ベンチャー企業の人材確保に関する調査
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- 77 - 3.4.3. 政策的インプリケーション 本調査研究を通じて、ベンチャー企業の人材確保を促進するために検討余地があると思われる示唆が、下記のように得られた。 ・ベンチャー企業の人材確保に当たって、なんと言っても障害になっているのは、求職者から見た「情報不足」である。会社概要や業務内容と言ったいわば「ハード」な情報に関しては、かなりの施策が為されているところではあるが、化粧を施した情報からさらに一歩踏み込んで、経営者が理念や仕事を語りかけたり、もっとさりげない日常の様子や仕事の実態、会社の弱みといったことをふくめた等身大の姿を、求職者ターゲットに響くような方法で伝えていく必要がある。この「情報非対称」が改善されないと、求職者は「完全な情報を得るには時間と費用がかかりすぎる」と考えるようになり、「一定の条件以上の者が見つかったところで手を打つ」という行動を取るようになる。これはベンチャー企業の人材確保にとって大きな障害となる。 ・逆に言えば、情報非対称の解消が出来るのであれば、そこには大企業にはなしえないようなベンチャー企業の強みが出現してくる。というのも、大企業に比べ、ベンチャーは等身大の姿をさらけ出しやすいからである。ベンチャー企業が、求人広告を含む“PR活動”のソフトパワーの重要性を認識したり、ソーシャル・リクルーティングなどのネットリタラシーを含むPR技法を取得することが出来るようになるための啓発や支援、成功例の発掘と普及といった活動が望まれる。 ・しかしながら実際のところ、ベンチャー企業にとってPR業務など、なかなか手が回らないのもまた実態であろう。無理に研修を受けさせることも出来ないし、全社に使える一律の解決策もない。ところで、先頃米国で発表された「Startup America」というイニシアティブ29では、「ベンチャーのエコシステム」と言う考え方が提示されている。ベンチャーを取り囲むさまざまな機能や要素・外部条件が一種のエコシステムを形成することで、ベンチャー輩出の土壌がはぐくまれていく、という考え方である。 ・直接資金を提供し、結果を出すことを求める、と言った直接介入型の支援ではなく、さまざまな支援者が、ベンチャーにとって利用しやすい形で存在しているという、あたかも土壌を整えるが如くの支援のあり方がより望ましいのかもしれない。例えばベンチャー企業が共用できるような、広報や人材募集のシェアードサービス業者が、例えば業種別に、いくつもあるとよい。もともと、大企業が広報部や採用部を持つことには、規模の経済性が働き合理的であるが、ベンチャーが同じ機能を内部で持つことはできないため、不利な状況に置かれているのである。このことは、広報や人事だけに適用できる問題ではないだろう(前節にあった、「イメージアップ」も、エコシステム型支援の一つである)。 29 “Startup America”, 米ホワイトハウス・ホームページより http://www.whitehouse.gov/issues/startup-america(11年2月4日確認)

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