株式会社TBA(2016年7月取材)

DNAプリント技術と感染症関連試薬開発で
新しい遺伝子検査ツールを提供する東北大学発ベンチャー

“誰でもどこでも簡単に”というコンセプトで新しい遺伝子検査ツールを提供する、株式会社TBAの取締役 兼 東北大学大学院 医工学研究科教授の川瀬氏に、会社の設立から現状ならびに今後の展望についてお話を伺いました。

製造ライン

インタビュー

取締役

川瀬 三雄 氏

取締役 川瀬 三雄氏

起業、会社のおいたち

─起業の経緯についてお聞かせください

株式会社TBAは大手セラミックメーカーのDNAプリント技術と遺伝子検査関連特許をベースに遺伝子検査ツール「STH−PAS」を製造販売しています。私は大手セラミックメーカーでバイオテクノロジーの研究を30年間して参りました。入社3年目の時に到来した第一次バイオブームがバイオの研究開発を始める契機になりました。2001年には、DNAをインクジェットで吐出プリントすることで精度の良いDNAチップを製作できると考え、DNAチップを受託製造する社内ベンチャー的なプロジェクトを提案し立ち上げました。プロジェクト立上げ後数年は順調に売り上げが伸びたのですが、その後DNAチップ自身の需要が思ったように伸びず、プロジェクトはなかなか離陸できませんでした。

そんな中、岐阜大学の江崎教授から感染症を検査するためのメンブレンストリップの製造依頼が舞い込んできました。しばらく、社内で事業を継続していましたが、2012年4月に東北大学が採択された震災復興プロジェクトの研究員に招聘されましたので、当時の社長に申し出たところ事業を持って震災復興のために頑張るようにと送り出していただきました。こうして、2013年7月に大手セラミックメーカーの技術を基盤とした東北大学発ベンチャーが生まれました。

 

─STH‐PASについてわかり易く教えてください

簡単に言えば、特定の感染症に罹患しているかどうかを医療現場で手軽に判定するためのツールです。世の中には結核、HIV、マラリア、デング熱、ジカ熱など様々な感染症があります。これらの感染症の原因菌はそれぞれ特異な遺伝子構造部分があり、その遺伝子構造部分と結合するタグ付きプライマ−[遺伝子と特異的に結合するプライマ−と目印となるタグDNA]を反応させることで何に感染しているのかを判定することが可能になります。ストリップにはタグDNAをトラップするDNAが印刷してあり、ストリップの下部を試薬に浸すと毛細管現象で試薬を引き上げて、反応があれば青色に着色し目で判定が出来る工夫がされております。

この方法を使うと、1.安価で、2.検査機関ではなく現地で、3.誰でも簡単に単時間に、感染菌を判定することができます。 また、このツールを活用すると細食中毒菌の有無の判定ができますので、高精度で安価な食品衛生検査も可能になります。その他、肉種(ex.豚)の検査も可能なのでハラル食品分野等への普及が期待されるツールです。

 

事業の展開と現在

─事業は順調に進んでいますか

前職の時にお取引関係があった大学教授や医療機器メーカーが独立後も継続してお取引きしていただけたこと、前職の企業が特許や設備など全面的にサポートしてくれたこともあり初年度から黒字化することができました。そして、2期には増資による資金調達を実施し、現在、事業拡大を目指して各種感染症検査へ適用すべく用途開発を進めております。現在までに、約10種類ほどの検査が可能になりましたが、まだまだニーズの広がりは大きく、当面開発投資は必要であると考えております。生産面では助成金等を活用として2号機を開発しました。
 

 

─現在はどのような体制で事業を推進していますか

2016年6月末(第三期)時点で従業員は8名。株式会社TBAの社長は、大手セラミックメーカー時代に取引関係があった酵素メーカー出身のバイオ系コンサルタントです。用途開発担当は、検査キットメーカーのマネジャー経験者です。工場長は、前職時代に受託プリンティング事業の製造責任者で、独立する際に一緒に参加してくれました。

 

