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東北マイクロテック株式会社 (2016年1月取材)

高付加価値三次元LSIで世界を制する
東北大学発ベンチャー

最先端の三次元積層型LSIの研究・開発・製造・販売によって、宮城県からグローバル市場に挑戦する東北大学発ベンチャー企業の「東北マイクロテック株式会社」代表取締役の元吉社長に、会社のおいたちや技術概要、今後の展望についてお話を伺いました。

3次元スーパーLSI

インタビュー

代表取締役
元吉 真 氏

元吉社長

起業、会社のおいたち

─起業の経緯について教えてください

 私は東北大学大学院工学研究科で修士課程を修了後、大手電気メーカーの半導体事業部門でロジック、メモリー、センサーの開発に携わってきました。
 日本の半導体は世界でトップクラスでしたが、近年では欧米や韓国、台湾、中国に圧倒されて苦戦を強いられています。私は新しい半導体技術で日本の半導体を復活させたい、宮城県内に工場を建設して雇用を創出したいと考え、2010年4月に東北マイクロテック(株)を設立いたしました。
 われわれが開発している三次元LSIというのは、単なる二次元LSIの代替品・性能向上という位置付けではありません。現在開発しているセンサーは、解像度が二次元LSIを使用したセンサーに比べて約100倍上がるというものです。この技術は弊社最高技術顧問であり、三次元LSIの世界的権威、東北大学未来科学技術共同研究センターの小柳教授の研究した基礎技術をもとに、2年半に及ぶ実証実験を通じて確立しました。

 

─三次元LSIは何がすごいのですか

 少し専門的な話になりますが、最初は大手電機メーカーでSRAM(Static Random Access Memory)という、通電中はデータが消えず随時読出し・書込みできるメモリーを開発していました。非常に高速で動作し、スーパーコンピュータ、ワークステーション、サーバーに使われましたが、消費電力が大きく集積度を上げることが難しいという課題がありました。
 このため、電源を切ってもデータが保持でき、高速でしかもSRAMより集積度があげられる可能性のあるMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)という磁気メモリーの実用化研究を始めました。メモリー素子は金属薄膜を20層ほど重ねる構造ですが、従来のLSIに混載することが困難でした。理由はLSI製造プロセスでは300度という高温を必要とするのですが、積層した磁性体層は高温に耐えられず劣化してしまうためです。 
 そこで、三次元LSIを構想するに至りました。シリコン基板(CPU)にメモリー(MRAM)を積層させることで、低消費電力で大容量メモリーを搭載した高速演算処理システムになると考えたのです。電源をオフにすると直前のシステムの状態が記憶され、オンにすると瞬時にシステムが復帰する、というものです。しかし、新しいアーキテクチャーが必要で、システムから作り直さなければならず、大手電機メーカーが三次元LSIを手掛けることはありませんでした。

 

事業の展開と現在

─非常に新しい技術のようですが、具体的には何に活用できるのですか

 今、最も注目しているのは素粒子の検出器に使用する超高性能イメージングセンサーです。素粒子検出器は電荷を帯びた粒子が物質を通過する際に起こす反応を用いて、粒子の通過時間や粒子が損失した位置、エネルギーを測定する機器なのですが、これらは10の−9乗秒という非常に短い時間で起こります。これらの高速で変化する事象を検出器から長い配線で直接取り出すことができないため、一時的に検出器の中で情報を保持し後で読みだすことが必要です。この動作を行うためには、1つのピクセルの中に、カウンターとメモリーが必要になります。われわれの三次元LSIは、これを実現することが可能です。

 

─現在までに御苦労されたことは何ですか

 一番苦労したことは資金調達です。基本的に競争的研究資金の獲得によって、実用化研究を続けてきました。中でも東北経済産業局・戦略的基盤技術高度化支援事業(平成22年度、平成23年度、平成27年度)、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)・イノベーション実用化ベンチャー支援事業(平成25年度)を活用することができて非常に助かりました。現在では、お陰様で様々な業界の大手企業からの受託開発も増え、自立的経営が出来る水準まできました。

