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第10回「第二創業を考える」

11月の執筆者は、チーフアドバイザー(知財)桑原 良弘です。

 「第二創業を考える」

 「ごんぎつね」の作者、新美南吉の童話をご存知だろうか。おいおい、童話かよ。ところが新美南吉はとても趣のある作品が多い。今回はその中の一話「おじいさんのランプ」から、第二創業について考えてみたい。 

 このストーリーは田舎に住む主人公の巳之助少年が、町へ出て人力車の手伝いをし、わずかな賃金をもらうところから始まる。町は“文明開化”の波に押されて華々しく、村にはない石油ランプが煌々と照っている。少年はそのランプに魅力を感じ、ランプ屋の店主にそれを買いたいと告げる。しかし大したお金を持っていない。そこで少年は「卸値で売ってくれ」と懇願する。店主は、少年の熱意と「これを必ず売ってくる」という言葉を信じて、お金を取らずに1台だけランプを渡すのだった。 

 村に帰った少年は、雑貨屋の女主人に、「ランプをタダでおかせて欲しい。売れたらその時お金をくれればいい」と願い出た。その日から、とても明るいお店になった雑貨店。ランプはすぐに売れる。それから3台、5台と注文が続き、やがて少年はランプ屋を経営し、他の村にも売り歩いていくのであった。 

 ところが、“文明開化”の変化は早く、数年すると町には電気が通ることになる。電灯のそれは明るいこと。ところが、巳之助はこれが気に食わない。電灯はランプの商売敵なのだ。やがて村でも電気を引くことが決まり、いよいよランプが売れなくなっていく。ある日、巳之助は電気を引くことを決めた村長を逆恨みして、村長宅に火をつけに行くことを画策した。ところがいざ行く段になるとマッチがない。仕方なく火打石をもって村長宅へ。が、なかなか火はつかない。巳之助は一言「こんな古臭いものは役に立たない」と。ここで彼は気付く。ランプは古道具になってしまった。世の中のためになる新しいことをしなくてはならないと。家中のランプを片付け、自分の気持ちに整理をつけた巳之助は町に出て、今度は本屋を経営し、次なる成功を納める。 

 技術が進んで便利なものができ、それが売れてビジネスは発達していくが、やがては衰退していく。この時、古い商売にかじりついたり、規制したり、逆恨みしたり、邪魔をしたりしても何もならないだろう。もちろん現在の事業を維持することも大切だが、そのためにも次の開発が必要だといえる。そして、「これはもう古い」と思ったら、積極的に新分野へ出て、次の商売を探すことが必要だ。これが第二創業のきっかけでありタイミングだと言える。くしくも巳之助に、当時の情報産業となる本屋を始める設定をした新美は、次の時代を読んでいたからかもしれない。 

 童話の一節ではあるが、昔も今もコトの本質に変わりはないのでは。私はこの本を息子と読み、地道に築きあげていく努力を土台に、常に新しい知識や友人を求め、様々なものを見ていくことが大切であることを再認識した。

 

執筆:チーフアドバイザー(知財) 桑原 良弘