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第5回「実りの秋を迎えるために」

平成21年6月の執筆者は、チーフアドバイザー(モノ作り)大村 卓一です。

「実りの秋を迎えるために」

 「Fruitless Fall」という本が目に留まった。直訳すると「実りなき秋」ということになる。最近話題の本であるとともに、前回私の寄稿したタイトル「秋遠からず」とのかかわりを強く感じたので本稿で紹介する。日本語訳は『ハチはなぜ大量死したのか』(ローワン・ジェイコブセン著、中里京子訳、福岡伸一解説)である。

 “めだか”や“かえる”がいなくなったという噂を聞いていた。身近な生き物が消えてゆくニュースが多いこと。「沈黙の春」(レイチェル・カーソン著)が指摘したDDTのような農薬が悪さをしているという内容であろうと推理しながら読み始めた。

 アーモンドは2000年代最も利益を生み出した農産物だそうだ。そのカリフォルニアのアーモンドのサクセスストーリーの立役者、セイヨウミツバチ、に異変が起きている。はじめはミツバチの寄生虫・害虫駆除剤あるいは農薬などが原因であろうと推察した。しかし次第にアーモンド栽培の実態〜授粉時期は春先のきわめて短期間に限定されていること、異なる遺伝子を持つ株間での受粉が必要なことなどの制約のため世界中から大量のミツバチが集められ、あわただしい部品工場の現場を髣髴とされる風景が展開される〜が判ってくると、農業の分野に工業化の手法が及んできたことに原因があったのだとおぼろげながら気付かせてくれる。起きるべきして起きている現象であることが理解できた。そして、2007年春までに実に北半球のミツバチの四分の一が失踪したのだ。

 現状を打開するために養蜂家、カーク・ウェブスター、が挑戦を始めている。それはハチの復元力を引き出すことに注力し、ダニや外敵と共存させたり、果樹園を農場や休閑地がパッチワークのように点在する環境に変える試みをされている。何も加えないオーガニック養蜂である。類似の話を思い出した。「奇跡のリンゴ」(石川拓治著)の主人公・木村秋則さんのこと。木村さんは土作りに全力を注ぎ土地の恵みを享受した無農薬でおいしいリンゴを育てている。テロワール(土壌と風土)は二人がともに関心を寄せる言葉だそうだ。

 まだ、カーク・ウェブスターさんの試みは完全に成功したとはいえないそうだが、お二人に大きなエールを送り、おいしい旬の食べ物を虫と分け合って味わいたい。

 日本ではセイヨウミツバチの大量死の報告はまだないし、古来れんげ畑をのんびり採蜜活動に飛び回っているニホンミツバチはダニや病気や外敵に強く近年大都市近郊で増えていることが紹介されていた。日本は例外と考えるのは正しい判断ではないが最後に付け加えておきたい。

 

チーフアドバイザー(モノ作り) 大村 卓一