稼働中の試作ライン

そして、これから

─今後の展望、ビジョンをお聞かせください

 われわれは受託開発が最終ゴールではありません。三次元LSIを量産化して販売するところまで目指したいと考えています。三次元LSIの市場はまだ形成されていません。二次元のLSIは技術の進歩も読めるし、業界共通のロードマップが存在します。一方、三次元LSIは性能が飛躍的に向上するので、ユーザーがアプリケーションをイメージできない状況にあるのだと思います。ユーザーがまだ気づいていない価値を如何に認知していただくか、マーケティング活動が重要になります。
 その第一弾が、先ほどお話しした素粒子の検出器に使用する超高性能イメージングセンサーです。今年の8月にシカゴで展示会と併設の学会(International Conference on High Energy Physics in CHICAGO)が開かれます。そこでわれわれの成果を発信する予定です。ここで認知度が向上して問い合わせや引き合いが増えると期待しています。その先はデザインインで企画段階から一緒に進めていくことになります。サンプル出荷後の評価には通常2年から3年かかりますので、成長期も2、3年後から始まるのではないでしょうか。水が上から下に流れるように三次元LSIは確実に進みつつあるし、そのトレンドを創りつつ先頭を走っていきたいと思います。
 われわれの三次元LSIは、世界最小ピッチのマイクロバンプで、さらに小さくすることが可能です。しかし、一度発表したら模倣が出てくることは避けられません。新技術に関する特許戦略も重要になりますし、そのための資金も必要になります。この三次元LSIの市場は約300億円程度で大企業の参入は難しいでしょう。われわれはこの市場で中心プレイヤーになり、さらにより大きな市場に挑戦していきたいと思っています。

 

会社概要

 

入居BI T-Biz(東北大学連携ビジネスインキュベータ)
代表取締役 元吉 真
所在地 本社:宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-40
     T-Biz 203号室
事業概要 三次元積層型LSIデバイスの研究・開発・製造・販売
URL http://www.t-microtec.com/(新規ウィンドウ表示)

 

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製品紹介

三次元積層型LSI

 半導体基板上に回路を形成する集積回路(IC)は、この30年間ムーアの法則に従い微細化が進められてきました。 しかし、近年微細か進むにつれて電気的な絶縁性能低下(リーク電流)など様々な技術的問題や巨額な 設備投資といった経済的な問題が生じてきました。そこで、微細化に頼らずにICを進化させる技術として期待されているのが、複数のICチップを積層して接続する三次元積層型LSI(IC)です。従来のLSIより対性能消費電力が抑えられ、チップサイズを小さくすることができます。また、集積回路内の個々の回路ブロック(たとえば、記憶部、センサー部、制御部、信号処理部等)間を多数の配線で結ぶことができるので、データを同時に多数送ることができます。さらに、MEMSも化合物半導体も積層できるため、今までにない高機能の集積回路が1チップで実現できます。 既にいくつかのアプリケーションでは三次元LSI技術を使った量産チップの生産も始まっています。

2次元と3次元の違い

会社略歴

2010年4月
東北マイクロテック株式会社設立
6月
T-Bizに入居
8月
戦略的基盤技術高度化支援事業採択(脳プローブ)
2011年12月
戦略的基盤技術高度化支援事業採択(三次元LSI)
2013年10月
多賀城市に三次元スーパーチップLSI試作製造拠点設置
2014年6月
NEDOイノベーション実用化ベンチャー支援事業採択
2015年7月
戦略的基盤技術高度化支援事業採択(三次元LSI)
10月
第3回TOKYOイノベーションリーダーズサミット出展
12月
SEMICON JAPAN 2015出展

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インキュベーションの利用

入居のきっかけ

 東北大学未来科学技術共同研究センター(NICHe)で小柳教授と研究を続けてきましたが、実用化の段階で拠点が必要になり、隣にT-Biz(東北大学連携ビジネスインキュベータ)があるということを知りました。やはり拠点が近いということが決め手でした。

 

入居しての変化

 会社を創ろうと決意して入居したので、意識の変化が大きかったです。また様々な情報が得られるようになり、非常に助かっています。
 現在は多賀城市にある東北大学の設備で試作開発を行っておりますが、今後の量産化には宮城県内に工場を建設し、東北の優秀な人材が集まってこられるような会社を作りたいと考えています。

 

入居してよかったこと、将来の入居者へのメッセージ

 一番助かったことは常駐IMからの助成金情報、展示会情報の提供と出展に向けた支援、資金獲得のアドバイスなど一緒に汗をかいてくれることです。展示会に出展して、直接顧客の声を聴く機会も増え、事業戦略立案に非常に役立っています。中小機構の専門家による出張相談では、IPOに向けた相談をしました。売上高や原価の積み上げを具体的に実施していくことで、しっかりとした利益計画を立案することができました。戦略上実施すべきこと、実施すべきでないことも明確になり、総合的な支援のありがたさを実感しております。

T-Biz(東北大学連携ビジネスインキュベータ) 
チーフIM(インキュベーションマネージャー) 大原 隆義

 会社設立後は売上が伸びずに苦労した時期もあった同社ですが、元吉社長が国内・海外を飛び回り、資金調達に販路開拓にと努力してきた結果、受注件数は激増し、量産を視野に入れられるところまで伸びてきました。骨身を惜しまず働き続ける元吉社長からは、「再び日本の半導体を復活させたい」という技術者としての執念、熱い思いが伝わってきます。 同社は現在、量産体制を整備するための設備資金の調達が最大の課題です。T-Bizでは、資金調達や販路開拓をはじめとして、様々な課題に対して全力でご支援をして参ります。
 

 

入居施設データ
T-Biz(東北大学連携ビジネスインキュベータ)
〒980-8579 仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-40

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