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第9回「ロケット・衛星技術を通じてモノ作りを考える」

平成21年10月の執筆者は、チーフアドバイザー(モノ作り)大村 卓一です。

「ロケット・衛星技術を通じてモノ作りを考える」

 「平成21年9月11日にH-IIBロケット試験機によって種子島宇宙センターから打ち上げられた宇宙ステーション補給機(HTV)技術実証機が国際宇宙ステーション(ISS)との結合に、本日9月18日10時49分(日本時間)に無事成功しました」(平成21年9月18日:宇宙航空研究開発機構(JAXA)発表)と言うニュースが伝わった。日本のロケット・衛星技術が世界から注目され、期待にこたえた瞬間だった。私も、JAXAの前身のNASDA(宇宙開発事業団)の委託業務で材料の信頼性評価や宇宙塵の解析を行ったことがあり、関心を持って見守っていた。

 宇宙ステーションを構成している材料は高真空、低重力(地上の100万分の1程度)、宇宙線(紫外線や放射線)や宇宙塵などに耐えることが要求されることは容易に推察できるが、この空間では酸素原子の存在が無視できないと言う。特に、接着剤や熱線遮蔽材などの有機材料やロボットアームなどの構造体の信頼性を評価しておく必要があるのだ。それは、宇宙ステーションが地上約400Kmを1周90分の速さで回っている(秒速に換算すると約8Kmだ)ことに起因している。即ち、止まっている酸素原子に約8Km/secで宇宙ステーションがぶつかると言うことになる。この運動エネルギーを計算すると数eVになる。有機物の反応の活性化エネルギーに近い値である。宇宙ステーションがこの空間で静止軌道に乗っていると言うことは、有機材料や構造体が分解しやすいエネルギーを持って酸素原子に衝突する状況を作り上げていると言うことなのだ。評価した試料や序列などの結果については私の記憶のかなたに消えてしまったが、地上でのシミュレーション実験や宇宙での暴露試験をしたことが甦ってくる。

 当時、プロはわれわれ素人が考えも及ばないところへの気配り(これが商品のスペック作りに反映される)をするものだと感心した。また、今年の5月中小企業総合展2009 in Kansaiで「まいど1号」の製作に関られた株式会社大日電子 代表取締役・すぎ本(すぎもと)日出夫氏がパネル討論の場で、「衛星に載せる機器の作成は自分たちの力で何とかなると言う自信は出来たが、宇宙環境が求めているスペックとその評価技術は一朝一夕には会得できない」と言うような趣旨のことを延べられていたのを思い出す。ロケット・衛星の開発には最先端技術が問われるように思うが、信頼性技術は不可欠である。ロケット打ち上げ時および宇宙空間で要求される条件を的確に把握し、検証することが求められている。

 スペースシャトルは間もなく引退し、新しい計画がスタートする。世界中の多くの分野の専門家や企業が一つの夢を追いかけるよいテーマのように思う。そんな時、過去の失敗が思い出される。「1999年火星探査機マーズ・クライメート・オービターが技術チーム間で連絡しあう際、別々の単位系を使用したために探査機の火星周回軌道の高度が約60マイル(100キロメートル)も低くなり消息を絶ってしまった」(引用:ケン・オールダー著、吉田三知世訳「万物の尺度を求めて」)と言う経験だ。新しい計画では、是非、共通語(言葉とともに共通単位)を使用してコミュニケーションのミスは撲滅してほしいものだ。                       

                            チーフアドバイザー(モノ作り) 大村 卓一