株式会社分光応用技術研究所

浜松の地で光産業の創成に貢献する、
光産業創成大学院大学発ベンチャー企業

浜松ホトニクス出身で、光産業創成大学院大学に入学して「株式会社分光応用技術研究所」を設立した松本社長に、起業の経緯、会社の特徴、今後の展望についてお話を伺いました。

波長微分値カラー化手法によるデータの可視化

インタビュー

代表取締役・博士(光産業創成)
松本 和二 氏

松本社長

起業、会社のおいたち

─起業の経緯についてお聞かせください。

 大学を卒業して最初に勤めた企業は色彩情報の測定に強みをもつ測色用装置の専門メーカーでした。測定器の原理は測定したい対象物に光を当て、その反射光を分光器で捉え、色彩規格の関数を当てはめ色彩値を算出表示するものですが、そのような装置開発を担当させて頂きました。それ以外に分光反射率から、試料内に含まれる色材の定量計算ソフト(Computer Color Matching(CCM))の開発等も担当させて頂きました。

 その次に浜松ホトニクスに勤めました。ここでは最初、果実の甘味や酸味を光による非破壊で測定する技術・装置を開発しました。その後さらに画像処理技術を加えて、医療機器関連の基礎・応用研究を行わせて頂きました。私はここに籍をおきながら光産業創成大学院大学に留学する機会を与えて頂き、今まで携わってきた分光と画像技術を中心とする、分光イメージング技術を活用した事業の確立をめざし、2009年2月に起業しました。

 

事業の展開と現在

─御苦労も多かったですか。

 浜松イノベーションキューブ(HI-Cube)に入居した当初に助成金を活用して分光イメージングユニットを開発しましたが、リーマンショックの影響もあり、起業して数年は思ったように事業が展開できずに非常に厳しい時期を過ごしました。これまでのお客様は大学の研究者が中心でしたが、展示会等に積極的に出展し情報発信してきた結果、起業から7年目に大手企業のシステム製品に弊社製の近赤外分光イメージングユニットの採用が決まり、ようやく事業が波に乗ってきたと感じています。

 

─御社の強みは何ですか。

 当社の強みは紫外領域から近赤外領域で分光イメージング技術を駆使し、オーダーメイドで『人間の目では見えないものを見えるようにする』という点です。中でも光学設計、機械設計、回路設計、ソフト開発と、ハードからソフトまで一気通貫で設計可能という点が他社にはない特徴です。最近では分光精度では劣るものの、バンド数を減らし高速で多くの対象物を測定する分野の競合品も出てきましたので、同様の技術でより安く、かつ高性能な製品の開発も研究しています。
 

当社製品群の一例

当社製品群の一例

そして、これから

─今後の展望についてお聞かせください。

 最近では「自然対象物(鳥や昆虫)をいろいろな波長で見てみたい」、「絵画の真贋判定に使用できないか」といったニーズを頂き、様々な試作品を提供しています。また「上空の気体内の特異物質を見ることができないか」といったご要望も頂いており、私自身も興味関心は尽きません。さらにいま流行の「ドローンに載せて、地上の植生状況を見てみたい」、あるいは「皮膚内部の情報を詳細に調べたい」など、様々な要望が大学の研究者や企業等から寄せられており、まだまだ未開拓な有望分野があると感じています。

 ただ、事業を安定化させるという側面でみると生産ラインに組み込まれる装置(例えば品質管理用)の開発が中心になっていくものと考えています。まずは、小ロットの生産から進めて、ステップを踏み生産量を増やしていきますが、大量生産ではなく、ノウハウを提供して外部に製品を生産していただくようなことも考えています。常に開発に主力を注ぎ、先端分野でわくわくするような製品を作り続けられる企業、研究開発力で突出した企業でありたいと考えています。特許・論文を出し研究成果をPRできる、そういう企業でありたいと思います。

 今後は応用分野に応じて研究開発力を持った人を採用し、プロジェクト方式で製品化を行うといったことも実施していきたいです。
 

 

会社概要

 

