オペ室で動物を使い医療機器の研究・開発・評価や手術手技トレーニングができる インキュベーション施設

2018年 9月 3日

神戸医療機器開発センター外観
神戸医療機器開発センター外観

神戸医療機器開発センター(メデック/MEDDEC)は、神戸市が推進する神戸医療産業都市構想の中核施設の一つであり、動物実験や手術手技トレーニングができるオペ室やMRI(磁気共鳴画像装置)、またウエットラボ(動物の器官を用いて手術手技の練習が行なえる研究室)を備える日本で最初の公的インキュベーション施設である。(2018年8月取材)

インキュベータ概要

神戸医療産業都市内に立地

神戸医療産業都市空撮
神戸医療産業都市空撮

メデックが立地するポートアイランドは、神戸市が推進する神戸医療産業都市構想の下、先端医療技術の研究開発拠点が整備されている地域である。 神戸医療産業都市の構想開始から20年が経過し、現在までに340を超える先端医療の研究機関、高度専門病院群、先端技術企業や大学の集積が進み、日本最大のバイオメディカルクラスターに成長した。

近隣には神戸市立医療センター中央市民病院を初めとする医療機関、再生医療で世界をリードする理化学研究所生命機能科学研究センター(BDR)、スーパーコンピューター「京」が設置されている理化学研究所計算科学研究センターと言った最先端の研究機関がある。

神戸医療機器開発センターの概要

オペ室での手技トレーニングの様子
オペ室での手技トレーニングの様子

メデックでは、カテーテル・ステント・内視鏡・腹腔鏡等を用いた低侵襲手術治療(注 1)や新しい治療器具の技術評価や改良を推進しており、医療関連分野における新事業の創造に貢献している。 近年、低侵襲手術のための手術ロボットや人工関節に関する技術等に関心が高まってきており、かかる分野にも携わっている。

(注 1):皮膚を切る範囲を減らし、出血を減少させ、手術時間を短縮することができる手術。 その中心となるのが鏡視下手術で体に数ヶ所小さな穴をあけ、炭酸ガスを注入し腹腔鏡や胸腔鏡を挿入して行なう。 患者さんの体に対する負担(侵襲)を減らした優しい治療方法。

2006年にメデックが設立されて以来12年経過したが、西日本に手技トレーニング(注 2)施設が少ないことから、医師が集まりやすい週末は脳血管や心臓血管のカテーテル手技、整形外科の脊髄内視鏡手技、呼吸器内視鏡手技、消化器内視鏡では内視鏡的粘膜下層剥離(ESD)手技(注 3)、肝移植手技などが数多く行なわれている。

(注 2):医療技術や医療安全の向上を図ることを目的に、医師がOJT(on the job training)で臨床経験を積んだ上、更に模型や動物等を使用して十分な練習を行なう方法。

(注 3):ESD, Endscopic Submucosal Dissectionの略称。 病変の周囲の粘膜を内視鏡専用の電気メスを用いて切開した後、粘膜下層を少しずつ剥離し病変を切除する方法。 高効率に病変を一括切除でき、高い根治が期待できる新しい治療法。

また、IM(インキュベーションマネージャー)室には中小機構、(公財)神戸医療産業都市推進機構のIMが常駐し、新たな事業展開を図ろうとする企業、研究者に医工連携のマッチングから販売、事業化、資金調達までシームレスで、かつ、個社の体力にあったテーラーメイドな支援を行なっている。

生体ブタによる手術手技及び医療機器開発の支援

メデックの施設の目玉は最新医療機器を備えたオペ室。 3室を備え、各室の利用者が出合わないよう秘匿性を考慮した導線設計となっており、医療学会や大学病院による手技トレーニング、医療機器の設計・開発目的で行なう機器の評価などに利用されている。 研究・開発をはじめ、自社製品のトレーニングやセールスプロモーションなど様々な用途に利用できる。トレーニング目的で行なわれる手技では、カテーテルや内視鏡、腹腔鏡を使った低侵襲手術治療が増えている。 また、MRIも備えており、1.5T(テスラ)のMRI(注 4)で動物の撮像ができる。

(注 4):磁気共鳴画像装置(Magnetic Resonance Imaging)、エックス線を使用しないで強力な磁石による”強い磁場”と電波を利用して生体内の状態を画像にする装置。 放射線による被爆がない。 テスラとは磁気の強さを表す単位。 1.5T(テスラ)MRIはMRI装置性能の目安である静磁場強度(磁石の力)が1.5T(テスラ)あり、最も静かでより短時間で鮮明な画像が撮像できる装置。

積極的なマッチング及び広報活動を実施

メデックのIM室は、入居者及び地域企業に対し個別マッチング、展示会出展などを通じ大手メーカーや商社などへの個別販路開拓や事業化、出口戦略の構築、また補助金を含む資金調達等、様々な支援を数多く行っている。以下の支援事例を紹介する。

  • 新規事業への参入支援
    メデック・ハイデック(神戸健康産業開発センター)交流会に参加したJFEテクノリサーチから金属分析の実績を踏まえ、新規事業として医薬品解析業務に参入したいとの相談があった。 事前に市場調査を行なう必要があると判断し、当時入居者であった大阪合成有機化学研究所との面談等を手配した。 その後、度重なる協議の上、メデックに先端医薬分析・解析センターを立上げるとともに、大手ジェネリック/新薬メーカーなど10数社をメデックにて紹介し、売上高を伸ばしている。
  • 広報活動の支援
    化学工業日報、神戸新聞他と連携し、入居者及び地域支援企業の事業内容・出口戦略などを紹介頂いている。

これからのインキュベータ

支援スタッフ一同
支援スタッフ一同

オペ室を使った医療機器の研究開発・評価、手術手技トレーニングに関しては、引き続き医療学会他を通じ啓蒙活動を行い、多くの企業、大学、研究室に利活用を呼びかけたい。

また、医療だけでなく IIoT(インダストリアルIoT)、 AI(人工知能)など、先端ものづくり技術を取り込んだデジタルヘルスケア分野での新規技術及び商材の開発支援、更にかかる技術/製品とAIを搭載したネットワークシステムを利活用し、地域の社会的課題解決に貢献する事業、プロジェクトの構築も支援していきたい。 人、もの、通信の融合が今後の医療にも不可欠となる中、かかる事業者との連携を加速させていく。

そのために、業界動向、市場動向情報を素早くキャッチし、医療分野に係るM&Aや、中小・ベンチャー企業と大手企業との戦略連携の橋渡しを行い、入居者及び地域支援企業のスピーデイーな成長、事業化に注力する。 かかる活動を通じ、医療分野における新たな産業育成を担うイノベーションハブとして機能することで、地域経済への貢献と発展に寄与してゆく。

インキュベーション施設

神戸医療機器開発センター