空中映像技術で「スター・ウォーズの世界」を実現する情報通信研究機構(NICT)発ベンチャー

2019年 2月 19日

イメージ
空中映像イメージ

空中映像で不思議な世界を演出する情報通信研究機構(NICT)発ベンチャーの株式会社パリティ・イノベーションズ。代表取締役の前川 聡 氏に、起業の経緯、事業内容、今後の展望についてお話をお伺いしました。(2019年1月取材)

インタビュー

株式会社パリティ・イノベーションズ (クリエイション・コア東大阪に入居中)

代表取締役 前川 聡 氏

起業、会社のおいたち

空中映像技術の開発秘話と起業の経緯を聞かせてください

代表者画像

大学時代は原子核物理を専攻し、その後大手電機メーカーに就職をしましたが、大学院に戻りニューラルネットワークの研究で博士号を取得しました。ニューラルネットワークというのは、今流行りのディープラーニングのことなのですが、博士号取得後はNICTの研究員として研究を続けました。

しかし、当時はニューラルネットワークの研究が下火になり予算が減ったことで、最終的には研究室がなくなってしまいました。新たな研究テーマを模索している時に、神戸大学でホログラフィーの研究をされている的場先生、仁田先生と出会い、交流する中で立体ディスプレイが出来ないかと考えるようになり、2005年秋に空中映像の着想を得るに至りました。

2006年3月には第一試作が完成して空中映像を実現することができ、特許を出願しました。その後、第二試作が完成して、10月に学会発表したところ、空中に浮かび上がる奇麗な映像に驚かれました。展示会に出展しても多くの皆様から『スター・ウォーズの世界だ』等と驚かれ、何か新しい価値を提供できると確信しました。

よく混同されるのですが、ホログラフィーは光の波としての性質を応用したもので、一方、空中映像は光が直進する性質を応用したものであり、全く原理が異なります。直進する光をミラーで反射させることで、光源と面対称の位置(空中)に「実像」を浮かばせることが可能になります。アミューズメント的な要素の映像にとどまらず、実像をタッチすることで反応するスイッチ等のデバイスへの展開も期待ができるシステムです。

NICTでも毎年予算が付きプロジェクトが発足しました。ところが、ここからが苦労の連続でした。原理が確立しても、量産化しなければ事業にはなりません。最初は金属を切削することで結像光学素子「パリティミラー®」を製作していましたが、画像の精度を保ちつつ量産化に向けたコストダウンに挑戦するためには、樹脂化して製造プロセスを革新するしか方法がないと考えました。2010年に遂に5cm角の「パリティミラー®」が完成し起業することにしました。

事業の展開と現在

事業は順調に進みましたか

パリティミラー
結像光学素子「パリティミラー®

5cm角が完成してからも順風満帆とはいきませんでした。10cm角に挑戦したのですが、3年かけても量産レベルの製品が出来ずに思考錯誤が続きました。起業後しばらくはNICTとの兼業で、開発費もNICTから出ていましたが、プロジェクトが終了してしまい、いよいよ自力で開発を進めなければいけなくなりました。戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)などの助成金を活用しながら開発を継続し、材料と製造プロセスの革新を繰り返すことで、ようやく2018年夏に10cm角、秋に15cm角の量産化に耐え得る装置での試作に成功しました。

おかげさまで関心を示していただける企業は増えてきましたが、まだまだ認知度が低いと感じています。大企業の開発部門を訪問しても存在を知られていないことがあります。また、これまでは空中映像に関心を示してくれる企業があっても、事業の話になると先に進めませんでした。理由は量産化の目途が立たなかったので納入価格等を提示することが出来なかったからです。今後は具体的な商談が可能になります。

そして、これから

今後の展望をお聞かせください

空中スイッチ
空中映像にさわるとON/OFFできるスイッチ

今後は事業展開を加速することが最優先事項です。SF映画「スター・ウォーズ」のような空中映像が世の中にあふれる社会を実現したいと考えています。キャラクターの静止画・動画を浮かび上がらせて楽しむということもできます。ゲームの「ポケモンGO」はスマホの画面の上で実空間を拡張しているかのように見せていますが、「パリティミラー®」を活用した空中映像は実空間そのものを拡張できる手法です。不思議な世界を演出する可能性を秘めたデバイスです。

