MPCポリマーの低コスト塗布技術を活用し、医療機器製品、工業製品に革命を起こす東大発ベンチャー企業

2017年 10月 1日

インテリジェント・サーフェス ロゴ

生体親和性に優れたMPCポリマーのコーティング素材、技術を提供する東大発ベンチャーのインテリジェント・サーフェス株式会社。今般、切通義弘社長に、起業の経緯、事業内容、今後の展望についてお話をお伺いしました。(2017年10月取材)

インタビュー

お話:代表取締役 博士(工学)切通 義弘 氏

起業、会社のおいたち

起業前の研究者としての期間が長いそうですね。

切通義弘氏

現在、我々は生体親和性の高いMPCポリマー材料の開発、およびコーティング技術の開発を行っています。MPCポリマー開発の発端は、およそ40年前にさかのぼりますが、現東京医科歯科大学名誉教授の中林先生の研究でした。本研究の背景には、当時課題の多かった実用可能な人口心臓の実現がありました。当時の人口心臓が上手く機能しないのはポンプの性能ではなく、構成部品の素材の影響で発生する血栓が原因であることはわかっており、これを解決するために血管の構造を分析し、生体膜に近い構造のコーティング材料の開発としてMPCポリマーが誕生しました。

私は医療系の材料開発がしたいと考え、東京工業大学で材料開発系の学科を専攻しました。その後、大学院修士課程では東京大学の化学生命工学を専攻し、有機合成の研究室に進みました。また、この頃東京医科歯科大学の中林先生の研究室をアポイントなしで訪問し、研究室の扉をノックしたところ、たまたま先生がいらっしゃって、私の思いを聞いて下さりいろいろなアドバイスをいただけました。その時に中林先生の門下生で東京大学教授であるマテリアル工学専攻の石原先生をご紹介いただき、化学生命工学専攻に在籍のまま石原研究室で共同研究するという名目で、主にMPCポリマーを使ったコンタクトレンズの研究に携わることができました。大学院博士課程は、改めて石原研究室に志願、合格したことで、さらにMPCポリマーを深く究める機会を得ました。

大学院終了後は国立研究開発法人産業技術研究所(産総研)の関西センターで、ポスドクとして生体膜に関する研究に従事し、それまでの人工的な視点とは異なり、生物学的視点で材料開発に取り組むことが出来ました。

起業のきっかけを聞かせて下さい。

産総研での研究のあと、革新的な材料を開発するベンチャー企業での開発経験を経て、恩師である石原先生の研究室でコンタクトレンズに関する研究者を探していたため、私が適任者ということで、再度石原研究室で研究する機会を得ました。その時に、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業・大学発新産業創出プログラム(START)に応募して採択されました。この事業は、事業プロモーターと研究者の連携・協力により新たな事業を興すということが目的です。我々のプロジェクトのプロモーターには大手証券会社が就いてくれました。2016年3月にJSTの研究期間が終了し、会社を設立する運びとなりました。

事業の展開と現在

起業してみてどのようなご苦労がありましたか。

社員

2016年5月に研究者・研究スタッフとともに会社を設立しましたが、研究者とは違って経営者はやることが多くて苦労する毎日です。特に資金面で苦労しました。日本政策金融公庫の資本性ローンや銀行からのベンチャー企業向け融資により資金調達ができ、東大柏ベンチャープラザに研究拠点を構えることができました。研究設備は当社の研究員が自作したり、石原研究室や古巣の企業から中古の設備を譲り受けたりして賄っています。

医療関係の材料開発には時間がかかると考え、防汚性や潤滑性が高いという特性を生かし工業分野での応用も狙い、いくつかの共同研究がスタートしています。これまで大変苦しい時もありましたが、様々な方のサポートを受けて軌道に乗りつつあります。

そして、これから

今後の展開をお聞かせください。

2017年8月に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の研究開発型ベンチャー支援事業に採択されました。この制度はベンチャーキャピタルからの出資が前提で、今は出資を受けて社外取締役として1名が当社の経営に携わることになりました。ベンチャーキャピタルからの出資を受けたことで、医療関連の分野での事業化に向けて加速することが可能になりました。

私はMPCポリマーを論文の材料にするだけで終わりたくありません。早く、医療機器分野で製品を開発し事業化に結び付けたいと考えています。いくつかの医療機器メーカーから接触があり、これからが楽しみです。

インキュベーションの利用

入居のきっかけ

JSTのSTARTにおける研究が終了すると同時に起業を決意。関東圏内にウェットラボを有し、振動に強い施設ということで候補先を考え、前職のベンチャー企業時代の数年間を東大柏ベンチャープラザで過ごした経験から、この施設に入居した。

入居しての変化

先ずは、研究者ではなく経営者になったのだという意識面の変化が一番である。起業したことで、製品を世に出そうという意欲はより強くなった。これまでは大学の研究室の設備を利用するという立場であり制約もあったが、自社の研究設備を所有し自由に使えるという点は良かった。常勤のインキュベーションマネージャーが販路開拓等のサポートをしてくれるので非常に助かっている。

入居してよかったこと、将来の入居者へのメッセージ

ここにはライフサイエンス系企業、ものづくり企業が入居している。入居企業同士の連携や情報交換も盛んであり、お互いに切磋琢磨する環境がある。起業したての時には自前ですべてを整えることは大変である。会議室の利用や宅急便の受け取りなどもサポートしてもらえる。様々な情報提供もあり、非常にありがたい。世の中では投資環境が整いつつあるので、是非東大柏(ベンチャープラザ)で起業してもらいたい。

会社情報

会社名
インテリジェント・サーフェス株式会社 
代表取締役
切通 義弘
所在地
千葉県柏市柏の葉5-4-19 東大柏ベンチャープラザ305
事業概要
素材表面改良材料及び技術の提供

会社略歴

2013年12月 大学発新産業創出プログラム(START)((独)科学技術振興機構)に採択され、プレベンチャーとして活動開始
2015年8月 イノベーション・ジャパン2015 出展
2016年4月 東大柏ベンチャープラザ入居
2016年5月 インテリジェント・サーフェス株式会社創業
2016年9月 日本政策金融公庫 挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)による資金調達を実施
2016年10月 BioJapan2016、新価値創造展2016出展
2017年8月 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の研究開発型ベンチャー支援事業に採択

製品紹介

MPCポリマーの低コスト塗布技術

MPCポリマー

生体親和性と親水性に優れたMPCポリマーコーティング素材等、様々な素材表面の改質技術・素材を提供。MPCポリマーは元々のタンパク質非吸着性、超親水性、潤滑性以外にも、曇り防止やセルフクリーニング機能を示すことから、汎用製品へも応用の場を広げている。生体に優しい材料を、生活に優しい材料や、環境に優しい材料へと展開している。

担当マネージャーからのコメント

原田チーフIM

当社保有技術であるMPCポリマーは、その優れた生体適合性から医療分野での利用拡大が見込まれる他、親水性・防汚性・防曇性等の特性を活かしてメガネ・コンタクトレンズや住宅設備(水回り)など汎用工業製品への応用も見込めるきわめて将来性豊かな技術です。

IM室では、この技術の応用分野の開拓や事業化に向けて、最大限のサポートをしてまいります。

東大柏ベンチャープラザ
チーフIM(インキュベーションマネージャー)原田 博文

インキュベーション施設

東大柏ベンチャープラザ