20180315
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次代担うベンチャーインキュベーション施設から飛躍◆◆見えないものを見える化映像化技術に注力 安全・安心に寄与オペ室備えた公的インキュ施設MEDDECチーフインキュベーションマネージャー 片山 健氏アトラス(神戸医療機器開発センター)管理会計の重要性伝えるハンズオン支援事業大会開催中小機構中国生産革新 現場で学ぶ日暮里経営セミナー 工場見学会開催中小機構関東など連携金融機関と連絡会議新たに第一勧業信組とも覚書中小機構関東谷田部氏㊨、画像処理の前㊤と後㊦ 神戸市が主体となり日本最大の医療クラスターである「神戸医療産業都市」を形成しておりますが、当施設はその中核施設のひとつです。1階に様々な医療機器を完備したオペ室が3室。生体ブタを使った医療機器の研究・開発・評価や、あらゆる診療科の手術・手技トレーニングができる日本で最初の公的インキュベーション施設です。入居企業は現在社。医療関係は研究開発に時間がかかるため、入居期間は長い企業で年くらいになりますが、入居後5年から7年くらいで安定的な収益を上げられるよう販路開拓、資金調達、出口戦略などの面で日々支援を行っています。アトラスさんはこの施設を4年で「卒業」されました。引き続き、大手メーカーや専門商社などとのマッチングを行っています。 また外部の企業さんが多数当施設を見学に来てくださいますが、オペ室などをご覧になるとみなさん「中小機構ってこんなことをやっているんだ、見聞が広がった」と驚かれます。こちらもうれしいですね。 入居企業の家賃は1平方㍍あたり月額4400円ですが、中小企業さんの場合、入居から3年間は兵庫県と神戸市から同1500円の賃料補助が出るので、実質は同2900円です。神戸新交通・ポートライナーの京コンピューター前駅から徒歩7分。隣の駅は神戸空港です。アクセスは抜群ですよ。もっとたくさんの方に見にきてほしいですね。 (談) アトラスの谷田部弘代表取締役社長は神戸市生まれの歳。1970年に大手重工メーカーの関連会社に入社後、同重工メーカーに移籍し工業用内視鏡の開発を担うなか、意思決定の迅速化や全体の目配りを自分でやりたいと歳でスピンアウト。それまで積み立てた財形貯蓄のうち500万円を資本金にアトラスを創業した。 2013年の会社設立と同時に「取引先を見学していいねと思った」神戸医療機器開発センター(MEDDEC)に入居し、年月までオフィスを構えた。当初は医療機器の内視鏡カメラの開発を中心に考えていたが「医療機器は関連機関の認証を受ける必要があるなど世の中に出るまで時間がかかる。うちのような小さな会社は医療用だけではもたない」と工業用をやりながら医療用も展開していく方針に転換した。 この作戦が奏功した。設立初年度こそ赤字だったが、翌年から黒字化して業績は順調に拡大。年3月期の売上高は6950万円を計上した。売上高の6割を占める工業用内視鏡は昨年度から2倍の伸びで、来年から量産体制に入る。 これから力を入れるのは映像化技術だ。「工業用・医療用を問わず、見えないものを見えるようにする技術は重要だ。私の得意分野は映像の画像処理。映像をできるだけ見やすくする技術を展開したい」と話す。柱は画像を①鮮明化②復元化③フラット化する技術だ。 画像の鮮明化技術は、普通のカメラで撮影した映像に手を加えて画面をより明るくくっきりさせるソフトの一種。夜間に車を運転中にハンディカムで撮影した映像にこのソフトのフィルターをかけると、オリジナルの映像では見えなかった横断歩道の白線や前方に停車している車、自転車で走る人などが鮮明に見えてくる。 昼間の逆光の映像も同じで、処理済み画像では黒く映っている木陰の部分に人が佇んでいるのが分かる。