インクジェットテクノロジーで価値創造に挑戦する、熊本発ものづくりベンチャー

2018年 10月 18日

製品写真

インクジェット技術の特徴を活かし、顧客と共に新たな価値を創出し、ものづくりに関する様々な課題を解決する技術集団として創業したKIT-CC(キット)株式会社。今般、代表取締役の冨田健二氏に、起業の経緯、事業内容、今後の展望についてお話をお伺いしました。(2018年9月取材)

インタビュー

お話:代表取締役 冨田 健二 氏

起業、会社のおいたち

起業したきっかけと社名の由来を教えてください

顔写真

私は大手電機メーカーで産業用途のインクジェットヘッドの開発に携わってきました。早期退職後にインクジェット関連の装置メーカー2社の役員を経て、仲間と共に2015年11月にKIT-CC株式会社を設立しました。専務の小島は大手事務機器メーカー出身、常務の野口は大手ケミカルメーカー出身で、ともにインクジェットに深く関わったメンバーの集まりです。役員3名の他、従業員が5名いますが、何れもインクジェット関連で開発を共に行ったメンバーです。平均年齢は57.1歳です。

KIT-CCはKey of Inkjet Technology - Creative Companyの略です。インクジェット技術を生かして、新たな価値を提供し、社会に貢献したいという思いが込められています。

事業の展開と現在

御社の強みを聞かせてください

紙やフィルムへの印刷は大手印刷メーカーと大手装置メーカーにはかないません。ところが世の中にはインクジェットによる印刷ニーズは多く、多様化が進んでいます。従って、一つの装置ですべてを解決できるわけではありません。大手メーカーは量産型の開発製造を得意としていますが、個別用途に合わせたカスタマイズや数台の装置を開発製造することには消極的です。創業当初、我々が過去から繋がりがある大手装置メーカー、大手ヘッドメーカー、大手インクメーカーから様々な案件をご紹介していただいて事業を始めました。

インクジェット関連装置は、印字アプリケーション、ヘッド駆動基板、ヘッドユニット、インク供給機構、ワーク搬送機構、全体を取りまとめる装置制御システムで構成されています。一つ一つが特殊な要素技術を必要としています。これらすべてに強いネットワーク(高い要素技術を有するメーカー)を有しているということも我々の強みの一つです。

また、お客様からは企画、構想、提案、装置試作、装置完成、納入まで非常に小回りが利き短納期開発できるという点を評価されています。また、大手企業時代の人脈、技術力、人柄も商談の推進において、プラスに働いていると信じています。

紙とフィルム以外にはどのような用途がありますか

菓子類への印刷など食品用プリンターの最大手にOEM供給をしています。今年、飲料用金属缶への印刷実験機を製作し、展示会にて発表を行い、事業の柱として成長させていきたいと思っています。季節ごとの絵柄の入替、ひとりひとりの名前や顔などのオンデマンド印刷は、オンリーワンのオリジナル品としての楽しみが拡がります。また、環境に配慮して金属缶への印刷には特殊水性インクを用いています。加えて、飲料を充填した缶にも印刷可能で物流の簡略化にも繋がります。

その他には、GLM株式会社(大手自動車メーカー以外で電気自動車認証を初めて取得)から発売されている電気自動車「Tommykaira ZZ」のシートベルトに当社の印刷技術が採用されています。従来の単色印刷では実現できないデザイン性を追求したカラフルなシートベルトです。

そして、これから

今後のビジョンをお聞かせください

職場風景

事業領域としては、新たに2つの柱を成長させたいと考えています。一つの柱はプリンテッドエレクトロニクス分野です。具体的には量子ドット(Quantum dot)材料を用いたディスプレイの製造プロセス開発にチャレンジしたいと思っています。世の中ではバックライトで発光させる液晶ディスプレイ(LCD)が普及していますが、今後は素子が自発光する有機ELディスプレイ(OLED)の量産化や更に次世代の量子ドット用いた高画質ディスプレイ(QLED)の開発が見込まれています。QLEDの一つの特徴は低価格化でインクジェット印刷技術を欠かすことができません。我々は、この分野で存在感を示したいと考えています。

