する中、直近の確定値である2012年度には火力発電比率が88%を超える事態となっています(下図:出典は電力需給検証小委員会報告書)。資源のない我が国は火力発電の燃料である化石燃料の大部分を海外からの輸入に依存しているため、2013年度の燃料費は約3.6兆円増加(販売電力量(9,000億kWh)で単純に割り戻すと4円/kWhの負担増加)と試算されています。

火力発電比率

 

・各電力会社は火力発電所の巡回点検の回数を増やすとともに、設備のわずかな異常兆候の早期発見及び休日を利用した24時間体制での早期復旧等を実施していますが、2013年12月17日、北海道電力管内において管内の火力最大機である苫東厚真4号機の計画外停止が発生、さらに2014年1月9日には、寒波の影響により電力需要が増加し冬季の最小予備率を記録するなど、電力需給がひっ迫する状況に変わりはありません。
 

政府は2014年5月16日に関係閣僚会合を開き、2014年度夏季の電力需給対策として節電協力を要請するものの、経済活動に影響が出るとして数値目標付きの節電要請は見送ることとしました。

また、前述の電力コストの影響に加え、次の点を喚起しています。

・現状、原発の稼働が全て停止していることや、電源開発松浦火力発電所2号機のトラブルに伴い、周波数変換装置(FC)を通じた電力融通を行わない場合、需給バランスが特に厳しくなる関西電力及び九州電力は、60Hz管内の他電力(中部電力、北陸電力、中国電力)から、最大限の電力融通を行ったとしても、関西電力及び九州電力管内のみならず、中部及び西日本全体でも、電力の安定供給に最低限必要な予備率3%を確保することが出来なくなります。東日本からの電力融通を行えば、電力の安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できますが、FCによる融通を予め見込むことは、さらなる大規模電源の脱落が中部及び西日本で発生した場合に追加的な融通可能量が制約されるなど、リスクへの対応力がその分減じることを意味します。FCを通じた電力融通に予め頼らずとも、電力の安定供給を確保できることを目指した需給対策の検討が必要となっています。
 

・火力発電の稼働増による発電部門における温室効果ガスの排出量の大幅な増加が、我が国の地球温暖化問題への対応について困難をもたらしています。一般電気事業者の温室効果ガス排出量は、震災前の2010年度は約3.74億t-CO2でしたが、震災後、原発停止に伴う火力発電の焚き増しにより、2012年度は約4.86億t-CO2と、2010年度比で約1.12億t-CO2(約30%)増加しています。その間、我が国全体の温室効果ガス排出量は2010年度の12.6億t-CO2から2012年度の13.4億t-CO2へと約0.8億t-CO2(約6%)増加しており、発電部門の排出量の増加が大きな要因となっています。
 

・節電の取組が合理的な経費節減となる等、中長期的に需要家にとって利益につながる場合もありますが、東日本大震災後の電力需給がひっ迫した状況を踏まえた節電の取組は、電力の確保や製品の供給を行うにあたり、企業にとって一方的なコスト負担となる取組も多数行われていることを忘れてはなりません。また、東日本大震災後、企業を中心に自家発電設備の設置や生産の夜間・休日シフト(人件費の増加)等の取組が行われてきており、機会費用の損失や対策費用を含め、コストの増加を伴う取組が数多く行われていることには留意が必要です。

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(Q31)

直管LEDランプの規格について。


(A31)

2013年4月に直管LEDランプのGX16t-5口金(下図:出典はT社カタログ)がJIS認定されました。JIS化(JIS C 8159-1)されたことで、公共施設をはじめ、各所でGX16t-5口金に対応した照明器具が採用されることになると思われます。なお、直管蛍光灯で採用されているG13口金の直管LEDランプも販売されていますが、GX16t-5口金とG13口金には互換性はありません。

GX16t-5口金

蛍光灯にはスターター型、ラピッドスタート型、インバータ型などさまざまな方式があり、電源部分の回路・構造が異なります(下図:出典は東京都環境局「照明の間引き対策 実施のための手引き」)。

蛍光灯の方式

従って、従来型照明器具の電源を交換・改善するには専門知識が必要である上、安全性が十分に確保できない恐れもあります。また、蛍光灯とLEDは全く異なる原理で発光するため、明かりの性質も異なります。以上のような理由から、灯具ごと交換することで、安全性と明かりの性質を保証するのがJIS化の狙いだと考えられます。JIS C 8159-1 付属書Aでは、下記6項目で直管LEDランプを表すことを規定しています(下図:出典はT社カタログ)。

直管LEDランプの規格

・「LDL」は、GX16t-5口金付直管LEDランプであることを表しています。

・「40」は、大きさの区分を表し、20形、40形、110形が市販されています。この数字は、20W、40W、110Wの直管蛍光灯と同じ長さであることを表しています。

・「T」は、ランプ管径を表し、T(25.5mm)とS(32.5mm)があります。

・「N」は、光源色の種類を表し、D(昼光色)、N(昼白色)、W(白色)、WW(温白色)、L(電球色)が規定されています。

・「25」は、定格ランプ電力が25Wであることを表しています。

・「24」は、全光束が2400lmであることを表しています。

 

照明器具メーカーでは、東日本大震災を契機とした節電意識の高まりを踏まえ、例えばLDL40形であっても、明るさの異なるLEDランプを複数用意し、ニーズに応えるようにしています。

日本エネルギー経済研究所が平成23年5月31日に発表した資料(「LED照明の省電力ポテンシャル」)によると、照明の消費電力が全電力消費に占める割合は16%で、全照明をLED照明に置き換えたときの省電力量は総消費電力の9%に相当します。スターター型、ラピッドスタート型蛍光灯を直管LEDランプに更新することは投資対効果の点でも優れた省エネ対策であり、初期投資を軽減するための税制優遇制度や補助金制度も用意されています。

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(Q32)

省エネに取り組みたいが、どのように進めればよいか?


(A32)

省エネを効果的に進めるには「継続的な活動」が不可欠であり、省エネ法ではエネルギー管理として、ISO50001ではエネルギーマネージメントシステムとして規定されています。

「継続的な活動」のための一般的な手順を理解する上で、東京都環境局が作成した「中小規模事業所の省エネルギー対策テキスト【基本編】平成25年度版」(新規ウィンドウに表示)(以下「テキスト」)が参考になると思われます。詳しく説明されている上、テキストのダウンロードが可能です。進め方の手順は下図の通りであり、Plan-Do-Check-Action(PDCAサイクル)を廻すことで、継続的に省エネを推進していきます。

PDCAサイクル

(出典:「中小規模事業所向け第6回省エネセミナー」東京都地球温暖化防止活動推進センター)

 

以下、テキストを中心に省エネを効果的に進めるための要点をご説明します。

 

○幹部経営者(できれば社長)のやる気の披露(省エネ取組宣言など)と社員全員の参加により、初めて効果的に進めることができます。具体的な取組例は以下の通りです。

・幹部職員会議で議題にする

・省エネ担当者と現場パトロールを実施し幹部経営者も参加する

・提案制度・発表会等の全員参加型制度を設ける

・社内報等により、工場・事務所の達成度を提示し進捗度を共有する

省エネの取組例

(出典:「節電・省エネの進め方のポイント」四国経済産業局)

 

○「エネルギー管理体制の整備と責任者配置」でのポイントは、リーダー及び各責任者の役割・責任範囲・義務を明確にすることです。

 

○「省エネルギー対策」は運用対策(運用改善)と設備導入対策(設備改善)に分類されます。省エネの第1ステップはすぐに取り組むことが出来る運用改善で、これが徹底された後、第2ステップとして設備改善に取り組むことが基本です。運用改善での具体的なメニューとして、経済産業省作成の節電メニュー(新規ウィンドウに表示)(「節電メニューをダウンロードする」からダウンロード可能)の活用を提案します。運用改善の徹底により、全エネルギー使用量の5%程度の削減が期待できます。

 

○工場で生産量が増加するとエネルギー使用量も増加し、省エネ努力の評価や他工場との比較が十分に行えません。この点を是正するため、省エネ法ではエネルギー使用量と密接に関係する数値(工場では生産量・生産額など、事務所ではビルの延床面積・営業時間など)で除した値をエネルギー原単位として、中長期的に見て年1%の低減努力を求めています。

 

○「課題発掘」のため、一般財団法人省エネルギーセンター(新規ウィンドウに表示)や東京都地球温暖化防止活動推進センター(新規ウィンドウに表示)などが無料省エネ診断を実施しています。経験豊富な診断員に委ねることは新たな課題発掘に直結すると思われます。

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(Q33)

実揚程の大きなポンプにインバータを取り付けても省エネ効果が少ないのはなぜ?


(A33)

ポンプや送風機をインバータにより回転数制御させた場合、理論上、流量は周波数に比例し、圧力(ポンプでは揚程)は周波数の2乗に比例し、消費電力は周波数の3乗に比例します。したがって、インバータで周波数を下げると、ポンプや送風機の圧力は2乗比例で小さくなります。密閉系の冷却水配管系統や送風機などであれば、ポンプや送風機の圧力は配管の摩擦損失が中心なので、周波数を絞って流量を減らせば、その2乗に比例して摩擦損失も減るので、インバータで周波数を下げて、省エネを図ることができます。

ところが、深井戸ポンプの場合、流量が減っても実揚程(汲み上げる高さ)は変わらないため、インバータで周波数を下げ過ぎると必要な高さまで水が汲み上がらなくなってしまいます。言い換えると、実揚程の大きなポンプでは実揚程を維持するための電力が必要な分、省エネ効果が少なくなります。

以上のことを、ポンプの性能曲線を使い定量的に説明します。
ポンプの仕事量は流量(Q)と揚程(H)に比例します。ポンプと電動機の複合効率をηとすると、必要な電力量(P)は以下のように表されます。

P=K×Q×H÷η (Kは定数) ・・・(1)
 

ポンプの仕事量

(出典:新訂エネルギー管理技術 電気管理編)
 

ポンプ揚程曲線は、上図のとおり、流量がゼロ(締切圧)の時に最大の揚程(k1)を示す2次曲線で、また、管路抵抗曲線も流量がゼロの時に実揚程(ha)を示す2次曲線で、それぞれ近似します。そして、ポンプ揚程曲線と管路抵抗曲線の交点がポンプの定格運転点(P1)を示しています。

ここで、締切圧力が運転点の1.4倍(k1=1.4)、実揚程が定格揚程0.3倍(ha=0.3)とすると、揚程曲線と管路抵抗曲線は以下のように表されます。

揚程曲線・管路抵抗曲線

 

ポンプの流量を設計点から半分(0.5pu)に絞るための制御方法として、吐出し弁制御とインバータによる回転数制御を比較します。

1.吐出し弁制御では、吐出し弁を絞ることで管路抵抗曲線をより急峻にさせ、動作点をP1からP2に変化させます。このときの揚程h2は(2)式からh2=1.4−0.4×(0.5)2=1.3となり、必要電力は(1)式から、P2=K×0.5×1.3÷η=0.65×(K÷η)と求められます。すなわち、定格運転点(P1)での必要電力がP1=K÷ηであることから、流量が半分のときは定格電力の65%で済むこととなります。

2.インバータによる回転数制御では、揚程曲線自体を変化させ、動作点をP1からP3に変化させます。ここで、回転数制御では弁は常に全開で使用するため管路抵抗曲線は変わりません。したがって、(3)式から揚程は、h3=0.3+0.7×(0.5)2=0.475となり、必要電力は(1)式から、P2=K×0.5×0.475÷η=0.24×(K÷η)と求められます。すなわち、流量が半分のときは定格電力の24%で済むこととなります。つまり、吐出し弁制御に比べ、省エネ量(=吐出し弁制御での必要電力−回転数制御での必要電力)は0.41(=0.65−0.25)少なく、省エネ率としては63%(=(65−24)÷65)となります。

上記1.と2.の関係をもとに、締切圧が運転点の1.4倍(k1=1.4)のときの省エネ量と流量の関係を求めると下図のようになります。

バルブ制御に対する回転数制御の省エネ量

上図から、次のことが分かります。

・省エネ量は実揚程が小さいほど大きくなる。
・流量比が約60%で最大の省エネ量となる。
 (流量比が小さすぎても、大きすぎても省エネ効果が少なくなる)

つまり、回転数制御(インバータ)が有効なのは、実揚程が小さく、流量比で30%〜80%程度までと言えそうです。

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(Q34)

ZEB、ZEHって何?


(A34)

ZEBは「net Zero Energy Building」を、ZEHは「net Zero Energy House」を指し、我が国では「建築物における一次エネルギー消費量を、建築物・設備の省エネ性能の向上、エネルギーの面的利用、オンサイトでの再生可能エネルギーの活用等により削減し、年間での一次エネルギー消費量(注1)が正味(ネット)でゼロ又は概ねゼロとなる建築物」と定義されています(注2)。

(注1)一次エネルギーとは自然界に存在しているエネルギー源のことで、石油、石炭、天然ガスなどの枯渇性のものと、太陽光、太陽熱など再生可能なものに分類されます。再生可能エネルギーは建物内で得ることもできます。

(注2)欧米諸国を始めとして世界各国がZEB/ZEHの実現と普及に向けてロードマップを作成し取り組んでいますが、Eが「エネルギー」か「エミッション」かや、英国ではオフサイトでの再生可能エネルギーの活用を含めるなど、ZEB/ZEHの定義は若干異なります。

ZEB/ZEHについては、経済産業省資源エネルギー庁が以前から検討しており、2009年には「ZEBの実現と展開に関する研究会」が立ち上げられ、「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の実現と展開について」(新規ウィンドウに表示)と題する報告書(以下「報告書」)が取りまとめられています。

 

報告書では、以下のような指摘や提言がされています。
 

○我が国の業務ビルの平均エネルギー消費原単位は2400MJ/平方メートル/年であるのに対し、住宅では500MJ/平方メートル/年程度であり、ZEBの実現はZEHに比べて技術的なハードルははるかに高い。
 

○我が国では、欧米諸国に比べて中高層の比率が高い建築物が狭隘な土地に建設される傾向があり、新エネ設備の導入可能な規模を踏まえれば、ZEBの実現がさらに困難な面がある。
 

○条件が不利な我が国においてZEBの技術モデルが構築されれば、高温多湿な気候のアジア諸国、米国等への展開も十分に考えられ、我が国のみならず世界の省エネ、我が国の省エネビジネスの国際展開に資することができる。そのため、2030年までに新築公共建築物での実現を目指した開発等を進める。
 

○ZEB達成に向けては、我が国では中高層の比率が高い建築物が狭隘な土地に建設される傾向があることを踏まえれば、オンサイトでの再生可能エネルギーの導入には一定の限界があるため、まずは「省エネ性能の向上」を可能な限り進め、不足部分(全体の約30%)を「太陽光等の再生可能エネルギーで補う」という考え方で進める。
 

○ZEBを実際に達成できるのは新築建築物と考えられるが、ZEBに向けた取組は個々の建築設備や制御システムの技術進歩を通じて、既築建築物の改修においても省エネ性能の向上に大きく貢献することから、我が国の建築物全体の低炭素化に寄与する(下図)。

ZEBのイメージ

 

○ZEBの実現可能性について試算を行い、完全にZEBとなるのは3階建て以下の低層ビルであるが、10階建て程度でも現状の一次エネルギー消費量の2割程度となる(下図)。

ZEBの実現可能性

 

建設大手各社はZEBの実現に向けてすでに動き始めています。ZEB第1号として、2013年10月から本格的な運用を開始した「森の中のオフィス」(山梨県北杜市、木造2階建てのオフィス棟5棟とホール1棟などから構成)は、初年度からのネット・ゼロ・エネルギーの達成を見込んでいます。

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(Q35)

実排出係数と調整後排出係数って何?


(A35)

事業者全体のエネルギー使用量(原油換算値)が1,500キロリットル/年以上で、省エネ法の「特定事業者」又は「特定連鎖化事業者」に指定された事業者は、毎年7月末日までに定期報告書を提出する義務を課せられます。この定期報告書は、温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)における報告書を兼ねていて、1.温室効果ガス算定排出量(実排出量)、2.調整後温室効果ガス排出量(調整後排出量)を算出し報告する必要があります。このとき、電気事業者から購入した電力量(kWh)を温室効果ガス排出量に換算するための係数が実排出係数と調整後排出係数で、単位はt-CO2/kWhです。

実排出係数は、電気事業者が小売りした電気の発電に伴い排出した二酸化炭素排出量(実排出量)を販売した電力量で除した数値で、調整後排出係数は、実排出量から京都メカニズムクレジット・国内認証排出削減量等を差し引いた調整後排出量を販売した電力量で除した数値です。

電気事業者ごとの実排出係数と調整後排出係数は、毎年度12月頃に前年度の実績値が公表されます。例えば、2012年度の実績は2013年12月19日に公表され、公表された係数は2013年度の温室効果ガス排出量の算定に用いられます(報告は2013年7月末日まで)。東京電力、関西電力、四国電力、沖縄電力について、実排出係数と調整後排出係数の年度別推移を下図に示します。

電力会社別実排出係数と調整後排出係数

 

沖縄電力は原発を所有していないため、実排出係数(点線)は年度によらずほぼ一定ですが、その他の電力会社は東日本大震災(2011年実績)以降に原発が停止したことから実排出係数は増加しています。

なお、我が国は2013年以降の京都メカニズム(第2約束期間)に参加しないため、国際排出量取引による京都メカニズムのクレジット(CER、ERU、AAU、RMU)の国際的な移転や獲得を行うことはできず、2013年以降の調整後排出係数(実線)は従来とは異なる傾向を示すことが予想されます。

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(Q36)

改正省エネ法での「電気の需要の平準化に資する措置」って何?(その1)


(A36)

Q&A26でご説明の通り、事業者が取り組むべき「電気の需要の平準化に資する措置」として、以下の項目が具体的に示されています(出典:「省エネ法の改正について」(新規ウィンドウに表示)資源エネルギー庁)

電気の需要の平準化に資する措置

 
そして、具体的な設備・機器として、コージェネレーション設備、蓄熱式空調設備、ガスヒートポンプ空調設備、吸収式冷温水機、モノジェネレーション設備、蓄電池が「電気需要平準化を勘案した判断基準等の見直しについて(案)」(PDF:28.4KB・新規ウィンドウに表示)で取り上げられています。

以下、この資料で取り上げられた設備・機器をその原理を含め3回に分けて紹介します。

 

1.コージェネレーション設備

コージェネレーションシステム(設備)とは、熱源から電力と熱を生産し供給するシステムの総称で、「コージェネ」あるいは「熱電併給」と呼ばれています。コージェネは内燃機関(ガスエンジン)を用いる方法、蒸気ボイラーおよび蒸気タービンを用いる方法、そしてガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた方法に大別されます。下図は内燃機関を用いた民生用コージェネの基本構成を示したものです(出典:一般財団法人コージェネレーション・エネルギー高度利用センター)。発生電力は商用系統と連系し供給され、廃熱は廃熱利用吸収冷凍機によって冷水に変換され、あるいは熱交換器を介して暖房や給湯に用いられます。

コージェネの基本構成

 
「電気需要平準化を勘案した判断基準等の見直しについて(案)」では、コージェネ設備を下表のとおり評価しています。

コージェネ設備の評価

 
コージェネ設備では、コージェネによって供給される熱電比(必要な熱量を電力量で割った値)が、実際の熱電比と大きく異なる場合、コージェネを導入してもエネルギーを有効に利用することができません。熱電比はホテルや病院で大きい値となり、オフィスビルやデパートでは小さい値となります。したがって、コージェネ設備が省エネに寄与するには、熱の利用先があることと、熱需要の時間帯と電力需要の時間帯が一致していることが必要になります。このような条件を満たす業種として、ホテル、病院、銭湯、食品製造業、クリーニング業が考えられます。

 

2.蓄熱式空調設備

蓄熱式空調システム(設備)とは、下図に示すように夜間の割安な電気を利用して「氷」または「冷水」などを蓄熱槽に蓄え、この蓄えた冷熱を昼間の冷房に使う空調システムのことで、工場、ビル、事務所、店鋪、学校などで使われています(出典:沖縄電力株式会社)。

蓄熱式空調設備

 
「電気需要平準化を勘案した判断基準等の見直しについて(案)」では、蓄熱式空調システムを「エネルギーの使用の合理化となる」と積極的に評価しています。パッケージエアコンと氷蓄熱槽をユニット化することで、80m2程度以上の小規模店舗・事務所などでも適用可能な蓄熱式空調設備が市販されています。

 

次回は、ガスヒートポンプ空調設備と吸収式冷温水機について、原理を含めて紹介する予定です。

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(Q37)

改正省エネ法での「電気の需要の平準化に資する措置」って何?(その2)


(A37)

Q&A36に続き、「電気の需要の平準化に資する措置」に関わる具体的な設備・機器として取り上げられているガスヒートポンプ空調設備と吸収式冷温水機について紹介します。

 

1.ガスヒートポンプ(GHP)空調設備

電気式ヒートポンプ(EHP)空調設備が電気モーターで室外機のコンプレッサーを回しているのに対して、ガスヒートポンプ(GHP)空調設備はガスエンジンでコンプレッサーを回し、ヒートポンプ運転によって冷暖房を行う空調システムです(下図:出典は大阪ガス株式会社ホームページ)。

ガスヒートポンプの仕組み

 
ヒートポンプの暖房能力に加え、ガスエンジンの排熱を有効に回収利用することから、スピード暖房が可能です。
EHPの成績係数(COP:熱源機が作り出す熱・冷熱量の、消費するエネルギー量に対する割合を示す値で、値が高いほどその機器のエネルギー効率が高いことを示す)は3.2〜4.2、GHPのCOPは1.1〜1.45となっています。ここで、EHPのCOPを系統電力の需要端熱効率(36.1%)を考慮し、電力を一次エネルギー換算して評価した場合、EHPのCOPは1.16〜1.52(=3.2×0.361〜4.2×0.361)程度となるため、GHPとEHPはほぼ同程度の性能と言えます。なお、エンジンを用いるため、車と同様に定期点検やオイル交換が必要です。

 

2.吸収式冷温水機

水の気化熱を利用して冷水をつくるシステムで、水の蒸発・吸収・再生・凝縮を繰り返します(下図:出典は矢崎総業株式会社ホームページ)。

吸収冷温水機の仕組み

 
冷媒に水、吸収液に臭化リチウムを使用し、フロンは全く使用ません。また、吸収式冷温水機では再生操作に熱源を必要とします。その熱源を選ばないことが吸収冷温水機の最大の特長であり、都市ガス・LPガス・石油はもちろんのこと、工場等から排出される排熱(温水・排ガス・蒸気)も利用可能です。なお、暖房時は水を加熱して温水を得る温水ボイラと同じであり、暖房時のCOPは0.90〜0.95程度です。
吸収式冷温水機のCOPは0.78〜1.2程度で、平成25年12月27日付総合資源エネルギー調査会(工場等判断基準ワーキンググループ)の報告書では、「総じてエネルギーの使用の合理化を阻害するものではないと考えられる」と述べられています。なお、ほぼ真空状態で運転が行われるため、抽気・真空度検査などの定期点検を行わないと機器効率が極端に低下します。

 

ガスヒートポンプ(GHP)空調設備、吸収式冷温水機とも長時間使用する用途に向いており、オフィス、店舗や工場など向けの製品が製造、販売されています。

次回は「電気の需要の平準化に資する措置」に関して、モノジェネレーション設備と蓄電池を紹介します。

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(Q38)

改正省エネ法での「電気の需要の平準化に資する措置」って何?(その3)


(A38)

Q&A36Q&A37に続き、「電気の需要の平準化に資する措置」に関わる具体的な設備・機器として取り上げられているモノジェネレーション設備と蓄電池について紹介いたします。

 

1.モノジェネレーション設備

天然ガス、石油等を燃料としてエンジン、タービン等を用いて発電しますが、コージェネレーション設備と異なり、その際に生じる排熱の回収・利用はしません。モノジェネレーション設備は発電容量が小さいほど発電効率は低くなる傾向にあり、一般的に使用されている発電効率の下限はガスエンジンで33%程度、ディーゼルエンジンで31%程度(公表資料及びメーカーヒアリングによる最低値)と、いずれも系統電力の需要端効率である36.1%を下回っています。
モノジェネレーション設備は、離島のように電力会社の系統から給電が得られない場所などで常用電源として使用されています。

 

2.蓄電池

蓄電池は、充電によって電気を蓄えることで電源として繰り返し利用できる設備であり、夜間電力を充電し、昼間に放電することで、電力ピーク対策に利用できます。実用的なレベルで需要家が実際に電気需要平準化対策として使用している電池は、概ねNAS電池、鉛蓄電池、リチウムイオン電池及びニッケル水素電池です。NAS電池は日本ガイシ株式会社が世界で初めて実用化したメガワット級の電力貯蔵システムであり、1990年代後半より電力会社の変電所施設の負荷平準用に設置されています。通常の事業所で利用する定置用の蓄電池としては、リチウムイオン電池、鉛蓄電池とニッケル水素電池があり、各蓄電池の比較を下表のとおりです(出典:東京都環境局「中小規模事業所の省エネルギー対策(基本編)」)。

  リチウムイオン電池 鉛蓄電池 ニッケル水素電池
コンパクト化(エネルギー密度(Wh/kg)) 約200 約35 約60
電池コスト概算(円/kWh) 20万円/kWh 5万円/kWh 10万円/kWh
寿命 3500回(6〜10年) 3150回(最大15年) 2000回(5〜7年)
システム効率 85% 78%

 
蓄電池の効率は、電池の充放電効率以外にも、パワーコンディショナーの直流・交流への変換効率や、断熱性能や冷却性能等の筐体効率を加味した蓄電池システム全体の効率で評価する必要があり、「システム効率=電池効率×パワコン効率×筐体効率」として定義されます。NAS電池のシステム効率は76%であり、いずれも増エネとなります。蓄電池の導入に際しては、コストの増大分(設置コスト、使用電力量増加による電気代の増分)と減少分(電力基本料金の削減、昼夜の電気料金価格差、太陽光発電と組み合わせる場合は購入電力と買電の価格差)の比較を行う必要があります。
蓄電池単体で使用する場合は、夜間の割安な電力を蓄電して昼間に使用すれば電気代の節約となります。また、太陽光発電システムと連携させる場合は、余剰電力を蓄電し発電量の少ない時間帯に蓄電池から供給することができます(下図:出典はシャープ株式会社ホームページ)。

蓄電池の使用方法

 

以上の通り、モノジェネレーション設備や蓄電池についてはエネルギー使用量が増加すると評価されています。省エネ法で電気需要平準化評価原単位を求める際の評価係数(α=1.3)は、この点を是正するための手法であると言えます。

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(Q39)

誘導灯と非常灯の違いは?