台風など暴風雨の中の撮影でも、鮮明化処理をすれば道路を流れる濁流が確認できる。次世代自動車の開発や監視カメラなどに応用すれば、安心・安全の確保や防犯・防災に役立つ。 復元化技術も注目だ。画像が劣化してぼやけてしまった画像を元に戻す技術で「水桶の中に墨汁を1滴垂らす。落ちた瞬間は点だけど時間とともに墨汁が拡がっていく。これを逆に辿り、元の画像に復元していくんです。時間軸を無視して墨汁の点の拡がりを戻してやる」と説明する。 この「逆墨汁の原理」は腹腔鏡手術に応用できる。この手術は腹部に㍉程度の穴を開け、患部を映すレンズを何枚もかみ合わせて撮影しセンサーで複合した画像を医師に送っているが、穴が小さすぎて光が入ってこないうえ、レンズを何枚も使うので鉗子縫合の細い糸も見えづらい。「だが、この技術を投入すればレンズの質に関係なく毛細血管も縫合糸も鮮明に見える。手術中のリスクも減る」と言う。 自慢は「かげろう補正」だ。夏場の路上には、もやもやとした陽炎(かげろう)が発生することがあるが、この画像の揺らぎを止める。カメラの手ぶれ補正と似た技術だが、「撮る側ではなく撮る対象がぼけているのを止める。どこもやっていない技術」と胸を張る。 ひとつのカメラで自分の周りの360度全部が見える全球カメラもある。レンズが球形なので周辺部の映像は魚眼レンズのようにひしゃげて画像もぼやけるが、復元技術を応用してシャープで四角い平面に戻す技術だ。 谷田部氏が設計したこれらの技術は、ハードはアルス(山梨県)が、ソフト関係はロジック・アンド・システムズ(神戸市)が支える。ほとんどの技術はこのパートナー企業の名前で特許を取っているが、悩みは類似特許への転用が散見されることだ。「自分らを守るために全部特許化にしないで、コアな技術だけブラックボックス化してしまおうかと考えている」。技術戦略の構築が今後の課題だ。 アトラス▽本社=兵庫県高砂市阿弥陀町地徳124(☎079・448・7102)▽現所在地=神戸市須磨区行幸町11、オーシャンテラス須磨海浜公園1203▽代表取締役社長=谷田部弘氏▽設立=2013年4月▽事業内容=医療用・産業用の各種カメラ技術の提供、映像技術・画像処理技術を駆使した受託開発と設計▽従業員数=1人 神戸医療機器開発センター▽所在地=神戸市中央区港島南町71(☎078・306・1162)▽開設=2005年12月▽施設=鉄骨造、本棟3階建て、別棟1階建て▽居室(本棟2・3階)=延べ床面積・5平方㍍室、同平方㍍5室、同・5平方㍍室(全室ウエット仕様、P2レベル)(4)第1212号2018年(平成30年)3月15日(木曜日)中小企業経営者らで超満員の会場工程を見学する参加者ら 中小機構関東本部は2月日、東京・虎ノ門の同機構本部で「業務連携・協力金融機関の連絡会議」を開催した。中小機構と業務連携・協力に関する覚書を締結したを超える地域金融機関の担当者が参加した。事業性評価など新たな流れについての講演や各講師との質疑応答、中小機構からの連絡事項が伝えられた後、交流会が開かれた。 同連絡会議に先立ち、関東本部と第一勧業信用組合(東京都新宿区)が「業務連携・協力に関する覚書」を締結した。内容は、地域における中小企業への支援とベンチャー育成のほか、中小企業に役立つ情報交換などで相互に協力していく。覚書に基づき、相互に実施する経営支援施策や地方創生などで情報交換する。情報共有を深め地域の中小企業・小規模事業者に向け、より有効な支援を行うための連携体制も強化していく。 会議では、最初に金融庁監督局地域金融機関等モニタリング室の日下智晴室長が「地域金融機関における事業性評価について」をテーマに、中小企業憲章が定められた時の社会的状況や基本理念を説明。「中小企業は経済を牽引する力であり、社会の主役だ。金融機関は脇役であることを自覚すべき」と強調。