入居BI 浜松イノベーションキューブ(HI-Cube)
代表取締役社長 松本 和二
所在地 静岡県浜松市中区和地山3-1-7 浜松イノベーションキューブ211
事業概要

・分光応用機器の研究開発、製造及び販売
・光学設計、薄膜設計、回路設計、数値解析、ソフト開発及び分光研究の受託業務

URL http://www.sarli.jp/(新規ウィンドウ表示)

 

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製品紹介

分光イメージングユニット(SPECT-100vis、SPECT-100nir1)

分光イメージング(Hyper Spectral Imaging)は2次元的に測定対象物を捉え部位ごとの分光情報を取得・解析・表示する技術。部位ごとにデータを分光分析することによって、素材の物理的・化学的情報が得られ、その特徴を画像として表示することが可能になる。可視域タイプ(vis)は380から780ナノメートル、近赤外タイプ(nir1)は600から1100ナノメートルの感度を持つ。
写真は、分光イメージング用に開発した光学ユニット。小型・軽量(112×40×40ミリ、230グラム)といった特徴を持つ。

分光イメージングユニット

分光イメージングユニット

会社略歴

2008年4月
光産業創成大学院大学入学
2009年2月
株式会社分光応用技術研究所設立
2009年3月
初期の分光イメージングユニットを開発・販売、
マクロ観察用分光イメージングシステム開発・販売
2011年9月
光産業創成大学院大学卒業、博士号取得
2011年10月
浜松イノベーションキューブ(HI-Cube)入居
2013年4月
静岡県産業振興財団 創業者研究開発助成金採択
2014年6月
色彩学会静岡大学にて発表及び併設展示出展
2014年10月
おおた研究・開発フェア 出展
2015年10月
浜松地域イノベーション推進機構 事業可能性調査費補助金採択
2016年6月
浜松ホトニクスより独立
2017年3月
新しい近赤外分光イメージングユニット(1300から2150ナノメートル)開発

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インキュベーションの利用

入居のきっかけ

会社の入居先を探していたところ、光産業創成大学院大学2期生でHI-Cube卒業企業でもあるパイフォトニクス株式会社の池田社長から紹介された。「清潔感があり、特にトイレが非常に綺麗」、「セキュリティがしっかりしている」、「会議室、面談室、シャワー室等の設備が整っている」ところが非常に気に入っている。

 

入居しての変化

IMのサポートを受けつつ展示会や学会へ積極的に出展・参加することで、少しずつ顧客が増えてきた。施設内で異業種交流ができ、具体的には入居企業の株式会社希望光学システムとの連携などにもつながった。またHI-Cubeに入居することで自社の信用力向上にもつながったと思う。

 

入居してよかったこと、将来の入居者へのメッセージ

HI-Cubeには同じように起業したばかりの人がいて、仲間意識が芽生える。例えば株式会社SPLYZAの土井社長とはいろいろな話をしており、常に刺激を受けている。この施設が「ときわ荘」のようになれば面白いと思う。大手独立後は最先端の情報収集にやや不安があるので、例えば施設内で雑誌『サイエンス』の勉強会などがあれば面白いと思う。


 

今野インキュベーションマネージャー

浜松イノベーションキューブ(HI-Cube)
チーフIM(インキュベーションマネージャー) 今野 瑞嘉

松本社長から分光技術の話をお聞きすると、話は尽きることがない。技術の探求と、その応用製品開発に真摯に取り組み、妥協を許さない開発姿勢が伺われ、敬愛の念を抱かずにはいられない。最近は超が付くぐらい多忙の様子であるが、HI-Cube内の催事にも積極的に参加して頂いている。その一つに、入居者間の情報交換やコミュニケーション創出の機会として「懇話会」を開催しているが、これは松本社長の発案によるものである。回を重ねるにつれて入居者間の風通しが良くなり、良い雰囲気を醸し出している。

分光応用技術製品はIoTの進展とともに市場拡大が見込まれ、当社も更なる成長が期待される今、これに資するサポートを行って参りたい。

 

(2017年7月取材)

入居施設データ
浜松イノベーションキューブ(HI-Cube)
〒432−8003 静岡県浜松市中区和地山3-1-7

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