(A39)

誘導灯と非常灯は、ともに正常時以外を想定し設置する防災照明器具です。誘導灯は消防法で規定され、初期段階の避難誘導を目的としており、照明器具に耐熱性を求めていません。誘導灯には、大きく分けて避難口誘導灯と通路誘導灯があります(下図:出典はM社カタログ)。

避難口誘導灯と通路誘導灯

 
誘導灯内部には蓄電池が内蔵されており、20分間以上は点灯させることができます。また、誘導灯を設置する建物が大規模施設・地下街・高層ビルであれば、避難に時間が必要なので60分以上点灯し続けられる「長時間型誘導灯」を設置します。誘導灯は安全のために欠かすことのできない設備ですが、蛍光灯の交換が必要であり、24時間毎日稼動するために多くの電気を消費しています。このため、蛍光灯型の誘導灯に代わってLEDを使用して省エネや維持管理の簡略化を図ることができる商品が主流となっています(下図:出典はM社カタログ)。

誘導灯の消費電力比較

 
他方、非常灯(非常用照明器具)は建築基準法で規定され、劇場・病院・ホテル・博物館・百貨店などの特殊建築物、階数が3階以上で延床面積が500m2を超える建築物、延床面積が1,000m2を超える建築物や無窓の居室を有する建築物での設置が義務付けられています(下図:出典はT社カタログ)。

非常用照明器具

 
非常灯は消防隊の救助作業時の照明確保を目的としており、140度の火熱に30分間以上耐え、30分間非常点灯させた状態で床面1ルクス(蛍光灯の場合は2ルクス) 以上の照度を確保する必要があります。この耐熱性の点から、非常灯へのLEDの採用は未だ認められていません。

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(Q40)

デカップリングって何?


(A40)

デカップリング(decoupling)は、「あるものと別のあるものが分離する」といった意味ですが、エネルギー・環境分野では、次の2つの意味で使われています。

 

1.収入と売上との関係を切り離し、電気・ガスなどのエネルギー事業者は販売量が増減しても公正な報酬を受け取れる制度

米国では、省エネルギー推進に向けたインセンティブをエネルギー事業者に付与することなどを狙いとして、複数の州でデカップリング制度が導入されています。
従来のエネルギー料金制度では、エネルギー事業者の収入は「どれだけの量が売れたか」によって決まるため、エネルギーの節約や効率化対策は歓迎されません。そこで、需要家が省エネをしてもエネルギー事業者が困らない仕組みとしてデカップリング制度が注目されています。デカップリング制度では、ある時期のエネルギー需要が低迷し、事業者の収入が料金改定時の想定を下回ったときは、当該期間の料金単価が自動的に引き上げられ、収入減少分が補填されます。反対に、事業者の収入が想定を上回ったときは、当該期間の料金単価が自動的に引き下げられ、需要家に還元されます。本制度に対し、料金変動のリスクを被る需要家団体は反対し、事業者や環境保護団体はおおむね支持をしています。
我が国では、電力事業者による高効率給湯器の開発などに対しガス事業者による家庭用燃料電池の開発などエネルギー間の活発な競争が行われていること、また、不況期に自動的に料金を値上げする制度は特に家庭で受け入れ難いため、早期の導入はないと思われます。(参考:一般財団法人電力中央研究所「米国におけるデカップリングの現状と課題」)

 

2.エネルギー消費と経済成長の相関を切り離すこと

下図は、我が国とドイツの過去20年間のGDPと1次エネルギーの推移を示しています(出典:始めよう“グリーンエネルギーの社会”ホームページ(新規ウィンドウに表示))。
我が国の1990年から2004年前後までの推移に示されるとおり、これまでは経済成長に比例してエネルギー消費も増えるとされてきました。「企業活動が活発になり、生活が豊かで便利になれば、電力やガスをたくさん使うようになる」のは当たり前という考え方です。これに対し、同時期のドイツでは、日本以上に高い経済成長を続けつつ、1次エネルギー消費を減らしています。
一定の経済成長や便利さを維持しつつエネルギー消費を減らしていく、すなわち両者を「切り離す」という考え方をデカップリングと言い表します。

日本・ドイツのGDPと1次エネルギーの推移

 
デカップリングを目指すには、例えば、資源の再利用・循環利用を行う、エネルギー多消費の産業構造を改める、これまでにない手法で省エネするなど、社会の仕組みを変え、経済成長のあり方を改めること(「グリーンエネルギー革命」)が必要です。
日本は世界で最も省エネが進んでいると言われてきましたが、エネルギー消費が増え続けてきたことも事実です。しかし、日本でもここ数年デカップリングの傾向が出始めているという指摘もあります。例えば、東京都が平成26年3月に公表した資料(東京都の省エネルギー目標「2020年までに東京のエネルギー消費量を2000年比で20%削減」)に記載された推移図(下図)では2000年前後から明確なデカップリン傾向が読み取れ、「経済成長とともにエネルギー消費は増える」と言った成長モデルは見直す必要がありそうです。

エネルギー消費とGDPの推移

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(Q41)

冷媒って何?


(A41)

冷媒とは、冷蔵庫やエアコンなど機器の中で、熱を温度の低い所から高い所へ移動させるために使用される流体の総称です。液体が気体になるときには周囲から熱を奪います。逆に、気体が液体になるときには周囲に熱を放出します。多くの機器では、液体が気化するときに周囲の熱を奪うという性質を利用して、冷媒の液化と気化のサイクル(蒸気圧縮冷凍サイクル(注))を繰り返しながら、冷却しています。

(注)冷凍サイクルには、蒸気圧縮冷凍サイクル以外にも、ガス冷凍サイクル、吸収式冷凍サイクル、熱電冷凍システムなどがあります。

 

ジエチルエーテルやアンモニアなど初期に用いられた冷媒には引火性や毒性の強い危険なものが多かったので、安全な冷媒の開発は大きな課題でした。

1920年代に米国で炭素、フッ素と塩素だけから成るフロン族(CFC)が開発されました。代表的なフロン族の冷媒はCFC-12(R-12)であり、不燃で毒性が殆ど無いものでしたが、オゾン層を致命的に破壊し生物に重大な影響を与えることが1970年代に明らかになりました。その後、CFC族の代替として登場したのがHCFC族で、代表的なHCFC族の冷媒はHCFC-22(R-22)です。HCFC族はCFC族に水素を含ませることでオゾン層を破壊する力は弱くはなっていますが、ゼロではありません。CFC族とHCFC族は特定フロンと呼ばれ、その生産は先進国では2020年までに全廃されることになっています。

現時点での冷媒の主流は水素とフッ素と炭素の化合物(HFC:代替フロン)であり、代表的なHFC族の冷媒はHFC-410A(R-410A:HFC-32とHFC-125の混合物)です。代替フロンは塩素を含まないためオゾン層破壊係数(ODP)はゼロですが、温室効果(GWP:温暖化係数)は二酸化炭素の140〜11,700倍もあり、代替フロンの適正管理と新たな冷媒の開発が求められ、国を挙げ取り組んでいるところです(下図:出典は経済産業省資料)。

 

(冷凍空調機器の代表的冷媒の性質について)

冷媒名 オゾン層破壊係数※1 地球温暖化係数※2 主な用途 安全性 備考
CFC-12(R-12) 1 10,900 冷凍空調全般 全廃済み
HCFC-22(R-22) 0.055 1,810 冷凍空調全般 補充用(新規機器への充てん不可)のみ生産・輸入可能
R-404A(HFC混合冷媒) 0 3,920<3,260> 冷凍・冷蔵 現在主流の冷凍・冷蔵用冷媒
R-410A(HFC混合冷媒) 0 2,090<1,725> 空調 現在主流の空調用冷媒
HFC134a(R-134A) 0 1,430<1,300> 空調 現在主流のカーエアコン、大型冷凍機用冷媒
HFC-32(R-32) 0 675<650> 空調分野で検討中 微燃性 現時点における空調冷媒候補として検討中
HFO(HFO-1234yf) 0 (4) 空調分野で検討中 微燃性 カーエアコンの代替冷媒候補、現行の空調システムでは性能低下してしまう
CO2 0 1 冷凍・冷蔵 高圧力 最近、省エネと両立した冷凍冷蔵ショーケースシステムが開発された
NH3 0 1以下 冷凍・冷蔵、大型施設の空調 毒性 毒性の対策、管理が必要。2元系にして冷媒使用量削減の工夫もされている
HC(炭化水素) 0 数十以下 小型の一体型機器のみ 燃焼性 強い燃焼性があり、家庭用冷蔵庫など、ごく少量の冷媒量の分野のみ使用可能

※1:オゾン層保護法等に規定された値
※2:IPCC第4次報告書100年値(<>は温暖化対策推進法施行令上の値、( )はそれ以外の数値)

 

(これまでのフロン対策の経緯)

これまでのフロン対策の経緯

 
次世代の冷媒に要求される特性として、潜熱が大きい、圧力損失が小さい、化学的安定性、不燃性、毒性が無い、ODPがゼロ、GWPが小さい、経済的に安価、オイルとの相性が良い、電気的に絶縁物、などです。ただ、例えば、ODPの小さいことは、大気中での分解性が要求されるため、不燃性や化学的安定性と相反するなど全てを満足する冷媒を見出すのは極めて困難で、用途・目的により種々の冷媒が使われるようになるかも知れません。

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(Q42)

超低温冷蔵(マグロの冷蔵に求められる温度)について。


(A42)

マグロ、カツオなどの大型の高級魚の貯蔵に使われる保管温度マイナス50℃以下の冷蔵倉庫は、超低温冷蔵倉庫(F4級)と呼ばれます。

大西洋やインド洋などで獲ったマグロは鮮度を失わないように船上でマイナス60℃以下に凍結され、冷蔵庫で保管し、日本に移送します。その後、各地の港に着いたマグロは全国にある約400か所の超低温冷蔵倉庫に保管され、出荷されます。これまで超低温冷蔵倉庫でよく使われていた冷媒はR-22ですが、R-22はQ&A41の通り、特定フロンとして2020年に製造自体が全廃と決められています。超低温冷蔵倉庫は1960年代のマグロブームを契機に建設されたものが多く、老朽化が進んでおり、2010年以降に更新時期を迎えるものが多数あります。残念なことに、誰もが納得する新冷媒は見つかっていないのが現状です。

多くの冷凍食品の保管温度はマイナス25℃以下でよく、その温度は自然冷媒であるアンモニアでも十分に冷却でき、冷凍機とモータを一体化することでアンモニア漏洩のリスクを低減した密閉型圧縮機が商品化されています。

アンモニアの大気圧での沸点はマイナス33℃で、マイナス45℃程度までの冷却は可能ですが、それ以下の低い温度、例えばマイナス60℃を実現するには冷却するためのエネルギー効率が非常に悪くなります。

すなわち、蒸気圧縮冷凍サイクルでは、気体の冷媒を圧縮機で圧縮し(下図1→2)、凝縮器で冷却して圧力の高い液体をつくり(2→3)、膨張弁で圧力を下げ(3→4)、蒸発器で気化させ潜熱で周囲から熱を奪い(4→1)ます(出典:FNの高校物理、熱機関の効率(冷凍サイクル))。

蒸気圧縮冷凍サイクル

 

Q&A23で説明した低温側の成績係数(COP)は、[QL冷媒の吸収熱量(奪った熱量)÷Winコンプレッサの仕事量]と定義され、T-s線図では[ピンク色の面積÷黄色の面積]、p-h線図では[(h4−h1)÷(h2−h1)]として表されます。

圧力が高いほど飽和蒸気温度は高くなります。したがって、低温を要求されるほど蒸発器での蒸気圧が低くなることが両線図から理解できます。すなわち、低温を要求されるにしたがって仕事が増え、COPは低下します。低温側温度として5℃程度でも十分な家庭用エアコンではCOPとして3〜6程度が期待できるのに対し、超低温冷蔵倉庫では0.4〜0.7程度にまで低下します。

そして、このようなCOPが低くなってしまう超低温冷蔵倉庫では、蒸気圧縮冷凍サイクル以外のガス冷凍サイクルも代替候補となります。ガス冷凍サイクルは蒸気圧縮冷凍サイクルと違って等温的な熱交換・熱伝達ができず(下図2→3、4→1の過程で温度が変化)、COPは低くなってしまいます(出典:FNの高校物理、熱機関の効率(冷凍サイクル))。

ガス冷凍サイクル

 

しかし、空気を冷媒に用いることで、不燃で毒性が無くオゾン層破壊係数(ODP)も温暖化係数(GWP)もゼロが実現できます。

この空気を冷媒として使用する超低温冷蔵倉庫は、開発・商品化され、販売されています。そして、1.膨張弁の代わりにタービンを設け動力を回収、2.超低温冷蔵倉庫内にエアークーラーがないためファン動力が不要、3.エアークーラーがないため超低温冷蔵倉庫内にデフロストのための熱の投入が不要など、従来のフロンを冷媒として使う超低温冷蔵倉庫に対し40%程度の省エネを図ることができます(下図:出典は空気冷媒でマイナス60℃を実現する超低温冷凍システム、NEDO実用化ドキュメント)。

  従来のフロン冷凍システム 空気冷凍システム『パスカルエア』
適用温度帯 −80〜−50℃ −100〜−50℃
成績係数COP(庫内温度−60℃) 0.4 0.5
エネルギー消費(庫内温度−60℃) 100 60
課題・特徴 ・フロン冷媒使用期限
・庫内デフロスト必要
・外気温の性能への影響大
・COPの優位性の高い温度帯への適用
・空気中水分の影響小とする装置の導入
・設備コストが高い

 

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(Q43)

空気圧縮機の排熱が暖房に利用できます。


(A43)

今回は、エアーコンプレッサーの排熱を利用して行う暖房について説明します。エアーコンプレッサーは工場だけでなくビルや病院などでも使用されています。エアーコンプレッサーのサイクルは下図のとおりであり、a、b、c、dで囲まれた面積が仕事量を表しています。下図から、断熱圧縮より等温圧縮の面積が狭く、仕事量が少ないことが分かります。

エアーコンプレッサーのサイクル

 

等温圧縮は「冷やしながら」圧縮することであり、吸込温度を下げることが省エネに直結します。このため、パッケージ型のエアーコンプレッサーには空気を冷却する機器が付帯しています。冷却には水冷方式と空冷方式があり、水冷方式では冷却水が温排熱を除去し、空冷方式ではコンプレッサー室内に温排熱が排出されます。

熱量的には、コンプレッサー容量の100〜110%程度の熱風が排出されます。つまり、37kWのエアーコンプレッサーであれば、37kWの暖房能力を持つこととなります。また、温度としてはQ&A13で説明の通り、単段式の一般汎用エアーコンプレッサーで20℃の大気を吸って0.7MPa-Gまで昇圧すると170〜190℃程度の温度まで上昇し、空冷方式の場合、コンプレッサー室内に廃棄される冷却空気温度は冬季でも30℃程度以上が期待できます。

米国のエアーコンプレッサーメーカーが切替ダンパ付のエアーコンプレッサーを商品化しています。

切替ダンパ付エアーコンプレッサー

 

パッケージコンプレッサーの排気口の上に切替ダンパボックスが搭載されます。暖房が不要な期間では、ダンパBとDを全閉、ダンパCを全開とし室内やコンプレッサー室に温風が排気されるのを防ぎます(下図「Warm Weather Operation」参照)。

一方、暖房が必要な期間でエアーコンプレッサーが停止しているときは、ダンパA、C、Dを閉じ冷気の侵入を防止しています(ダンパBは開く)。そして、エアーコンプレッサー稼働によりダンパAを開け、また、ダンパC、Dは室内温度により開度調整を行います。(下図「Cold Weather Operation」参照)

エアーコンプレッサー稼働

 

米国のエアーコンプレッサーメーカーの商品は切替ダンパがアクチュエータ付きで、室内温度により自動で調整が行えることと高い熱回収率に特長があります。ただし、50%程度の温排熱の回収効率でも良いのなら、パッケージ型エアーコンプレッサーの排気口の直上に排気ダクトと排気ファン(換気扇)を設置し、室内に供給することでより簡単に暖房目的を達成できます。

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(Q44)

LED照明でのブルーライトハザードって何?


(A44)

パソコンやスマートフォン、タブレット、液晶テレビといった電子機器はもちろん、通常の照明器具もLEDを採用したものが普及しつつあります。現在のLED照明の主流は、通常より強い低波長のブルーライトを多く含んでいるため、睡眠障害、眼精疲労や将来の黄斑部変性症のリスクを増大させる恐れ(ブルーライトハザード)が、一部の専門家から指摘されています。

LEDはある波長を中心とした単色光に近い光を発光しますが、白色光そのものを出すLEDはありません。このため、LEDによる白色光を実現する照明方式には、1.青色LEDと黄色蛍光体を組み合わせた方式、2.紫外線LEDと赤緑青(RGB)の3色を発光する蛍光体を組み合わせた方式、3.赤色LED、緑色LED、青色LEDを組み合わせた方式などがあります。1.の「青色LED+黄色蛍光体」は、補色となる2色が混色すると白色に見えることを利用した照明方式で、一番高効率であり、大きな光束を得られることから現在の主流の照明方式となっています。

下図は、LED照明、蛍光灯、白熱電球の分光分布図です(出典:日本電設工業協会「照明器具の関する課題と施行標準化の検討」)。

LED照明・蛍光灯・白熱電球の分光分布図

 

上図から、LED照明は450nm前後の青色と黄色がピーク、蛍光灯は青色と520nm前後の緑色と660nm前後の赤色がピーク、白熱電球は青色から近赤外領域まで広く光強度が分布していることが分かります。蛍光灯は、管内部に塗られた三原色を発する蛍光物質に紫外線を当てて発光させるのに対し、白熱電球は電球内部のフィラメントに電流を流すことでフィラメントの温度が上昇し発光させています。すなわち、現在の主流のLED照明では、黄色蛍光体を発光させるために青色LEDのエネルギーが必要であり、青色でエネルギーピークが発生します。この発光原理がブルーライトハザードを懸念される原因となっています。

しかし、上図から分かるように、LEDと蛍光灯の青色光の量は大きく異なりません。JISにおいても「ランプ及びランプシステムの光生物学的安全性(JIS C 7550)」で青色光網膜傷害リスクの定量評価法が定めら、青色光による網膜傷害の実効放射輝度LBを算出し、100以下であればリスク免除グループとなります。

平成26年10月1日版の日本照明工業会他の報告書(「LED照明の生体安全性について」)には、各種光源の青色光による網膜傷害のリスクの度合いを表す実効放射輝度の一例が示されています(下図)。

各種光源の網膜傷害リスク

 
上図は、発光面積と発光部の輝度を同じ条件にして比較した結果で、自然光(6500Kの昼光)の実効放射輝度を1とした場合の相対的なリスクの度合いを示しています。白熱電球、電球色の3波長形蛍光ランプ、電球色のLEDランプ(青色LED+黄色蛍光体)は、ほぼ同等のリスクの度合いであり、自然光(6500Kの昼光)と昼光色の3波長形蛍光ランプ、昼光色のLED(青色LED+黄色蛍光体)もほぼ同等のリスクの度合いであることがわかります。

現在主流のLED照明は多くのブルーライト(青色光)を含んでいますが、通常には有り得ない強力なライトを浴びせた場合以外は、ブルーライトハザードは実証されていないようです。

 

「LEDは演色性が良くない」との声を耳にします。演色性とはランプによる色の見え方のことで、演色性を定量化する方法に平均演色評価数(Ra)があります。Raは一般生活によく使われる8色を試験色とし、基準光源(自然光)で照らしたときと同じ色に見えたらRa100とします。下越術支援センターの2012年度研究報告書(「LED光源の演色性評価」)では、(a)RGB三波長形LED、(b)黄色蛍光LED、(c)高演色性蛍光灯、(d)寒白色蛍光灯、(e)白熱灯のRaを比較評価しています。その結果は、(a)49.9、(b)68.0、(c)86.5、(d)56.0、(e)97.4となり、「LEDは演色性が良くない」との声が裏付けられています。

演色性の向上と器具効率の向上は相反する課題ですが、すでにRa90以上の高演色のLED照明も市販されています。なお、JIS Z 9110-2010の照明基準総則では、長時間執務を行う事務所等ではRa80以上と規定されており、照度基準を満足するだけでなく、光の質の向上も求められ、演色性の向上は照明器具にとって重要な要件となっています。

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(Q45)

省エネ法の原油換算係数と原油の発熱量や、昼間と夜間の発熱量に差異があるのはなぜ?