中小企業が社会を動かしており、これを金融面で支援するのが役割だと語った。 この考え方から、金融仲介機能の十分な発揮を促すため、担保・保証に依存する融資姿勢を改め、事業に対する目利き力を高めることを目指す。具体的には事業性評価を実施し、経済の持続的成長や地方創生に貢献。金融庁も担保・保証への過度な依存につながる従来の検査マニュアルを来年度末で廃止し、新しい検査・監督のあり方に必要な組織改革などを行っていく考え方を説明した。 続いて、覚書の締結を終えた第一勧業信組の新田信行理事長が「人とコミュニティの金融について」と題し講演。「定性情報を融資判断にする金融機関は少ない。だが、われわれは企業トップのやる気と現場を見ることを重視し、決算よりも個人の資質を判断材料にしている」と、格付けと担保だけではない、世の中から求められる、必要とされる金融機関を目指していることを強調した。 中小機構関東本部、東京都荒川区、城南信用金庫の主催による「中小企業のための工場見学会」が2月日、東京都武蔵村山市のニシハラ理工で行われた。めっき加工で生産革新を果たした同社の本社工場を見学するとともに、西原敬一代表取締役社長らの講演を聞き、製造現場の改善などについて意見交換した。 中小機構関東は荒川区と連携し、2006年から中小企業向けの「日暮里経営セミナー」を年4回開催。同セミナーの特別プログラムとして工場見学会を実施しており、今回が7回目。先駆的な企業の生産現場などを視察し、経営理念や事業活動を自社の経営基盤の強化に活かすのが狙い。 ニシハラ理工は、1951年の創業以来、めっき一筋で、電子部品や半導体、自動車関連の事業を展開する。従業員約200人。特に同社のTPM(トータル・プロダクティブ・メンテナンス=全員参加の生産保全)活動は、昨年末に同活動を展開する日本プラントメンテナンス協会から優秀賞を受けている。 工場見学では、7階建てビルの2~6階を占める製造工程を巡回。参加者は前処理から後処理までの一貫めっき工程やTPM活動の成果などについて質問を交えながら見て回った。 西原社長は講演で、1998年に環境対応として業界に先駆けて鉛フリーめっきの量産に成功したことが「ターニングポイントとなった」と強調。材料特性を活かした技術を持つのが特徴で、「コイル材の電気めっきはトップ。タンタルコンデンサー向けめっきの世界シェアは3割」などと特徴を述べた。 TPM活動については、「年前にユーザーが当社の工場を監査した際、工場認定できないレベル」と評価されたことがきっかけで、ゼロから始めたという。具体的には、経営方針と目標管理に沿って設備と作業ロスを徹底的に排除する自主保全活動などを開始。管理職が率先して活動したことで、「改善が仕事の一部になってきた」。 この年間の成果として、社外からのクレームが8割減少し、経常利益は3・6倍、1人当たり加工高は1・8倍となったことなどを示した。西原社長は「TPM活動は息の長い取り組みで、まだ入り口段階。何より継続することが大事」とした。 参加者との意見交換では「全員参加を可能とした手法は」「従業員のモチベーションを維持する方法は」などの質問が相次いだ。 中小機構中国本部は2月日、広島市のANAクラウンプラザホテル広島で、専門家継続派遣事業で良好な成果を収めている事例紹介を通じて、企業間交流の場を提供する「ハンズオン支援事業大会」を開催した。中小企業経営者や支援機関の職員、アドバイザーら170人超が、管理会計の重要性を訴える支援先企業3社の事例発表を聴講した。 冒頭、松村清孝本部長が「社員が変わらなければ会社は変わらない。企業変革にぜひ挑んでほしい。特に管理会計は企業が発展するために避けて通れない」と挨拶し、同会計の重視を求めた。 フィルム素材の加工を主力事業とするオーティス(岡山県真庭市)の佐山修一代表取締役社長は「裸一貫から年商100億へ~なぜ管理会計が重要なのか?