また、非接触のユーザー・インターフェイスとして、病院の手術室内に置かれる機器のスイッチや自動車のフロントパネルを空中映像として運転席の前方に表示することも可能になります。

このようにアミューズメント関連企業をはじめ医療機器や自動車関連企業、ゼネコン、デベロッパーなど様々な分野への展開を目指しています。

これらを実現するには消耗品である型の製作費用が必要になります。現在資本金は4,220万円ですが、外部からの出資は受けていません。今後は外部からの資金調達も積極的に受け入れていきたいと考えています。ご興味も持っていただける企業があれば、是非我々とともに一緒に新しい未来を創造しませんか。

インキュベーションの利用

入居のきっかけ

東大阪市立産業技術支援センターにいたのですが、サポインに採択されたことをきっかけに装置を入れることになり、耐荷重面で条件を満たしていたクリエイション・コア東大阪に入居することを決めました。東大阪市による賃料補助制度があり、賃料の50%が出ることも決め手になりました。

入居しての変化

常駐のインキュベーションマネージャー(IM)が居て、いつでも気軽に相談できるということが一番の変化です。助成金情報、イベント情報などが増えました。

入居して良かったこと、将来の入居者へのメッセージ

イベントに参加する機会も増えてネットワーク構築に役立っています。IMが全国ネットワークでつながっていて、東京の大手企業とのマッチングをサポートしてくれたり、資金調達前に必要となる資本政策の指導をしてくれたり、とても満足しています。交通の便もよく、会議室が無料で使用できるなど利点も多いです。

会社情報

会社名
株式会社パリティ・イノベーションズ 
代表取締役
前川 聡
所在地
京都府相楽郡精華町光台3-5 NICTビル
事業概要
光学素子研究開発・空中ディスプレイ応用システム研究開発

会社略歴

2010年12月 NICT発ベンチャーとして設立
2014年12月 「中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業に係る補助金」交付決定
2015年6月 東大阪市立産業技術支援センター入居
2017年1月 南都銀行<ナント>サクセスロード特別賞受賞
2017年9月 平成29年度戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)採択
2017年10月 池田泉州銀行「ニュービジネス助成金」地域創生賞受賞
2017年11月 クリエーション・コア東大阪入居
2018年9月 三菱UFJ技術育成財団研究開発助成金採択

技術紹介

映像原理

パリティ・イノベーションズが開発する光学素子「パリティミラー®」は、2面コーナーリフレクタアレイ構造を持ち、離散的な単位光学素子によって光線を細かく分割、幾何光学的にそれらを集めて結像させるものです。

「パリティミラー®」による空中映像は、距離や方向に関わらず空中の確定した位置に見られるため、現実の物体の様な存在感・臨場感があります。

10cm角程度の小型の「パリティミラー®」を用いることにより、空中映像は手が届く程の短距離で観察されるパーソナルな装置として実現できます。

担当マネージャーからのコメント

冨田氏画像

『“空中映像”と言う面白い技術に取組んでいるベンチャー企業がある』と言う噂は、以前から聞いていました。なんとかクリエイション・コア東大阪に引込めないかと思っていたところ、偶然にも同社が入居の希望で相談に来られました。それが(株)パリティ・イノベーションズとの出会いでした。大変驚いたことを思い出します。

「SF・ファンタジーの世界を現実の世界で実現したい」と言う前川社長の強い思いに、つい引込まれてしまいました。“空中映像”のコアデバイスが光学素子「パリティミラー®」です。現在サポインで量産工法の開発を進め、コスト面も含め目途が立ちました。

さあいよいよ事業開始です。幸いにも家電・自動車・医療・アミューズメントなど様々な分野の方々に関心を持って頂いています。早期実用化に向けて、IMとして最大限の支援を行っていきたいと思います。

クリエイション・コア東大阪
チーフインキュベーションマネージャー 冨田 和之

インキュベーション施設

クリエイション・コア東大阪