(A45)

Q&A1の通り、事務所、工場などでは電気やガスなど異なるエネルギーを使用しています。この異なるエネルギーの大小を比べる物差しが原油換算エネルギー使用量であり、発熱量と原油換算係数(0.0258kL/GJ)を乗じることで原油換算エネルギー使用量(kL)を求めることが、省エネ法施行規則第4条で規定されています。
そして、省エネ法施行規則第4条関連として、1.別表第1で原油は38.2GJ/kl、A重油は39.1 GJ/klなどエネルギー種別ごとの発熱量が、2.別表第3で昼間買電は9,970kJ/kWh、夜間買電は9,280kJ/kWhとそれぞれ規定されています。

 

別表第1から別表第3までを1つにまとめた表として省エネルギーセンターのエネルギー使用量(原油換算値)簡易計算表(新規ウィンドウに表示)があります。

 

1.換算係数(0.0258kl/GJ)と原油の発熱量(38.2GJ/kl)に差異

原油を1kl使用した時の原油換算使用量は、38.2GJ/kl×0.0258kL/GJ=0.986klと求められ、1klとはなりません。つまり、原油換算係数と原油の発熱量が一致していないことになります。これは、原油換算係数が「我が国が輸入する原油ではなく国際標準原油に換算した総発熱量でのエネルギー量を表す単位」であり、原油の発熱量が「資源・エネルギー統計による1998年度の代表銘柄別の輸入量と、石油連盟資料による各銘柄別API度・硫黄分などから加重平均により推計した38.2MJ/lを標準発熱量として用いている」ことによる差異です(出典:資源エネルギー庁「2005年度以降適用する標準発熱量の検討結果と改訂値について」)。
つまり、原油換算係数は国際的に共通な尺度としての数値と、別表第1の原油の発熱量は我が国で使用されている原油の平均値の違いです。原油は軽いほど発熱量が低くなる傾向があり、我が国が使用している原油はやや軽めと言うこともできます。

 

2.昼間(9.97GJ/千kWh)と夜間(9.28GJ/千kWh)の発熱量の差異

電気事業連合会作成の平成17年9月7日付資料(「電力の1次エネルギー換算について」)には、昼夜別の熱効率(需要端)の平成15年度実績値が記載されています(下表)。

  全日 昼間(8〜22時) 夜間(22〜8時)
発電端効率 40.85% 40.44% 41.92%
総合損失率 9.7% 10.7% 7.5%
所内率 4.5% 4.6% 4.3%
送配電損失率 5.3% 6.3% 3.2%
変電所所内電力率 0.13% 0.13% 0.13%
需要端熱効率 36.90% 36.10% 38.78%
1次エネルギー換算値(kJ/kWh) 9,757 9,972 9,282

※9電力会社の汽力発電所の運転実績及び卸電気事業者の汽力発電所の運転実績をベースとして、全日、昼間(8〜22時)、夜間(22〜8時)の発電端効率を表示
※火力発電所は、「ピーク対応」…利用率30%未満:夏季及び冬季の日中に稼動、「ミドル対応」…利用率30%以上〜60%未満:年間を通じて日中を中心に稼動、「ベース対応」…利用率60%以上:年間を通じて昼夜間稼動に分類され、それぞれで発電効率が異なる(ベース対応42.10%>ミドル対応39.23%>ピーク対応36.82%)
 

つまり、省エネ法の電気の発熱量は、上表の1次エネルギー換算値を有効数字3ケタで丸めたものであり、昼間と夜間の発熱量の違いは使用する発電所の発電効率の違いであることが分かります。電力需要の大きい夏季及び冬季の日中には、発電効率の悪い火力発電所を稼働させて対応していたこととなり、改正省エネ法の目的である「電気の需要の平準化」の必要性を理解できるものと思われます。

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(Q46)

トップランナーモータが2015年度からスタートします。


(A46)

各種産業用途で汎用的に用いられている三相誘導電動機に、2015年4月分からトップランナー基準(トップランナーモータ)が導入されます。トップランナーモータの対象範囲は下表のとおりです(出典:日本電機工業会ホームページ)。
 

対象範囲 単一速度三相かご形誘導電動機

出力 0.75kW〜375kW
極数 2極、4極、6極
電圧 1,000V以下
周波数 50Hz、60Hz及び50Hz/60Hz
使用の種類 S1(連続定格)又は80%以上の負荷時間率を持つS3(反復使用)
主な除外機種 1.特殊絶縁
2.デルタスター始動方式
3.舶用モータ
4.液中モータ
5.防爆形モータ
6.ハイスリップモータ
7.ゲートモータ
8.キャンドモータ
9.極低温環境下で使用するもの
10.インバータ駆動専用設計で他力通風形のもの

 
また、現行モータと識別しやすくするために、カタログやモータ本体に「トップランナーモータ」の下記ロゴマークが表示されます。

「トップランナーモータ」ロゴマーク

 

モータの効率レベルは世界的な規格であるIEC 規格(国際電気標準会議)で規定されていて、効率クラスとしてはIE1(標準効率)、IE2(高効率)、IE3(プレミアム効率)が定められています。

我が国で適用されているモータの97%がIE1レベルであるのに対し、米国ではほとんどが高効率(IE2)とプレミアム効率(IE3)で、欧州でも高効率(IE2)の普及が進んでおり、欧米をはじめとしてモータの高効率化が進んでいます。

下図の通り、モータの定格出力が小さいほど省エネ効果が大きい傾向にあり(出典:日本電機工業会「三相誘導電動機のトップランナー基準(案)の紹介」)、例えば50Hz、4極、7.5kWの三相誘導電動機ではIE1からIE3に更新することで約4.9%の省エネ効果が期待できます(出典:日本電機工業会ホームページ)。

モータ効率値

 
産業用モータを全てIE3(プレミアム効率)に置き換えられたとすれば、期待される電力削減量は、我が国の全消費電力量の約1.5%に相当する155億kWh/年になると試算されており、極めて大きな省エネ効果が期待できます。

トップランナーモータは、発生損失を抑制しているため、標準モータに比べ一般的に回転速度が速くなります。ポンプや送風機などの負荷で、標準モータを高効率モータに置き換えた場合、この回転速度が速くなることにより、モータの出力が増加します。モータ効率は高いのですが、出力が増加することにより、消費電力が増加する場合があります。また、銅損低減のため(1次、2次)抵抗を低くしている場合があり、始動電流が標準モータに対して高くなり、ブレーカなどの変更が必要になる場合があります。加えて、トップランナーモータは高価な材料を使っている分、現行モータより1.3倍から2倍程度まで値上げするところが多いとみられています。

したがって、既存モータからの入替えにあたっては、上述の技術検討とモータごとに出力、運転時間、モータ効率と電力単価を想定しての費用対効果の検討が必要でしょう。

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(Q47)

油圧ユニットの省エネのポイントは?


(A47)

油圧ユニットは油圧動力発生装置であり、パスカルの原理(下図)を応用して、「圧力を離れた場所に伝えて大きな物を動かしたり、支えたりする」目的で、工場ではプレス機、旋盤やマシニングセンタなどの工作機械他で使用されています。

パスカルの原理

 

油圧ユニットは、力の制御や無段階変速が簡単、作動も円滑、振動が少なく作動がなめらか、遠隔操作が簡単などの長所を有する反面、配管が面倒、火災の危険性がある、油温が変化すると速度も変わる、エネルギー効率が悪いなどの短所を有しています。エネルギー効率が悪いのは、「電力→電動機で回転エネルギーに変換→油ポンプで油圧エネルギーに変換」と2回のエネルギー変換を行うためです。

また、使用面での特長として、工作機械などの油圧ユニットではワークのクランプやツールのチャックなど圧力は必要とするものの、油量を必要としない低負荷(40%以下)での使用(圧力保持状態)が長時間にわたり続くことが挙げられます。

油圧ユニットが理論的に必要とする電力Wとポンプが吐出する流量Qは、

W = N(電動機回転数)×q(ポンプ容量)×P(ポンプ吐出圧力) … (1)
Q = N(電動機回転数)×q(ポンプ容量) … (2)

で表され、機械の加工状況(負荷状況)に応じて必要な圧力Pと流量Qを供給することです。(1)式は理論的に必要な電力を示しており、実際の油圧ユニットでは下記1.〜3.の損失分が上乗せされたものが油圧ユニットでの消費電力となります。

油圧ユニット消費電力 = W+(1.+2.+3.) … (3)

ここで、損失1.から3.は下記のとおりです。

1.電動機での損失:

油ポンプを駆動する電動機として三相誘導電動機が一般的に用いられています。Q&A46のとおり、我が国ではトップランナーモータの普及を目指しており、定格負荷時の効率向上が期待できます。加えて、油圧ユニットでは、低負荷でも効率の良い電動機を使うことが結果として省エネに繋がります。

電動機での損失

 

2.ポンプでの損失:

一般的なポンプが多量の液体を吐出すことに適した遠心式であるのに対し、油圧ユニットで用いられる油ポンプは高い圧力(21MPa-G程度以下)で油を吐出することを求められ容積式が採用されます。ポンプには7MPa-Gまでの圧力で効率が高いベーンポンプや7〜21MPa-Gの中高圧で効率の高いピストンポンプなど、使用圧力により効率の高いポンプの種類が異なるので、使用圧力に応じポンプを使い分けることが必要です。また、圧力保持時に、ポンプ容量qが小さくなる機構を持つ可変容量ポンプや容量の異なるポンプを2台用意(ダブルポンプ)することは、(1)式のとおり、省エネに直結します。

3.回転数に比例する損失:

(1)式から、ポンプ容量qではなく電動機回転数Nを小さくするという別の方法でも省エネ効果が得られることが分かると思います。実際、既存の油圧ユニットにインバータを追加して回転数を下げることで省エネを図ることをユーザー自身が行っている事例もあります。ここで注意していただきたい点は、回転数を下げると電動機の効率が低下し、また、同じ回転数でも負荷トルクにより電動機の効率が変化する点です(下図)。したがって、最適な省エネ運転を行うためには、電動機の効率や負荷の状態に応じた最適な回転数を選定することが必要となります。

電動機負荷トルク

 

油圧ユニットメーカによると、1.〜3.の対策を実施していない油圧ユニット(従来品)に対し、1.と2.の対策を実施することで従来品より約20%の省エネを、また、3.を付加することで更に約40%もの省エネを達成できます。1.〜3.損失は熱エネルギーとなって作動油の温度上昇の原因となりますが、省エネを進めることで油温上昇を低く抑えることが出来るというメリットも享受できます。

使用中の油圧ユニットが省エネであるかどうかを見極めるには、油圧ユニットの電力使用量の実測や運転サイクルの確認が必要ですが、室温に対し作動油温度が15℃以上高い場合は省エネでないおそれがあります。

(出典:株式会社不二越「NACHI TECHNICAL REPORT」)

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(Q48)

PAL*(パルスター)って何?


(A48)

PAL*(パルスター)とは、建物(非住宅建築物)の省エネ基準に関わる新しい外皮基準の指標のことです。

昭和54年施行の省エネ法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)で建築物に関わる措置が定められ後、建物の省エネ基準は平成4年基準、平成11年基準、平成25年基準と大幅に改正されました。そして、平成27年4月1日から、非住宅建築物についての平成25年基準が完全施行されています(下図:出典は国土交通省「省エネルギー基準改正の概要」)。

省エネ基準の施行スケジュール

 

平成11年基準は、1.外皮の断熱性及び個別設備の性能を別々に評価する基準となっており、建物全体で省エネ効果の高い取組を適切に評価できない、2.基準が「事務所」、「ホテル」など建物用途ごとに設定されているため、複合建築物の省エネ性能を適切に評価できない、などの課題がありました。
平成25年基準は、1.住宅と建築物の省エネ基準について、国際的にも使われている1次エネルギー消費量を指標として、同一の考え方により、断熱性能に加え、設備性能を含め総合的に評価できる基準に一本化(下図:出典は国土交通省「省エネルギー基準改正の概要」)、2.その際、室用途や床面積に応じて省エネルギー性能を評価できる計算方法、などとなっています。

省エネルギー基準の改正

 

PAL*(パルスター)は、各階の屋内周囲空間(ペリメータゾーン)の年間熱負荷[MJ/年]をペリメータゾーンの床面積[m2]の合計で除して得た数値で、単位は[MJ/m2/年]です。そして、建物用途別に地域ごとに定められた判断基準値以下であることが求められます。

PAL* ≦ 判断基準値

判断基準値と市区町村毎に定められた地域は、平成25年経済産業省・国土交通省告示第1号「エネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準」に規定されています。
 

建物用途別に地域ごとに定められた判断基準値の一例
日本サステナブル建築協会「新しい外皮基準の指標(PAL*)について」6ページ(PDF: 24.4KB・新規ウィンドウに表示)
 

平成11年基準では、外皮基準の指標としてPALが規定されていましたが、PAL*はPALに対し、下記の点が変更されています。

○地域区分の変更 ⇒ 1次エネルギー消費量の計算条件(1〜8地域)に統一
○材料の物性値の変更 ⇒ 1次エネルギー消費量の計算条件(物性値)に統一
○ペリメータゾーン面積の拾い方を簡略化
○潜熱負荷の考慮 ⇒ PAL*の熱負荷は潜熱負荷を含めて評価
○室使用条件を1次エネルギー消費量の計算条件に統一

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(Q49)

蒸気輸送管からの放熱について。


(A49)

ボイラで製造した蒸気は蒸気輸送管を通り、蒸気釜、加熱器などの需要先に送られます。蒸気輸送管からの放熱量は、蒸気温度が高いほど、放散面積(管サイズ×輸送距離)が大きいほど、また、同じ保温仕様であれば保温厚みが薄いほど、大きくなります。下図(図1)は、蒸気輸送管が保温されていない場合の放熱量を、自然対流水平管について計算で求めた一例です(出典:省エネルギーセンター)。

蒸気輸送管からの放散熱量(保温がない場合)

例えば、蒸気圧力が0.8MPa-Aのときの飽和蒸気温度は170℃であり、40Aの管サイズでの単位長さ当たりの放熱量は440W/mと求められます。

 

同様に、下図(図2)は、蒸気輸送管が保温されている場合の放熱量を求めた一例です(出典:省エネルギーセンター)。

蒸気輸送管からの放散熱量(保温した場合)

例えば、40Aの管サイズで保温厚みが20mmのときの単位長さ、単位温度差当たりの放散熱量は0.47W/m/Kと求められます。
したがって、20mmの保温による単位長さ当たりの放熱量は71W/m[=0.47×(170−20)]と求められます。つまり、20mmの保温をすることで、保温されていない場合に比べ放熱量を84%[保温効率=(440−71)÷440]削減できることとなります。

 

この保温効果は、蒸気温度、保温材の仕様(熱伝導度)、保温材の厚み、配管サイズなどで変化しますが、保温されていない場合に比べ80〜95%程度の保温効率が十分期待できます(出典:省エネルギーセンター)。

蒸気輸送管の保温効率

 

保温材の保温効果は、保温材中に閉じ込められた空気が大きな役割を果たしています。したがって、保温材が濡れてしまったら保温効果を発揮できません。バルブやフランジ部分の保温施工処理が拙くて保温材が濡れているのを見かけますが、水の熱伝導率は空気の20倍もあり熱伝導が良くなるため、保温材の濡れは完全に防止する必要があります。

なお、バルブやフランジについては、同じ配管サイズの直管の何倍に相当するか(相当裸管長)を示した表が公開されているので、直管長に換算し放散熱量を求めることができます。

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(Q50)

蒸気圧低減に伴う蒸気配管からの放熱効果について。


(A50)

Q&A11Q&A49の通り、ボイラでの製造蒸気圧を下げることや蒸気輸送管を保温することは省エネに直結します。
ボイラでの製造蒸気圧を下げることで飽和蒸気温度も下がるため、蒸気輸送管での放熱量は低減します。したがって、蒸気圧低減に伴う省エネ効果は蒸気輸送管での放熱量をも加味する必要があることになります。そこで、両者の省エネ効果の程度について以下の検討条件を設定し、評価を行います。
 

1.設備仕様

・ボイラ燃料種と定格熱効率(低位発熱量基準):都市ガス13A×90%
・ボイラ供給水:50℃で供給
・ボイラ配管:100A×40mm保温厚×150m相当長

2.現状の運転条件

・ボイラでの発生蒸気圧力:0.80MPa-A
・必要蒸気量:3,000kg/h

3.現状の1時間当たりの燃料使用量と蒸気輸送配管からの放熱量

3.1燃料使用量
・蒸気表から、0.80MPa-Aの飽和蒸気の比エンタルピは2,769kJ/kgで、ボイラ供給水の比エンタルピは209kJ/kg
・13Aの低位発熱量は40.6MJ/Nm3
・燃料使用量は、(2,769−209)×3,000×1÷0.9÷40,600=210.2Nm3/h

3.2蒸気輸送配管からの放熱量と相当燃料使用量
・蒸気表から、0.80MPa-Aの飽和蒸気温度は170℃
Q&A49の図2から、100Aの管サイズで保温厚みが40mmのときの単位長さ、単位温度差当たりの放散熱量は0.55W/m/K
・蒸気輸送配管からの放熱量は、0.55×(170−20)×150×1×3.6KJ/Wh=44,600kJ/h
・燃料使用量は、44,600÷0.9÷40,600=1.2Nm3/h

4.見直し後の運転条件

・ボイラでの発生蒸気圧力:0.40MPa-A

5.見直し後の1時間当たりの燃料使用量と蒸気輸送配管からの放熱量

5.1燃料使用量
Q&A11の通り、(間接加熱の場合)加熱に有効な熱量は蒸発潜熱であり、0.80MPa-Aの蒸発潜熱が2,048kJ/kgで、0.40MPa-Aの蒸発潜熱が2,134kJ/kgであることから、0.40MPa-Aに圧力を下げたときの必要蒸気量は、3,000×2,048÷2134=2,879kg/h
・蒸気表から、0.40MPa-Aの飽和蒸気の比エンタルピは2,739kJ/kgで、ボイラ供給水の比エンタルピは209kJ/kg
・燃料使用量は、(2,739−209)×2,879×1÷0.9÷40,600=199.3Nm3/h

5.2蒸気輸送配管からの放熱量と相当燃料使用量
・蒸気表から、0.40MPa-Aの飽和蒸気温度は144℃
・蒸気輸送配管からの放熱量は、0.55×(144−20)×150×1×3.6KJ/Wh=36,800kJ/年
・燃料使用量は、36,800÷0.9÷40,600=1.0Nm3/h

6.製造蒸気圧低減による省エネ効果

○ ボイラ本体
0.80→0.40MPa-A:210.2→199.3 Nm3/h、削減量は10.9 Nm3/h
○ 放散熱量
0.80→0.40MPa-A:1.2→1.0Nm3/h、削減量は0.2Nm3/h
 

製造蒸気圧低減による省エネ効果は、ボイラ本体での省エネ効果が50倍程度も大きく(=10.9÷0.2)、改善前後の圧力差が大きいときは>Q&A11の式で求めるだけで十分なようです。ただし、以下の場合は、放熱量が相対的に高い割合を占めることになります。
 

○ 必要蒸気量が相対的に少ない場合や蒸気輸送配管の放熱面積が相対的に大きい場合(ボイラの負荷率がボイラ設置時に比べ低下しているとき等)
○ 蒸気輸送配管を保温していない場合(Q&A49の通り、未保温時の放熱量は保温時の10倍程度)。

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(Q51)

フラッシュ蒸気って何?


(A51)

ボイラで製造した蒸気は蒸気輸送管を通り、蒸気釜、加熱器などの需要先に送られます。蒸気輸送管では放熱により、また、蒸気釜や加熱器などでは熱的に利用された結果としてドレン水が発生します。ドレン水とは蒸気が水に相変化したもので、一般的には、蒸気が加圧状態のため、ドレン水の温度は100℃以上となります。このドレン水が大気中に放出されると、大気中の飽和水温度である100℃となるように一部が再び自己蒸発します。この蒸気をフラッシュ蒸気(再蒸発蒸気)と呼びます。

フラッシュする蒸気の割合は下式で計算できます。

   F=(h1-h2)÷r2×100

 F : フラッッシュ蒸気率 [重量%]

 h1: 高圧ドレン水の比エンタルピー [kJ/kg]

 h2: フラッシュ蒸気圧力での飽和水の比エンタルピー [kJ/kg]

 r2: フラッシュ蒸気圧力での蒸発潜熱 [kJ/kg]

 

例えば、配管内の圧力が0.8MPa-Aで発生したドレン水(170℃)を大気中に放出した時のフラッシュ蒸気率は、蒸気表から、0.8MPa-Aでのドレン水の比エンタルピーが721kJ/kg、大気の飽和水の比エンタルピーが419kJ/kg、大気の蒸発潜熱が2257kJ/kgであることから、フラッッシュ蒸気率は13%[=(721-419)÷2257×100]と求められ、スチームトラップからドレン水ともに雲状の蒸気が発生しているのを見かけることがありますが、これがフラッシュ蒸気です。

スチームトラップに不具合があったり蒸気輸送管に小穴が開いていると、生蒸気が直接大気中に放出されエネルギーのロスが生じます。フラッシュ蒸気が多量のドレン水を伴うのに対し、生蒸気ではドレン水を同伴しません(次図: 出典は(株)テイエルブイのハンドブック)。生蒸気は熱的に利用される前であり、生蒸気の漏えいを発見した時は早急な補修が必要です。

フラッシュ蒸気の説明図

 

また、上記の試算例から想像いただける通り、圧力の高いドレン水ほど高温であり、高いエネルギーを保有しています。そのため、圧力の高いドレン水をフラッシュタンクに集め、大気圧以上でフラッシュ蒸気を製造し、低圧蒸気として利用することが行われています(次図: 出典は(株)四電エンジニアリングのホームページ)。加えて、ドレン水を回収し、ボイラ供給水として再利用することも行われています。

 

ドレーン回収システム例

 

このようなことから、ボイラを所有し、日々、生産活動に蒸気を使われている事業者様は、廃蒸気(ドレン水)の行方と配管からの蒸気漏れに注意を払い、廃蒸気(ドレン水)については少なくとも熱的な回収を図り、また、蒸気漏れについては補修やスチームトラップの交換を行うことで、蒸気製造費用の確実な削減と同時にエネルギーロスの低減を図ることができます。

(参考) ちなみに、蒸気と湯気は異なるものです。蒸気は気体で無色透明ですが、湯気は蒸気が大気中で細かい水滴になったもので、光を乱反射するため白く見えるものです。省エネの観点から言うと、湯気は気体から液体に変化する過程で潜熱を失っており熱的な再利用を期待できません。

 

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(Q52)

冷凍庫と冷蔵(倉)庫の設定温度の緩和はどの程度有効?


(A52)

今回から複数回にわたり、冷凍・冷蔵(倉)庫の省エネについて解説します。

 

冷凍・冷蔵設備とは、食品などの冷却・凍結・乾燥など品質管理・保持や動植物の生育環境の維持等を目的として、対象の温度・湿度等を調節して供給するための設備です。システム的にはエアコンと大差ありませんが、冷やす温度が低いことで成績係数(COP)が低下し(下図: 出典は東京都環境局の「冷凍冷蔵倉庫の省エネルギー対策」)、年間を通し温度を維持する必要があることなどから、エアコン以上にエネルギーを消費します

F級用冷凍庫の庫内温度とCOPの変化(例)

食料品製造業で冷凍・冷蔵設備を持たない事業所は皆無であり、その冷凍機の消費するエネルギーが事業所で使用する総エネルギー量の80%近くを占めることも珍しくありません(下図: 出典は東京都環境局の「冷凍冷蔵倉庫の省エネルギー対策」)。

事業所におけるエネルギー消費量の内訳(例)

食料品製造業で冷凍・冷蔵設備を持たない事業所は皆無であり、その冷凍機の消費するエネルギーが事業所で使用する総エネルギー量の80%近くを占めることも珍しくありません(左図: 出典は東京都環境局の「冷凍冷蔵倉庫の省エネルギー対策」)。

エアコンと同様に、冷凍・冷蔵(倉)庫の設定温度を緩和(上げる)することは省エネに直結します。以下に庫内温度が事業所で制定された管理標準から外れている(温度を下げ過ぎている)場合など、保管物の品質に影響を与えない範囲で設定温度を緩和(上げる)できる場合の省エネ効果についての定量的な試算方法を解説します。

1.冷凍・冷蔵負荷

冷凍・冷蔵負荷Qは、Q=k × (Ta−T)で表されます(k: 冷凍・冷蔵倉庫の総熱損失係数, W/K、 Ta: 外気温度,℃、 T: 庫内温度,℃)。

今、庫内の設定温度をT1からT2まで緩和(上げる)できる場合の冷凍・冷蔵負荷の削減率Q2/Q1は、Q2/Q1=(Ta−T2)/(Ta−T1)で表されます。

 

2.冷凍・冷蔵(倉)庫の成績係数

蒸発器における蒸発温度をTc ℃、凝縮温度をTh ℃とすると、理論成績係数COPtは、COPt=(273+Tc)/{(273+Th)−(273+Tc)}=(273+Tc)/(Th−Tc)で表され、実際の成績係数COPは、全断熱効率ηtad(=断熱効率×機械効率)を加味し、COP=(273+Tc)/(Th−Tc)×ηtadで表されます。

 

3.省エネ効果

1.と2.から、庫内の設定温度をT1、T2のときの必要動力W1, W2は、

W1=Q1/COP1=k × (Ta−T1)÷{(273+Tc1)/(Th1−Tc1)×ηtad}

W2=Q2/COP2=k × (Ta−T2)÷{(273+Tc2)/(Th2−Tc2)×ηtad}

で表され、省エネ効果Rは、

R=(W1−W2)/ W1=1−(Ta−T2)/(Ta−T1)×(273+Tc1)/(Th1−Tc1)

÷(273+Tc2)/(Th2−Tc2) ・・・ (1)

と、温度指標だけで表すことが出来ます。つまり、庫内温度、外気温度と熱交換器(蒸発器と凝縮器)出入口の平均温度が分かれば、省エネ効果が定量的に求められます。

 

4.試算例

・圧縮機定格容量: 15 kW

・圧縮機運転時間と負荷率: 8,760 h/年(=24h/日×365日/年)、60%(一般値)

・外気温度Ta: 30 ℃

・現状の庫内温度T1: -26 ℃

・現状の蒸発温度Tc1、凝縮温度Th1: -36 ℃、35 ℃(一般値) ← 蒸発温度と凝縮温度は熱交換器出入口の平均温度です。また、冷媒の種類と熱交換器出入口の冷媒の圧力から平均温度を求めることもできます。

・改善後の庫内温度T2: -25 ℃ ← 1℃緩和

・改善後の蒸発温度Tc2、凝縮温度Th2: -35 ℃(=Tc2-10 と想定)、35 ℃(一般値)

・省エネ効果R=1−(30+25)/(30+26)×(273−26)/(35+36)

÷(273−25)/(35+35)=1−0.982×0.982=0.036

(3.6%の省エネ効果)

・年間削減電力量ΔE=15×8,760×0.60×0.036=2,838kWh/年

空調設備では一般的に1℃の設定温度の緩和により10〜15%程度の省エネ効果が得られるのに対し、冷凍冷蔵倉庫では1℃の温度設定の緩和により(庫内温度により変わりますが)4%程度の省エネ効果が見込めます。

割合的には空調設備の省エネ効果の方が高くなりますが、冒頭のご説明のとおり、食料品製造業では冷凍・冷蔵設備の消費するエネルギーは総エネルギー量の80%近くを占めることから、絶対量としては大きな電力削減量となります。

このような観点から、定期的な庫内温度の監視を行い、保管物の品質に影響を与えない範囲で設定温度を緩和することで簡単に省エネ対策ができますので是非取り組んでみてはいかがでしょうか。

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(Q53)

凝縮器(室外機)に対する省エネ対策は?

