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第7回「”箱モノビジネス”のイノベーション」

平成21年8月の執筆者は、プロジェクトマネージャー 増岡 洋です。

「”箱モノビジネス”のイノベーション」

 成熟産業、供給過剰といわれながらもビジネスホテルの新築は続く。ホテル業はいわゆる「箱モノビジネス」といわれている。すなわち部屋数、席数、定員等が決められている「箱」という空間でサービスが提供されるビジネスのことで、劇場、ゴルフ場も同じ事業形態といってよい。

 「箱モノビジネス」の特徴は以下の四つ。(1)箱の容量(部屋数、席数)に限度があり、一定期間の客数には上限がある。(2)今日の部屋(席)を明日に持ち越せない。在庫がきかないのである。(3)固定費が高い。売上の多寡にかかわらず必要とされる固定費の割合が高いのである。箱というハードへの投資が大きくなるためである。(4)季節、曜日によって稼働率は大きく変化する。観光地のホテルは季節、ビジネスホテルは曜日によって稼動状況に大きな格差を生ずる。このビジネスのリスクは(1)投資の回収期間が長いことである。箱モノ建設にかかる投資と、これを維持するための費用が多額にのぼるからである。(2)固定費の比率が高いことである。「高固定費低変動費」型の事業は、損益分岐点を下回ると多額の赤字を発生しかねない。

 このような特徴とリスクのもとでビジネスホテルの成功の鍵は何なのか。第一はホテルのコンセプトを明確にして過大な投資を抑制すること。第二は低料金で事業運営可能な仕組みを構築すること。第三は客室稼働率を少なくとも70%以上とすることである。一方、出張の多いビジネスマンのニーズ(バリュー)は「交通至便、クリーンな部屋、リーズナブルな価格」といえる。 

 これら課題にどうこたえるか、新たなビジネスモデルの設計力が問われる。優良企業では以下の答えを出している。(1)初期投資の抑制。土地・建物は賃借。多店舗展開のメリットを生かして内装・設備は標準化による低コスト化。(2)女性の能力活用とローコストオペレーション体制の構築。有能な女性の中途採用に意欲的で、アットホームな雰囲気づくりに努めるなど顧客満足を維持しながら固定費の抑制を図っている。(3)価格設定。上記(1)、(2)からビジネスマンの出張旅費に納まる値ごろ感のある料金設定を可能にしている。  

 以上のように、顧客バリューへの集中、事業成功の鍵をはずさないようなビジネスモデルを組み立てれば、成熟産業といわれるビジネスであっても成長軌道に十分乗りうる。 

 

中国支部プロジェクトマネージャー 増岡 洋