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第6回「切り餅に見る特許の重要性」

平成21年7月の執筆者は、チーフアドバイザー(知財)桑原 良弘です。

「切り餅に見る特許の重要性」

 インターネットサイト「知財情報局」によれば、

 側面に切り込みを入れた「切り餅」の特許を侵害されたとして、食品メーカーの越後製菓株式会社(以下、越後製菓)が3月11日付けで、「サトウの切り餅」で知られるサトウ食品工業株式会社(以下、サトウ食品)に対して、侵害製品の製造販売の差し止めと、損害賠償を求める訴訟を東京地裁に提起した。サトウ食品は4月22日、この事実を発表した。

 越後製菓は、切り餅の側面に長手方向の切り込みを入れることで、加熱時の内部膨張による噴き出しをコントロールする切り餅の特許を2002年10月に出願し、2008年4月18日には特許第4111382号として登録しており、「サトウの切り餅」がこの特許を侵害しているとして、製造・販売の差し止めと、約14億8000万円の損害賠償を求めている。

 一方、サトウ食品は、側面の一部に加え上下の広い面に十字の切り込みを入れる切り餅を製造しており、これに関する特許は2003年7月に出願され、2004年11月に登録となっている。サトウ食品は、発表の中で、同社製品は越後製菓の特許を侵害するものではなく、今後、裁判で同社の正当性を主張していくとしている。

 

 両者の従業員はほぼ同じ370名ほど、売上は越後製菓が約170億円、サトウ食品が260億円。特許出願件数は越後製菓が78件でうち36件が登録特許、サトウ食品は8件でうち3件が登録特許である。越後製菓は資本金が3億円以下の中小企業である。両者ともに製品の半数が餅製品としている。

  

 中小企業の越後製菓が、大企業のサトウ食品を訴えているという構図。特許の争点は、餅の側面に切込みがあるのと、餅の側面の一部と上下の広い面に十字に切り込みがあるところである。ここでは特許の内容について割愛する(興味のある方はIPDL等明細書を検索してほしい。請求項の書き方がまったく違うところが面白い)。

 

 本件は類似している内容に思うが、特許は同一でない限りはいわば侵害している内容であっても特許される。この提訴における判断は裁判に委ねられるが、知財の活用が企業にとってどれだけ重要であるか、改めて感じる。同業者であるからこそ自社のシェアをどう確保するか。企業規模では小さい越後製菓は10倍の特許で自社の防衛と競合会社への対抗を図っているのである。提訴には当然それだけの算段がある。知財は原則平等に利害関係者に働くものであるので、強化している企業の方がさまざまな対策が取れる。

 もし一方が特許を持たないならば、決着は報道されるようなことなく侵害しているとしてその処置はとられるものだろう。

 

 切り餅というなんでもないと思いがちな商品であっても、その商品にとって大変な機能性を発揮するアイデア。餅が好きな私としては、両者が切り餅に対して、焼いた後の姿まで気を使うほど商品開発に情熱を注いでいることに感動している。そしてその成果を特許として出願する。特に越後製菓は知的財産を重要視しており、それだけの誇りと自信を持っているからこそ、今回のような行動に現れるのだろう。 なにはともあれ競争によって、もっと餅がおいしくて食べやすくなることに期待したい。

 

チーフアドバイザー(知財)桑原 良弘