(A53)

今回は、比較的容易に取り組める凝縮器への省エネ対策について解説します。

冷凍・冷蔵設備で採用されている冷凍サイクルを下表に示します(出典: 「冷凍冷蔵機器について」 平成26年3月25日 経済産業省 製造産業局 化学物質管理課 オゾン層保護等推進室 作成)。

冷凍サイクル、型式、種類、主な冷凍冷蔵用途の例、主な冷媒、蒸気圧縮冷凍サイクル、容積圧縮式、往復動式(レシプロ式)、往復動式(レシプロ式)(小型機に多い)、ショーケース、冷凍・冷蔵倉庫(プレハブ等) 、食品工場向け冷凍冷蔵設備、家庭用冷凍冷蔵庫、製氷機等、フロン類等、回転式、ロータリー式(小型機に多い)、フロン類等、スクロール式(中型機に多い)、フロン類等 スクリュー式(中〜大型機に多い)、フロン類、アンモニア等、遠心式(ターボ式)、遠心冷凍機(ターボ冷凍機)	、大型冷蔵倉庫、工場設備冷却、フロン類等、吸収冷凍サイクル吸収型、吸収式冷凍機/冷温水機、冷凍冷蔵装置全般、水、アンモニア等、空気冷凍サイクルターボ型(圧縮機と膨張機)、極低温装置、空気、ペルチェ効果、電子冷凍機、(ホテル等)の小型冷蔵庫 、なし、磁気冷凍、磁気冷凍機、(研究開発中)、なし、(出展)空気調和衛生工学会 空気調和衛生工学便覧を基に事務局作成

冷凍・冷蔵設備では蒸気圧縮冷凍サイクルが主に採用され、凝縮器、膨張弁、蒸発器と圧縮機で構成されます。(Q&A42にて解説)

これらのうち、凝縮器は冷媒が蒸発器で被冷却物から奪った熱を冷却水や大気に放出するための熱交換器です。凝縮器には水冷凝縮器と空冷凝縮器があり、各々の冷媒凝縮温度と外気(冷却水)温度の関係の一例を示すと、下図のようになります。

冷媒凝縮温度と外気(冷却水)温度の関係の一例

上図で、凝縮温度と冷却水(外気)出口温度の差をアプローチ温度と呼びます。この温度差を測ることで機器の状態を見極めることができます。

例えば、通常、水冷凝縮器のアプローチ温度は3〜5℃が一般的ですが、7〜8℃以上ある場合や温度差が正常でも凝縮温度が冷却水入口温度より13℃以上高いのは異常です。一方、空冷凝縮器では空気出口温度が計測されることは稀であるため、アプローチ温度で異常を判断することは困難ですが、凝縮温度が外気温より20℃以上高いのは異常といえます。このような異常が認められた場合には、メーカーへの点検を依頼願います。なお、凝縮温度には許容される下限値があり、下限値を下回らないように自動制御(ウィンターコントロール)されているため、この場合、前述の基準は当てはまりませんので注意ください。

凝縮器(熱交換器)における熱交換量Qは、Q=U×A×Δtm (U:総括伝熱係数、 A:伝熱面積、 Δtm:対数平均温度差)で表されます。凝縮器の性能が低下する(Qが小さくなる)と、冷媒凝縮温度が上昇し、圧縮機の消費動力を増加させ、結果としてCOPを低下させます。そのため、設計時のQを保つには、総括伝熱係数Uと対数平均温度差Δtmを維持することが必要となり、以下のような対策が求められます。(なお、凝縮器自体の能力向上策として、伝熱面積Aを後付で増加させることも省エネ対策として有効です。)

・凝縮器フィンの定期的洗浄

フィンを定期的に洗浄することで、(フィンの汚れ具合等により増減しますが)圧縮機動力を5%程度低減。

・凝縮器への日よけ設置

日よけ等によって南西側を日射遮蔽することで、夏期の晴天時間帯の圧縮機動力を5%程度低減。

・凝縮器への散水

凝縮器に水を噴霧(13L/h/台)することで、気化熱を発生させ、盛夏時には圧縮機動力を7%程度低減。

ただし、このような対策を実施する際の注意事項として以下の2点があげられます。

・日よけ等を設置する際は、遮断材をなるべく室外機から離して設置し、室外機周辺の広範囲を日陰にすること。

・水噴霧は凝縮器外表面へのスケール付着の恐れがあり定期的な清掃が必要となること。

これら注意事項に加えて、冷却水の流量や風量の不足、空気のショートサーキット、冷媒の過充填、空気など不凝縮性ガスの侵入なども性能低下の原因となりますので、メーカーによる定期的な点検を受診されることをお奨めします。

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(Q54)

蒸発器(冷却器)周りの省エネ対策は?

(A54)

今回は、Q53で紹介した熱交換器の1つでもある蒸発器(冷却器)の省エネ対策について、冷凍・冷蔵(倉)庫を例にとって解説します。

蒸発器は冷却器とも呼ばれ、その内部で冷媒を液体から気体に変化させることで、庫内の熱を冷却することができます。

凝縮器と同様、アプローチ温度を測ることで機器の状態が確認できます。

・冷凍・冷蔵庫内では、蒸発器を循環する空気との温度差を3℃程度、アプローチ温度(=蒸発器出口空気温度−冷媒蒸発温度)を7℃程度とすることが一般的で、最大値は15℃程度です。

・チラー、ブラインクーラでは、アプローチ温度を3〜5℃程度とすることが一般的で、アプローチ温度が10℃以上ある場合は異常と見なせます。(なお、チラー、ブラインクーラでは冷却水やブラインの出口温度制御を行うのが通例です。)

・冷凍・冷蔵庫内の凍結処理に関しては、短時間に作業を完了させることが品質上求められるため、庫内温度を低くして入庫品と大きな温度差(例えば15℃)を作ることが一般的で、その分、アプローチ温度は小さくなる傾向にあります。なお、冷媒蒸発温度が庫内温度より15℃以上下回っていたら機器の異常と見なせます。

アプローチ温度に異常値等が見受けられた場合は、メーカーへの点検を依頼願います。

蒸発器周りの比較的容易に取り組める省エネ対策として、以下の方法があげられます。

・蒸発器フィンの定期的洗浄

フィンの定期的洗浄により、(フィンの汚れ具合等により増減しますが)圧縮機動力を2〜4%程度削減できる。

・夜間等の人の出入りが少ない時間帯での庫内ファンの停止、

冷凍・冷蔵庫の扉の開閉に伴う外気の侵入熱は全熱負荷の20〜30%にも達するため、夜間等の人の出入りが少ない時間帯では外気の侵入熱が減少する分、熱負荷も低下します。そのため、庫内に複数のファンが設置されている場合は、その一部を停止することで、ファンの使用電力とファンモータの発熱による熱負荷の削減が図られます。(なお、出し入れ時にはファンが確実に運転されるよう、タイマーでファンの発停を行う必要があります。)

・冬期・中間期等でのデフロスト間隔の延長

通常、蒸発器は0℃以下となるため、蒸発器によって庫内の水蒸気が凝縮・凍結します。凍結が進むと循環風量が低下し、更に凍結が進むことで、冷却不良と効率低下を招くため、定期的なデフロスト(霜取り)操作が必要となります。デフロスト操作には、1.ホットガスデフロスト(圧縮機から吐出される高温の冷媒ガスを蒸発器に送り、その熱で霜を融解させる)、2.ヒータデフロスト(電気ヒータで霜を融解させる)、3.散水式デフロスト(加熱水を蒸発器に噴霧して霜を融解させる)や4.オフサイクルデフロスト(5℃以上の庫内で庫内の空気熱で霜を融解させる)操作があります。この中で、1.散水式デフロスト操作と2.ヒータデフロスト操作はエネルギー使用量が多い分、作業実施後に高い省エネ効果が見込めます。(右図: 出典は東京都環境局の「冷凍冷蔵庫の省エネルギー対策」)。

なお、デフロスト操作を減らせるのは、外気湿度の低い中間期や冬期、扉の開閉が無く冷凍機の稼働時間が少ない時、ピーク時間調整契約で昼間冷凍機を停止している時、などです。

デフロスト操作回数削減前後の使用電力量比較図

その他、冷凍・冷蔵庫への入庫品量が季節により大幅に変動する場合、庫内に仕切板を設置して使用範囲を分割し、保管量の少ない期間は一部だけを使用、それ以外の部分を冷却停止することも、省エネ効果が見込める対策となります。

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(Q55)

冷凍・冷蔵(倉)庫扉に対する外気侵入防止策は?

(A55)

冷凍・冷蔵(倉)庫の扉開放時には、下図に一例を示す通り(出典: 高性能エアーカーテン「サーモシャッター」による大型冷蔵・冷凍倉庫の荷捌室低温化 冷凍空調設備 2004年6月15日号)、開口部の上部から外気(暖気)が流入し、下部からは内気(冷気)が流出します。外気侵入量は全熱負荷の20〜30%にも達するため、外気侵入量を少なく抑えることは省エネに直結します。

開口部からの暖気侵入・冷気漏洩傾向

外気侵入防止対策として以下の方法が挙げられます。

・高さをカバーするビニールカーテンを庫内上部に取付けること。

・ 高速シャッター、上方から下方に向けての空気噴射式エアーカーテン(遮断効果は50%程度)、トンネルサーキュレーション式エアーカーテン(下右図: 出典は三和エアーシャッターのカタログ、遮断効果は70〜75%程度)、プッシュブル式エアーカーテン(下左図: 出典は 冷凍空調設備 2004年6月15日号の「高性能エアーカーテン『サーモシャッター』による大型冷蔵・冷凍倉庫の荷捌室低温化」、遮断効果は70〜75%程度)、前室等を設置すること。

・カウンター等を導入し、扉の開放時間の計測により得たデータをもとに、扉開放時間の短縮に努めること。

※開口部の上部にビニールカーテンを取付けた上に、扉開放時間を短縮出来れば5〜10%程度の省エネが期待できます。

(左図)シャッター等の設置概略図 (右図)トンネル・サーキュレーション式と吹き降ろし式との比較(海溝寸法1800×H2400で扉を開けて1分30秒後の状態で比較しています)→冷凍庫内の冷気を循環(サーキュレーション)させ、開口上部からの暖気の流入および下部からの冷気の流出を効率よく防ぎます。従来の吹き降ろし式に比べ庫内の温度の変化が少ないことが解析図から確認できます。

 

以下、冷凍・冷蔵(倉)庫における具体的な電力消費量等に関する計算方法を解説します。

 

【試算例】

・冷凍庫内温度tiと湿度φi: −20℃、100% ⇒ 比エンタルピーhi=-18.5kJ/kg、比容積vi=0.718m3/kg(比重量γiの逆数)

・冷凍庫外温度toと湿度φo: 20℃、50% ⇒ 比エンタルピーho=38.5kJ/kg、比容積vo=0.840m3/kg(比重量γoの逆数)

・年間開放時間: 450時間( 1.5h / 日× 300 日)

・冷凍機のCOP (推定) : 1.5

・現状の開口部の高さHと幅W: 2.4m × 2.0m ⇒ 外気侵入量2.46m3/s (注記1)

・改善後の開口部の高さHと幅W: 2.0m × 2.0m ⇒ 外気侵入量1.87m3/s (注記1、2)

・現状の年間電力使用量: 2.46m3/s÷0.840 m3/kg ×450h /年×(38.5+18.5)kJ/kg ÷3.6MJ/kWh÷1.5= 13,911 kWh/年

・改善後の年間電力使用量: 1.87m3/s÷0.840 m3/kg ×450h /年×(38.5+18.5)kJ/kg ÷3.6MJ/kWh÷1.5= 10,574 kWh/年

・年間削減電力量: 13,911kWh/年―10,574kWh/年=3,337kWh/年

 

(注記1) 外気侵入量Qの計算式(出典:空気調和ハンドブック)

Q=(0.8×W)×√(g×((γi-γo))/(((γi+γo))/2))×H^(3/2)

(注記2) 上部にビニールカーテンを0.4m施工

 

上記の計算を通じて省エネ対策実施時の削減電力量を定量的に把握することができます。

省エネ対策自体は比較的簡単に行えるものが多いので、併せて計算値等を参考に取り組んでみてはいかがでしょうか。

 

 

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(Q56)

LED照明へ更新を図ることによる省エネ効果は?

(A56)

冷凍・冷蔵(倉)庫内のような低温環境では、蛍光灯が安定して点灯できない上に立上り時間も遅く(下左図: 出典はパナソニックホームページ)、結果として低温効率が著しく低下します(下右図: 出典は電気技術者協会ホームページの電気技術解説講座)。そのため、これまで冷凍・冷蔵(倉)庫内への照明対策として、保温効果を施した蛍光灯器具や白熱電球が用いられてきました。

(左図)蛍光灯の特性(立ち上がり時の光東比)、(右図)周囲温度と相対光東特性の関係

一方、同じ照明器具でもLEDは半導体であることから、その特性上温度が低いほど明るくなる傾向があり、蛍光灯が苦手とする低温環境での使用が可能です。そのため、庫内の照明を低温用LED照明(ベースライト型)に変更することで、ランプ消費電力と冷凍機消費電力の節減に加え、特徴のランプ寿命の長さから、器具の取替費用と手間を同時に削減できます。

 なお、以下の計算例に基づき、冷蔵庫内における照明器具の年間電力消費量と、LED活用時の年間電力消費量を求めることができるため、それぞれ比較することで定量的な省エネ効果(電力削減量)を明らかにすることができます。

 

試算例

・点灯時間と点灯率: 5,110 時間( 14h / 日× 365 日) × 80%

・ 冷凍機のCOP (推定) : 1.5

・ 現状の冷凍・冷蔵(倉)庫内(管理温度: -25℃)の白熱電球仕様と灯数: 90 W/台(光束1,520lm) × 16台

・年間消費電力量: 0.09kW/台×16/台×5,110 h /年×0.8= 5,887 kWh/年

・白熱電球による冷凍機負荷: 0.09kW/台×16/台×5,110 h /年×0.8÷1.5= 3,924kWh/年

・現状の白熱電球による消費電力量: 5,887 kWh/年+3,924kWh/年=9,811 kWh/年

 ・更新するLED照明の仕様と灯数: 33 W/台(光束3,610lm) × 8台 ← 現状の白熱電球より光束が高いので照明器具数を削減できます

・年間消費電力量: 0.033kW/台×8/台×5,110 h /年×0.8= 1,079 kWh/年

・ LED照明による冷凍機負荷: 0.033kW/台×8/台×5,110 h /年×0.8÷1.5= 719kWh/年

・LED照明に更新後の消費電力量: 1,079kWh/年+719kWh/年=1,798kWh/年

 ・年間削減電力量: 9,811 kWh/年―1,798kWh/年=8,013 kWh/年

 

 

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(Q57)

2015年度の夏季節電と節電・省エネキャンペーンについて

(A57)

2015年3月から行われてきた、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会電力需給検証小委員会において、2014年度冬季の電力需給実績及び2015年度夏季の電力需給見通しの検証結果等が取りまとめられました。そして、政府として、「2015年度夏季の電力需給対策について」が下記の通り公表されました。

 

1.     2015年度夏季の電力需給見通し

猛暑となるリスクや直近の経済成長の伸び、企業や家庭における節電定着などを織り込んだ上で、老朽火力の最大限の活用等を前提に、いずれの電力管内でも電力の安定供給に最低限必要な予備率3%以上を確保できる見通しです。ただし、関西電力及び九州電力管内は、単独では予備率3%を確保できず、他地域から受電せざるを得ないという厳しい状況にあります。(下表:出典は「2015年度夏季の電力需給対策について(概要)」 2015年5月22日 電力需給に関する検討会合)

 

1.2015年度下記の電力需給見直し:老朽火力最大限の活力等を前提に、全国的に必要最低限の予備軍(3%)異常が確保される見通し。ただし、関西電力及び九州電力は単独で予備率(3%)以上を確保できず、(それぞれ0.8%、▲3.3%)、他社からの受電により、何とか予備率(3%)異常を確保。

 

2.  2015年度夏季の電力需給対策

昨年度と同様に、2015年7月1日(水曜)から2015年9月30日(水曜)までの平日(ただし、8月13日(木曜)及び14日(金曜)を除く)の9時から20時までの時間帯に、数値目標を設けない節電協力要請を行います。

ここで、2015年度夏季の需給見通しにおいて、節電の定着分(2010年度最大電力比)として以下の数値が見込まれています。

 

北海道電力管内 ▲7.1%       東北電力管内 ▲4.4%    東京電力管内 ▲12.2%

中部電力管内 ▲4.9%          関西電力管内 ▲10.0% 北陸電力管内 ▲4.4%

中国電力管内 ▲3.7%          四国電力管内 ▲6.0%    九州電力管内 ▲8.6%

 

また、大規模な電源脱落等により、万が一、電力需給がひっ迫した場合への備えとして、以下の対策を行うこととしています。

 

1.発電所等の計画外停止のリスクを最小化するため、電力会社に対して、発電設備等の保守・保全を強化することを要請する。

2.電力の安定供給を確保するため、電力広域的運営推進機関に対して、電力会社管内の需給状況を改善する必要があると認められる時は、他の電力会社に対し、速やかに電力融通を指示するなど必要な対応を講じることを要請する。

3.自家発電設備の活用を図るため、中日本及び西日本において設備の増強等を行う事業者に対して補助を行う。

4.電力会社に対して、随時調整契約等の積み増し、ディマンドリスポンス等、需要面での取組の促進を図ることを要請する。

5.需要家の節電を促進するため、事業者及び家庭向けに具体的でわかりやすい節電メニューの周知や需要家と連動した「節電・省エネキャンペーン」を行う。

上記対策中、5の対策は今年度から新たに加わった対策で、以下の「節電・省エネキャンペーン」が実施されます(下表:出典は「2015年度夏季の電力需給対策について(概要)」 2015年5月22日 電力需給に関する検討会合)。

 

「節電・省エネキャンペーンの実施」:(1)産業界や一般消費者と連動した節電・省エネの推進→民間企業などと協力し、節電・省エネを行う一般消費者に有益な情報をホームページ等において提供するとともに、民間企業などで実施している節電・省エネの取組を募集し、サイトで紹介する。 (2)「見える化」による家庭の節電・省エネ行動の推進→家庭における節電・省エネ行動を促すような省エネ情報等をスマートフォンやタブレットに提供する。情報提供手法については、産業界や一般消費者の多くの方のアドバイスを取り入れるべく、アイデア・コンテストを行う。 (3)省エネプラットフォームを活用したきめ細やかな省エネ相談の実施→平成26年度補正予算において構築された省エネプラットフォームが、中小企業等の省エネに関する相談窓口となり、必要に応じて専門家(省エネ関連、その他経営専門関連)を紹介、マッチングし地域におけるきめ細やかな省エネ支援を実施する。 (4)該当キャンペーン等のイベントの実施→関西電力及び九州電力管内において、地方経済産業局、関係自治体及び電力会社が連携して、街頭で節電・省エネへの呼びかけを実施する。

なお、表中の(3)の対策については、地域の中小企業や個人事業主における省エネや節電等のニーズに応えることを目的としており、すでに全国で13のエネ相談地域PF事業者が認定され活動を開始しています。

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(Q58)

フロン排出法と省エネの関係性は?


(A58)

空調機や冷蔵庫等で冷媒として使用されている代替フロン(HFC)の排出規制を強化した「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(略称:フロン排出抑制法)」が2015年4月から施行されています。

代替フロンは、1987年、オゾン層破壊の深刻化を受けて採択されたモントリオール議定書で特定フロンの段階的廃止が決まったことを受け、急速に普及しました。ところが、代替フロンはCO2に比べ、なお大きな温室効果(CO2の温室効果を1とするGWPで評価、数値が大きいほど大きな影響を及ぼします)があり、1997年採択の京都議定書で規制対象となりました(下図:出典は、「平成26年度 東京都公害防止管理者定期講習」東京都環境局編)。

フロン類の種類と環境影響

我が国では、2002年に「フロン回収・破壊法」を制定し、業務用の冷蔵庫やエアコンなどの所有者に廃棄の際のガス回収・破壊を義務づけました。しかし、代替フロンは増加傾向にあり、対策を取らなければ2020年には現在の2倍以上の約5,000万トンにまで増えると試算されています(右図:出典は、「平成26年度 東京都公害防止管理者定期講習」東京都環境局編)。

HFCの排出量推移(1995年〜2020年)

フロン排出抑制法の施行はこうした実態を受けたもので、

・管理者(ユーザー)には、定期点検の実施、漏えい量の報告等

・充填回収業者には、充填業の登録制導入、破壊等の証明

・破壊・再生業者には、再生業者の設置、破壊・再生の各証明書

・フロンガスメーカーには、フロン類の転換等により製造量削減

・製品メーカーには、ノンフロン・低GWP製品への転換

により、製造から廃棄までのライフサイクル全体を包括する対策を実施します。

例えば、 ビルや工場での空調には、通常、業務用空調機が使用されているため、その所有者は管理者として、3か月に一度の簡易点検が義務づけられることになりました。加えて、一定規模以上の業務用冷凍空調機器については簡易点検に加え専門業者に依頼しての定期点検も必要となります。簡易点検の結果は記録簿として保管する必要がありますが、記録簿は

東京都環境局(新規ウィンドウ表示)等が例示しているため、参考とすることをお奨めします。 

指定製品7区分ごとの使用冷媒及びGWP、環境影響度の目標値、目標年度

また、ノンフロン・低GWP製品への転換については、上表の7区分について(出典は「フロン排出抑制法の概要 2014年度」済産業省と環境省の共編)製品の技術開発及び安全性評価等が国の支援の下、活発に行われています。 自動車用エアコンディショナーや冷凍冷蔵ユニット用については目標をクリアした商品が開発・商品化されていますが、従来品に比べ高価です。一方、家庭用や店舗・オフィス用エアコンディショナーについては安全面、省エネ面、コスト面でより優れた製品の登場が待たれます。

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(Q59)

エネルギーミックスとは?