~」の演題で講演した。通信機器の主流が一家に1台の電話・ファクスから1人1台の携帯電話に変わったことを機に売り上げが伸び始めた2003年から専門家派遣の支援を受け、経営管理財務部門に加えて、当時進めていた新工場建設事業を機軸とする製造部門でも助言してもらったことを紹介した。 会社経営を船舶の就航になぞらえ、「財務数値という位置を常に確認しながら海図に描かれた航路という計画通り目的地に向かうべき」として、惰性による運営に注意を促した。管理会計の実践で学んだことは、経営計画技法の習得につながり、経営計画策定や全社利益管理体制の構築に役立ったと説明。今では自己資本率%で無借金経営を実現している。中国本部の支援で管理会計を学んだ当時の課長は、今では地元企業の発展のために地元企業に管理会計を指導して回っているという。 続いて登壇したのは、高級志向の回転寿司チェーンを展開しているアぺックスインターナショナル(広島県福山市)の大瀧一登代表取締役社長。「量から質への転換で大幅な増益~中小回転寿司業者の生きる道~」と題して講演した。 同社の回転寿司チェーンはグルメ志向であるにもかかわらず、同じ営業エリアに出店を加速していた廉価の「大手チェーンの対抗戦略ばかり考えていた」と回想。「より美味しいものをお値打ち価格で食べていただくという原点に回帰した」と地域の鮮魚訴求という高い技術による商品価値向上に努めたことを話した。 しかし、売り上げは回復したものの利益が出ない時期が続き、専門家の助言で在庫、未使用食材のロス、人事評価など経営指標を数値化する改善プロジェクトを立ち上げたことから経営管理体制の整備が進行。今では設定した予算別のネタ使用数に基づく仕込みで販売するなど、職人ら現場の管理意識が醸成されたと支援の効果を説明した。 専門家の支援開始は年。2期目の今期は「売り上げ重視から利益重視の体質に転換し、店長と職人の協力体制もできつつある」とする一方、原価の値上がりを補う付加価値が必要として、店舗オペレーション改革による生産性の向上に取り組み、さらに技術認定とインセンティブが連動する人事評価制度の構築などを課題とした。 金属加工品専門商社の板野機工(岡山市北区)からは、板野恒一代表取締役会長、板野清義取締役副社長、楢村敬洋管理総務部主任の3人が登壇。「製造機能を持った新しい商社へ」の演題で、ものづくり経験のなかった商社が新工場を建設して稼働するにあたり、ハードとソフトの両面から専門家支援を受けてきた経緯を話した。 同社は年に会長・社長をトップとする全社的プロジェクトチームを立ち上げ、製造の部門別管理ができる管理会計の仕組みを構築し、工員やロボットの作業実態を把握する時間観測に着手。多くの無駄な作業が工員の動線である部品や資材の不適切な置き場と置き方に起因していることが分かったとして、工場のレイアウトを見直し、新工場で始める溶接作業を対象に生産計画や作業指示、日常点検など製造の基本を一つずつ学んでいったと振り返った。 新工場稼働後ほどなく外注加工品の部材不良を指摘するクレームを受けたことから、異常処置ルールの徹底など組織的な再教育や穴あけ工程の内製化などで商社意識からの脱却を目指したとした。品質は検査で保証するものではなく、工程内で作り込むものであると認識して、専門家から作り込みのマネジメントの再指導を受け、現在は全社品質保証体系の構築に努めている。生産活動の基本は時間であると教わり、最初から管理会計の仕組みを構築して部門別管理を実現したことを支援の利点に挙げたうえで、「現在の工場が手狭になるほどに営業部門と連携して新規受注を増やしていく」と抱負を語った。

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