社内での連絡会の様子

社内での連絡会の様子

そして、これから

─今後の展望についてお聞かせください

3つの企業理念を実現するために邁進します。一つ目は「日本、そして世界の安全安心社会の構築に貢献する」ことです。具体的には感染症で苦しむ子供を救いたい。感染症検査キットのニーズは圧倒的に海外です。特に熱帯地域になります。感染症にかかった子供の三分の一は死亡します。早期発見が鍵になります。第四期となる今年の7月1日から海外営業担当を採用しました。海外の検査キットメーカーの開拓がミッションです。

二つ目は「顧客の満足と従業員の幸福を実現する」、三つ目は「東北地方の震災復興に貢献する」です。お客様の満足が前提ですが、従業員のための企業でありたいと考えています。そのためには事業成長が必要になります。雇用を創出することで震災復興に貢献したいと考えております。また、将来的にはIPOも視野に入れて活動しています。
 

会社概要

 

入居BI T-Biz(東北大学連携ビジネスインキュベータ)
代表取締役 犬飼 忠彦
所在地 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-40
 T-Biz
事業概要 遺伝子検査用のDNAストリップ(STH−PAS)の開発・製造・販売
URL http://www.t-bioarray.com/(新規ウィンドウ表示)

 

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製品紹介

STH-PAS(遺伝子検査用のDNAストリップ)

特殊なDNAがプリントされた長さ5cm程度のスティックであり、簡単・簡便・安価に、しかも同時多項目の遺伝子検査が可能。感染症の検査や食品検査等での活用が見込まれている。結核、マラリア、マイコプラズマ、エイズといった感染症の診断を、短時間(30分程度)に、安価(1キット500円)に実施できる。特に感染症の患者数に対して医師及び医療設備が不足しているインド、中国、東南アジアにおいて高いニーズが見込まれる。

TBA製 遺伝子検査用ストリップ:C-PAS(F12)

TBA製 遺伝子検査用ストリップ:C-PAS(F12)

会社略歴

2013年7月
東北大学発のバイオベンチャーとして仙台に設立
8月
T-Bizに入居・DNAプリンティング製造ラインを設置
8月
創業補助金(海外展開枠)を獲得
10月
簡便な遺伝子検査用ストリップの製造・販売の開始
2014年
増資(ふくしま成長産業育成ファンド)
2015年
「中小企業優秀新技術・新製品賞」優秀賞受賞
2015年11月
「新価値創造展2015」インキュベーションブースに出展
2016年10月
「BioJapan2016」中小機構ブースに出展(予定)

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インキュベーションの利用

入居のきっかけ

起業する際に、インキュベーション施設を探していました。二つの候補がありましたが、東北大学青葉山キャンパス内に立地しており、利便性を考えてT−Bizに入居することにしました。

 

入居しての変化

常駐のインキュベーションマネジャーには、投資会社の紹介、バイオジャパンへの出展、J−GOODTECHへの登録など、様々な面で支援していただいております。

 

入居してよかったこと、将来の入居者へのメッセージ

こんな良いところはないです。様々なサポートが受けられることが最もよかったことです。とても安いというわけではありませんが、ユーティリティーが整っている。大学に籍を置く大学教授にとっては最適の起業施設ではないでしょうか。仙台駅から地下鉄が開通しアクセスしやすくなりました。

 

 

工藤IM

T-Biz(東北大学連携ビジネスインキュベータ 
チーフIM(インキュベーションマネージャー) 工藤 裕之

グローバル化が急速に進む世界において、拡散する感染症を防ぐ事は人類社会の大 きな課題であり重要な挑戦になっています。 同社は、感染有無を早期発見する事が必要で有り、ひいては拡散を防止する為の有 効な手段になるとの強い想いから、事業化に向けた努力を継続しています。 強い思いが社会貢献を果たし社会が抱えている課題を解決するとする同社の姿勢に 対して、T-Bizは、同社が目指す方向性を最大限尊重し事業の成功に向けて支援を 行ってゆきます。

 

入居施設データ
T-Biz(東北大学連携ビジネスインキュベータ) 
〒980-8579仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-40

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