(A59)

エネルギーミックス(ベストミックス)とは、加工されない状態で供給される石油、石炭、原子力、天然ガス、水力、地熱、太陽熱などの一時エネルギーを転換・加工して得られる電力について、経済性(Economy)、環境性(Environment)、供給安定性(Energy Security)と安全性(Safety)の頭文字をとって表現される「3E+S」を重視した電源構成の最適化のことをいいます。「3E」を判断する指標として、それぞれ以下の比率が挙げられます。

・経済性(Economy):発電コストが安い「ベースロード電源」の比率

・環境性(Environment):CO2を排出しない「ゼロエミッション電源」の比率

・供給安定性(Energy Security):エネルギーの自給率に基づく「セキュリティー電源」の比率

経済産業省は、総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会 長期エネルギー需給見通し小委員会の議論を踏まえ、「2030年度の望ましい電源構成(ベストミックス)」案を公表しています(下図: 出典は「長期エネルギー需給見通し 骨子(案)」資源エネルギー庁)。

2030年度の望ましい電源構成(案)について

上記「2030年度の望ましい電源構成(ベストミックス)」案でご理解いただける通り、「徹底した省エネ」が基本方針として盛り込まれ、具体的な「3E」の目標水準が定められています(下図:出典は長期エネルギー需給見通し小委員会第8回会合(資料4))。

3Eの具体的な目標水準について

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(Q60)

コージェネレーション設備導入による電源分散でどのような効果が期待できる?


(A60)

東日本大震災からの教訓の一つとして、火力や原子力などによる集中型の電源構成をベースとして、小規模な分散型の電源を合理的に配置することが電力の安定供給には必要であると学びました。この点から、経済産業省(資源エネルギー庁)が公表した「長期エネルギー需給見通し骨子(案)」では、「各分野の主な取組」の一つとして、「エネファームを含むコージェネレーション(1190億kWh程度)等分散型エネルギーの推進によるエネルギーの効率的利用の推進、各部門における燃料の多様化等を推進するとともに、これらを支える供給体制の確保を図る」ことが明記され、分散型電源が認知されています。

Q&A36で解説の通り、コージェネレーション設備は「電気の需要の平準化に資する設備」として省エネ法において導入を推進していますが、電気料金や燃料価格の動向に大きく左右されるなど課題があるのも事実です(下表:出典は長期エネルギー需給見通し小委員会第6回会合(資料2))。

コージェネレーション普及に向けた課題と対応の方向性

「長期エネルギー需給見通し骨子(案)」における2030年時点でのコージェネレーションの導入見通し量である1190億kWh程度には、既存トレンドを踏まえた導入量(700億kWh)に加え、「新たな活用」による追加的な導入量として490億kWhを見込んでいます。そして、コージェネレーションの「新たな活用」として、「熱・電気の面的融通」、「業務用燃料電池の実用化」、「余剰電力取引の活性化」や「コージェネレーションを活用した新たなビジネスモデルの確立」が挙げられています。

ここで、

・「熱・電気の面的融通」とは、スマートコミュニティでの運用など、コージェネレーションで生ずる熱及び電気を一定の地域内で面的に融通、活用する取組のことで、地域における省エネや非常時のエネルギー供給に貢献することが期待できます。

・「業務用燃料電池の実用化」とは、2017年の市場投入を目指し開発が進められている業務・産業用燃料電池を活用することで、発電効率が高い分、熱需要の少ない分野(事業所、コンビニ等)におけるコージェネレーションの普及が期待できます(下表:出典は長期エネルギー需給見通し小委員会第6回会合(資料2))。

開発が進められる主な業務用燃料電池について

・「余剰電力取引の活性化」に関して、これまでは電力需要に合わせてコージェネレーションを導入し、不足分を系統電力やボイラにより補完する活用方法が一般的であり、発電された電力は自家消費するのが基本でした。そこで、システム改革等を通じて、新たなビジネスモデルの確立や、卸電力取引市場を活性化できれば、コージェネレーションの余剰電力の売電と、それに伴う経済性向上や、定格稼働による効率化を図ることができます。また、売電価格の予見性が高まれば、売電を見込んだ投資判断や、熱需要に合わせたコージェネレーションの導入が行われることも期待できます。

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(Q61)

前号のエネファームについて教えてください。


(A61)

エネファームとは、家庭用燃料電池システムの統一名称で、「エネルギー」と「ファーム(=農場)」の造語です。

エネファームは、下図(出典:大阪ガスwebサイト)に示す通り、燃料改質装置により都市ガスやLPガスから取り出した水素と、空気中の酸素をセルスタックで化学反応させて発電します。また、インバーターで交流電源に変換すると同時に、発電時に発生する排熱を熱回収装置で給湯に利用することが出来るため、家庭用のコージェネレーション設備として使用されます。なお、エネファームは電力会社の常時買電体制の下、燃料電池ユニットにより得た電力を用いることによる家庭用電力の一部補完を前提としていますが、一方で、給湯についてはエネファームだけで電力を賄えることが前提であり、風呂利用など給湯需要の多い時でも対応できるよう、貯湯タンクと補助熱源機(ガス焚給湯器)が付設されています。

エネファームの仕組み

エネファームは自宅で発電するため送電ロスがほとんどない上、排熱を利用するため総合エネルギー効率が高く(低位発熱量基準で95%のエネファームが販売中)、発電が化学反応であることから振動や騒音を低く抑えられるなど、省エネ性と環境性に優れています。また、停電時には自動で自立運転に切替え自立運転専用コンセントから電源を供給できる製品もあり、非常時の分散型電源としても期待されています。

さらに、平成27年4月の長期エネルギー需給見通し小委員会の第8回会合(経済産業省資源エネルギー庁)において、2012年度で5.5万台程度であったエネファームに関して、2030年度には530万台程度まで飛躍的な普及・拡大を見込むなど、近年さらに注目が高まっています。

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(Q62)

水銀に関する水俣条約が高天井用照明に及ぼす影響は?<(1)セラミックメタルハライドランプ>


(A62)

 

水銀に関する水俣条約(以下、水俣条約と呼びます)は、水銀および水銀化合物による汚染、健康被害や環境被害を防ぐため、国際的観点による水銀管理を目指した条約で2013年に採択、92か国が署名しました。発効は50ヶ国目が批准してから90日後とされており、その時期は2016年ごろと予想されています。

水俣条約では、水銀を使用する製品も規制対象となっており、次に該当するランプの製造、輸出及び輸入が2020年以降禁止となりますのでご注意ください(出典: 「水銀に関する条約の制定について」 日本電球工業会)。

1.30W以下の一般照明用コンパクト蛍光ランプ(CFL)で、水銀封入量が5mgを超えるもの

*コンパクト蛍光ランプには電球形蛍光ランプも含みます。

2.一般照明用直管蛍光ランプ(LFL)で、

  1. 60W未満の3波長蛍光体を使用したもので、水銀封入量が5mgを超えるもの
  2. 40W以下のカルシウムハロ蛍光体を使用したもので、水銀封入量が10mgを超えるもの

3.一般照明用の高圧水銀ランプ(HPMV)

*メタルハライドランプや高圧ナトリウムランプなどは含みません。

4.電子ディスプレイ用冷陰極蛍光ランプ(CCFL及びEEFL)で、

  1. 長さが500mm以下の小サイズのもので、水銀封入量が3.5mgを超えるもの
  2. 長さが500mmを超え1,500mm以下の中サイズのもので、水銀封入量が5mgを超えるもの
  3. 長さが1,500mmを超える大サイズのもので、水銀封入量が13mgを超えるもの

ここで、上記3の高圧水銀ランプに関しては高天井用照明として数多く使用された歴史から、多くの工場や事務所で喫緊の対応が迫られています。そこで今回から、高圧水銀ランプに代わる省エネ型高天井用照明器具について、3回(セラミックメタルハライドランプ、無電極ランプ、LEDランプ)に分けて解説いたします。

セラミックメタルハライドランプ(H190形)と水銀灯の特性比較

 

セラミックメタルハライドランプは、金属原子高圧蒸気中のアーク放電が光源であり、水銀のほかにナトリウムやスカンジウムなどの金属ハロゲン化物 (メタルハライド)が発光物質です。従来のメタルハライドランプとの違いは発光管の材質が石英製の代わりにセラミック製となっている点です。セラミック製とすることで、発光管内部の封入物質との反応が少なくなり、温度が高められる分ランプ効率が高く(約53%省エネ)、また、劣化を抑えられる分寿命(水銀灯の約1.5倍)も延長されています(上表: 出典はパナソニック(株)技術資料)。

 

セラミックメタルハライドランプ(一般照明用の代表品)における構成物質重量比較

セラミックメタルハライドランプは比較的安価で、既設の水銀ランプやメタルハライドランプの安定器をそのままに、ランプ交換だけで済む製品も販売されています。ただし、セラミックハライドランプには、下表のとおり水銀が封入されています。処理にあたっては産業廃棄物扱いとなるため、各種法規制への対応等に関する注意が必要です。(出典: 「一般照明用HIDランプ及び使用済みHIDランプに関するQ&A」 日本照明工業会)。

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(Q63)

水銀に関する水俣条約が高天井用照明に及ぼす影響は?<(2)無電極ランプ>


(A63)

 

水銀灯では長時間の点灯・点滅による電極の劣化が寿命の主原因でした。これに対し、無電極ランプでは電極を電磁波に置き換えているため、水銀灯に比べ圧倒的な長寿命(6万時間程度)が実現できます。

無電極ランプの発光原理

 

水銀灯では長時間の点灯・点滅による電極の劣化が寿命の主原因でした。これに対し、無電極ランプでは電極を電磁波に置き換えているため、水銀灯に比べ圧倒的な長寿命(6万時間程度)が実現できます。

無電極ランプの発光原理は、上図の通り(出典:http://mudenkyoku.com/genri.html)、従来の蛍光灯と同様に、蛍光体を内壁に塗布したガラス管内に、希ガス及び微量の水銀をアマルガムとして封入し、蛍光灯の電極にあたるコイルに高周波電流を流すことにより、フェライトコアに磁界を発生させ、この磁界によりランプ内に電界が発生します。この電界で放出された電子が水銀粒子に衝突し紫外線が放射され、この紫外線がランプ管内に塗布された蛍光体に衝突することで、可視光に変換され発光します。すなわち、無電極ランプは、蛍光灯と同じ発光原理で点灯原理が異なるランプです。

無電極ランプは、長寿命であることに加え、水銀灯やLED灯のようなまぶしさを感じず直視可能で、発光効率が高く省エネに貢献できるランプです(下表:出典はパナソニック(株)技術資料)。その他、瞬時点灯のためこまめな点・消灯も可能で演色性にも優れている等の特徴があります。

 

水銀灯と無電極ランプ(エバーライト)の性能比較

 

用途として、特徴である長寿命を活かし、レインボーブリッジや明石海峡大橋などの吊り橋、高速道路や街路灯、体育館などの高天井照明として、ランプ交換が困難な場所に採用されているなど、様々な場面で使用されます。

ただし、使用時の留意点として、無電極ランプと安定器との設置距離や設置方法に制限がある、ランプがガラス製のため取扱に注意する、水銀灯ほどではないが水銀を使用している、などが挙げられますので注意が必要です。

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(Q64)

水銀に関する水俣条約が高天井用照明に及ぼす影響は?<(3)高天井用LEDランプ>


(A64)

 

LEDランプは水銀を使用せず、Hf直管蛍光灯を大きく超える150lm/W以上の発光効率や、2006年と比較して1/10以下の器具コスト低下を受けて、一般照明用として急速に普及が進んでいます。

高天井用LEDランプについても多くのメーカから市販されています。下表(出典はパナソニック(株)技術資料)は、400Wメタルハライドランプ28灯で構成される部屋を同じ平均照度のLEDランプ28灯に置き換えたときの一例です。

照明設計例(400Wメタルハライドランプ28灯で構成される部屋を同じ平均照度のLEDランプ28灯に置き換えたときの一例の比較)

ここで、代替を提案するLEDランプの1灯当たりの全光束は21,000lmであるのに対し、400Wメタルハライドランプは42,000lmで、しかも、同じ灯数です。「何故同じ照度となるのか?」と疑問を感じる方は多いと思います。

これは、LEDランプが指向性の強い光源であることと経年劣化を加味し、平均照度を求めているためです。すなわち、屋内全般照明の平均照度Eは下式により求めます。

E=F*N*U*M/A

E: 平均照度 [lx]

F: 器具1台当たりの光束 [lm]

N: 照明器具数

U; 照明率

M: 保守率

ここで、照明率とは光源から出た光のうち作業面に到達する光の割合であり、照明率は天井、壁、床などの反射率によって変わり、また、間口、奥行に対する光源の高さによっても変わります。これらの要因を加味した器具特性表が、照明器具ごとにメーカから公表されています。

また、照明施設の照度は、設備の使用時間の経過とともに、光源自身の光束減退、光源・照明器具の汚れ、室内面の反射率が下がることなどにより低下します。照明設計の段階では、このような照度低下を補うために、照度計算の中に補正係数を設け、その値に応じて施設に必要な照度レベルより高い照度レベルで設計します。この補正係数を保守率と呼び、照明器具ごとに保守率の値が公表されています。

結果として、LEDランプは、メタルハライドランプと比較し、指向性の強い光源であることと寿命が長いことから、「M」値は2倍程度高い値となります。したがって、全光束が半分であっても平均照度としては同じ程度の値となりますので、LEDランプの使用は省エネに役立つことが分かります。

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(Q65)

エアコンの霜取り運転と省エネ


(A65)

外気温が0℃以下のような低いときに電動エアコンを暖房運転すると、空気中の水分が室外機の熱交換器(蒸発器)表面に結露して凍り、「霜」となります。熱交換器に霜が付いたままでは室内は温まりませんし、消費電力も多くなります。そのため、室外機の熱交換器に付いた霜を溶かす霜取り運転(「デフロスト運転」とも言います)の機能が電動エアコンには具備されています。

霜取り運転は電動エアコンが自動で行いますが、その頻度は外気温が低く湿度の高い時ほど多く発生します。また、多くの電動エアコン(注記)では、霜取り運転中は室内側での温風の吹き出しは停止します。

(注記):暖房運転を継続しながら、霜取り運転が行える電動エアコンも販売されています。

 

霜取り運転の頻度を少なくすることは省エネに繋がりますので、以下、方法をご紹介します。

・温度設定を過度に高くしない

室内温度を28℃など過度に高くせず、外気温との差を小さくすることで、室外機の熱交換器にも余裕が生じ、却って早く温まります。

 

・室外機は高い場所に設置

雪が多く積もりやすい場所では、積もった雪に室外機が埋もれないように高い場所に設置することをお勧めします(右写真:出典はダイキン工業(株)社のホームページ)。また、室外機に防雪フードを取り付けることで雪が入り込むのを防ぐ方法も効果的です。

 

・室内機フィルターの定期的な清掃

以前、本Q&Aでご説明の通り、(ヒートポンプ)エアコンには室内側と室外側に熱交換器(蒸発器と凝縮器)があり、室内外で空気と熱交換を行うことで冷暖房を実現しています。室内機のフィルターを定期的に清掃することで、空気量が確保され十分な熱交換が可能となり、消費電力も減ります。

 

・室外機の周りを空けておく

上述の通り、室外機にも熱交換器があります。暖房運転では、室外機の熱交換器は蒸発器として機能し、屋外の空気を吸い込み、冷たい空気を吹き出しています。吹き出し口が塞がっていると、室外機から吹き出された冷たい空気を、室外機が直接吸い込む恐れが高くなり、消費電力も増えるばかりか暖房運転が停止することも起こりえます。

寒冷地における室外機の高い場所への設置例

 

なお、(ヒートポンプ)エアコンには電動エアコン(EHP)以外に、エンジンで駆動するエアコン(GHP)もあります。GHPではガスエンジンの排熱を利用することで、霜取り運転は不要ですし、外気温に左右されずに安定した温風が得られます。

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(Q66)

省エネ視点でのクランクケースヒーターの活用方法は?


(A66)

 

多くの空調・冷凍機器では、冷媒とともに冷凍機油がコンプレッサーから凝縮器、膨張弁、蒸発器を循環してコンプレッサーに戻ってきます。冷凍機油によってコンプレッサーの摩耗軽減と潤滑効果をもたせ、焼き付きを防止しています(冷媒については、既に、Q&A41で説明していますので、そちらをご参照願います)。

冬期など外気が低温になると、コンプレッサーの下部(クランクケース: 右写真はその一例)に溜まっている冷えた冷凍機油中に冷媒が溶け込み、潤滑効果が薄れ、コンプレッサーの摩耗、焼き付きの原因になります。

 クランクケースヒーター(右写真の赤いバンド状のもの)は冷媒と冷凍機油を分離しやすく潤滑性能を維持するための装置であり、空調・冷凍機器の停止時にクランクケースを加温しています(注記)。空調・冷凍機器を運転するとコンプレッサー自身からの圧縮熱が発生しますので、クランクケースヒーターの通電は停止されますし、最近の家庭用エアコンなどではクランクケースヒーターがない物も多くなっています。

(注記)炭酸水が温まると、中から二酸化炭素が噴出してくる現象と同じです。

クランクケースヒーターの使用例

 

以上の説明でご理解いただいた通り、クランクケースヒーターは空調・冷凍機器の運転中に必要なものではなく、停止中に必要なものであり、その使用電力(30〜40W程度)は待機電力となっています。したがい、空調・冷凍機器を長期間使用しないときは、元電源から遮断することで、待機電力を削減できます。例えば、空調機器が10台、クランクケースヒーター容量が30w/台で、空調未使用期間が年間4か月(365日/年×24h/日×4/12月数比=2,920h/年)あったとすると、元電源から遮断することによる年間の電力削減量は876kWh(=10×30/1,000×2,920)と求められます。

 

なお、注意事項として、空調・冷凍機器を長時間の停止から運転再開するときは、冷凍機油中の冷媒を追い出すため、運転開始の12時間以上前から元電源を投入しておくことが必要です。

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(Q67)

今後の省エネルギー政策の方向性は?<「徹底した省エネルギー推進」に向けて(省エネルギー小委員会 取りまとめ)>

 

(A67)

 

昨年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画では「徹底した省エネルギー」が方針として示されています。具体的には、産業部門、業務部門、家庭部門、運輸部門の省エネ対策をそれぞれ積み上げ、2030年時点において、最終エネルギー消費で5,030万kl 程度の省エネを見込んでいます。この実現には2012年から2030年までに35%のエネルギー効率改善が必要となりますが、1993年から2013年における20年間のエネルギー効率改善が14%であることを鑑みれば、非常に野心的な目標です。

平成27年8月28日付で、総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会より、上記方針を具体化するための必要な措置が示されました(省エネルギー小委員会 取りまとめ 徹底した省エネルギー社会の実現に向けて:経済産業省http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/sho_ene/report_01.html)。

本Q&Aでは、省エネルギー小委員会の取りまとめ内容について、中小企業者にスポットを当てた内容を中心に説明するとともに、経済産業省による省エネ関連平成28年度概算要求の概要をご紹介します。

 

1.現在の省エネルギー施策

・エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)が制定され、工場等において一定(原油換算で年間1,500kL)以上のエネルギーを使用している事業者に対して定期報告義務を課し、自らのエネルギー使用状況を把握させるとともに、努力目標を含むエネルギー管理手法を示した誘導的なガイドラインを国が示すことにより、事業者におけるエネルギー管理の徹底を促しています。

・中小企業者に対する支援的措置(省エネ支援)として、設備投資を支援する以前に知識や情報を提供することが必要との観点から、国は省エネルギー診断事業や講師派遣を行っています。また、資金繰りに苦しむ事業者も多いため、設備投資に対する低利融資や金融機関からの融資に対する利子補給など、ファイナンスの支援も実施しています。加えて、地域の相談窓口を構築し、中小企業者の省エネを推進するためのきめ細やかな支援を始めています。

 

 

2.現在の施策の評価

・これまでの省エネ診断事業の実績によれば、設備投資なしでもできる対策と設備投資の必要な対策を合わせて、10〜20%の省エネのポテンシャルが導出されています。

3.今後必要な措置(省エネルギーのノウハウを有していない中小企業等への対策)

◯積極的な情報提供

費用対効果の高い省エネポテンシャルを有する中小企業の省エネを進めるため、省エネ診断を引き続き実施すること。また、診断の効果を周知する仕組みとして、情報提供も積極的に実施すべきであること。

◯診断技術の向上

中小企業が用いている設備やビジネスは日々変化しており、さらに最近ではITを活用したエネルギーマネジメントシステムも開発されていることから、省エネ診断を実施するための技術をさらに高めるための開発を実施することが必要です。したがって、国が「省エネルギー対策導入促進事業」として実施する省エネ診断については、当該診断技術の向上を今後重視すべきであること。

◯ファイナンス支援の充実

設備の老朽化への対策としては、イニシャルコストの支出や資金調達が大きな問題であることから、補助金やリース制度によるイニシャルコストの低減、金融機関からの融資の際の利子補給や低利融資・政策金融の充実を図るため、地方銀行等との連携をさらに進めるべきであること。

◯地域における省エネに係る相談体制の更なる整備

さらに、中小企業が日々の事業活動において、省エネ対策を進めるためには、きめ細かく相談することができる場所が、中小企業の近くにあることが必要です。そのため、より多くの各地域において、中小企業の省エネ相談へ迅速に対応できるプラットフォームを順次整備するとともに、そのプラットフォームを核として、各地域内において中小企業が省エネを進めるにあたり、アドバイスを実施できる自治体や金融機関等にも繋ぐことができる体制を、各地域で構築すべきであること。

 

以上の省エネルギー小委員会の取りまとめを踏まえ、経済産業省では省エネ関連平成28年度概算要求を、下記の通り行っています(出典:経済産業省九州経済産業局「省エネ設備投資に使える補助金」)。

エネルギー使用合理化等事業者支援補助金について

◯エネルギー使用合理化等事業者支援補助金として1,260.0億円(平成27年度当初予算額は410.0億円) ・・ 上図

平成26年度補正予算として実施された「最新モデル省エネルギー機器等導入支援事業(A類型)」は先着順等の見直しの後、実施されるようです。

省エネルギー対策導入促進事業費補助金について

◯省エネルギー対策導入促進事業費補助金として9.5億円平成27年度当初予算額は5.5億円) ・・ 上図

診断事業や省エネ相談地域プラットフォーム事業等への要求です。増額分は省エネ相談地域プラットフォーム事業の拡充のためのようで、また、診断事業では、診断後に提案された省エネ対策の実施率が9割以上(省エネ量基準)となることを目標にするようです。

◯エネルギー使用合理化特定設備導入促進事業費補助金として30.0億円(平成27年度当初予算額は26.1億円) ・・ 省エネ設備を導入する際の利子補給を行います。

◯エネルギー使用合理化特定設備等資金利子補給金として0.05億円(平成27年度当初予算額は0.05億円) ・・ 中小企業が高性能工業炉や高性能ボイラを導入する際の利子補給を行います。

◯電気・熱エネルギー高度利用支援事業費補助金として25.0億円(新規)

高効率コージェネレーション機器に関わる支援を行います。

 

他にも、エネルギー使用合理化等事業者支援補助金の民間団体等分としてLPガス、天然ガス等の補助金が前年度と同額分要求されていますし、省エネルギー型建設機械導入補助事業等も継続して要求されています。

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(Q68)

COP21で採択されたパリ協定について教えてください
(A68)

昨年11月30日からパリで開催された気候変動枠組条約第21回締結国会議(COP21)は、2020年以降の地球温暖化対策の法的枠組み(パリ協定)を採択し、12月13日に終了しました。

本会議にて、昨夏の猛暑や豪雨により気候変動が身近な問題として認識され、この異常気象の原因が地球温暖化にもあることを納得されたと思います。この点で、パリ協定の採択は大きな成果と言えます。

◯世界共通の長期目標として2℃目標のみならず1.5℃への言及

◯主要排出国を含むすべての国が削減目標を5年ごとに提出・更新すること、共通かつ柔軟な方法でその実施状況を報告し、レビューを受けること

◯JCM を含む市場メカニズムの活用が位置づけられたこと

◯森林等の吸収源の保全・強化の重要性、途上国の森林減少・劣化からの排出を抑制する仕組み

◯適応の長期目標の設定及び各国の適応計画プロセスと行動の実施

◯先進国が引き続き資金を提供することと並んで途上国も自主的に資金を提供すること

◯イノベーションの重要性が位置づけられたこと

◯5年ごとに世界全体の状況を把握する仕組み

◯協定の発効要件に国数及び排出量を用いるとしたこと

◯「仙台防災枠組」への言及(COP 決定)

