ベンチャー企業の人材確保に関する調査
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- 102 - 大工コンセプト、学生に響く 「要するに、大工という言葉を魅力ある概念に戻しただけなんだよ、僕は。いままで大工になろうなんて考えもしなかった人が、うちに来て大工になってきているわけ。普通、大工というと、工業高校のレベルですよ。それを大学生のレベルにして、大学でも大工になれるんだという、大工という価値観を変えたのですよ。大工というのは単能工ではないよと。全部やって大工なのだよということをしゃべり続けただけなのです。」 秋元社長によれば、大学の建築学科の卒業生は、大手設計事務所の設計や監督、国や地方の技官、ハウスメーカーやゼネコンを目指すのが一般的なのだそうだ。大学では「大工や職人になる」という文化は全く教えられていないし、大工仕事を分かっている教授もおらず、大工の育成は出来ない。従来、大工になりたければ、棟梁のところに弟子入りに行くしかなかったが、15、6歳ならともかく、大卒が押しかけても受け入れは難しいし、今どきのかれらも厳しい徒弟制度に耐えられないと言うのが実態だったのだ。 「大工」正社員採用の皮算用 俗に大工が一人前になるには10年かかる、等と言われている。大卒とはいえ素人をフルタイムで雇い、大工として育てていくということは、経営面を考えた場合、どんな皮算用があるのだろうか。 「10年で一人前になるわけがないですよ。何をさして一人前だというのか分からない新卒学生のリクルートは、1990年から始めました。当時は(静岡)県内の学生が主だったのですが、やがて噂を聞きつけて、県外の大学からも応募してくるようになりました。 東大や京大を出て農業を始めたり、一流会社に勤めてある日突然芸術家になるなど、世の中には例外がたくさんあります。ですから東大生、京大生が最初にうちに応募してきたとき、「世の中には変わり者がいるなあ」と思いました。 しかし、翌年も、そのまた翌年も、一流校からどんどん応募が来る。面接して一人一人話を聞いてみると、みんなとてもまじめに「大工をやりたい」と考えていることが分かりました。 そこではじめて、「大工になりたいという気持ちは例外なのではなく、ごくスタンダードな欲求なのだ」と気づきました。彼らはけして変わり者ではなかったのです。「うちで育ててあげますよ」という受け皿になる会社や組織が、今まで無かっただけなのです。

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