もう一つの柱は、医薬(錠剤)分野です。錠剤への印刷は誤飲防止の為、視認性向上が必要です。現在、打錠、スタンプ、レーザー、インクジェットといった方式があります。視認性の観点からはスタンプとインクジェットが優位になりますが、インクジェット印刷技術は錠剤に触れることがなく、印刷ができることが高く評価されています。

ここ2、3年は様々な分野に対応するために即戦力として熟年技術者を採用して一気に技術基盤を確立させたいと考えています。また、今後の事業継承を踏まえて同時に優秀な若手技術者の採用も行いたいと考えています。近い将来、社会の公器として株式公開を目指せるように努力していきたいと思います。

インキュベーションの利用

入居のきっかけ

大手電機メーカーを退職した後に役員に就任した装置メーカー2社でも、くまもと大学連携インキュベータを活用していました。くまもと大学連携インキュベータやインキュベーションマネージャー(IM)の良さを知っていましたので、会社を設立した時に迷わず決めました。

入居しての変化

設立当初は、技術コンサルティングが中心でした。入居してから、周りの環境変化もあり、「ものづくりをやろう」と決め、今では食品分野、産業印刷分野、テキスタイル分野、プリンテッドエレクトロニクス分野、医薬分野等へ展開を始めています。

入居して良かったこと、将来の入居者へのメッセージ

仕事に専念できることが最大の魅力です。研究や商談以外のことは一切気にする必要はありません。共用施設が充実していて、入居者はメンテナンスや掃除のことを心配する必要はありません。また、展示会情報や助成金情報など常駐するIMが提供してくれます。特に中小機構本部を含めて熊本県、熊本市等の公的機関との連携も深まり、信用力が向上したことで外部機関からも注目され始めています。今後は、他の入居企業とのコラボレーションも含めて新たな価値が創造できることを期待しています。

会社情報

会社名
KIT-CC株式会社 
代表取締役
冨田 健二
所在地
熊本県熊本市中央区南熊本3-14-3
事業概要
  • 食品・医薬:可食インクを用いたインクジェット印刷装置及びユニット(食品用プリンター、錠剤用印字ユニット等)の製造開発
  • プリンテッドエレクトロニクス関連:インクジェット印刷実験機(レジスト塗布等)の製造開発
  • 研究開発、要素開発:インクジェット評価装置の製造開発
  • 上記関連装置に関する、インク吐出、インク供給装置等、必要な関連技術に関しての価値提供及び技術開発コーディネート

会社略歴

2015年11月 KIT-CC株式会社設立
2015年11月 高速FOODプリンター開発に着手
2016年6月 高速FOODプリンターを製品化
2017年4月 水性インクを用いた缶印刷の開発に着手
2017年6月 くまもとベンチャーマーケット二火会に登壇
2017年7月 テキスタイル装置(布地印刷)の制御基板開発に着手
2018年5月 テキスタイル印刷用の制御基板の量産開始

製品紹介

缶、フィルムへのインクジェット印刷実験機

製品紹介写真

金属缶をはじめとする円筒形の地金面やフィルムに下地処理なしで、花王が開発した水性ルナジェットインクを、ダイレクトに印刷できるIJ方式のデジタル印刷機です。内容物が充填されたアルミ缶への直接印刷も可能です。

担当マネージャーからのコメント

チーフインキュベーションマネージャー

当社は、社員の平均年齢が57.1歳の会社です。しかし、皆さん若々しく、「感謝報恩(社会に恩返し)、創造革新(ワクワクする開発)、心身健康(志を高く持つ)」をモットーにインクジェットの技術革新に取り組んでいる企業です。また、新しい分野(プリンテッドエレクトロニクス分野、医薬(錠剤)分野)にも積極的に取り組んでいます。これからの成長が期待されます。

くまもと大学連携インキュベータ
チーフIM(インキュベーションマネージャー) 堀 義親

インキュベーション施設

くまもと大学連携インキュベータ