 

が含まれています。(出展:国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21) 京都議定書第11回締約国会議(COP11)等 (概要と評価)、日本政府代表団)

ここで、

●2℃以内に抑えるには、2050年に世界のCO2排出量を2009年比で約半分(15Gt/年)とする必要があります。また、各国の約束草案を足し合わせても2℃の目標達成は出来ず、追加の対策が必要なことも分かっています。

 

●国別排出削減目標を法的義務の対象とせず、各国がそれぞれの実情に応じた削減目標を定め国際的に誓い、その目標の妥当性や達成度合いを他国(国連)が評価・検証する「プレッジ・アンド・レビュー」方式を採用しています。この点が、COP3での京都議定書が国別排出削減目標を法的義務化したことと大きく異なります。

 

我が国の約束草案(2030年までに2013年比で26%削減)はQ&A59でご説明したエネルギーミックスをベースとしており、先ずはエネルギーミックスの実現が必要不可欠です。エネルギーミックスでは、「徹底した省エネルギーにより5,030万KL程度の省エネルギーを実現する」(下表: 出典は「長期エネルギー需給見通し 骨子(案)関連資料」 資源エネルギー庁)ことが実現に向けた柱の一つとして謳われています。これだけの省エネルギーを一部門だけで達成することはできず、家庭部門を含めた全部門での対応が必要です。

長期エネルギー需給見通し 骨子(案)関連資料より、部門ごとの主な省エネルギー対策とエネルギー削減量について

(Q69)

建築物への省エネ対策の効果量算定方法は?<その1: 屋根への高反射塗料施工>
(A69)

今回から3回にわたり、建築物を構成する屋根、壁と窓について、省エネ性能を向上させた際の省エネ効果量の算定方法について、ご説明します。 下図は、室外より室内の温度が低い時の屋根、壁と窓周りの日射時の温度勾配を模式的に示しています。夏期であれば、空調機を使用し、外気より室内の温度を下げている状態に相当します。屋根、壁と窓には日射光が注ぎ込み、その一部は室内側に侵入します。そのため外気側表面は外気温度より高くなります。その後、断熱材などにより、外気側表面温度は室内温度まで下がります。以上の関係を式で表すと、下式となります。

(1−r) × I= (ts―to) ÷ Ro ・・・ (1)

 

q = (ts−ti) ÷ (R+Ri) ・・・ (2)

r:屋根、壁と窓の反射率

I:単位面積当たりの全天日射量[kW/m2]

q:単位面積当たりの侵入/放散熱量[kW/m2] ※Iとは一致しません。

to:外気温度 [℃]

ts:室外側屋根、壁と窓の表面温度[℃]

ti:室内温度 [℃]

Ro:外気側表面熱伝達抵抗[m2・K/W]

R:断熱材等による熱伝達抵抗[m2・K/W]

Ri:室内側表面熱伝達抵抗[m2・K/W]

室外より室内の温度が低い時の屋根、壁と窓周りの日射時の温度勾配模式図

屋根、壁と窓への省エネ対策として、「遮熱」と「断熱」があります。遮熱は反射率を高めるなどにより日射量を減らす対策で、冬期の暖房には不利に働きます。断熱は熱の侵入/放散を軽減する対策であり、冷房にも暖房にも効果があります。なお、散水も効果的です。散水は水の気化熱を利用し、屋根面の温度上昇を抑える対策であり、遮熱と同様、冷房負荷軽減対策です。

以下、第1回目として、屋根への遮熱対策での省エネ効果量の算定方法について、試算例を用い、ご説明します。

◯塗装する屋根の水平投影面積:100m2

◯屋根には断熱材が未施工

◯現状と塗装後の反射率: 0.25と0.90

多くの高反射塗料が市販され、同じ色であれば一般の塗料より反射率が高くなります。反射率は色によって大きく変わり、暗く濃い色ほど反射率は低くなり、明るく薄い色ほど反射率は高くなります。したがい、高反射塗料と言っても、黒系の高反射塗料の場合、白系の一般塗料の方が遮熱性が高いこともあり得るため、色選びには注意が必要です。

下図は、高反射塗料と一般塗料の反射率の違いを説明する一例です(出典: 関西ペイント ホームページ アレスクール)。

◯日射時の年間冷房時間: 100日/年(6〜9月)×8h/日(日射時間)=800h/年

◯電動空調機(EHP)のCOP: 2.7

塗膜と明度の日射反射率の関係

【試算と結果】

・東京での6〜9月の全天平均日射量は、気象庁データより、14.0、14.6、15.2、11.1 MJ/m2/日であり、4か月の平均値は13.7 MJ/m2/日(3.81kWh/m2/日)と求められます。

・日射量は、気象庁が「過去の気象データ検索」から全天日射量[MJ/m2/日],として、また、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が「年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)」として、公開しています。

・時間当たりの日射量Iは、3.80kWh/m2/日÷8h/日=0.475 kW/m2。

外気側表面熱伝達抵抗Roは、国立研究開発法人建築技術研究所 外皮の熱損失の計算方法の表A.3.2(末尾に記載)から、0.04m2・K/W。

・ここで、高反射塗料塗装前後の室外側屋根表面温度の温度上昇差は、(1)式から、

(ts1−t0) − (ts2−t0) = ts1−ts2 = (r2−r1)×I×Roですので、

(ts1−t0) − (ts2−t0) = (0.90−0.25)×0.475×(0.04×1000)=12.4℃

例えば、外気温が30℃のときの高反射塗料塗装前の室外側屋根表面温度は30+(1.0−0.25)×0.475×(0.04×1000)=44℃と求められ、「夏期の天井近くで50℃近くになった」と言う話は、決して誇張ではないことが理解されます。

(2)式から、高反射塗料塗装前後の室内側流入熱量差△qは、

△q ={ (ts1−ti) ÷ (R+Ri) }-{ (ts2−ti) ÷ (R+Ri) }=(ts1−ts2)÷(R+Ri)で表されます。

室内側には断熱材が未施工で、トタン等金属材料の熱抵抗は非常に小さいので断熱材による熱伝達抵抗Rは0.0と見做せます。室内側表面熱伝達抵抗Riは、国立研究開発法人建築技術研究所 外皮の熱損失の計算方法の表A.(末尾に記載)から、0.09m2・K/W。

・以上から、高反射塗料塗装前後の室内側流入熱量差△qは12.4÷{(0.0+0.09)×1000}=0.138kW/m2と求められ、年間の空調機の削減電力量は、0.138×100×800÷2.7=4,089kWh/年 と求められます。

表A. 表面熱伝達抵抗

部位 室内側表面熱伝達抵抗(m2K/ W) 外気側表面熱伝達抵抗(m2K/ W)
外気の場合 外気以外の場合
屋根 0.09 0.04 0.09(通気層)
天井 0.09 - 0.09(小屋根)
外壁 0.11 0.04 0.11(通気層)

0.15 0.04 0.15(床裏)

※注記

建物の表面熱伝達係数は定数と考えても差し支えありません。ただし、厳密には、表面熱伝達係数は風速や表面温度と外気の温度差等により変わります。したがい、蒸気配管からの放熱などには適用できません。

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(Q70)

建築物への省エネ対策の効果量算定方法は?<その1: 断熱強化>
(A70)

建築物の省エネ性能を向上させた際の省エネ効果量について、第2回目となる今回は断熱強化時の算定方法を取り上げてご説明します。

 

Q&A69の(2)式を下記に再掲します。

q = (ts−ti) ÷ (R+Ri) ・・・ (2)

 

q:単位面積当たりの侵入/放散熱量 [kW/m2]

 

ts:室外側屋根、壁と窓の表面温度 [℃]

ti:室内温度 [℃]

R:断熱材等による熱伝達抵抗 [m2・K/W]

Ri:室内側表面熱伝達抵抗 [m2・K/W]

 

(2)式で、室外側表面温度tsは外気温、日射量と室外側表面熱伝達抵で決まり、室内温度tiは使用者により決まり、また、室内側表面熱伝達抵Riは定数と考えられます。したがい、単位面積当たりの侵入/放散熱量qは断熱材による熱伝達抵抗Rによってのみ変化する量であり、断熱材による熱伝達抵抗Rが小さいほど、小さい侵入/放散熱量qとなります。

つまり、「断熱強化」とは、断熱材による熱伝達抵抗Rを小さくすることです。断熱材の熱伝達抵抗Rは下式で表されます。

 

R=Σ_(i=1)^n(di/λi)+Σ_(i=1)^n(Rai)

・・・・・・(3)

 

R:断熱材等による熱伝達抵抗 [m2・K/W]

di:i番目の断熱材の厚み [m]

λn:i番目の断熱材の熱伝導率 [W/m/K]

Rai:i番目の密閉空気層の熱抵抗 [m2・K/W]

 

建築物に用いられる断熱材の熱伝導率は、国立研究開発法人建築技術研究所 外皮の熱損失の計算方法の表A.3.1に、また、密閉空気層の熱抵抗は表A.3.3に、それぞれ定められています。

 

【試算条件】

●Q&A69の屋根の外側に25mmのロックウール断熱材を敷きその上に新たな屋根を施工(二重屋根化:下図はその施工例)

●冷暖房期の日射時の平均屋根表面温度: 41、20℃

●冷暖房期の空調後の室内温度: 26、22℃

●日射時の年間冷暖房時間:

 

・冷房時間: 100日/年(6〜9月)×8h/日(日射時間)=800h/年

・暖房時間: 100日/年(12〜3月)×8h/日(日射時間)=800h/年

●電動空調機(EHP)のCOP: 2.7

二重屋根化の施工例

【試算と結果】

 

●現状の室内側には断熱材が未施工で、トタン等金属材料の熱抵抗は非常に小さいので断熱材による熱伝達抵抗R1は0.0と見做せます。したがって、室内側表面熱伝達抵抗Riは0.09m2・K/Wですから、断熱材等による熱伝達抵抗(R1+Ri)は0.0+0.09=0.09m2・K/Wと求められます。

●ロックウール断熱材の熱伝導率は、国立研究開発法人建築技術研究所 外皮の熱損失の計算方法の表A.3.1から0.038W/m/Kで、密閉空気層は無いので、断熱材の熱伝達抵抗R2は、(25/1000)÷0.038+0=0.66 m2・K/Wと求められ、断熱材等による熱伝達抵抗(R2+Ri)は0.66+0.09=0.75m2・K/Wと求められます。

 

●また、室内側流入熱量差△qは、

△q ={ (ts−ti) ÷ (R1+Ri) }−{ (ts−ti) ÷ (R2+Ri) }

=(ts−ti)×{1/(R1+Ri)−1/(R2+Ri)}

で表されます。

●以上から、断熱強化前後の室内側流入熱量差△qは、

・冷房期間: (41-26)×(1/0.09−1/0.75)÷1000=0.147kW/m2

・暖房期間: (22-20)×(1/0.09−1/0.75)÷1000=0.020kW/m2/p>

と求められ、年間の空調機の削減電力量は、

(0.147+0.020)×100×800÷2.7=4,948kWh/年 と求められます。

本試算は、外気温より室外側表面温度が高くなる日射時を対象としています。一方、暖房が必要なのは日射の無い夜間や朝方であり、この非日射時間帯の省エネ効果はQ&A69の(2)式を修正した下式で求められます。

 

△Q2=(ti−to)÷{1/(Ro+R1+Ri)−1/(Ro+R2+Ri) }×S×T … (4)

△Q2:非日射時間帯での削減効果量 [kWh/年]

ti:室内温度 [℃]

to:外気温度 [℃]

Ro:外気側表面熱伝達抵抗 [m2・K/W]

R1:現状の断熱材等による熱伝達抵抗 [m2・K/W]

R2:断熱強化後の断熱材等による熱伝達抵抗 [m2・K/W]

Ri:室内側表面熱伝達抵抗 [m2・K/W]

S:表面積 [m2]

T:非日射時間帯の年間合計暖房時間 [h/年]

 

冷房期間についても同様ですが、外気温度toの方が室内温度tiより高いため、(ti−to)の項は(to−ti)となります。

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(Q71)

建築物への省エネ対策の効果量算定方法は?<その3: 窓の二重窓化>
(A71)

 

建築物の省エネ性能を向上させた際の省エネ効果量の算定方法に関わる3回目として、窓の二重化を取り上げます。

窓は採光を得るために設置するものであることから、屋根や壁とは異なり、日射光が室内に注ぎ込みます。下図は、6mmの透明板ガラスからの日射の割合を示しています(出典:旭硝子のGlass Plaza、https://www.asahiglassplaza.net/products/related/jisedai/)。

6mmの透明版ガラスからの日射の割合

図から、透過率は81.5%であり、吸収したものの再放熱割合を加味すると、日射量の85.4%もが室内に注ぎ込むことが分かります。室内に注ぎ込む割合を日射熱取得率と呼び、「μ値」と呼ばれています。

μ値が小さいほど遮熱性能が高いことを意味し、特に建物の冷房負荷の大小を示す指標となっています。日射熱取得率を小さくすると室内が暗くなるため、ある程度日射取得率を低く保ちつつ可視光透過率を大きくするとともに、複層ガラス化(二重窓化)して熱伝達抵抗を高めています。

加えて、例えばエアフローウィンドウ(下図: 出典は板硝子協会 ビルと複層ガラス)とし、室内空気を窓内に通してその空気を外気に捨てたり、空調機に戻すなど、システム化することで大幅な省エネを実現しています。

エアフローウィンドウについて

 

板硝子協会の「ビルと複層ガラス」の表2.1では、「複層ガラス、高性能熱線反射複層ガラス、Low-E複層ガラスの光学・熱特性」の一例が掲載されています。

表:複層ガラス、高性能熱線反射複層ガラス、Low-E複層ガラスの光学・熱特性の例

構成 熱貫流率【W/m2K】※1 日射熱取得率【-】※2 可視光透過率【%】
透明単板ガラス 5.8 0.85 88
透明複層ガラス 2.9 0.74 79
高性能放熱線反射複層ガラス 2.3 0.17 8
日射遮蔽型Low-E複層ガラス 1.6 0.42 67
日射取得型Low-E複層ガラス 1.9 0.64 73

※1<室内外気温差が1℃であるとき、高温側から低温側へ1m/p>

※2受照日射量に対する、ガラスを通じて室内に流入する熱量の割合。

 

表の熱貫流率はU値と呼ばれる数値であり、Q&A69,70でご説明したRo, R, Riとは、

 

1/U=Ro+R+Ri の関係があります。

なお、窓のU値は国立研究開発法人建設技術研究所 外皮の計算方法の表4にも記載されていますが、μ値が記載されていないため、板硝子協会の資料で計算を行っています。

 

 

【試算と結果】

東京での冷暖房期の8時から18時までの平均外気温度は、気象庁データより、

6〜9月: 27℃

12〜3月: 9.7℃

東京での冷暖房期の全天平均垂直日射量は、NEDOの「年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)」より、

1)6〜9月の4か月の平均値は2.12kWh/m2/日

212〜3月の4か月の平均値は1.71kWh/m2/日

 

 

冷房期の削減入熱量は、遮熱効果と断熱効果に分けて、

遮熱効果: (0.85−0.42)×2.12 kWh/m2/日×100m2×100日/年=9,116kWh/年

断熱効果: (27-26)℃×(5.8−1.6)W/m2/K×100m2×1,000h/年=420kWh/年

合計: 9,116kWh/年+420kWh/年=9,536 kWh/年

暖房期の削減入熱量も、遮熱効果と断熱効果に分けて、

遮熱効果: −(0.85−0.42)×1.71kWh/m2/日×100m2×100日/年=-7,353kWh/年

注記) マイナスとなるのは日射量が減るためです。

断熱効果: (22-9.7)℃×(5.8−1.6)W/m2/K×100m2×1,000h/年=5,166kWh/年

合計: -7,353kWh/年+5,166kWh/年=-2,187kWh/年

注記) 冷房と暖房の両方が必要な地域では、二重窓化により暖房期は増エネとなる傾向があります。

以上から、年間の空調機の削減電力量は、

(9,536−2,187)×÷2.7=2,722kWh/年 と求められます。

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(Q72)

湯面からの放熱量の算定方法と削減対策について教えてください

 

(A72)浴場、温水プールや工場の電解槽、酸洗プールなどでは、湯面が開放され、熱が放出されています。不使用時には湯面を覆うことで、放熱量を削減でき、加温に必要なエネルギーを削減できます。

 

以下、湯面からの放熱量の推算方法と削減対策についてご説明します。

1.湯面からの放熱量の推算方法

◯空気調和・衛生工学便覧の、「浴槽水の加熱負荷計算式」(下式)を使用します。

L = Qe + Qt + Qs + Qp + Qh + Qf ・・ (1)

Qe: 浴槽水面からの蒸発に伴う熱損失 [W]

Qt: 浴槽水面での熱伝達による熱損失 [W]

Qs: 浴槽の壁面・底面からの熱損失 [W]

Qe: 配管や濾過装置などからの熱損失 [W]

Qh: 入浴者による熱損失 [W]

Qf: 補給水(湯)の加熱負荷 [W]

 

◯(1)式で湯面からの放熱量に関係するのはQeとQtであり、(2a)、(2b)、(3)式で求められます。ここで、qeとqtは、(1)式とは異なり、単位表面積当たりとして求めています。

1)qe: 浴槽水面からの蒸発に伴う熱損失 [W/m2]

【屋内】 qe = (0.114v+0.134)×(Pw-Pa)×0.2778r ・・ (2a)

【屋外】 qe = (0.061v+0.125)×(Pw-Pa)×0.2778r ・・ (2b)

v: 湯面上の風速 [m/s] (一般に屋内:0.5、屋外:5.0)

Pw: 湯温での空気の飽和水蒸気圧 [kPa]

Pa: 周囲空気の水蒸気分圧 [kPa]

r: 湯温での飽和蒸気の蒸発潜熱 [kJ/kg]

 

2)qt: 浴槽水面での熱伝達による熱損失 [W/m2]

qt = va×(tw−ta)  ・・ (3)

va: 湯面の熱伝達率 [W/m2/K] (屋内:9、屋外35)

tw: 湯温 [℃]

ta: 周囲空気温度 [℃]

 

湯温での空気の飽和水蒸気圧Pwと湯温での飽和蒸気の蒸発潜熱rは湯温twから、周囲空気の水蒸気分圧Paは周囲空気の温度taと湿度から、蒸気表により求まります。

 

◯(2a)、(2b)、(3)式により求めた、周囲空気の温度が20℃、湿度が70%の時の屋内設置と屋外設置の場合の湯面からの放熱量を、図−1に示します。

単位表面積あたりの放散熱量【w/m2】

2.対策

60℃程度までの用途ならアルミラミネート発泡ポリエチレン製保温シートが数多く市販されています。また、ポリプロピレン製のボールを浴槽に浮かべ、蒸発を防ぐ製品も販売されています。右図は、ボールの有無による蒸発量の比較試験結果の一例で、ボールを敷き詰めることで放熱量が約75%削減できていることが分かります(出典は、エヌケイエス(株)のホームページ)。

浴槽を90℃に保った時の水の変化

3.浴槽に保温シートで覆った時の試算例

3-1 試算条件

・浴槽温度: 42℃ (室内設置で、常時42℃となるように制御)

・周囲の空気温度と湿度: 20℃、70%

・浴槽の表面積: 10m2

・ボイラの熱効率: 95% (都市ガス焚、低位発熱量は40.6MJ/Nm3)

・保温シートで覆える時間: 2,500h/年

3-2 試算

・図より、単位面積当たりの放熱量は1,100W/m2

・シートで覆った後の保温効率を70%と想定すると、年間の放熱削減量は、

0.7×1.1kW/m2×10m2×2,500h/年=19,250kWh/年=69,300MJ/年

燃料削減量は、

69,300 MJ/年÷0.95÷40.6 MJ/Nm3=1,797Nm3/年

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(Q73)

レシーバタンク増設による空気圧縮機の省エネ効果試算方法は?

 

(A72)

空気圧縮機(エアコンプレッサ)で圧縮された空気は配管で工場内へ供給され、

・削った鉄やプラスチックくず、水滴やホコリを吹き飛ばす

・吹き付け塗装に使う

・圧縮空気を動力源としてエアシリンダなどを駆動する

などの用途に使用されています。そして、エアシリンダに代表される通り、圧縮空気の必要量は時間的に変動することが一般的です。そして、設備などの使用空気量が空気圧縮機の吐出量を超えると、配管圧力は低下していきます。設備が必要とする圧力を下回らないように、空気圧縮機の吐出圧力を高めに設定することで回避している事例を散見しますが、Q&A14でご説明の通り、吐出圧力が高いほど大きな動力を必要とします。

その回避策として、レシーバタンクの増設による空気圧縮機の省エネをご紹介します。レシーバタンクの容量と消費空気量、吐出圧力等との間には、ボイル・シャルルの法則から、以下の関係が成立します。

 

V=(Q×1000×t/60)/(T1/T2-P3/T3)・・・・(1)

V:レシーバタンクの容量 [L]

Q: 消費空気量 [m3/min] (=最大エア消費量―空気圧縮機の吐出量)

t: 最大エア消費量の継続時間 [s]

T1:  大気(吸気)の絶対温度 [K]

T2: レシーバタンクの最初の絶対温度 [K]

T3: レシーバタンクの最終の絶対温度 [K]

※T1=T2=T3 と考えて差し支えありません。

P1: 大気(吸気)の絶対圧力 [MPa-A] (=0.101)

P2: レシーバタンクの最初の絶対圧力 [MPa-A] (「アンロード圧力」相当)

P3: レシーバタンクの最終の絶対圧力 [MPa-A] (「ロード圧力」相当)

※P2-P3は空気圧縮機の制御圧力幅(MPa)です。

最大エア消費量の発生頻度が少なく、かつ、継続時間が短ければ、実践的な対策と言えます。

 

【試算条件】

・空気圧縮機定格容量: 37kW

・現状の空気圧縮機の制御圧力幅: 0.2MPa(=0.7MPa-G−0.5MPa-G)・

・レシーバタンク増設後の空気圧縮機の制御圧力幅: 0.1MPa(=0.6MPa-G−0.5MPa-G)

・空気圧縮機の吐出量: 6m3/min

・最大エア消費量: 10m3/min

・最大エア消費量の継続時間と発生頻度: 20s秒、1時間に12回発生

・空気圧縮機の稼働時間と負荷率: 8,760h/年 (=24h/年×365日/年)で80%

※補足説明

1)正確には電動機効率を考慮する必要があります(試算値より省エネ効果が増加)。

2)空気圧縮機の負荷率は、吐出量が不足状態では100%となりますが、その頻度は少なく短時間のため平均的な負荷は100%以下となります。

 

【試算と結果】

・必要なレシーバタンク容量は、温度上昇は無視できる程度のため、(1)式から、

0.1013×(10−6)×1,000×20/60÷0.1=1,351L

Q&A14の図より、空気圧縮機の吐出圧力を0.60MPa-G[=(0.7+0.5)÷2]から、

0.55MPa-G[=(0.6+0.5)÷2]まで低減した時の軸動力の改善率は0.08[=1−(93%÷101%)]

・年間の空気圧縮機の電力削減量は

37×8,760×0.80×0.08=20,744kWh/年

なお、ある圧縮機メーカでは空気圧縮機の負荷率に応じてアンロード圧力を下げ、余剰な空気圧力をカットすることで省エネ化を図る空気圧縮機を販売しています。この場合、レシーバタンクの増設は不要ですが、負荷が高い時は高い吐出圧力となります(省エネ率が低くなります)。

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(Q74)

変圧器(トランス)の役割について教えてください

 

(A74)

発電所で発電された電気は、送電線、変電所、配電線、引込み線などを通り、ビル、工場や家庭に送電されています(下図: 出典は、経産省 平成23年12月 「総合資源エネルギー調査会 省エネルギー基準部会 変圧器判断基準小委員会 最終取りまとめ」)。

発電所で発電された電気の送電状況

発電時の電圧は数千V〜2万V程度ですが、効率よく送るために変電所で昇圧されます。高電圧で送られてきた電気は各地に設けられた変電所によって徐々に降圧され、それぞれの目的地で使いやすい電圧になって利用されています。その昇圧と降圧を果たすのが変圧器(トランス)です。

発電所から変電所までの電線を「送電線」、最後の変電所から中小工場・ビルや家庭までの電線を「配電線」、主に電信柱から家庭などにつながる線を「引込線」と呼びます。

配電に使用する変圧器は、中小工場・ビルが自らの設備として設置する変圧器と、電力会社が一般家庭に200V/100Vで配電する柱上変圧器があります。

 

では、何故、変圧器が必要なのでしょうか?

それは、変圧器が電圧の上げ下げを自由に行うことができるためです。電気が電線を流れると、電気抵抗により熱が生じます。この熱が出ただけ電気を消費します。この電力消費は電流が多いほど多く発生するため、 電流を少なくすれば電力消費も少なくなります。同じ電力の電圧と電流は反比例するので、電流を少なくして送電中の消費電力を減らすためには、 電圧を高くして送り出す必要があるのです。

以下、定量的に高圧送電が有利な理由をご説明します。なお、説明には「FNの高校物理」webサイト (http://fnorio.com/0016High_voltage_power_transmission/High_voltage_power_transmission.htm)を使用させていただきます。

 

変圧器は、鉄心に1次コイルと2次コイルを巻きつけた構造になっていて、電流が流れるとコイル内部に磁界が発生し、電圧が生じます。この電圧の大きさは「コイルの巻数」に比例し、多ければ多い程、高い電圧が得られます。

 

1.変圧器が無い場合の送電

送電線の抵抗を10Ω、負荷抵抗を10Ωとし、その負荷に1Aの電流が流れているとします。

変圧器の無い場合の送電

2.変圧器により昇圧し高電圧送電する場合

途中にトランスを挟んで送電電圧を上げた場合を考えます。ただし負荷抵抗、負荷電流、発電機の発電電圧をすべて1.と同じとします。

変圧器により昇圧し高電圧送電する場合

負荷による消費電力はP=VBCI=RI2=10×12=10Wとなり全く同じです。いま負荷側のトランスの巻数比例10:1とします。このときBC間の電圧はVBC=RI=10×1=10Vですが、トランスの理論によりVFG:VBC=10:1だからVFG=100V、IFG:IBC=1:10だからIFG=0.1Aとなります。回路を流れる電流が0.1Aだから送電線による電圧降下はVEF=rI=10×0.1=1Vとなり、消費電力はP=VEFI=rI2=10×0.12=0.1Wとなります。結局E−F−G−Hの回路の電圧降下は1+100+1=102Vとなり、EH間にVEH=102Vの電圧を発生すれば良いことになります。発電電圧は同じVAD=30Vだから巻数比30:102のトランスをつなげば良いことになります。そのとき発電機が送り出す電流はトランスの理論によりIAD=0.1×102/30=0.34Aとなります。つまり発電機が送り出す電力はP=VI=30×0.34=10.2Wです。送電線によるエネルギー損失は0.1×2=0.2Wだから発電機が送り出す電力10.2Wのわずか2%で済むこととなります。

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(Q75)

トップランナー変圧器について教えてください
(A75)

変圧器の一次コイルに電圧を印加すると鉄心に主磁束が通じ二次コイルの巻数に応じた電圧が誘起され、また負荷を接続すると二次電流が流れ一次側からコイルの巻数に反比例した一次電流が流入して、電力変換します。この時、

・鉄心には磁気抵抗により、渦電流損失とヒステリシス損失が発生します。この損失は負荷の大きさに無関係で無負荷損と呼ばれています。

・一方、コイルには抵抗があるため、電流が流れることにより損失が発生します。電流の大きさは二次側の負荷によるもので、負荷損と呼ばれています。

以上から、変圧器の損失は下式で表されます。

全損失[W]=無負荷損[W]+(a)2乗×負荷損[W]・・・・・・(1)

ここで、αは負荷率 [−]であり、無負荷損と負荷損は変圧器の容量、仕様ごとに定まる特性値でメーカのカタログ等に記載されています。

したがい、変圧器の消費エネルギーを低減するには無負荷損と負荷損を低減することが必要で、下表のような低減化技術が採用されています(出典は、日本電機工業会 2013年5月 「トップランナー変圧器 第二次判断基準2014年スタート!!」)。

変圧器の消費エネルギー損失低減について

省エネ法では変圧器など31品目(2015年3月時点)について製造事業者等に、省エネ型の製品を製造するよう基準値(トップランナー基準)を設けています。

変圧器については2014年度から新省エネ基準(第二次判断基準: トップランナー2.)が施行されています。日本電機工業会によると、トップランナー2.の変圧器では、旧JIS(JIS C4304(1977))に比べ約60%の、また、前JIS(JIS C4304(1981))に比べ約40%の省エネ効果が得られるそうです。日本国内での変圧器稼動台数は2010年度時点で約260万台(油入235万台,モールド25万台)と推計され、このうち更新推奨時期である20年を超過している1991年以前の変圧器は約100万台を占め、トップランナー2.への更新により大きな省エネ効果が期待できます。

以下、1980年製の油入変圧器1台を、同じ容量のトップランナー2.に更新した時の省エネ効果を試算します。

 

1.変圧器仕様

・更新前: 50Hz 三相200kVA油入変圧器(1980年製)、1台

無負荷損=600W、 負荷損=2,900W

・更新後: 50Hz 三相200kVA油入変圧器(トップランナー2.)、1台

無負荷損=315W、 負荷損=2,140W

 

2.試算条件

・負荷パターン:

平日(昼間)の負荷率、稼働時間×稼働日数:50%、18h/日×270日/年

平日(夜間)の負荷率、稼働時間×稼働日数: 1%、 6h/日×270日/年

休日の負荷率、稼働時間×稼働日数     : 1%、24h/日× 95日/年

 

3.試算

・更新前後で変圧器容量は同じであるため、負荷率も同じ。

・現状の変圧器の年間の変圧器損失は、5,256+3,525=8,781kWh/年

◯無負荷損: 600/1,000kW×24 h/日×365日/年=5,256kWh/年

◯負荷損: 3,523.5+0.5+0.7≒3,525 kWh/年

平日(昼間): (0.5)2×2,900/1,000kW×18 h/日×270日/年=3,523.5 kWh/年

平日(夜間): (0.01)2×2,900/1,000kW×6h/日×270日/年=0.5kWh/年

休日: (0.01)2×2,900/1,000kW×24h/日×95日/年=0.7kWh/年

・更新後の変圧器の年間の変圧器損失は、2,759+2,601=5,360kWh/年

◯無負荷損: 315/1,000kW×24 h/日×365日/年=2,759kWh/年

◯負荷損: 2,600.1+0.3+0.5≒2,601kWh/年

平日(昼間): (0.5)2×2,140/1,000kW×18 h/日×270日/年=2,600.1kWh/年

平日(夜間): (0.01)2×2,140/1,000kW×6h/日×270日/年=0.3kWh/年

休日: (0.01)2×2,140/1,000kW×24h/日×95日/年=0.5kWh/年

 

・年間の電力削減量: 8,781−5,360=3,421kWh/年

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(Q76)

変圧器の統合について教えてください
(A76)

Q&A75でご理解いただけたように、変圧器では性能の指標として全損失を用いています。何故、他機器のように効率で表示しないのかといいますと、 元々、変圧器の効率が97%程度以上と高く、省エネ効果が小数点以下の数値となり、取扱い上、不便を感じるからです。この点について、1980年製と2014年度からの新省エネ基準(トップランナー2.)製の50Hz 三相500kVAの油入変圧器を例にとり、ご説明します。1980年製とトップランナー2.変圧器の無負荷損と負荷損の一例は下記の通りです。

変圧器 製造年 無負荷損 [W] 負荷損 [W]
50Hzφ500kVA油入 1980年製 600 2900
50Hzφ500kVA油入 トップランナー2. 315 2140

 

変圧器の効率は、下式で表されます。

効率 [%]=(出力 [kW])/(出力 [kW]+全損失[kW] )×100=(α×Pn×cosθ[kW])/(α×Pn×cosθ[kW]+全損失[kW] )×100 ・・・・(1)

 

ここで、αは負荷率 [−]、Pnは変圧器定格容量[kVA]、cosθは力率です。また、全損失はQ&A75の(1)式により求められます。したがい、力率を1.0としたときの変圧器の負荷率と効率の関係は下図の通りとなります。効率差では認識が困難であることをご理解いただけると思います。

力率を1.0としたときの変圧器の負荷率と効率の関係

このため、変圧器ではエネルギー消費効率として変圧器損失(W)を用いています。そして、基準となる負荷率として、容量が500kVA以下の変圧器では40%、500kVA超の変圧器では50%を採用しています。なお、変圧器は負荷率が√(負荷損÷無負荷損)のときに最大効率を発揮します。試算例では、1980年製変圧器では負荷率45%[=√(600÷2,900)×100]で、トップランナー2.変圧器では負荷率38%[=√(315÷2,140)×100]で、最大効率を発揮します。

ところで、Q&A75の(1)式に従い、上記例での負荷ごとの全損失を求めた結果は下図の通りであり、負荷率が高くなるほど全損失差は広がり、また、負荷率が低くとも一定の全損失差があることが分かります。

(1)式に従い算出した負荷ごとの全損失の差

そこで、低負荷率で運用中の2000年製油入変圧器2台を、1台に統合(残りの1台は系統から切り離す)した時の省エネ効果を試算します。

1.変圧器仕様

・50Hz 三相1000kVA油入変圧器(2000年製)、2台

無負荷損=1,914W、 負荷損=11,951W

2.試算条件

・変圧器1の負荷パターン:

昼間の負荷率、稼働時間×稼働日数:39%、 8h/日×365日/年

夜間の負荷率、稼働時間×稼働日数:24%、16h/日×365日/年

・変圧器2の負荷パターン:

昼間の負荷率、稼働時間×稼働日数:15%、 8h/日×365日/年

夜間の負荷率、稼働時間×稼働日数:10%、16h/日×365日/年

・1台の変圧器に統合後の負荷パターン:

昼間の負荷率、稼働時間×稼働日数:54%(=39+15)%、 8h/日×365日/年

夜間の負荷率、稼働時間×稼働日数:34%(=24+10)%、16h/日×365日/年

3.試算

・現状の変圧器1,2の年間の変圧器損失は、33,533+10,811=44,344kWh/年

変圧器1、2の無負荷損: 1.914kW×24 h/日×365日/年×2台=33,533kWh/年

変圧器1、2の負荷損: 6,093+4,718=10,811kWh/年

昼間: {(0.39)2+(0.15)2}×11.951kW× 8h/日×365日/年=6,093kWh/年

夜間: {(0.24)2+(0.10)2}×11.951kW×16h/日×365日/年=4,718kWh/年

・統合後の変圧器の年間の変圧器損失は、16,767+18,244=35,011kWh/年

変圧器1の無負荷損: 1.914kW×24 h/日×365日/年×1台=16,767kWh/年

変圧器1の負荷損: 10,176+8,068=18,244kWh/年

昼間: (0.54)2×11.951kW× 8h/日×365日/年=10,176kWh/年

夜間: (0.34)2×11.951kW×16h/日×365日/年= 8,068kWh/年

・年間の電力削減量: 44,344−35,011=9,333kWh/年

以上の通り、低負荷で運転している変圧器があれば統合することで電力使用量を削減できます。変圧器を含む受電設備は月次点検が義務づけられており、電気保安協会等が月次点検を行っています。この月次点検時に、低負荷の変圧器の有無について問い合わせることを提案します。

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(Q77)

(受電)力率とは?
(A76)

Q&A76の(1)式で、出力[kW]は変圧器容量[kVA]に力率cosΘを掛けて求めています。以下、力率についてご説明します。

モータなどの機器を使用した場合、エネルギーの損失が生じ、実際に働いた電力(有効電力)は電圧と電流の積(皮相電力)より小さくなります。この比率を力率と呼び、力率cosΘ=有効電力[kW]÷皮相電力[kVA]の関係となります(下図)。

力率と電力の関係(モーター等の機器使用時)

「無効電力」は負荷と電源間を往復するだけで消費されない電力です。そして、「皮相電力」は電源から送り出される電力であり、

(皮相電力)2=(有効電力)2+(無効電力)2・・(1)

の関係が成立します。

電力が全て有効に消費されている場合、力率は1となり最も高効率です。一方、力率の悪い機器が電路に数多く接続されていると、総合的な力率が低下し皮相電力ばかりが大きくなります。電流が増大し、電力損失が増加し、結果的に電圧降下が大きくなります。力率の悪化により無効電力が増大するため、設備利用率が低下します。

変圧器は、皮相電力だけが大きい場合でも、この電力に耐えられる容量で選定しなければならず、無効電力が大きければそれに比例して、機器容量が大きくなり機器費も過大になっていきます。つまり、力率の悪化を改善し電力を有効に利用できれば、機器容量を小さくできる分機器費を低減でき、かつ省エネとなります。

力率は高圧受電設備(キュービクル)に設置されている力率計で瞬時の力率が読み取れますし、電力会社からの請求書で月平均の力率を確認することも出来ます。

下写真は力率計の一例で、中央の1が力率1を示し、右側が遅れ状態、左側が進み状態を示しています(写真の力率は遅れ側で約0.995)。

力率計

なお、進み力率では負荷端の電圧が上昇することがあります。電圧が上昇すると稼働中の機器に悪影響を及ぼすため、定格電圧の110%を超えないように運用をすることが必要です。

一般需要家の力率の平均は85%程度であり、電力会社から供給されている電力の15%は有効に使用されていない状態となっています。電力会社が用意している発電装置、需要家内の変圧器などはすべて皮相電力を基準としているため、実際に消費される電力よりも大きな設備を用意しなければいけません。そこで、電力会社では、需要家側の力率の悪化に対し、力率85%を基本として1%改善するごとに基本料金を1%ずつ割引するという施策を取っています。計算式で表すと、

月次基本料金=契約電力[kW]×基本料金単価[円/kW/月]×(185−力率)÷100 ・・ (1)

となります。力率が90%の場合は5%の割引になり、80%の場合は逆に5%の割増となり、力率を80%から90%に改善すると、基本料金は10%安くなります。

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(Q78)

力率の改善方法について教えてください
(A78)

Q&A77で、電力会社から供給されている電力は皮相電力であり、力率を1に近づけることで発電装置や変圧器などを小さくできることをご説明しました。では、どうやれば力率を1に近づけることが出来るのでしょうか?

答えは容量性のコンデンサを使うことです。この力率改善のためのコンデンサを「力率改善用コンデンサ」、「電力用コンデンサ」あるいは「進相コンデンサ」と呼びます。

取付け場所は受電点、電気室高圧母線、変圧器二次母線あるいは負荷と並列に取付ける方法があり、それぞれ長所・短所があります。設備費が安く、電気料金の力率割引を受けることを主目的とする場合は、受電点設置方式が有利で、一番多く採用されています。右図はその一例です(出典は「配線図ってどう読むの?」http://dende777.fc2web.com/denko1/study/haizenzu/haisenzu.html)。

配電図例

以下、高圧電力A契約で、力率が80%で推移している事業所の力率を改善した際の電力基本料金の削減金額について試算します。

【試算条件】

・電力:200 kW

・基本料金単価:1,269円/(kW・月)

・現状の受電力率:80% 

・目標の受電力率:100% 

【試算】

・力率改善率:100%−80%=20%・削減金額:

契約電力×基本料金単価×力率改善率×12月/年

=200kW×1,269円/kW×20%×12月/年=609千円/年

・追加するコンデンサ容量の算出:

1)有効電力=200kW:最大電力を採用します。

2)皮相電力=250kVA(=200÷0.8)

3)無効電力={(皮相電力)2−有効電力2}1/2 =(2502−2002)1/2 =150kVA

 

【補足】

・有効電力として最大電力を使用して試算しています。工場稼動時の平均受電電力の値を把握すれば、進相コンデンサの容量は150kVA以下になります。

・進相コンデンサ(左下写真:一例)を設置する場合は、通常、直列に小容量のリアクトル(右下写真:一例)を接続し、開閉時の突入電流の低減、電源高調波の抑制を行います。実施に際しては、電気主任技術や電気専門企業に相談してください。

進相コンデンサと小容量リアクトル

・夜間や深夜に進相コンデンサが投入されたままになっていると、力率は1を大きく超えて進み、異常電圧発生の恐れがあります。このような不具合を防止するため、進相コンデンサの投入量を自動的に制御し、力率を自動的に調整するためのシステムとして、力率自動調整装置があります。

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(Q79)

契約電力と30分デマンド値の関係について教えてください
(A79)

電気料金は基本料金と電力量料金で構成されています。Q&A77で基本料金は契約電力[kW]と力率で決まることをご説明しました。そして、力率についてもご説明済です。以下、契約電力と30分デマンド値の関係についてご説明します。

契約電力が50kW以上であれば、トランス(下写真はキュービクルの一例)などが格納されたキュービクルを需要家が自前で設置の上、高圧受電(6,600V)し、単相100Vや三相200Vなどに降圧する必要があります。

高圧受電では、電力会社が30分最大需要電力計の組み込まれた電子式電力量計を取付け、電気使用量を計測しています。30分最大需要電力計は、30分間(毎時ごとの0分〜30分、30分〜60分の30分間)の電気の使用量[kWh]を計測し、平均使用電力(kW、30分デマンド値)を算出します。そして1ヶ月の最大の30分デマンド値(月次最大需要電力)を記憶し、表示するようになっています。

トランス等を格納したキュービクル

高圧受電し契約電力が500kW未満の場合は、その月と過去11ヵ月の月次最大電力値の中で最も大きい値を契約電力とします。つまり1回でも大きな30分デマンド値が出ると1年間はそのデマンド値が契約電力として適用されます。また、契約電力が500kW以上の場合は、協議により契約電力が決められています。月次最大需要電力が契約電力を超えると、通常より割増しの違約金を電力会社に支払うことになります。

例えば、図Aのように、最初の30分間で300kWの負荷を使用、そして次の30分間で500kW負荷を連続して使用すれば、30分デマンド値は500kWとなります。また、この1時間での電力使用量は400kWh(=300kW×0.5h+500kW×0.5h)です。

もし、図Bのように、図A の500kW負荷の最初の15分間の平均電力が500kWのままで次の15分間の平均電力が100kWになるように負荷を制限出来たとすると電力会社の30分デマンド値は300kW[=(500kW×0.25h+100kW×0.25h)÷0.5h] となり、デマンド値は変わりません。また、この1時間での電力使用量は300kWh(=300kW×0.5h+500kW×0.25h+100kW×0.25h)となります(図A,Bの出展は関西電気保安協会のホームページ)。

電力使用量模式図

つまり、30分デマンド値が契約電力などの設定値を超えることを予知し、最大で30分の負荷制限対策が実行できれば、契約電力を低く抑えることでき、使用電力量の削減も期待できます。

ある工場の月次最大電力は下図のとおりです。この工場では次回のQ&Aでご説明予定のデマンド監視装置が設置され、契約電力を超しそうになると管理者の指示で生産設備を短時間停止していました。残念なことに、最大電力を記録した9月の当日は管理者が不在で、超過してしまったようです。事前に設備の停止の優先順位をマニュアル化し、現場レベルで対応できるようにすることで、最大電力を現状の契約電力である320kWから300kWまで抑制できたとした時の削減金額を求めると次の通りとなります。

月次の最大電力推移例

【試算条件】

・契約電力:320 kW

・目標電力:300 kW

・基本料金単価:1,269円/(kW・月) 

・受電力率:100% 

【試算】

・削減金額=(320−300)kW×1,269円/kW×(185−100)÷100×12月/年=259千円/年

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(Q80)

デマンド監視装置について教えてください
(A80)

うっかり一斉に生産設備を稼働してしまい30分間以上電力使用がピークとなってしまうと、その30分間でのデマンド値が1年間の契約電力となることをQ&A79でご説明しました。そこで、このうっかりを監視する装置(デマンド監視装置)についてご説明します。

以下、デマンド監視装置の基本機能と活用方法について、東北電力株式会社のホームページを基にご説明します。

デマンド監視装置例

以下、デマンド監視装置の基本機能と活用方法について、東北電力株式会社のホームページを基にご説明します。

1.デマンド監視装置の基本性能

(1)デマンドを監視し、警報が出せます。

・常にデマンド予測を行い、目標電力(契約電力)を超えそうな場合に、警報を出してお知らせします。

・警報はブザーやパトライト、携帯電話へのメール等の方法で出すことが出来ます。

 

(2)電力データの見える化と管理ができます。

・パソコン上で最大需用電力(デマンド)や、電力使用量のデータ管理ができます。

・デマンドの出る時間帯を把握することで、節電のための運用管理にも役立てることが出来ます。

 

また、機種によっては、監視機能に加え、自動で鵜可制御が出来ます。すなわち、デマンド超過の警報と同時に、あらかじめ設定した機器(空調機など)を自動的に停止させることが可能で、契約電力超過を防止します。(「デマンド監視装置」に制御機能が追加されているため、この機種は「デマンドコントローラー」と呼ばれます)。

2.デマンド監視装置の活用方法

 

(1)デマンド監視装置の設置者は、実施可能な節電アイテムをあらかじめ決めておき、「負荷遮断リスト」および「配置図」を作成します。

(2)デマンド監視装置の設置者は、電力の使い方を把握し、警報値(目標電力)を設定します。

 

(3)デマンド監視装置は、目標電力の超過が予測されると警報をブザーやメールで知らせます。

 

(4)デマンド監視装置からの警報やブザーにメールに基づき、デマンド監視装置設置事務所の関係者は、あらかじめ設定した「負荷遮断リスト」の優先順位に従い手動で停止します。(機種によっては、自動で停止することも可能です)

(5)デマンド監視装置の高度化活用事例として、

・同じ規模の店舗同士を比較することで、消費電力の差を発見できます。

・総量だけでなく個別の系統も計測することで、ピーク原因が見えてきます。

デマンド比較

デマンド監視装置には、本格的なシステム導入型の機種や簡易に導入できる機種など様々なタイプがあり、デマンド監視装置と警報表示器やブザー等の間を結ぶ配線が不要な無線タイプも販売されています。また、個別系統(照明・空調・生産設備・ガス・重油など)を計測可能なものやデマンドデータと個別系統データを一元管理できる機種もあります。事業所の規模や必要とする機能等に合わせて最適なシステムを選定ください。

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(Q81)

BEMS、FEMS、CEMSなどのエネルギー管理システムについて教えてください
(A81)

Q&A80でご説明しましたデマンド監視装置は、デマンド監視と電力データの見える化に重点を置いた装置(システム)です。これらの機能に、設備・機器の制御機能を追加したエネルギー管理システム(EMS:Energy Management System) が市販されています。

管理対象によりHEMS、MEMS、BEMS、FEMS、CEMSという名前がそれぞれ付けられています(右図)。HEMS(ヘムス:Home EMS)は住宅向け、MEMS(メムス:Mansion EMS)は集合住宅向け、BEMS(ベムス:Building EMS)は商用ビル向け、FEMS(フェムス:Factory EMS)は工場向け、CEMS(セムス: Cluster/Community EMS)はこれらを含んだ地域全体向けとなります。

それぞれ管理対象は異なりますが、電力需要と電力供給のモニターとコントロールをするというシステムの基本は共通です。そして、エネルギー管理システムの構築により、下記のような監視と制御が行え、利用者の利便性が増し、省エネ・節電にも繋がります。

エネルギー管理システムについて

1.HEMSの構築により、

・電源コンセント毎の消費電力の監視と電源のオン・オフ制御

・照明の消費電力の監視と電源のオン・オフ・調光制御

・太陽光発電機の発電量の監視と発電効率化の為の制御

・燃料発電機の発電量の監視と発電効率化の為の制御

・家庭用蓄電器(分散蓄電)の蓄電量の監視と充放電の制御

・家電のリモートコントロールや状態監視

・電気自動車の充電制御

2.BEMS、FEMSの構築により、

・配電盤毎の電力消費量の監視

・ピーク電力の調整

・テナント別の電力使用量の測定

・非常用電源の監視

・温湿度監視とボイラー、冷凍機、空調機の制御

・照度の監視と照明のオン・オフ・調光制御

・デマンドレスポンス

太陽光や風力など再生可能エネルギーを最大限に活用し、かつ、エネルギーの消費を最小限に抑える「スマートコミュニティ」の構想が世界的な動向となっています。エネルギー管理システムはスマートコミュニティを実現する上での中核技術でもあり、普及に向け、政府は積極的に導入支援を行っています。

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(Q82)

「省エネ」の英訳は?
(A82)

「省エネ」は我が国のみならず世界中で推進されています。

「省エネ」を普通に英訳すると ”energy saving” です。これを「節約」という意味のやや格式のある語 ”conservation” を使って ”energy conservation” と訳すこともあります。

一方、経産省や省エネルギーセンターでは、「省エネ」を ”energy efficiency & conservation” と訳して使用しています。

”energy efficiency & conservation” については eia (U.S. Energy Information Administration)が的確に説明をしています(http://www.eia.gov/energyexplained /index.cfm?page=about_energy_efficiency)。すなわち、

 

The terms energy conservation and energy efficiency have two distinct meanings. There are many ways people can use less energy (conservation) and many ways people can use energy more wisely (efficiency).

Energy conservation is any behavior that results in the use of less energy. Turning the lights off when leaving the room and recycling aluminum cans are both ways of conserving energy.

Energy efficiency is the use of technology that requires less energy to perform the same function. Using a compact fluorescent light bulb that requires less energy rather than using an incandescent bulb to produce the same amount of light is an example of energy efficiency.

 

(エネルギーの節約とエネルギーの効率的利用と言う用語は、2つの異なる意味を有します。

エネルギーを少なく使う(節約)とエネルギーを賢く使う(効率的利用)には多くの方法があります。

エネルギーの節約は、エネルギーの使用を減らす行動です。部屋を出るときに部屋の照明を消したり、アルミ缶のリサイクルは、エネルギーを節約する方法です。

エネルギーの効率的利用は、より少ないエネルギーで同じ機能を果たすための技術です。同じ照度を得るために白熱灯よりも少ないエネルギーで済む電球型蛍光灯を使うことは、エネルギーの効率的利用の一例です。)

上記の通り、省エネは決して節約だけではなく、エネルギーの効率的利用と言う側面も有しています。

 

省エネ法の第一条では、「エネルギーの使用の合理化に関する所要の措置その他エネルギーの使用の合理化を総合的に進めるために必要な措置等を講ずること」を目的として謳っており、「エネルギーの節約」と「エネルギーの効率的利用」の両方を「エネルギーの使用の合理化」として表現していると考えられます。

このため、旧式の生産設備を高効率な生産設備に更新し、同じエネルギー使用量で生産量を増やす対策も立派な省エネ対策です。

 

なお、省エネ法の英訳は、 “Act on the Rational Use of Energy” であり、” energy conservation law” は物理学の「エネルギー保存の法則」の意味があり、異なるものをイメージされるので注意が必要です。

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(Q83)

省エネ・創エネ・蓄エネの違いについて教えてください
(A83)

Q&A81でご説明の通り、「省エネ」とはエネルギーのムダを省いて効率的に使う取り組みの総称です。

そして、近年「省エネ」に加え、「創エネ」や「蓄エネ」も行われるようになってきています。

「創エネ」とは、(主として)電気を自ら創る取り組み、「蓄エネ」とは電気を蓄える取り組みの総称です。

「省エネ」、「創エネ」、「蓄エネ」への取り組みの一例として、「スマートハウス」が挙げられます(下図: 出典は経産省「スマートハウス関連施策について」)。

スマートハウス例

スマートハウスではHEMS(Q&A81をご参照)を導入し、家庭内の照明器具、調理器具、冷暖房器具などのエネルギーを必要とする機器を住人に代わり、住宅自らが家庭内の各機器を管理し、省エネを行います。スマートハウスに関係した機器は、「省エネ機器」、「創エネ機器」と「蓄エネ機器」の3つで構成されます。スマートハウスでの創エネ機器は太陽光による発電システムや家庭用燃料電池(エネファーム)であり、蓄エネ機器は家庭用蓄電池や電気自動車(EV)などが該当します。

 

家庭用燃料電池(エネファーム)は電気と給湯が同時に可能で、電気と熱を同時に発生させるコージェネレーション技術です。

住宅を例として、「省エネ」、「蓄エネ」、「創エネ」への取り組みをご説明しましたが、企業でも同様であり、企業向けの「創エネ機器」と「蓄エネ機器」がすでに販売されています。なお、コージェネレーション技術は燃料が本来もっているエネルギーを使い倒す技術であり、電気と熱の同時需要が見込める食品工場、ホテル等では送電ロスが無い分、コージェネレーションの導入は大きなメリットが期待できます。

 

以上、ご説明の通り、「創エネ」と「蓄エネ」は電気を自ら創り、電気を蓄える点で分散型電源システムであり、災害に強いシステムです。そして、「創エネ」は「蓄エネ」や「省エネ」と組み合わせることで、社会を低炭素で持続可能な姿に変えていく原動力になり得ます。国も普及に力を入れていて、資源エネルギー庁は2013年夏、再エネの普及に向けた国民運動の一環として「GREEN POWER(グリーン・パワー)プロジェクト」を始動しました。

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(Q84)

省エネ法に基づく「事業者クラス別評価制度」について教えてください
(A84)

本年度から省エネ法に基づく「事業者クラス分け評価制度」が開始されました。

本制度は、平成27年8月に公表された総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会の取りまとめ中の、「省エネ取組状況に応じて事業者をクラス分けし、メリハリのある評価フローを実施すべき」との提言に対応する処置です。そして、平成27年度定期報告に基づくクラス分け評価を行い、Sクラス事業者が資源エネルギー庁のホームページで公表されています(http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/classify/)。

「事業者クラス分け評価制度」は、省エネ法の工場等に係る措置の定期報告を提出する全ての事業者をS・A・B・Cの4段階へクラス分けし、クラスに応じたメリハリのある対応を実施するものです。クラス分けの基準と平成27 年度定期報告(平成26 年度実績)での結果は下記のとおりです。

 

・「Sクラス事業者」= 定期報告書(平成27度3月末確認時点)において5年間平均原単位を年1%以上低減(努力目標)またはベンチマーク目標を達成している事業者 ⇒ 総事業者数12,412社中の7,775社(62.6%)

・「Aクラス事業者」=SクラスにもBクラスにも該当しない事業者 ⇒ 総事業者数12,412社中の3,430社(27.7%)

・「Bクラス事業者」=定期報告書において、1.努力目標未達成かつ直近2年連続で原単位が対前度年比増加、または、2.5年間平均原単位が5%超増加している事業者 ⇒ 総事業者数12,412社中の1,207社(9.7%)

・「Cクラス事業者」=Bクラス事業者の中で特に省エネ取組が不十分と判断された事業者

事業者クラス別評価制度について

「Bクラス事業者」に対しては、事業者の代表者に注意文書を送付し、経営層へ自社の省エネが停滞しているという自覚を促し、さらに、報告徴収、現地調査、立入検査を重点的に実施することとなっています。そして、調査等の結果から「Bクラスの事業者」の中でも特に判断基準遵守状況が不十分と判断された事業者は「Cクラス事業者」にクラス分けされ、省エネ法第6条に基づく指導が実施されることとなります。

平成28年度は、「Bクラスの事業者」の約500事業所に対し工場等現地調査が、また、約1,000事業者に対し電話調査が行われています。

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(Q85)

ピンチテクノロジーについて教えてください
(A85)

ピンチテクノロジーとは、工場等で、加熱や冷却に必要な熱量を最小化するための熱交換器ネットワークを計画する解析手法のことです。

「ピンチ」は、英語で「つまむ」という意味で、与熱側と受熱側の流体の温度と熱量の関係を図示化したとき(下図: 出典は「矢崎雅俊の”環境工学”」で、図を熱複合線図と呼びます)、与熱側と受熱側が温度的に最も接近する箇所をピンチポイントと呼びます。

熱複合線図での与熱側と受熱側の流体の熱量差は最小冷却熱量と最小加熱量を表しており(「ターゲット」と呼びます)、このターゲットは理論上の熱量を示しているのではなく、ピンチポイントとして選定した最小温度差が合理的であれば実現できる熱量を示しています。これにより、ターゲットを達成する熱交換器ネットワークが必ず得られます(具体的な熱複合線図の作成方法については次回以降にご説明予定です)。

熱複合線図の概念図

ピンチテクノロジーは単一工場に留まらず、複数工場間の熱融通(エリアワイドピンチテクノロジー)解析にまで拡大することに成功しています。単一工場ごとの省エネルギー化は限界に達している一方で、異業種の工場が隣接するコンビナート内では、工場によって利用する熱の温度帯が異なることから、さらなる省エネルギーも可能です。既に国内5カ所(千葉、鹿島、水島、大分、宇部)のコンビナートに解析が適用されており、さらに、2011年度からはNEDO「国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業」の一環としてタイ王国のマプタプット工業団地へと海外展開されるなど、国内外のコンビナートにおける省エネルギーソリューション技術として大きな期待が寄せられています(出典:NEDO実用化ドキュメント「複数工場間で熱を共有し、コンビナート全体での省エネを実現」)。

なお、ご説明した熱エネルギーを減らすためのピンチテクノロジーに加え、用水使用量と排水量を減らすための水ピンチテクノロジーがあり、さらには投入資源量と廃棄物を減らすための物質ピンチテクノロジー(Mass Integration)も開発されています。

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(Q86)

熱複合線図の作成方法と最少必要加熱/冷却熱量について
(A85)

Q&A85でご説明したピンチテクノロジーで核となる熱複合線図の作成方法について、例題を基に、ご説明いたします。なお、例題はピンチテクノロジーの開発者の一人であるLinnhoff教授のテキスト(Introduction to Pinch Technology)から、図-1(a)のプロセスを取り上げます。図―1は、反応器(R1,R2)、分離塔(C1)、リボイラー(REB)、コンデンサー(COND)と熱交換器(C, Hなど計4基)で構成される化学プロセスです。原料(●)は30℃でこの化学プロセスに供給されます。また、外部から、1.加熱用に200℃の蒸気が熱交換器Hに1,200kWで、また、2.冷却用に25℃の冷却水が熱交換器Cに360kW量で、それぞれ供給されるだけであり、その他の熱交換器はこの化学プロセスの中で製品間の熱の授受にだけ使用されています。

 

ピンチテクノロジーでは、この化学プロセスでの加熱用蒸気と冷却用冷却水の最小熱量を求めることが出来ます。

(以下)図1 例題として取り上げる化学プロセス

例題として取り上げる化学プロセス

図-1(a)について、加熱用蒸気と冷却用冷却水を含む熱交換器での温度と熱量の関係が分かる4流体(stream1からstream4まで)に注目します(図-1(b)で、丸印の中にHeat, Coolと書かれた箇所です)。

余熱流体 受熱流体
No 供給温度 ℃ 到達温度℃ 熱量KW 水当量KW/℃ No 供給温度℃ 到達温度℃ 熱量KW 水当量KW/℃
1 180 80 2000 20 3 60 100 3200 80
2 130 40 3600 40 4 30 120 3240 36

 

流体は熱交換により温度の違いはあるものの、ストリームの中での流量と成分は同じです。したがい、熱量は、熱収支から、流量×比熱×|供給温度−到達温度|として表される(“流量×比熱”を水当量(CP)と呼びます)ことから、与熱流体について熱量と温度の関係を図式化すると図−2(a)の通りとなります。ここで、温度80℃から130℃までは流体1でも流体2でも与熱可能であり、この間での与熱量は流体1と流体2の合計値となり、水当量は流体1と流体2の合計値(20+40=60)となります。以上、3本の温度と熱量の関係を温度でつないだ線が図−2(b)与熱流体の熱複合線となります。なお、図−2で横軸に熱量の目盛が表示されていますが、流体1より流体の熱量が高いレベルにあるわけではないことに留意願います(各直線の幅が熱量を表しています)。

(以下)図-2 与熱流体の熱複合線

与熱流体の熱複合線図

受熱流体についても、同様に、熱複合線が作成でき、与熱流体と受熱流体を同一グラフ上に表示したのが図−3です。

(以下)図3-1 熱複合線図

熱複合線図

ピンチポイントとは、与熱流体と受熱流体の温度差が最も接近した点を指しています。温度差が0となる点では熱交換は不可能です。したがい、現実的には熱交換が経済的に可能な温度差を想定し、与熱流体または受熱流体の熱複合線を水平移動することで熱複合線図が作成されます。図−3(b)は温度差として10℃と想定し、作成しています。

図−3(b)で、与熱流体と受熱流体の熱複合線熱量軸で重なる範囲(図ではHeat Recoveryと表示)は与熱流体と受熱流体での熱交換が可能な範囲を示しています。言い換えると、受熱流体が与熱流体からはみ出した部分が外部からの最小必要加熱量(960kW)を、また、与熱流体が受熱流体からはみ出した部分が外部からの最小必要冷却量(120kW)を示しています。すなわち、この化学プロセスでは、蒸気による加熱量を1,200kWから960kWに、また、冷却水による冷却を360kWから120kWに、熱交換器のネットワークを見直すことで削減できることが熱複合線図を作成することで分かります。

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(Q87)

熱プロファイル(SSSP)解析について
(A85)

 

熱プロファイル解析とはSSSP [Site Source and Sink Profile]解析とも呼ばれ、工場全体のプロセス加熱とプロセス冷却の需要曲線を描くことによって、工場全体の熱需要の全体像を明らかにするとともに、用役の選択と配分を同じグラフ上に書き込むことで用役とプロセスのマッチング状況を確認することができます。

NEDO成果報告書 「平成23年度〜25年度 国際エネルギー消費効率化等技術・システム実施事業 基礎事業 タイ工業団地のピンチテクノロジー等の工場間エネルギー利用解析による省エネ診断事業」とNEDO実用化ドキュメント 「複数工場間で熱を共有し、コンビナート全体での省エネを実現」を基に、熱プロファイル解析の一例を紹介します。

 

1.用役(蒸気や温水、冷水など)によって加熱/冷却されている熱交換器だけに着目します(プロセス間の熱交換は除きます)。対象とする各熱交換器のプロセス側流体の入口、出口の温度と熱量、および使用している用役の情報(名称、温度)を基に、加熱側(Heat Sink)と冷却側(Heat Source)それぞれについて、熱複合線図を作成します。同時に、用役消費(回収)プロファイルを描きます。図-1は、千葉コンビナートでの例を示します。センターラインを境に、右側が用役による加熱を、左側が用役による冷却(蒸気回収を含む)を示しています。また、青・赤線がプロセス、黒線(実線と破線)が用役を表しています。

 

図-1 現状の工場熱プロファイル

地区全体の熱プロファイル(SSSP)解析

2.図-1の用役とプロセス流体の水平方向の隙間は用役の配分の改善ポテンシャルを、縦方向の隙間は用役の温度レベルの改善ポテンシャルを、それぞれ表しています。図-1の左側(プロセスの冷却側)では、現状では100℃から20℃まで熱が捨てられている(破線)ことになりますが、110℃付近の熱を工場間で融通する(実線:左側の図から右側の図に熱を供給する)ことや、90℃付近の熱を温水として回収して融通する(実線:左側の図から右側の図に熱を供給する)ことが可能であることが明らかとなります。つまり、「熱プロファイル解析」を行うことで、回収・利用できる分がひと目でわかることになります。

 

ご説明した千葉コンビナートでの基盤調査の後、水島(35工場)、鹿島(30工場)、宇部(3工場)、大分(15工場)のコンビナートでも、NEDOの調査事業が行われました。その結果、千葉、水島、鹿島の3コンビナートでの熱共有化による省エネ理論値は44万klにものぼることがわかりました(表-2)。

注記:表-2の「エネルギーシステム最適化での省エネ理論値」についてはQ&A88でご説明の予定です。

 

表-2 千葉、水島、鹿島で行った各コンビナートの省エネルギー理論値

工場数【千葉:23工場、水島:35工場、鹿島:30工場、水島/千葉の比:1.5】、統合燃料消費量熱+電気【千葉:288万KL、水島:379万KL、鹿島:204万KL、水島/千葉の比:1.3】、エネルギーシステム最適化での省エネ理論値【千葉:51万KL、水島:100万KL、鹿島:64万KL、水島/千葉の比:2.0】、熱共有化での省エネ理論値【千葉:13万KL、水島:21万KL、鹿島:10万KL、水島/千葉の比:1.6】、省エネ理論値合計【千葉:64万KL、水島:121万KL、鹿島:74万KL】、国内原油消費量【千葉:1日分相当、水島:2日分相当、鹿島:1.2日分相当】、※単位:年間原油消費量 ※国内エネルギー消費量原油換算:約60万KL/日 ※産業部門への省エネルギー要請:2050万KL

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(Q88)

R曲線(R-Curve)解析について
(A88)

 

R-曲線(R-Curve)解析は、エネルギーシステムの省エネの余地を把握するための解析手法で、図-1 のように横軸にR 値、縦軸に統合エネルギー効率をとります(出典: NEDO成果報告書 「平成23年度〜25年度 国際エネルギー消費効率化等技術・システム実施事業 基礎事業 タイ工業団地のピンチテクノロジー等の工場間エネルギー利用解析による省エネ診断事業」、及び、NEDO実用化ドキュメント 「複数工場間で熱を共有し、コンビナート全体での省エネを実現」)。

図‐1 R-曲線

R-曲線

縦軸の総合エネルギー効率は、工場全体エネルギーシステムを操業するために投入した全燃料量(Qfuel1+Qfuel2)に対する工場全体での熱と電力使用量(Qheat+W)の割合です(図−2)。Qfuel2は購入電力量と買電分の効率(受電端効率)から求まります。

横軸の熱電比(R)は、工場全体での熱需要に対する電力・動力需要の比率(R=W/Qheat)であり、R 値が大きいと電力需要の比率が大きいことを示し、R 値が小さいと蒸気(熱)需要の比率が大きいことを示しています。

総合エネルギー効率は工場全体としての効率を示しており、例えば、全て高効率モーターで操業していても、使用電力が全て買電ならば、買電分の受電端効率が36.9%(我が国の場合)と低いので、全体エネルギーシステムの効率は低く評価されます。

全燃料量に対する工場全体での熱と電力使用量の割合

R-曲線(R-Curve)解析では、工場の使用電力(購入電力と自家発電)とコージェネレーションによる熱供給(蒸気)から、現状におけるR 値を算出します(図-1 破線)。さらに、発電に使用する燃料量等から統合エネルギー効率を算出し、ボイラーとタービンを導入した場合(図-1 赤線)、さらにガスタービン複合システムを導入した場合(図-1 青線)などの理想のエネルギー効率を割り出し、それに対して現状のエネルギー効率がどの程度であるかを算出します。

たとえば理想のエネルギー効率に対して現状の統合エネルギー効率が低すぎるというのであれば、熱利用を増やすことで熱電比を下げ(図-1で左方向に移動し)統合エネルギー効率を高めるか、もしくは、新たにガスタービン複合システムを導入することで(図-1で上方向に移動し)統合エネルギー効率を上げるなど、現状を分析したうえで、今後どのような対策が可能かといった検討が可能となります。

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(Q89)

省エネ法における判断基準について教えてください
(A89)

 

エネルギーの使用の合理化等に関する法律(通称、省エネ法)は、1970年代の石油危機を契機に、エネルギーの使用の合理化を進めることにより、国民経済の健全な発展に寄与することを目的として1979年に制定されました。その後、地球温暖化問題の高まりや民生エネルギーの増大等の経済的・社会的環境の変化に応じて数度改正され、現在に至っています。

省エネ法は、省エネルギーに誘導するためのものであり、違反者を積極的に取り締まり、省エネの方向に強制的に向けさせる法律ではありません。反面、省エネ法は、分野・営利非営利・エネルギー消費の多少を問わず、エネルギーを使用する者はひとしく省エネルギーと電力の需要の平準化に努めることを求めています。

省エネ法の「基本方針」では、省エネルギー管理体制と管理方法の基本的な考え方を示しているのに対し、「判断基準」では省エネルギーを推進するための着眼点ともいうべきものが書かれています(下図: 出典は関東経済産業局ホームページで工場に対する判断基準)。

判断基準の構成

「判断基準」は、(工場の場合は)「1熱の発生」から「6 動力・熱への変換」までの6分野に分け記述しています(判断基準自体は経済産業局のホームページで公開されています)。以下、ボイラ、タービン・発電設備を例として、判断基準での6分野と設備・機器の関係をご説明します。

ボイラでは、例えば重油を燃料としバーナで燃焼用空気により燃焼し、熱を発生します(判断基準の1)。発生した熱はボイラチューブ内部を流れるボイラ水を加熱するために使用されます(判断基準の2)。ボイラ水を加熱することで温度の下がった燃焼排ガスはエコノマイザ(ボイラ給水を予熱する機器)や空気予熱器を使い廃熱回収が行われます(判断基準の3)。一方、ボイラで発生した蒸気はタービンに供給され、蒸気の持つ熱エネルギーが回転エネルギーに変換され、発電機を駆動することで電力が得られます(判断基準の4)。発生した電力はモータや電気炉などで使用されます(判断基準の6)。その過程で熱エネルギー(判断基準の5-1)や電気エネルギー(判断基準の5-2)の損失が発生します。

ボイラ、タービン、発電設備での判断基準

以上、ボイラ、タービン・発電設備でご説明しましたが、それ以外についての設備・機器についても判断基準の6分野との関係は下表の通りです。

判断基準での

分野番号

想定設備、機器
1  ボイラ、工業炉、乾燥炉など
2

 蒸気加熱器、吸収式チラー、工業炉、外調機など空調機器、熱交換器など

3  ボイラ、工業炉、凝縮器、乾燥炉など
4  発電機、コージェネ設備
5  蒸気/冷水/温水配管、工業炉、受電設備/変圧器/配電設備など
6

モータ、ポンプ、ファン、ブロワ、コンプレッサ、エレベータ、電気分解設備、照明設備、オフィス機器など

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(Q90)

省エネ法における管理標準とは?
(A90)

 

省エネ法における「管理標準」とは、「事業者がエネルギーの使用の合理化に関する運転・管理、計測・記録、保守・点検等を行なうにあたり、当該事業所の用途や規模に応じて自ら定めるマニュアル」であり、「判断基準」を遵守するための工場・事業場ごとの省エネ管理や省エネ活動の手引書となるものです(下図)。

判断基準と管理標準の考え方

そして、管理標準を定め判断基準を遵守することは、特定事業者やエネルギー管理指定工場等としての指定の有無に関わらず、エネルギーを使用し事業を行う全ての者に対して求められています。

Q&A89でご説明の通り、「判断基準」は(工場の場合は)「1熱の発生」から「6 動力・熱への変換」までの6分野に分け記述しているのに対し、「管理標準」では設備、機器ごとに記述する必要があります。

「管理標準」には、1.運転・管理、2.計測・記録、3.保守・点検、と、4.新設に当たっての措置、の4項目について規定する必要があり、管理標準の一例が経済産業局のホームページ(http://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/shoene/1-2-1handan_kanri.html)や省エネルギーセンターのホームページ(http://www.eccj.or.jp/law06/com-judg/)などで公開されています。次表は経済産業局のホームページで公開されている空気圧縮機の管理標準です。

お示しした管理標準には「判断基準番号」の記述があります。これは、判断基準番号を示しており、例えば、「運転管理」の「1.電動力応用」の「(1)不要時の停止」項目に対応する判断基準番号「2(6-1)1.ア」の、

・最初の「2」は「工場等」での判断基準

・次の(6-1)は「分野(対象)6-1 電動力応用設備、電気加熱設備等」での判断基準

・3番目の1.は「1.運転・管理」での判断基準

・4番目のアは「1.運転・管理 電動力応用設備、電気加熱設備等の管理」での判断基準項目

を示しています。

そして、「主要設備の判断基準該当番号」が経済産業局のホームページ(http://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/shoene/1-2-1handan_kanri.html)で公開されています。つまり、設備を特定することで、判断基準に適合した管理標準が作成できることとなります。

(参考: 経済産業局のホームページで公開されている空気圧縮機の管理標準(一例))

空気圧縮機の管理標準(例)

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